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俺の鎧が完成なのです!?
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カァーン、カァーン! と激しい打撃音が響き渡る。
ここはある学園の教室の一角。
シロンという名のウルフィは、座りながらジト目でその様子を伺うのでした。
頭の上にはこれまた同じように寛いでいる火炎妖精という物騒な奴、ホノミィがいます。
更に……「いい加減、降りていただけませんか?」
「良い座り心地じゃ。うひひ、このもふもふとした感触がたまらんのう」
「俺は羽毛たっぷりソファーじゃないんですよ……それでローノ先生にご用って何でしょうか。
先生、酸液を受け取ってから一言も喋りませんけど」
「ううむ。そうじゃったのう。じゃが、汗をかきながらハンマーを振るう良い男じゃ。もう少し
見てても……これ、振り落とそうとするでない!」
「暑いんですよ! 背中は発汗出来ないんです! まったくもー。ね? ローノ先生」
「……! ……」
「てんてんてんじゃありません! ちったぁ喋って下さい!」
「邪魔するでない。ここで失敗したらお主……水の泡じゃぞ?」
「むぅ……しかしですね。サルサさんが来ない以上、俺が間を持たせないと……」
「眠くなってきたぁ……おやすみぃ」
「こいつー! 人の頭で惰眠を貪りやがって。くらえ、ハンマーの強音!」
「いーやーー! 近づかないで! 響くの、頭に響くのー!」
「……わしにも響くんじゃがのぅ」
「降りれば良いでしょ、降りればー! はぁ。ご主人、犬生は辛いのです」
「お主、そういえば近くに召喚主がおらんが……」
「今更!? 俺は自立型四足歩行、奇天烈摩訶不思議いぶし銀轟く妖艶の異能力者、シロン!
それくらい朝飯前なのです」
「ふむ、奇天烈な奴じゃな」
「奇天烈だけ入れなければ良かった……」
「……出来た、ぞ」
「おお、本当に!? ついに俺の装備がっ!」
汗を拭いながら、ローノ先生は黙ってコクリと頷きます。
まさか本当に作ってもらえるとは思わなかったです。
一つ一つパーツが分かれているように見えます。
なかなかに細かい作業。
前足二本、後ろ脚二本。
そして背中に尻尾、頭まで!
全部で七パーツもあるじゃないですか、ひゃっほーい!
「……着けてみるか?」
「お願いします! 恰好良くなった姿をご主人たちに見せつけてやります!」
「良し……少し重いが待っていろ」
わくわくどきどきしながらがちゃんこがちゃんこと装着してもらいました。
そして……「おお、様になっておるのう!」
「私、直接頭に乗りたぁーい!」
「……あのですね」
「うむうむ。早く凛々しい姿を主人に見せたいんじゃな?」
「なんか、鎧の像みたい」
「せぇい!」
シーン。
「ふんぬ!」
ギシギシ。
「はいやっ!」
……チーン。
微動だにしませんが?
というか背中重くて潰れそうですけど?
今日からここで鎧の像として暮らせってことですね分かります。
「あの……動けまてん」
「……そうか」
「いえ、そうかじゃなくてですね……一歩も動けまてん」
「……ふむ」
「ふむでもなくてですね。どうなってんだこの鎧ーー!」
「お主……足がプルプルしておるぞ……」
「いーやー! 漏らそうとしてるんだわ。いーやー!」
「ちがやい! 重いの動けないの自分で外せないの助けてーーー!」
結局背中と頭と尻尾を外してもらいました。
しかし……まだ重いので更に細く削ってもらいました。
結局俺の装備、全然硬くなってないんですけど?
何のための材料だよ、畜生ー!
