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第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第3章 〝ペットテイマー〟センディアを去る
49. 追いかけてきた騎士たち
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特使のお仕事も全部終わってあとは帰るだけ。
まあ、面白くない報告をするお仕事は残っているけど。
ともかく、キントキならすぐに帰ることができるし全力で……。
そう思って街を出たんだけど、騎馬に乗った鎧の集団が追いかけてきた。
《気配判別》で調べたけど、人数は全部で20人。
あいつら、なに?
「止まれ、偽特使! 貴様には領主より捕縛命令が出ている!」
『ああ、なるほど。領主もグルということか』
「救えない街だね。どうする? ここで追っ払っちゃう?」
『そんなことをしても同じことじゃろう。アイリーンの街まで引き連れて行くぞ』
「どうやって?」
『キントキ、やつらの馬から、つかず離れずの距離を保つことは?』
『簡単だよ?』
『モナカ、《大砂嵐》でやつらの視界を奪い、周囲を見えなくせよ』
『なるほどだわさ』
『さて、この速度で走ると6時間ほどでアイリーンの街に着いてしまうな。儂は先に一度戻り、サンドロックにことの次第を知らせてこよう』
「いや、ことの次第を知らせるって。私が側にいないと言葉が通じないでしょうが」
『シズク、《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作れ』
《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作る?
どういうこと?
ミネルの言うことだし試してみようか。
「え? ……あ、できた」
『《言語理解のネックレス》というアイテムじゃ。1日も経てば消えてしまうが、それを身につけている間は《ペット言語理解》のスキルを持っているのと同じ状態になる』
「わかった。サンドロックさんによろしくね」
『任せよ』
ネックレスを持ったミネルが飛び去ったら作戦開始。
モナカが《大砂嵐》で追っかけてくる騎士たちの視界だけを封じ、私たちの姿しか見えないように細工しておく。
街道を移動している旅人も馬車も遠くから砂嵐が迫ってくるおかげで、街道脇に寄ってくれていて安心。
そんな追いかけっこを6時間近く続けたところ、目の前にロープの張られた木々が見えてきた。
あれに馬を引っかけて騎士を振り落とすんだね。
じゃあ、キントキには飛び越えてもらってっと。
ロープ周囲は砂嵐の中に包み込んでおけば大丈夫かな?
「ぐわっ!?」
「なんだっ!?」
おーおー、騎士たちが面白いように馬から振り落とされていくよ。
後続の騎士たちは馬同士がぶつかって振り落とされたみたいだし、やっぱり20人の騎馬隊が全員転落するとか無様だね。
「な、なんだ!? なにが起こった!? ぐっ!?」
「なんだとは騒々しいな。我らの領地を武装して攻めてきた侵略者どもが」
「なんだと!? 我々はセンディア領主直属の親衛騎士団だぞ!! それを侵略者呼ばわりなど!!」
「ふむ。つまり、センディアはアイリーンに侵略の意図ありということか。聞き出す前に話してもらえて助かるよ」
「は?」
「モナカ、もう砂嵐を止めてもいいよ」
『わかったわさ』
砂嵐が収まったあと残されていたのはアイリーン騎士団に取り押さえられているセンディア領主親衛騎士団とかいう連中。
それから、サンドロックさんとケウナコウ様、つまりアイリーンの街の冒険者ギルドマスターと領主様だ。
その目の前で自分たちの素性を語っちゃったんだからまずいよね。
「貴様ら、アイリーンの侵略を企てるとはいい度胸だな」
「わ、我々は侵略など企てていない! そこの偽特使を捕縛せよとの命令で……」
「シズクは私がセンディアに送った本物の特使だ。それを偽物呼ばわりするとは、いかなる了見かな?」
「あ、いや。しかし、ここはセンディア領土! アイリーン騎士団といえど……」
「なにを寝ぼけたことを抜かしてやがる? そこに壁があるのが見えないのかよ?」
「壁? あ……」
そこにある壁。
その街壁は間違いなくアイリーンの街の街壁であり、門の上にはアイリーンの街の紋章まで掲げてある。
それ以外にも、旗まで立てられているしね。
「お前たちはセンディアからアイリーンの街まで侵攻してきた騎士団だ。じっくりと話を聞かせてもらうぞ」
「い、いや、我々は、ただ、領主様の命令に従ったのみで」
「その領主命令の子細を一言一句漏らさず話してもらうだけだ。殺しはしない。連れて行け!」
ケウナコウ様の命令で連行されていくセンディアの騎士たち。
うわー、冒険者も怖いけど、騎士も怖い職業だね。
「ご苦労だったな、シズク。大まかな話はミネルから聞いているが子細を教えてもらえるか?」
「はい。承知いたしました」
「それからそっちの小さい嬢ちゃんについてもだな。いろいろ訳ありなんだろう? アイリーンの街で保護してやるから話を聞かせてくれ」
「はい。ああ、それと、センディアでお世話になっていた宿に頼んであまり脂っこい味がしないオーク肉料理のレシピももらってきたんです。私でも食べることができましたし、街に広めてみてはどうでしょう?」
「それも気になるな。詳しい話は冒険者ギルドで聞くとしよう。サンドロック、軽食の手配も頼む」
「おう。そのレシピ、あとで冒険者ギルドの食堂にいる料理人たちに見せてくれ。一番オーク肉の在庫を抱えているのは冒険者ギルドだからよ」
「わかりました。ミーベルンもアイリーンの街に入ろうか」
「うん!」
ああ、ようやくアイリーンの街に帰ってくることができたんだなぁ。
いろいろ報告が終わったらメイナお姉ちゃんに会いたい。
メイナお姉ちゃんならミーベルンも一緒に住ませてくれると思うし、キラーブルの革でマジックバッグも作り直してもらいたいな。
あ、ミーベルンの分も作ってもらわないと。
意外とやることが多いかも。
でも、このあと、もうひとつの街に向かわなくちゃいけないんだよね。
気が重いなぁ。
まあ、面白くない報告をするお仕事は残っているけど。
ともかく、キントキならすぐに帰ることができるし全力で……。
そう思って街を出たんだけど、騎馬に乗った鎧の集団が追いかけてきた。
《気配判別》で調べたけど、人数は全部で20人。
あいつら、なに?
