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捨て駒作戦
しおりを挟む「作戦を確認する。始めにお前等が入り交戦し、敵を引き付けておく。次に、陸軍が結界破壊と人質救出。自衛隊は原発死守に徹する——。いいな?」
自衛隊の中隊長が、特殊遊撃部隊に同意を求めている。とても威圧的だ。
「はい。ですが、結界破壊か人質救出、どちらかは実行させます」
新田が言い終わると、二分隊の全員は強い目で揃って敬礼した。
原子力発電所の付近には、自衛隊と対イーブル軍が集まっている。その周りに、装甲車が数台停まり、その真上に哨戒機が見張っている。
「——了解した。作戦開始、健闘を願う」
軍服の襟元に付いたボタン型のインカムから、哨戒機にいる横田隊長の命令が届く。
命を捨てる戦いが始まる。
哨戒機にいる対イーブル軍、技術部隊が戦闘ドローンを飛ばす。サーモグラフィー機能を搭載した、敷地内の防犯カメラを、敷地の周りから撃っていく。
「行くぞ!」
「了解!」
原発が、ドラキュラ達に占拠されてから、およそ三時間が経過した。
十五時二十分、作戦開始——。
新田と遠藤の声に、二分隊の計十人がステルスマントを被り、敷地内に入り込んだ。
結界の影響下により、原子力発電所は平時の状態を見る者に映す。敷地内に入った隊員は、ステルスマントがなかったところで、外部からは見えなくなる。
原発内には灯りが点いている。一見は平時の状態だ。
先頭を切る、新田と遠藤の足下が緑の光線に触れた。
直後、斜め上から銃弾が降り注ぐ。
建物の屋根に、RWSが設置されていた。
「シールドっ!」
二人がシールドを出し、全員を守る。誰一人として怯む様子はない。
十人の内、銃を武器にしているのは四人だ。他は那智と同じ刀を武器にしている。
二人がマシンピストルで狙いを定める。シールドを出す二人と顔を見合わす。
息を合わせ、シールドを消した直後に、二人はマシンピストルでRWSを次々に撃つ。
地面に刀を刺したドラキュラ軍人に続き、二十人のドラキュラ兵が迎え撃ちに来た。皆、黒い軍服の軍人だ。
既に無駄だと判断し、全員はステルスマントを脱ぎ捨てる。
新田と遠藤を始めに、六人が抜刀した。
「斬り込めっ!」
「了解!」
新田と遠藤に続き、六人は斬り掛かる。
血刃を黒い刃で払い、斬撃を交わす。
最中、結界が発動した——。
遠藤が率いる分隊は、タービン建屋に移動していた。
「何処だ⁉︎ ここは?」
遠藤の疑問に、一人がウェアラブル端末を動かす。空中に浮かぶ画面は、事前にコピーしていた敷地内のスクロール画像だ。
「地下から水路に出れます。結城副隊長曰く、結界は海に近い地下水路です」
「なら、外壁と内部を行き来しながら地下に行こう」
「了解っ」
遠藤の指示に従い、五人は地下水路を目指す。
地下水路に出ると、奥に結界が見えた。
そして、二人のドラキュラ軍人が立ちはだかっていた。
「殺れぇっ!」
片方のドラキュラ軍人が発し、五人に斬り掛かる。
応戦するも、遠藤が率いる分隊は押されてしまう。
足場が悪い上に、横が狭い水路だ。数が活かせず不利になる。
銃を武器にする二人は隙を見付け、結界を破壊しようとする。……が、ドラキュラ軍人は縦に剣を振り、無数の血刃を飛ばした。
咄嗟に避けるも間に合わず、二人は斬り刻まれる。
「おいっ! 生きてるかっ⁉︎ おいっ……」
槍を頭の上で止めていた遠藤が、目だけを向けて激しく問う。
その瞬間が隙になってしまう。
向かい合うドラキュラ軍人は刀を振り払った。
咄嗟に、左にいた隊員が身体を横にして刃を飛ばす。遠藤を斬撃から守った。
左にいた隊員は、即座に足の向きを変え、向かい合うドラキュラ軍人の腹を斬りつける。
「って、てめぇっ!」
痛みを堪え、ドラキュラ軍人は反撃する。
隊員は、頭に振り下ろされる前に、左足を素早く動かし見事に避けた。
隊員の名前は河上だ。那智に指摘された欠点、左足の動きを見事に改善してきている。
だが、河上は健闘するも未だに劣勢は覆せない。
他の二人は、倒れている隊員二人を意識してしまう。
苦戦を強いられる中、遠藤は河上に目で合図を送った。
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