「……すまない。軽くする処理を入れたが……思った以上に重かったようだ」
「親父ギャグかーい! 全然面白くないんですよ! はぁ……俺の夢の装備が……」
「なんじゃあ。お主は防御力が不安なのか?」
「防御力というより能力全般的に不安ですね。何せ最近活躍してないのです」
「攻撃は最大の防御じゃ。分厚い鎧を身に着けるより、敵に先制して一撃の下倒せばよかろう」
「そうはいってもそんな能力なんて……俺には異界から召喚する能力という強いアドバンテージ
があるんです。しかし俺には、俺には……魔珠が足りない!」
「魔珠不足のう。地道に伸ばすのが一番じゃがのう」
「ちーちゃんさんは魔珠に詳しいんですね?」
「うむ。わしは何せ……ちーちゃんじゃからな!」
「……! ……」
「何か言わんかーい! 本当にお主は無口じゃのう」
「ローノ先生。先ほどから見てはいましたが、ちーちゃんをご存知で?」
「……! ……ええと」
「はい。ええと?」
「……そうだな。誰だったか」
「あのー、もしかして」
「……うむ。記憶にない」
「それ言うためにどんだけ引っ張ってんだよあんたはー! きついです。サルサさん
きついです! 突っ込みはよぉー!」
「わし、これでもこの学校最初の卒業生じゃぞ?」
「最初のってやっぱり婆さ……ぎゃふん」
「誰が婆さんだぶち殺されたいのか犬ぅ……」
「ひぇーーい! 怖い! 殺し系コワイデスー!」
「やれやれ、何遊んでるのよあんた」
「さ、サルサさん! それに……あれ、ご主人も?」
「シ……」
「シ……?」
「シロンちゃんがぢっどぼ構ってぐれない間に浮気してじゅうーーえーーん!」
ぼろくそに泣きじゃくりながら突撃してきて奪い取るように抱きかかえるご主人。
浮気て! いつでも呼び出せるんじゃないのぉ!?
そして鼻水を俺の毛にこすりつけるのは止めて頂きたい!
しかも殺し系の人、ひっくり返ってますよ!
「盛大に嫌な予感がする終わり方ね」
「ハンカチ持ってませんか? チリ紙でもいいです。俺についた鼻水拭いて下さい……」
「そんなことしてる場合じゃ無さそうよ。見て、あのサルサの目」
「うわ。パンダみたいになってる……」
「それで、この幼女は誰なのかしら?」
「さぁ……学校の最初の卒業生っていう婆さん……ひっ」
「どうしたの?」
「今ですね、悪寒がしました……」
「はぁ? ここは作者の妄想の中でしょ? 何で悪寒が……するわね確かに」
「そう。悪口を思えば、今にもあなたの背後に殺し系のちーちゃんが……!」
こ、怖いけど続くよ!
ここはある学園の教室の一角。
シロンという名のウルフィは、座りながらジト目でその様子を伺うのでした。
頭の上にはこれまた同じように寛いでいる火炎妖精という物騒な奴、ホノミィがいます。
更に……「いい加減、降りていただけませんか?」
「良い座り心地じゃ。うひひ、このもふもふとした感触がたまらんのう」
「俺は羽毛たっぷりソファーじゃないんですよ……それでローノ先生にご用って何でしょうか。
先生、酸液を受け取ってから一言も喋りませんけど」
「ううむ。そうじゃったのう。じゃが、汗をかきながらハンマーを振るう良い男じゃ。もう少し
見てても……これ、振り落とそうとするでない!」
「暑いんですよ! 背中は発汗出来ないんです! まったくもー。ね? ローノ先生」
「……! ……」
「てんてんてんじゃありません! ちったぁ喋って下さい!」
「邪魔するでない。ここで失敗したらお主……水の泡じゃぞ?」
「むぅ……しかしですね。サルサさんが来ない以上、俺が間を持たせないと……」
「眠くなってきたぁ……おやすみぃ」
「こいつー! 人の頭で惰眠を貪りやがって。くらえ、ハンマーの強音!」
「いーやーー! 近づかないで! 響くの、頭に響くのー!」
「……わしにも響くんじゃがのぅ」
「降りれば良いでしょ、降りればー! はぁ。ご主人、犬生は辛いのです」
「お主、そういえば近くに召喚主がおらんが……」
「今更!? 俺は自立型四足歩行、奇天烈摩訶不思議いぶし銀轟く妖艶の異能力者、シロン!
それくらい朝飯前なのです」
「ふむ、奇天烈な奴じゃな」
「奇天烈だけ入れなければ良かった……」
「……出来た、ぞ」
「おお、本当に!? ついに俺の装備がっ!」
汗を拭いながら、ローノ先生は黙ってコクリと頷きます。
まさか本当に作ってもらえるとは思わなかったです。
一つ一つパーツが分かれているように見えます。
なかなかに細かい作業。
前足二本、後ろ脚二本。
そして背中に尻尾、頭まで!
