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めぐみの場合 2
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その日は春の始まりだというのに、朝から雪が降っていた。
全てを覆いつくすような、どこか重たい真っ白な雪。
「大嫌い」
この雪も。
こんな田舎も。
私は大きくため息を付いたあと、ゆっくりと身をかがめながら駐車場に停まる車に近づいた。
まさか家の車で浮気していたなんてね。
ある意味、近所の奥様たちによく気づかれなかったものだわ。
車の中には夫と、件の女がいる。
興信所を使って調べてもらったところ、もう数年前から二人は関係があるようだった。
しかも、女も既婚者。
そのため自由になるお金のない二人は、いつも車の中でコトを致したあとそのまま朝まで車で眠りにつく。
そして二人でコーヒーを飲んでから、帰宅するというのがルーティンらしい。
ギリギリまで近づくと、中から二人の会話が聞こえてくる。
「ねぇ、いつ奥さんと離婚してくれるの?」
「それはお互い様だろ? おまえこそ、旦那が離婚に応じないだろうよ」
「それはそうだけど……。でも、あなたとちゃんと堂々と日の当たる時に会いたいわ」
「まぁな」
離婚したところで、不倫の上で成り立ったものなのよ。
そんなの、この地で生きていけるわけないじゃないの。
田舎がどんなものなのか、知らないのかしら。
「まぁな。じゃなくて。わたしももう一回夫に話してみるから、あなたも奥さんに話してよ」
「分かってるよ」
「本当?」
「ああ、本当さ」
「嬉しい!」
「でも、浮気してるなんて気づかれるなよ? あとあと面倒なんだからな」
「分かってるってば~」
馬鹿ね。
そんなの相手方の旦那さんを騙せたって、ここらの情報網を誤魔化すなんて無理に決まってるのに。
まったくおめでたい人たち。
でも、もうどうでもいいわ。
これで全部おしまい。
私には関係なくなるのだから。
「あなたたちだけが恥になればいいのよ。せいぜいみんなの話のネタになってあげてちょうだい? きっと喜ばれるはずよ」
車の裏に回り込み、排気口に雪や石などを大量に詰め込む。
楽しく過ごす彼らは気づかないでしょうね。
私からのプレゼントなんて。
井戸端会議の話題に、私は決してならない。
あとは勝手にやってちょうだい。
私は完全に排気口が埋まったのを確認すると、持ってきた手荷物を引きずりながら歩き出した。
全てを覆いつくすような、どこか重たい真っ白な雪。
「大嫌い」
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こんな田舎も。
私は大きくため息を付いたあと、ゆっくりと身をかがめながら駐車場に停まる車に近づいた。
まさか家の車で浮気していたなんてね。
ある意味、近所の奥様たちによく気づかれなかったものだわ。
車の中には夫と、件の女がいる。
興信所を使って調べてもらったところ、もう数年前から二人は関係があるようだった。
しかも、女も既婚者。
そのため自由になるお金のない二人は、いつも車の中でコトを致したあとそのまま朝まで車で眠りにつく。
そして二人でコーヒーを飲んでから、帰宅するというのがルーティンらしい。
ギリギリまで近づくと、中から二人の会話が聞こえてくる。
「ねぇ、いつ奥さんと離婚してくれるの?」
「それはお互い様だろ? おまえこそ、旦那が離婚に応じないだろうよ」
「それはそうだけど……。でも、あなたとちゃんと堂々と日の当たる時に会いたいわ」
「まぁな」
離婚したところで、不倫の上で成り立ったものなのよ。
そんなの、この地で生きていけるわけないじゃないの。
田舎がどんなものなのか、知らないのかしら。
「まぁな。じゃなくて。わたしももう一回夫に話してみるから、あなたも奥さんに話してよ」
「分かってるよ」
「本当?」
「ああ、本当さ」
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「でも、浮気してるなんて気づかれるなよ? あとあと面倒なんだからな」
「分かってるってば~」
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そんなの相手方の旦那さんを騙せたって、ここらの情報網を誤魔化すなんて無理に決まってるのに。
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私には関係なくなるのだから。
「あなたたちだけが恥になればいいのよ。せいぜいみんなの話のネタになってあげてちょうだい? きっと喜ばれるはずよ」
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楽しく過ごす彼らは気づかないでしょうね。
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