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狼煙
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オフィスビル放火、数分前——。
「なっちーの言っていた通りだったねぇ」
軽々しく言う伊吹は、五十メートル先のマンションを、スマートフォンのカメラで拡大し観察している。
マンションは建設途中らしく足場が組まれ、ブルーシートが掛かっていた。
「良いヒントを頂けましたから」
皮肉にも捉えられる謙遜を言う那智は、同じくスマートフォンの画面を見ているが、伊吹と違い駐車場側を映している。
立体駐車場には、黒塗りの車が八台停まっている。
穂積にヒントを与えたつもりは一切ないが、那智には容易く見当がつく。直ぐに、この場を特定した。
現在のスマートフォンに付いているカメラは、レンズを押すと360度を映すドーム型になる。
「あの……マンション周辺に、ヒューマロイドみたいな人達が何人もいますよ」
頭の小羽から、マンション周辺を見ているリリアが、愕然として口を開いた。
リリアの視線の先には、紫外線を避けるような黒い服装をした集団がいる。
マンション周辺の路地に、四、五人ずつに分かれ、包囲網を敷いている。目的が判り易く、全員が武装している。
リリアと那智、伊吹がいる場所は、大手町駅側、大井中央公園の近くにあるビル屋上だ。
二十分程前から、内藤一家の構成員とマフィアの構成員が出入りしている、マンションの様子を窺っている。
マンションは、開いたコの字型をしたデザイナーズマンションだ。五階建てで、裏には立体駐車場がある。中央のエントランス前には、花壇で囲んだ噴水がある華やかな造りだ。
このマンションは内藤一家が所有する不動産だ。建設を任された会社には、内藤一家の息が掛かっていた。
「ハッキングやら、ストーカーとかして調べ上げたんだろうな。値段吊り上げられたし……。依存症なら、ヤク手に入れる為には何でもする」
言い終わり、伊吹は煙草に火を点ける。
「あの……依存症により、ドラキュラの奴隷になってしまいますよ……。そしたら、内部から支配が始まりますよ」
言い辛そうに言いながら、リリアは二人を上目で窺う。
私服でいいと言われたので、リリアは制服姿だ。那智と伊吹も、普段と同じくスーツで来ている。
「だから、ドラキュラはMDの売買に協力するんですよ」
普段と同じく、穏和な表情で那智は断言した。
「売ってる奴らも、やってる奴らも、国の行く末なんて気にしてない。今が良けりゃ、何でもいいと思ってる安い連中だよ」
続けて、伊吹が簡潔に説明する。
——途端に、何処からか轟音が響いてきた。
内藤誠也のオフィスビルからだと、那智と伊吹は当然分かっている。
「ええっ⁉︎ 何ですか⁉︎」
驚き、リリアは小羽を動かす。
「さて、行きますよっ」
狼煙とばかりに那智は促す。
爆破の正体が掴めないリリアを連れて、那智と伊吹は監視していたマンションへと向かった。
「なっちーの言っていた通りだったねぇ」
軽々しく言う伊吹は、五十メートル先のマンションを、スマートフォンのカメラで拡大し観察している。
マンションは建設途中らしく足場が組まれ、ブルーシートが掛かっていた。
「良いヒントを頂けましたから」
皮肉にも捉えられる謙遜を言う那智は、同じくスマートフォンの画面を見ているが、伊吹と違い駐車場側を映している。
立体駐車場には、黒塗りの車が八台停まっている。
穂積にヒントを与えたつもりは一切ないが、那智には容易く見当がつく。直ぐに、この場を特定した。
現在のスマートフォンに付いているカメラは、レンズを押すと360度を映すドーム型になる。
「あの……マンション周辺に、ヒューマロイドみたいな人達が何人もいますよ」
頭の小羽から、マンション周辺を見ているリリアが、愕然として口を開いた。
リリアの視線の先には、紫外線を避けるような黒い服装をした集団がいる。
マンション周辺の路地に、四、五人ずつに分かれ、包囲網を敷いている。目的が判り易く、全員が武装している。
リリアと那智、伊吹がいる場所は、大手町駅側、大井中央公園の近くにあるビル屋上だ。
二十分程前から、内藤一家の構成員とマフィアの構成員が出入りしている、マンションの様子を窺っている。
マンションは、開いたコの字型をしたデザイナーズマンションだ。五階建てで、裏には立体駐車場がある。中央のエントランス前には、花壇で囲んだ噴水がある華やかな造りだ。
このマンションは内藤一家が所有する不動産だ。建設を任された会社には、内藤一家の息が掛かっていた。
「ハッキングやら、ストーカーとかして調べ上げたんだろうな。値段吊り上げられたし……。依存症なら、ヤク手に入れる為には何でもする」
言い終わり、伊吹は煙草に火を点ける。
「あの……依存症により、ドラキュラの奴隷になってしまいますよ……。そしたら、内部から支配が始まりますよ」
言い辛そうに言いながら、リリアは二人を上目で窺う。
私服でいいと言われたので、リリアは制服姿だ。那智と伊吹も、普段と同じくスーツで来ている。
「だから、ドラキュラはMDの売買に協力するんですよ」
普段と同じく、穏和な表情で那智は断言した。
「売ってる奴らも、やってる奴らも、国の行く末なんて気にしてない。今が良けりゃ、何でもいいと思ってる安い連中だよ」
続けて、伊吹が簡潔に説明する。
——途端に、何処からか轟音が響いてきた。
内藤誠也のオフィスビルからだと、那智と伊吹は当然分かっている。
「ええっ⁉︎ 何ですか⁉︎」
驚き、リリアは小羽を動かす。
「さて、行きますよっ」
狼煙とばかりに那智は促す。
爆破の正体が掴めないリリアを連れて、那智と伊吹は監視していたマンションへと向かった。
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