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021 どこもかしこも不良債権
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「どうしてお姉さまなんか……」
ドレスの裾を強く握りながら、シーラが私をにらんだ。ああ、そうでしょうね。
シーラはずーっとマルクのことが好きだったものね。
子どもの頃に呼ばれたお茶会でも、ずっと私をからかうマルクにアピールしていたのを知っているわ。
だから両親たちもずっと、身分不相応なのにシーラがマルクに熱を上げているのを止めなかったし、いつかその心を射止めるかもしれないという淡い期待から、シーラには婚約者を見つけることもしなかった。
確かに私の目から見ても、シーラのふわふわした髪も雰囲気も、他の令嬢よりかは可愛いとは思う。
でもいかんせん身分が違いすぎる上に、当のマルクはまったくシーラに関心を示さなかった。
まぁ、そのせいもあってシーラは私の婚約者であったアレンを取ったのだろうけど。
「グラン宰相様、こんななんの取柄もないただの貧乏性の女に騙されてはいけません!」
「あのねぇ、金遣いが荒すぎて、まったく貯蓄も何もないアレン様に言われたくないですし。シーラも苦労するわね、頑張ってね」
「え? お姉さまそれはどういう意味ですの?」
「それはねぇ。帰ったらゆっくりアレン様に、あなたから聞いたら? 領地のお金を全部使いこんで、借金まである人を私の代わりにもらってくれてありがとう、シーラ。あなたは本当に姉思いだったのね。あとはよろしく!」
「はぁ? なにそれ! 借金って何。わたし、何も聞いてないんだけど。そのことは、お父さまたちも知っているの?」
「さぁ、どうかしら。紙で報告は上げてあったけど、まぁ、あの調子だと読んでないんじゃないのかなー。もう関係ないから知らないけど」
私の報告など、元より関心などなかった人たち。重要なことは口頭だと、言った言わないになってしまうから、そういう報告は全て紙にして渡してさらにサインももらっていた。
でも中身をきちんと読むか読まないかは、本人たち次第だから私の知ったことではない。
今までシーラは知らなかったと思うけど、実家である家もアレン様の家も、今や不良債権。
かなりの負債を抱えているのよね。それでも今までは何とか、私が立て直せなくても維持してきた。
私が抜けたら今度はシーラとアレンの二人が頑張らないとね。
うむうむ。きっと君たちなら乗り越えられるさ。愛し合っているのだもの。勝手に頑張ってくれればいいわ。
「アレン様、お姉さまが言っていることって、一体どういうことなのですか?」
「そんなのはオリビアの戯言だ! シーラ、そんなウソなど信じなくていい」
「嘘って……。あーあ。嘘かどうかなんてすぐにバレるのに」
「黙れオリビア! まだ言うのか」
「だって全部真実ですし。それにご自身が一番よく分かっているのではないですか? あ、それともたくさんいる仲の良い女性の方と遊ぶのに夢中で、気づいてすらいない感じですか?」
「はぁ? 仲の良い女性ってなに! アレン様、まさかわたし以外にも他の女性がいたんじゃないでしょうね!」
「シーラ、オリビアはお前を混乱させたくて言っているだけだ。あんな嘘など信じなくてもいい」
「混乱させて何の意味があるのですかねぇ。他の女性も妊娠していないといいわね、シーラ次期侯爵夫人の座が危うくなってしまうものね」
「アレン・ラルド侯爵! 何度も言うが、他人の婚約者を捕まえて嘘つき呼ばわりした挙句、名前で呼ぶなと何度も注意したはずだが?」
ああ、すごく怒っている。そして安定に、マルクの表情は冷たい。
これだけ見ていると、確かに怖いわよね。私はこの顔で睨まれても、怖くなんてないけど。
この会話も、他人事として見ている分には楽しいけど、夜会でする話ではないのよね。
恥の上塗りっていうか、当事者としてはさすがにこのままこの話が続くのは嫌だし。
んー。どうやって止めようかな。
このままマルクを連れて退出した方がいいかしら。
明らかに周りの人たちの関心も、目も、全て釘付け状態だし。どうしようかなぁ。
むしろ勝手にサクっと退場してくれればいいのに。
これだけ言っているのに、めげないどころか逆切れするってどうなのよ。
