父が再婚しました

Ruhuna

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父が再婚した


今は亡き母は、王妹殿下が乗っていた馬車に運悪く轢かれて即死だった


母を心底愛していた父は母の後を追ってしまうのではないかと心配になる程、憔悴しきっていた
毎日母の写真の前で泣き続けている父の背中が脳裏にこびりつくほど見つめていたメルージュはその時10歳だった
屋敷全体が悲しさに包まれ重い空気が流れている屋敷は居心地の悪いものになっていった


だがそんな日も長くは続かなかった


父の再婚が決まったのだ

相手は母が亡くなった原因でもある王妹殿下のイライザだった
イライザはメルージュの母の直接的な死因としてその身をもって憔悴したメルージュの父ブラッドのサポートを行うようにと王命の下、我が家にやってきた


我が家はサスーン王国の侯爵位を賜るラランド家である
王妹殿下の降嫁先には身分は申し訳ないがそれはあくまでも表面上のことであった



「貴女がの娘ね。…ふんっあの女に似て嫌味な顔ね。」



イライザと初対面したときに言われた言葉だ
メルージュは10歳ながらにもイライザが自身のことを疎ましく思っていたのは理解していた
メルージュは亡き母に似てサスーン王国では珍しい黒い髪に黒い瞳を持っていた。金髪青目が美人の条件とされるサスーン王国でその容姿は異質ではあった
その特徴的な髪と瞳は大陸の先にあるワコクと呼ばれるエトワージュ帝国と同等もしくはそれ以上の軍事力をもつ千年を超える歴史を持った国の人間の血が流れていることを示す大きな特徴でもあった


つまり、メルージュの母はワコク出身であったということだ
母と父は母がワコクの大使としてサスーン王国に赴いたときに出会い恋に落ちたと耳にタコができるほど聞かされたのはメルージュの良い思い出だった


亡き母との唯一の繋がりであった特徴的な髪と瞳はメルージュの誇りであった
それを嫌悪したイライザのことをメルージュはすぐに嫌いになった
そしてさらにイライザのことを嫌いになる要因があった


「黒い髪と瞳なんて不吉だわ!お母様私この人と暮らすのこわぁい」


イライザの後ろにいたのはメルージュより1歳年下のイライザの実娘エマだ
イライザに似た煌めく金髪と空のように青い瞳、整った容姿は誰しもの目を奪うほどの美少女ではあったが口を開いた瞬間にその全てが台無しになるほどの教養のなさが垣間見えた


この流れで分かったようにイライザは子持ちである
しかしイライザは父と再婚するまでは30歳という年齢ながら未婚と公表されていた
そんな彼女が連れているエマはメルージュの一つ下
イライザは王宮の奥深くでひっそりとエマを育てていたということになる


メルージュはそんな2人を見て特別な感情は抱かなかった
ただ、なぜ、母を殺した女が義母にならなければならないのかという矛盾に憤りを覚えていた
憔悴している父は使い物にならない
イライザが屋敷に来た時のみ部屋からでてきてそれ以来、ずっと部屋に閉じこもり亡き母の写真に向き合っていた
そんな父の姿を見たイライザは荒れた


「旦那様!!今貴方の妻はこの私、イライザです!そんな女の写真など捨てて私を見てください!」

1日1回は必ずイライザのヒステリックな声が屋敷中に響き渡る
叫び狂うイライザを生気のない目で見つめる父に何を言ってもダメだと判断したイライザはその標的をメルージュに変えた


「ラランド侯爵家の跡継ぎはエマです。貴女はどこぞの貴族に嫁がせます」
「ですが、エマはラランドの血は流れていないじゃありませんか。おかしいです」
「だまりなさい!!貴女に意見は求めてないのよ!」


ばちん!!


イライザに口答えしたという理由でメルージュは頬を打たれた
頬は熱を持ったように熱く、痛かったがメルージュは泣くまいと歯を食いしばりイライザを睨みつけた


「ッ!本当にあの女と親子揃って王妹である私に対してなんて不敬な!!」


一度メルージュに手を出したイライザは味をしめたようにその後もメルージュに教育という名で暴力を振るった
その度にメルージュは消して泣くこともなくただ静かにイライザを睨み付けていた


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