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第二章 冒険者生活 編
冒険者生活 8
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翌日、翌々日とオーガの角を中心に素材を集めて換金していった。もちろん僕がサバイバルをしていた頃に集めていた素材も数百単位で収納してあるので、大森林で適度に狩りながら収納してある素材もリュックに詰めて協会に持っていった。
その結果、この2日間で金貨5枚以上稼ぐことが出来た。そしてそのお金でようやく懐中時計も買うことが出来た。実は購入しようと一度専門店に行った時に銀色の下地に赤い線で細かな幾何学模様のデザインの物が気に入ったのだが、金貨3枚と高額だったので購入を目標に依頼をこなしていたのだ。
あまりに多くの素材を連日お昼ぐらいには持ち込んで来るのでエリーさんからどうやって魔獣を見つけているのか聞かれた。別に隠すことでも無いかなと考えて、「闇魔法で使い間を召喚して索敵してるんですよ」と伝えると、「ダリア君、その年で第二位階闇魔法が使えるの?」と驚かれてしまった。
いつも普通に使っているので、才能が無い者は寿命が来る前になってようやく一つ位階が上がる程度だということを忘れていた。とりあえず答え難い事には個人認証板で文字が表示されない師匠のお陰にして逃げることにして、苦笑いしながらエリーさんの疑問をやり過ごした。
また、連日オーク串の屋台のおじさんにオーク一頭を持っていったら、他の冒険者からも仕入れているので、さすがに毎日だと在庫が捌ききれないと言われ、5日に一度位の頻度にしてくれと言われたので了承した。
ちなみに屋台にモツ煮込みが新商品として登場したので食べさせて貰ったが、グニグニとして噛み切れなくて僕には合わなかった。そんな僕の様子をおじさんは、「力は一人前でも、味覚はまだまだ子供だな!」と言って笑われてしまった。
そして冒険者になって4日目、いつものように昼前に冒険者協会に行くと窓口のエリーさんから今日の素材納品をもって銀ランクへ昇格だと告げられた。「常時依頼しかこなしてないけど良いんですか?」と聞くと、「依頼は依頼よ!」と笑顔で返され認識票も新しく銀色の物と交換された。
「これからは四つ星難度まで受けられるから、報酬の良い護衛依頼も受けられるわよ!ただ、依頼の中には時間を細かく指定する物もあるから気を付けてね!後で依頼書を見てみると良いわ!」
エリーさんはウィンクと共に認識票を手を握りながら渡してくれた。
「ありがとうございます。懐中時計も買ったので大丈夫です!」
「うんうん、これでダリア君も一人前の冒険者ね!」
エリーさんと話した後に依頼書が貼ってあるボードを見る。今まで常時募集しかしてなかったのであまり気にしなかったが、左側から順に依頼の難易度が高くなるように掲示されている。朝に入ってきた時にやけにボードの左側が混雑しているのはこう言うことだったのかと納得した。
エリーさん曰く王都の冒険者ランクの割合は、銅ランク26%、銀ランク60%、金ランク10%、プラチナランク5%、ダイヤランク1%と言うことで、8割以上を銀ランク以下の冒険者が占めている。その為、難度の低い依頼の中で報酬の良いものはすぐに無くなっていってしまうと言っていた。
逆に高ランク冒険者が全体の割合からみても少ないので、高難度依頼は中々受注されないらしい。しかもプラチナランク以上の実力者やチームは指名依頼が多く、高難度依頼の消化率はそのせいか輪を掛けて悪いとの事で悩みの種だと教えてくれた。
「四つ星以上の依頼はそこそこ残っているな。えっと、トロールの討伐、フェンリルの毛皮の納品、魔の森を抜けてのフロストル公国までの商隊の護衛か・・・」
どの討伐依頼も中級から上級魔獣のもので、護衛任務については報酬は良いが拘束される予想日数が20日間となっているので、単発依頼をこなした方が効率的かもしれない。
「よし、このフェンリルの毛皮の納品にしよう!」
フェンリルは体長3mはある銀色の美しい毛並みが特徴的な狼だ。上級魔獣であるフェンリルは闇魔法が得意で、こちらの視界を塞ぎ眷属を召喚して群で襲ってくる厄介な相手だと学んだ。
依頼書には報酬は金貨10枚で、期限は受注から10日間とある。
(フェンリルの索敵能力はフォレスト・ウルフの比じゃないから、使い魔に出来ればもっと効率よくなるな!)
