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 深夜まで続いた二人の会話。幼い頃の話や、今の話。お仕事だったり、生活だったり。

 二人で行きたいところ、やりたいこと。そんなことを数えきれないくらい話て、気づいたらそのまま寝落ちしてしまっていた。

 気を利かせたのか、誰も私たちを起こしに来ることはなく、気づいた時にはすでに昼近くなっていた。


「あ、あのねユノン。昨日は何もなかったんだから」


 普通の顔で入室してきたユノンに、私は一番に言った。

 だって、だって。本当に何もなかったもん。ただそう……一緒のベッドで寝てしまったというだけ。いやまぁ、一緒に寝たは寝たし、起きたら手を繋いでいたけれども。

 やましいことはきっとなかったはず。なかったもーーーーん。


「はいはい、大丈夫ですよ。見れば分かりますから」

「見れば分かるの!?」


 何それ。そういう能力っていうか、侍女にはそんなスキルまで付いていたの? 何その万能感。

 でもそれはそれで、恥ずかしすぎるんですけど。だってもし、そういうことがあったら分かっちゃうってことでしょう。

 そんなのもう、無理。絶対に恥ずかしくて死んでしまうから。


「ああ、それはそうと、お客様みたいなモノを待たせてありますよ。お支度に時間がかかりますのでって言って、応接室で待ってもらってますが」

「えええ。それなら起こしてくれればいいじゃないの」


 お客様を待たせてるって。しかもこの言い方だと、結構な時間待たせていそうだし。さすがに失礼になってしまうわ。

 でもこんな時間からうちに御用だなんて、誰かしら。


「いいんですよ。みたいなモノって言ったじゃないですか。さ、お二人ともお着替えをなさって、一緒に行ってくださいな」

「ん? マルク様も一緒に?」

「多分その方が良さそうです」


 含みのあるユノンの言い方からして、いい予感はしなかったものの、私はユノンが出したドレスに着替える。

 その奥で寝起きでぼーっとするマルクもゆっくりと支度を始めた。



     ◇     ◇    ◇


「遅いぞオリビア、いつまで待たせているんだ!」


 残念というか、ある意味安定というか。私が応接室のドアを開けた途端、大きな声が響いた。ここには今、公爵家の使用人たちもいるというのに、恥ずかしいの一言に過ぎる。


「お待たせいたしましたお父様。でもそんなにお急ぎならば、先に手紙を送るのが礼儀ではないですか?」

「なぜ自分の娘の元を訪れるのに、手紙なんぞ書かないといけないんだ。本当に頭が悪いな、お前は!」

「随分な言い様ですね、サルート男爵」


 マルクが登場すると思っていなかった父は、大きく目を見開いたあと、その場の椅子に倒れ込むように座り込んた。父もまさかマルクがいないと思って大きく出ていたのだろう。

 お客様のようなモノとは、よく言ったものね。本当にその通りだわ。いきなり押しかけてきて、こんなに大声を張り上げるんだもの。

 ユノンの言う通り、マルクについてきてもらって良かったわ。


「こ、これはグラン宰相……い、いらしていたのですか」

「婚約者となる者の元を訪れるのに、許可がいりましたかな」

「い、いえ。そんなことは……」

「で、先ほどの頭が悪いというのは?」

「あのその……随分前から待たされていたので、その、し、使用人に文句を言ったまでです」

「その使用人は使用人だったようで申し訳なかったですね」


 あーあ。なんだかなぁ。面白い具合に墓穴を掘ってて、笑えるわね。顔を蒼白にさせる父が珍しく、ある意味小気味よかった。
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