面倒くさすぎる。こんな一円にもならない無駄な話、本当にやめたい。
ドレスの裾を強く握りながら、シーラが私をにらんだ。ああ、そうでしょうね。
シーラはずーっとマルクのことが好きだったものね。
子どもの頃に呼ばれたお茶会でも、ずっと私をからかうマルクにアピールしていたのを知っているわ。
だから両親たちもずっと、身分不相応なのにシーラがマルクに熱を上げているのを止めなかったし、いつかその心を射止めるかもしれないという淡い期待から、シーラには婚約者を見つけることもしなかった。
確かに私の目から見ても、シーラのふわふわした髪も雰囲気も、他の令嬢よりかは可愛いとは思う。
でもいかんせん身分が違いすぎる上に、当のマルクはまったくシーラに関心を示さなかった。
まぁ、そのせいもあってシーラは私の婚約者であったアレンを取ったのだろうけど。
「グラン宰相様、こんななんの取柄もないただの貧乏性の女に騙されてはいけません!」
「あのねぇ、金遣いが荒すぎて、まったく貯蓄も何もないアレン様に言われたくないですし。シーラも苦労するわね、頑張ってね」
「え? お姉さまそれはどういう意味ですの?」
「それはねぇ。帰ったらゆっくりアレン様に、あなたから聞いたら? 領地のお金を全部使いこんで、借金まである人を私の代わりにもらってくれてありがとう、シーラ。あなたは本当に姉思いだったのね。あとはよろしく!」
「はぁ? なにそれ! 借金って何。わたし、何も聞いてないんだけど。そのことは、お父さまたちも知っているの?」
「さぁ、どうかしら。紙で報告は上げてあったけど、まぁ、あの調子だと読んでないんじゃないのかなー。もう関係ないから知らないけど」
私の報告など、元より関心などなかった人たち。重要なことは口頭だと、言った言わないになってしまうから、そういう報告は全て紙にして渡してさらにサインももらっていた。
でも中身をきちんと読むか読まないかは、本人たち次第だから私の知ったことではない。
今までシーラは知らなかったと思うけど、実家である家もアレン様の家も、今や不良債権。
かなりの負債を抱えているのよね。それでも今までは何とか、私が立て直せなくても維持してきた。
私が抜けたら今度はシーラとアレンの二人が頑張らないとね。
うむうむ。きっと君たちなら乗り越えられるさ。愛し合っているのだもの。勝手に頑張ってくれればいいわ。
「アレン様、お姉さまが言っていることって、一体どういうことなのですか?」
「そんなのはオリビアの戯言だ! シーラ、そんなウソなど信じなくていい」
「嘘って……。あーあ。嘘かどうかなんてすぐにバレるのに」
「黙れオリビア! まだ言うのか」
「だって全部真実ですし。それにご自身が一番よく分かっているのではないですか? あ、それともたくさんいる仲の良い女性の方と遊ぶのに夢中で、気づいてすらいない感じですか?」
「はぁ? 仲の良い女性ってなに! アレン様、まさかわたし以外にも他の女性がいたんじゃないでしょうね!」
「シーラ、オリビアはお前を混乱させたくて言っているだけだ。あんな嘘など信じなくてもいい」
「混乱させて何の意味があるのですかねぇ。他の女性も妊娠していないといいわね、シーラ次期侯爵夫人の座が危うくなってしまうものね」
「アレン・ラルド侯爵! 何度も言うが、他人の婚約者を捕まえて嘘つき呼ばわりした挙句、名前で呼ぶなと何度も注意したはずだが?」
ああ、すごく怒っている。そして安定に、マルクの表情は冷たい。
これだけ見ていると、確かに怖いわよね。私はこの顔で睨まれても、怖くなんてないけど。
この会話も、他人事として見ている分には楽しいけど、夜会でする話ではないのよね。
恥の上塗りっていうか、当事者としてはさすがにこのままこの話が続くのは嫌だし。
んー。どうやって止めようかな。
このままマルクを連れて退出した方がいいかしら。
明らかに周りの人たちの関心も、目も、全て釘付け状態だし。どうしようかなぁ。
むしろ勝手にサクっと退場してくれればいいのに。
これだけ言っているのに、めげないどころか逆切れするってどうなのよ。
面倒くさすぎる。こんな一円にもならない無駄な話、本当にやめたい。
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