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スタメンを掛けた生き残りの戦い!?

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「トップは依然として馬のケルちゃんね! 速い速いー! そしてー!」
「ちゃちゃの司会を奪うなちゃ!」
「ふん。ボケとツッコミ同時に出来るくらいじゃ無ければスタメンは務まらないのよ!」

 一瞬ちゃちゃかと思いきや、メイン司会を略奪したのはなんとサルサさん。
 更に……「穴倉に入ったサ! カエサルも応援するサ!」
「出番の無いカエルは黙ってなさい! 爬虫類は苦手なのよ! そしてレレジェンドフェアリーのフェリちゃんも続けて飛び込んだー! これは有利! 一気に順位が変わるかぁー!」

 司会に熱が入ると言うより、自分にも喋らせろと出番の奪い合いをしております。
 そして俺とご主人は、速すぎてホースを手放してしまったニャトルに追いつきました! 

「ニャトちゃんーー!」
「ニャガ!? ご主人までずるっこしてるニャ!」
「クックック。貴様はここまでのようだな? 所詮俺の相手では無かったということだ」
「ふふふっ。火炎妖精の足下にも及ばないのね。上から目線ていい気分だわ。うふふ」
「ニャガー? こ、こいつだんだんシロンのような顔になって来たニャ?」
「いーやーー! こいつと一緒の顔なんていーやー!」
「やっぱり変わって無かったニャ。ところでニャトルは何で走ってるニャ?」
「召喚勝負だよ! さぁニャトちゃん! おいで!」
「えっ? ちょっとご主人?」
「ニャゴハーッハhッハッハ。ニャトルが乗れば百人力ニャ! 進むニャー!」
「……狭い」
「行くよーー!」
「ってもうじき穴くぐりですけど!? これじゃくぐれませんよね?」
「う?」
『う? じゃなーい!』

 そして穴くぐりの穴へスケボーさんをぶち当てるご主人。
 あんた―! 何も考えてないでしょー! 当然ながらガッコンと前のめりになる俺たち一同。
 ニャトル、お前はそのまま走った方が良かったぞ。

「すー、ニャー。危なかったニャ……しかし! ニャトルには空があるニャー。ニャゴハーッハッハッハ! このまま空中浮遊で移動ニャ!」
「……ニャトル選手。失格です」
「あいつバカちゃ! ちっとも話聞いてないちゃ!」
「猫ってね。十秒後には言ったこと忘れるみたいよ。本当だったのね……」

 ずっこけてる俺はそのまま穴に潜ります。
 こうしてはいられません! こんなところで負けてたまるかーい! 

「ニャトルちゃんが負け……そんなぁー」
「あんたのせいでしょうが! さっさとかがんでくぐるのよ!」
「くっ。こいつ突っ込みを極めているちゃ……」
「気を取り直して先頭を見て参りましょう! 現在トップはレジェンドフェアリーのフェリちゃん! 速すぎて見えません! 空を飛んでいるように見えるけど見えないからセーフなんです!」
「ずるいニャー!」
「良く見るちゃ。あの子、定期的に地面に着地してるちゃ。つまりジャンプ判定ちゃ」
「これは器用です! 速い! 可愛い! 喋らないという三拍子を揃えたパーフェクトフェアリーは華麗に先頭を突き進みます!」
「……! ……? ……???」
「……若干混乱してるんじゃないかしら」
「そうとも見えるちゃ」
「続いて二番手はいつの間にかちーちゃんこと黒百合様にチェンジです! 馬はどうしてしまったのでしょう?」
「ケルちゃん、穴でもがいてるちゃ」
「さすがは馬! 低い動作が苦手なようです! これは追い抜きチャンスか!? そしてお次は……」
「俺だぁーい! やっと穴を抜けたぞぉ! よーしここでまた新たなものを出すしか逆転の目はないのです。出でよ……出でよ、大きめなミニ四駆二台!」

 ポトリと落ちる完成されたミニ四駆。
 さぁ、逆転へと向けて突っ走るぞぉー! 

「な、何あれ。魔道具かしら。お金の匂いがするわ!」
「言ってる場合じゃないちゃ! あいつ何してるちゃ!」
「行っけーシロン! 私はあんたに賭けてるんだからね!」

 ……聞きたくない言葉が聞こえた気がします。
 しかし、俺の歩みはもう止まらない! だって……「真っすぐしか進まないしムズイーー!」
 ウインウインと走り出すミニ四駆を前足で押さえ、後ろ脚はカンガルーのようにピョンピョンします。
 速いけど、ムズイ。ムズイけど速い。速いけど後ろ脚イタイ。

「そして遅いルビー選手! シロンがピョコピョコ跳ねるのをキラキラした目で
見ています!」
「か、可愛ゆい……ピョコピョコしてる……!」
「たーすーけーてーーーー!」