全部で七パーツもあるじゃないですか、ひゃっほーい!
「……着けてみるか?」
「お願いします! 恰好良くなった姿をご主人たちに見せつけてやります!」
「良し……少し重いが待っていろ」
わくわくどきどきしながらがちゃんこがちゃんこと装着してもらいました。
そして……「おお、様になっておるのう!」
「私、直接頭に乗りたぁーい!」
「……あのですね」
「うむうむ。早く凛々しい姿を主人に見せたいんじゃな?」
「なんか、鎧の像みたい」
「せぇい!」
シーン。
「ふんぬ!」
ギシギシ。
「はいやっ!」
……チーン。
微動だにしませんが?
というか背中重くて潰れそうですけど?
今日からここで鎧の像として暮らせってことですね分かります。
「あの……動けまてん」
「……そうか」
「いえ、そうかじゃなくてですね……一歩も動けまてん」
「……ふむ」
「ふむでもなくてですね。どうなってんだこの鎧ーー!」
「お主……足がプルプルしておるぞ……」
「いーやー! 漏らそうとしてるんだわ。いーやー!」
「ちがやい! 重いの動けないの自分で外せないの助けてーーー!」
結局背中と頭と尻尾を外してもらいました。
しかし……まだ重いので更に細く削ってもらいました。
結局俺の装備、全然硬くなってないんですけど?
何のための材料だよ、畜生ー!
「……すまない。軽くする処理を入れたが……思った以上に重かったようだ」
「親父ギャグかーい! 全然面白くないんですよ! はぁ……俺の夢の装備が……」
「なんじゃあ。お主は防御力が不安なのか?」
「防御力というより能力全般的に不安ですね。何せ最近活躍してないのです」
「攻撃は最大の防御じゃ。分厚い鎧を身に着けるより、敵に先制して一撃の下倒せばよかろう」
「そうはいってもそんな能力なんて……俺には異界から召喚する能力という強いアドバンテージ
があるんです。しかし俺には、俺には……魔珠が足りない!」
「魔珠不足のう。地道に伸ばすのが一番じゃがのう」
「ちーちゃんさんは魔珠に詳しいんですね?」
「うむ。わしは何せ……ちーちゃんじゃからな!」
「……! ……」
「何か言わんかーい! 本当にお主は無口じゃのう」
「ローノ先生。先ほどから見てはいましたが、ちーちゃんをご存知で?」
「……! ……ええと」
「はい。ええと?」
「……そうだな。誰だったか」
「あのー、もしかして」
「……うむ。記憶にない」
「それ言うためにどんだけ引っ張ってんだよあんたはー! きついです。サルサさん
きついです! 突っ込みはよぉー!」
「わし、これでもこの学校最初の卒業生じゃぞ?」
「最初のってやっぱり婆さ……ぎゃふん」
「誰が婆さんだぶち殺されたいのか犬ぅ……」
「ひぇーーい! 怖い! 殺し系コワイデスー!」
「やれやれ、何遊んでるのよあんた」
「さ、サルサさん! それに……あれ、ご主人も?」
「シ……」
「シ……?」
「シロンちゃんがぢっどぼ構ってぐれない間に浮気してじゅうーーえーーん!」
ぼろくそに泣きじゃくりながら突撃してきて奪い取るように抱きかかえるご主人。
浮気て! いつでも呼び出せるんじゃないのぉ!?
そして鼻水を俺の毛にこすりつけるのは止めて頂きたい!
しかも殺し系の人、ひっくり返ってますよ!
「盛大に嫌な予感がする終わり方ね」
「ハンカチ持ってませんか? チリ紙でもいいです。俺についた鼻水拭いて下さい……」
「そんなことしてる場合じゃ無さそうよ。見て、あのサルサの目」
「うわ。パンダみたいになってる……」
「それで、この幼女は誰なのかしら?」
「さぁ……学校の最初の卒業生っていう婆さん……ひっ」
「どうしたの?」
「今ですね、悪寒がしました……」
「はぁ? ここは作者の妄想の中でしょ? 何で悪寒が……するわね確かに」
「そう。悪口を思えば、今にもあなたの背後に殺し系のちーちゃんが……!」
こ、怖いけど続くよ!
応援ありがとうございます!
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