依頼を受けつつ自分の強化にもなるという打算もあってさっそく依頼書をもって受付に行く。
「すいませんエリーさん、これお願いします!」
「は~い!ダリア君の依頼受注初体験ね!どれどれ~・・・っ!?ちょ、ちょっとダリア君!これは止めた方が良いんじゃないかな?」
「ダメなんですか?でも四つ星依頼ですよ?」
「いやいや、ここよく見て!4人以上のチームでの受注推奨って書いてあるでしょ?それにこの依頼は結構失敗してるチームも多いし!」
エリーさんが凄い剣幕で依頼書の一点を指差してその部分を読み上げ、過去の受注状況まで教えてくれた。
「ん~、別に大丈夫ですよ。僕の戦闘スタイルだと周りに誰かいる方が邪魔になりそうだし」
「ダリア君、フェンリルだよ!上級魔獣で魔法使うし、並みの武器ではその毛皮も切れないあのフェンリルなのよ!仲間に当てがないなら協会が斡旋もできるよ?」
やけにエリーさんが止めてくるのだが、あまり僕の戦闘能力を他人に見られたくないと考えているのでここは押しきる。
「大丈夫です!それに勝てないと思ったら逃げるだけです!最悪違約金も払えますし」
「・・・はぁ、本当に危険なのよ?危ないと感じたらすぐに逃げること!良いわね?」
「はい!分かりました!」
それからエリーさんはフェンリルの生息場所について協会が持っている情報を教えてくれた。フェンリルの生息域は大森林中層から深層にかけての場所で、入り口から深層付近までの移動に2日ほどかかり、戻りも考えると6日間の内に討伐しなければならないのでかなり高めの難度と言われた。
さらに厄介なのは、縄張りに入るとまず眷属をけしかけてこちらの戦力を計り、自分が敵わないと感じるとさっさと逃げてしまうズル賢さだ。
「でもダリア君なら使い魔がいるし、索敵にはアドバンテージがあるわね」
自分の知識とエリーさんからの情報から、フェンリル討伐にはこちらの力量を知られる前に、電光石火で倒した方が良いと感じた。
「納品方法については『別途注文有り』とありますけど?」
「えぇと・・・」
依頼書に書ききれない事項は受付の別紙に記入されているので、そう言う表記の場合は必ず聞くようにとも教えてくれていた。書類とにらめっこするエリーさんが顔を上げると苦笑いしながら伝えてくれた。
「ダリア君やっぱり止めとかない?ここには『毛皮は無傷で、フェンリルをそのまま納品。剥ぎ取りはこちらで』とあるのよ。そんなの無理に決まってるのに・・・」
「無傷ですか・・・まぁ大丈夫ですけど」
「えっ!?無傷だよ?剣でも魔法でも攻撃出来ないのよ?今まで毒で試みても、そもそも食べなかったとか、ハンマーで頭を潰したら胴体は無傷なのに頭が潰れてるのはダメだとかで違約金を払わされたとか記録に有るのよ!」
「う~ん、多分問題ないです!」
「ちょ、ちょっとダリア君?」
「お願いしますねエリーさん!」
「・・・分かったわ。この依頼は受注から期限が設定されるタイプだから、依頼人に受注を知らせてからだから、明日から10日間になります。」
「変な依頼形態なんですね」
「書類には討伐してすぐ加工しないと品質が落ちちゃうから、職人さんの準備の為とあるわ」
確かに素材の剥ぎ取りから時間が経つと毛皮とかは色が悪くなったり手触りも悪くなるらしいので、すぐ加工する準備と言うのは納得だ。
「じゃあ明日から動きますね!」
「本当に気を付けてね!」
心配そうな顔でエリーさんは僕を見送ってくれた。
◆
side ????