 ミニ四駆……こいつは凄いものです。
 作った奴は神に違いありません。
 何せ、てんで言うことをききやがらないんですから。
 猪突猛進に走る暴君であります。

「いよいよ炎噴き出る地面のコースよ! しかしここでレジェンド妖精の足が止まる! 大きくコースから外れたわ! あれは……退場で良い?」
「ダメちゃ! きっと羽が燃えそうで困っているちゃ。あちらもいよいよ協力しそうちゃ」
「ふっふっふ。何をしておるフェリちゃん。今こそケルちゃんと一つになるときじゃ!」
「……! ……??……」
「どうしたんじゃ? さぁ!」
「……???」
「追いついた黒百合様。一体何をしているのでしょうか! フェリちゃんに指示を出していますが
混乱しているようです!」
「ええい。どうしたというのじゃ、ケルちゃんならとっくに……」
「そしてケルちゃん選手! 穴を抜け出すのを諦め、くつろいでいます。これは勝負あったかー!」
「うっひょおーー! どいてーー!」
「そしてシロン選手! 謎の乗り物に乗ったまま炎の地面を疾走! 速い速い速いー!」
「抜かれたじゃと! あ奴、まるで動じずに炎の砂場へ飛び込みよった! ええいフェリちゃん! ……汝の身光あれ。荒ぶる炎を防ぎ、燃え上がる火を汝のものとせよ! イフリートポテンシャル!」
「……!?」
「なんと! ここで黒百合様が魔術を発動!? あれは確か……吸収魔術! 超高等魔術をここで見せびらかしたわ! 一体何者なのよ。あれじゃ私の存在感が!」
「サルサの負けちゃ。良い気味ちゃ」
「何ですって!? この、この!」
「引っ張るなちゃ!」

 熱い司会バトルが始まっていますが、それどころではありません! 
 熱い、熱いんです! 急いで抜け出さないと俺の柔らか肉球がカチコチに焼き上げた白玉になる! 
 もう少し、もう少しでぇー! 

「よーーし抜けたぁーーー!」
「シロン選手一早く燃える地面の道を抜けたちゃー! さぁ続いて眼前には氷の柱! しかし熱い地面の後に
これは有難いちゃ! そのまま突進してー! ……変な乗り物を氷の柱にぶつけたちゃ」
「そりゃあんだけ熱いところ走った後ならねぇ。あそこまでよくもったわよ。あーあ、お金になりそうだったのに」
「俺のバルムンクフェザリオンとアイザックシュナイダーがぁーーーー!」
「だから何なのよそれ! さっさと走りなさいよ!」

 もう魔珠も底を尽きそうです。
 仕方ないので氷のちめたい地面を滑り……おおっ? これはいける! そういえば犬用のアイススケートって
あったような? 
 
「お先に行くのじゃ」
「……!」
「ああっ、抜かれた……くっ。迷ってる暇は無いか」
「シーローンーちゃーん!」
「ご主人!? まさか追いついた!? 一体どうやって!」
「風の魔法を使って吹き飛ばされてきたの。えへへ」
「なんと! ここでルビー選手が追いつきました! 一体どうやったのかしら……」
「見て無かったちゃ! でもギャラリーは可愛いから許せってうるさいちゃ!」
「はいはいそうね。美少女は何処いっても特別よねー。はぁ……」
「ご主人……俺の魔珠は残り少ないですが、ここで一気に再逆転です! 出でよ、アイ……」

 待てよ。二人分のアイススケートを出したらこの後動けなくなります。
 ここは節約するしかない! 
 
「段ボール!」
『はい?』

 ごとりと落ちる団、房、流二号パイセンの登場だ。
 クックック。見てろよ黒百合! 貴様を追い抜き……「あれ、何で俺、走ってるんですか?」
「シロンちゃん、これなぁに?」
「えっと、クローネの町で帰るときに用いたマル秘アイテム……」
「ずるぅーい! ねぇシロンちゃん早くぅー」
「おいおいせかすなよ……って何やらせてるんですか全く! 氷の上に乗せてご主人も乗って下さい。行きますよーー、うぉりゃーー!」

 しかし滑りません! 摩擦のせいでしょうか!? 
 これはまずい……無駄な魔珠を使ったことになる! 

「それじゃ私が動かすね。シロンちゃんは捕まっててー! 行っくよーー!」

 なんだか嫌な予感がします。
 あの、やっぱり降ろして頂けないでしょうか!? 


「ちょ、ちょっと! まさかレースの途中で終わり?」
「はいー。そうなんですー。来週もこの話をもう一度見てね!」
「一気読みさせなさいよ! 結果が気になるじゃないの!」
「そもそも何で俺走ってるんですか? このレースに勝つと俺ってどうなるんでしょう?」
「どうなるって……どうなるのよ?」
『……』
「もしかしてこのレース、やる意味無いんじゃ……」
「ば、ばかね。意味が無いなんてことないわ。ほら、あれよ。今後の展開に大きく関わる設定資料がここに……」
「何で持ってるんですかサルサさん!?」
「それはほら。私だから。拾ったのよ。夕方のおやつどきにベンチで良く落ちてるでしょ?」
「それ、誰かが捨ててったジャンプとかマガジン……読んで見て下さい!」
「このレース終了後、きっとレベル上げが開始されます……ですって!」
「いやったーい! ついに俺のレベルアップが!}
「なお強敵とも戦う模様です」
「……ちーん」

 また来週!
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