上 下
49 / 100
第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第3章 〝ペットテイマー〟センディアを去る

49. 追いかけてきた騎士たち

しおりを挟む
 特使のお仕事も全部終わってあとは帰るだけ。
 まあ、面白くない報告をするお仕事は残っているけど。
 ともかく、キントキならすぐに帰ることができるし全力で……。
 そう思って街を出たんだけど、騎馬に乗った鎧の集団が追いかけてきた。
《気配判別》で調べたけど、人数は全部で20人。
 あいつら、なに?

「止まれ、偽特使! 貴様には領主より捕縛命令が出ている!」

『ああ、なるほど。領主もグルということか』

「救えない街だね。どうする? ここで追っ払っちゃう?」

『そんなことをしても同じことじゃろう。アイリーンの街まで引き連れて行くぞ』

「どうやって?」

『キントキ、やつらの馬から、つかず離れずの距離を保つことは?』

『簡単だよ?』

『モナカ、《大砂嵐》でやつらの視界を奪い、周囲を見えなくせよ』

『なるほどだわさ』

『さて、この速度で走ると6時間ほどでアイリーンの街に着いてしまうな。儂は先に一度戻り、サンドロックにことの次第を知らせてこよう』

「いや、ことの次第を知らせるって。私が側にいないと言葉が通じないでしょうが」

『シズク、《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作れ』

《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作る?
 どういうこと?
 ミネルの言うことだし試してみようか。

「え? ……あ、できた」

『《言語理解のネックレス》というアイテムじゃ。1日も経てば消えてしまうが、それを身につけている間は《ペット言語理解》のスキルを持っているのと同じ状態になる』

「わかった。サンドロックさんによろしくね」

『任せよ』

 ネックレスを持ったミネルが飛び去ったら作戦開始。
 モナカが《大砂嵐》で追っかけてくる騎士たちの視界だけを封じ、私たちの姿しか見えないように細工しておく。
 街道を移動している旅人も馬車も遠くから砂嵐が迫ってくるおかげで、街道脇に寄ってくれていて安心。

 そんな追いかけっこを6時間近く続けたところ、目の前にロープの張られた木々が見えてきた。
 あれに馬を引っかけて騎士を振り落とすんだね。
 じゃあ、キントキには飛び越えてもらってっと。
 ロープ周囲は砂嵐の中に包み込んでおけば大丈夫かな?

「ぐわっ!?」

「なんだっ!?」

 おーおー、騎士たちが面白いように馬から振り落とされていくよ。
 後続の騎士たちは馬同士がぶつかって振り落とされたみたいだし、やっぱり20人の騎馬隊が全員転落するとか無様だね。

「な、なんだ!? なにが起こった!? ぐっ!?」

「なんだとは騒々しいな。我らの領地を武装して攻めてきた侵略者どもが」

「なんだと!? 我々はセンディア領主直属の親衛騎士団だぞ!! それを侵略者呼ばわりなど!!」

「ふむ。つまり、センディアはアイリーンに侵略の意図ありということか。聞き出す前に話してもらえて助かるよ」

「は?」

「モナカ、もう砂嵐を止めてもいいよ」

『わかったわさ』

 砂嵐が収まったあと残されていたのはアイリーン騎士団に取り押さえられているセンディア領主親衛騎士団とかいう連中。
 それから、サンドロックさんとケウナコウ様、つまりアイリーンの街の冒険者ギルドマスターと領主様だ。
 その目の前で自分たちの素性を語っちゃったんだからまずいよね。

「貴様ら、アイリーンの侵略を企てるとはいい度胸だな」

「わ、我々は侵略など企てていない! そこの偽特使を捕縛せよとの命令で……」

「シズクは私がセンディアに送った本物の特使だ。それを偽物呼ばわりするとは、いかなる了見かな?」

「あ、いや。しかし、ここはセンディア領土! アイリーン騎士団といえど……」

「なにを寝ぼけたことを抜かしてやがる? そこに壁があるのが見えないのかよ?」

「壁? あ……」

 そこにある壁。
 その街壁は間違いなくアイリーンの街の街壁であり、門の上にはアイリーンの街の紋章まで掲げてある。
 それ以外にも、旗まで立てられているしね。

「お前たちはセンディアからアイリーンの街まで侵攻してきた騎士団だ。じっくりと話を聞かせてもらうぞ」

「い、いや、我々は、ただ、領主様の命令に従ったのみで」

「その領主命令の子細を一言一句漏らさず話してもらうだけだ。殺しはしない。連れて行け!」

 ケウナコウ様の命令で連行されていくセンディアの騎士たち。
 うわー、冒険者も怖いけど、騎士も怖い職業だね。

「ご苦労だったな、シズク。大まかな話はミネルから聞いているが子細を教えてもらえるか?」

「はい。承知いたしました」

「それからそっちの小さい嬢ちゃんについてもだな。いろいろ訳ありなんだろう? アイリーンの街で保護してやるから話を聞かせてくれ」

「はい。ああ、それと、センディアでお世話になっていた宿に頼んであまり脂っこい味がしないオーク肉料理のレシピももらってきたんです。私でも食べることができましたし、街に広めてみてはどうでしょう?」

「それも気になるな。詳しい話は冒険者ギルドで聞くとしよう。サンドロック、軽食の手配も頼む」

「おう。そのレシピ、あとで冒険者ギルドの食堂にいる料理人たちに見せてくれ。一番オーク肉の在庫を抱えているのは冒険者ギルドだからよ」

「わかりました。ミーベルンもアイリーンの街に入ろうか」

「うん!」

 ああ、ようやくアイリーンの街に帰ってくることができたんだなぁ。
 いろいろ報告が終わったらメイナお姉ちゃんに会いたい。
 メイナお姉ちゃんならミーベルンも一緒に住ませてくれると思うし、キラーブルの革でマジックバッグも作り直してもらいたいな。
 あ、ミーベルンの分も作ってもらわないと。
 意外とやることが多いかも。

 でも、このあと、もうひとつの街に向かわなくちゃいけないんだよね。
 気が重いなぁ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~

名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

処理中です...