下級貴族街にある邸宅の一室に二人の人物がいた。重厚な机で書類に目を通して作業をしているのはまだ若く、体型は少々横に大きい青年だった。書類には納品書や決算書と書かれており、彼が経営を任されている店のものだ。その対面につい今しがた入室してきた見た目にはガラの悪い男が青年に報告をした。
「若!例の依頼がまた受注されたって協会から連絡があったぜ!」
「ほぅ、次は誰がカモになるんだ?」
「連絡じゃあ銀ランクに成ったばかりの子供で、才能もよく知らねぇけど【速度】の一つだけらしいから、御愁傷様って感じだよ!」
「そうか、チームは何人いるのだ?」
「それがよぉ、たった一人でやるらしいぜ!銀に上がったばっかで浮かれてやがるんだよ!」
下卑た笑いをしながら若と呼んだ青年に、いかにその子供が考え無しなのかを語っている。
「・・・そんなやつに払えるのか?」
「本人も問題ないと言っているから大丈夫だろ!手筈はいつも通りでいいか?」
「あぁ、任せた。いつもの事だがくれぐれもバレるなよ!」
書類に目を通していた青年の鋭い眼光が男に飛ぶ。
「分かってるよ!今回もきっちりやって臨時収入だぜ!」
そう言うと笑いながら男は部屋を出た。青年は何事も無かったように書類作業に勤しんだ。
その結果、この2日間で金貨5枚以上稼ぐことが出来た。そしてそのお金でようやく懐中時計も買うことが出来た。実は購入しようと一度専門店に行った時に銀色の下地に赤い線で細かな幾何学模様のデザインの物が気に入ったのだが、金貨3枚と高額だったので購入を目標に依頼をこなしていたのだ。
あまりに多くの素材を連日お昼ぐらいには持ち込んで来るのでエリーさんからどうやって魔獣を見つけているのか聞かれた。別に隠すことでも無いかなと考えて、「闇魔法で使い間を召喚して索敵してるんですよ」と伝えると、「ダリア君、その年で第二位階闇魔法が使えるの?」と驚かれてしまった。
いつも普通に使っているので、才能が無い者は寿命が来る前になってようやく一つ位階が上がる程度だということを忘れていた。とりあえず答え難い事には個人認証板で文字が表示されない師匠のお陰にして逃げることにして、苦笑いしながらエリーさんの疑問をやり過ごした。
また、連日オーク串の屋台のおじさんにオーク一頭を持っていったら、他の冒険者からも仕入れているので、さすがに毎日だと在庫が捌ききれないと言われ、5日に一度位の頻度にしてくれと言われたので了承した。
ちなみに屋台にモツ煮込みが新商品として登場したので食べさせて貰ったが、グニグニとして噛み切れなくて僕には合わなかった。そんな僕の様子をおじさんは、「力は一人前でも、味覚はまだまだ子供だな!」と言って笑われてしまった。
そして冒険者になって4日目、いつものように昼前に冒険者協会に行くと窓口のエリーさんから今日の素材納品をもって銀ランクへ昇格だと告げられた。「常時依頼しかこなしてないけど良いんですか?」と聞くと、「依頼は依頼よ!」と笑顔で返され認識票も新しく銀色の物と交換された。
「これからは四つ星難度まで受けられるから、報酬の良い護衛依頼も受けられるわよ!ただ、依頼の中には時間を細かく指定する物もあるから気を付けてね!後で依頼書を見てみると良いわ!」
エリーさんはウィンクと共に認識票を手を握りながら渡してくれた。
「ありがとうございます。懐中時計も買ったので大丈夫です!」
「うんうん、これでダリア君も一人前の冒険者ね!」
エリーさんと話した後に依頼書が貼ってあるボードを見る。今まで常時募集しかしてなかったのであまり気にしなかったが、左側から順に依頼の難易度が高くなるように掲示されている。朝に入ってきた時にやけにボードの左側が混雑しているのはこう言うことだったのかと納得した。
エリーさん曰く王都の冒険者ランクの割合は、銅ランク26%、銀ランク60%、金ランク10%、プラチナランク5%、ダイヤランク1%と言うことで、8割以上を銀ランク以下の冒険者が占めている。その為、難度の低い依頼の中で報酬の良いものはすぐに無くなっていってしまうと言っていた。
逆に高ランク冒険者が全体の割合からみても少ないので、高難度依頼は中々受注されないらしい。しかもプラチナランク以上の実力者やチームは指名依頼が多く、高難度依頼の消化率はそのせいか輪を掛けて悪いとの事で悩みの種だと教えてくれた。
「四つ星以上の依頼はそこそこ残っているな。えっと、トロールの討伐、フェンリルの毛皮の納品、魔の森を抜けてのフロストル公国までの商隊の護衛か・・・」
どの討伐依頼も中級から上級魔獣のもので、護衛任務については報酬は良いが拘束される予想日数が20日間となっているので、単発依頼をこなした方が効率的かもしれない。
「よし、このフェンリルの毛皮の納品にしよう!」
フェンリルは体長3mはある銀色の美しい毛並みが特徴的な狼だ。上級魔獣であるフェンリルは闇魔法が得意で、こちらの視界を塞ぎ眷属を召喚して群で襲ってくる厄介な相手だと学んだ。
依頼書には報酬は金貨10枚で、期限は受注から10日間とある。
(フェンリルの索敵能力はフォレスト・ウルフの比じゃないから、使い魔に出来ればもっと効率よくなるな!)
依頼を受けつつ自分の強化にもなるという打算もあってさっそく依頼書をもって受付に行く。
「すいませんエリーさん、これお願いします!」
「は~い!ダリア君の依頼受注初体験ね!どれどれ~・・・っ!?ちょ、ちょっとダリア君!これは止めた方が良いんじゃないかな?」
「ダメなんですか?でも四つ星依頼ですよ?」
「いやいや、ここよく見て!4人以上のチームでの受注推奨って書いてあるでしょ?それにこの依頼は結構失敗してるチームも多いし!」
エリーさんが凄い剣幕で依頼書の一点を指差してその部分を読み上げ、過去の受注状況まで教えてくれた。
「ん~、別に大丈夫ですよ。僕の戦闘スタイルだと周りに誰かいる方が邪魔になりそうだし」
「ダリア君、フェンリルだよ!上級魔獣で魔法使うし、並みの武器ではその毛皮も切れないあのフェンリルなのよ!仲間に当てがないなら協会が斡旋もできるよ?」
やけにエリーさんが止めてくるのだが、あまり僕の戦闘能力を他人に見られたくないと考えているのでここは押しきる。
「大丈夫です!それに勝てないと思ったら逃げるだけです!最悪違約金も払えますし」
「・・・はぁ、本当に危険なのよ?危ないと感じたらすぐに逃げること!良いわね?」
「はい!分かりました!」
それからエリーさんはフェンリルの生息場所について協会が持っている情報を教えてくれた。フェンリルの生息域は大森林中層から深層にかけての場所で、入り口から深層付近までの移動に2日ほどかかり、戻りも考えると6日間の内に討伐しなければならないのでかなり高めの難度と言われた。
さらに厄介なのは、縄張りに入るとまず眷属をけしかけてこちらの戦力を計り、自分が敵わないと感じるとさっさと逃げてしまうズル賢さだ。
「でもダリア君なら使い魔がいるし、索敵にはアドバンテージがあるわね」
自分の知識とエリーさんからの情報から、フェンリル討伐にはこちらの力量を知られる前に、電光石火で倒した方が良いと感じた。
「納品方法については『別途注文有り』とありますけど?」
「えぇと・・・」
依頼書に書ききれない事項は受付の別紙に記入されているので、そう言う表記の場合は必ず聞くようにとも教えてくれていた。書類とにらめっこするエリーさんが顔を上げると苦笑いしながら伝えてくれた。
「ダリア君やっぱり止めとかない?ここには『毛皮は無傷で、フェンリルをそのまま納品。剥ぎ取りはこちらで』とあるのよ。そんなの無理に決まってるのに・・・」
「無傷ですか・・・まぁ大丈夫ですけど」
「えっ!?無傷だよ?剣でも魔法でも攻撃出来ないのよ?今まで毒で試みても、そもそも食べなかったとか、ハンマーで頭を潰したら胴体は無傷なのに頭が潰れてるのはダメだとかで違約金を払わされたとか記録に有るのよ!」
「う~ん、多分問題ないです!」
「ちょ、ちょっとダリア君?」
「お願いしますねエリーさん!」
「・・・分かったわ。この依頼は受注から期限が設定されるタイプだから、依頼人に受注を知らせてからだから、明日から10日間になります。」
「変な依頼形態なんですね」
「書類には討伐してすぐ加工しないと品質が落ちちゃうから、職人さんの準備の為とあるわ」
確かに素材の剥ぎ取りから時間が経つと毛皮とかは色が悪くなったり手触りも悪くなるらしいので、すぐ加工する準備と言うのは納得だ。
「じゃあ明日から動きますね!」
「本当に気を付けてね!」
心配そうな顔でエリーさんは僕を見送ってくれた。
◆
side ????
下級貴族街にある邸宅の一室に二人の人物がいた。重厚な机で書類に目を通して作業をしているのはまだ若く、体型は少々横に大きい青年だった。書類には納品書や決算書と書かれており、彼が経営を任されている店のものだ。その対面につい今しがた入室してきた見た目にはガラの悪い男が青年に報告をした。
「若!例の依頼がまた受注されたって協会から連絡があったぜ!」
「ほぅ、次は誰がカモになるんだ?」
「連絡じゃあ銀ランクに成ったばかりの子供で、才能もよく知らねぇけど【速度】の一つだけらしいから、御愁傷様って感じだよ!」
「そうか、チームは何人いるのだ?」
「それがよぉ、たった一人でやるらしいぜ!銀に上がったばっかで浮かれてやがるんだよ!」
下卑た笑いをしながら若と呼んだ青年に、いかにその子供が考え無しなのかを語っている。
「・・・そんなやつに払えるのか?」
「本人も問題ないと言っているから大丈夫だろ!手筈はいつも通りでいいか?」
「あぁ、任せた。いつもの事だがくれぐれもバレるなよ!」
書類に目を通していた青年の鋭い眼光が男に飛ぶ。
「分かってるよ!今回もきっちりやって臨時収入だぜ!」
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