「止まれ、偽特使! 貴様には領主より捕縛命令が出ている!」
『ああ、なるほど。領主もグルということか』
「救えない街だね。どうする? ここで追っ払っちゃう?」
『そんなことをしても同じことじゃろう。アイリーンの街まで引き連れて行くぞ』
「どうやって?」
『キントキ、やつらの馬から、つかず離れずの距離を保つことは?』
『簡単だよ?』
『モナカ、《大砂嵐》でやつらの視界を奪い、周囲を見えなくせよ』
『なるほどだわさ』
『さて、この速度で走ると6時間ほどでアイリーンの街に着いてしまうな。儂は先に一度戻り、サンドロックにことの次第を知らせてこよう』
「いや、ことの次第を知らせるって。私が側にいないと言葉が通じないでしょうが」
『シズク、《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作れ』
《ペット言語理解》を強く意識してネックレスを作る?
どういうこと?
ミネルの言うことだし試してみようか。
「え? ……あ、できた」
『《言語理解のネックレス》というアイテムじゃ。1日も経てば消えてしまうが、それを身につけている間は《ペット言語理解》のスキルを持っているのと同じ状態になる』
「わかった。サンドロックさんによろしくね」
『任せよ』
ネックレスを持ったミネルが飛び去ったら作戦開始。
モナカが《大砂嵐》で追っかけてくる騎士たちの視界だけを封じ、私たちの姿しか見えないように細工しておく。
街道を移動している旅人も馬車も遠くから砂嵐が迫ってくるおかげで、街道脇に寄ってくれていて安心。
そんな追いかけっこを6時間近く続けたところ、目の前にロープの張られた木々が見えてきた。
あれに馬を引っかけて騎士を振り落とすんだね。
じゃあ、キントキには飛び越えてもらってっと。
ロープ周囲は砂嵐の中に包み込んでおけば大丈夫かな?
「ぐわっ!?」
「なんだっ!?」
おーおー、騎士たちが面白いように馬から振り落とされていくよ。
後続の騎士たちは馬同士がぶつかって振り落とされたみたいだし、やっぱり20人の騎馬隊が全員転落するとか無様だね。
「な、なんだ!? なにが起こった!? ぐっ!?」
「なんだとは騒々しいな。我らの領地を武装して攻めてきた侵略者どもが」
「なんだと!? 我々はセンディア領主直属の親衛騎士団だぞ!! それを侵略者呼ばわりなど!!」
「ふむ。つまり、センディアはアイリーンに侵略の意図ありということか。聞き出す前に話してもらえて助かるよ」
「は?」
「モナカ、もう砂嵐を止めてもいいよ」
『わかったわさ』
砂嵐が収まったあと残されていたのはアイリーン騎士団に取り押さえられているセンディア領主親衛騎士団とかいう連中。
それから、サンドロックさんとケウナコウ様、つまりアイリーンの街の冒険者ギルドマスターと領主様だ。
その目の前で自分たちの素性を語っちゃったんだからまずいよね。
「貴様ら、アイリーンの侵略を企てるとはいい度胸だな」
「わ、我々は侵略など企てていない! そこの偽特使を捕縛せよとの命令で……」
「シズクは私がセンディアに送った本物の特使だ。それを偽物呼ばわりするとは、いかなる了見かな?」
「あ、いや。しかし、ここはセンディア領土! アイリーン騎士団といえど……」
「なにを寝ぼけたことを抜かしてやがる? そこに壁があるのが見えないのかよ?」
「壁? あ……」
そこにある壁。
その街壁は間違いなくアイリーンの街の街壁であり、門の上にはアイリーンの街の紋章まで掲げてある。
それ以外にも、旗まで立てられているしね。
「お前たちはセンディアからアイリーンの街まで侵攻してきた騎士団だ。じっくりと話を聞かせてもらうぞ」
「い、いや、我々は、ただ、領主様の命令に従ったのみで」
「その領主命令の子細を一言一句漏らさず話してもらうだけだ。殺しはしない。連れて行け!」
ケウナコウ様の命令で連行されていくセンディアの騎士たち。
うわー、冒険者も怖いけど、騎士も怖い職業だね。
「ご苦労だったな、シズク。大まかな話はミネルから聞いているが子細を教えてもらえるか?」
「はい。承知いたしました」
「それからそっちの小さい嬢ちゃんについてもだな。いろいろ訳ありなんだろう? アイリーンの街で保護してやるから話を聞かせてくれ」
「はい。ああ、それと、センディアでお世話になっていた宿に頼んであまり脂っこい味がしないオーク肉料理のレシピももらってきたんです。私でも食べることができましたし、街に広めてみてはどうでしょう?」
「それも気になるな。詳しい話は冒険者ギルドで聞くとしよう。サンドロック、軽食の手配も頼む」
「おう。そのレシピ、あとで冒険者ギルドの食堂にいる料理人たちに見せてくれ。一番オーク肉の在庫を抱えているのは冒険者ギルドだからよ」
「わかりました。ミーベルンもアイリーンの街に入ろうか」
「うん!」
ああ、ようやくアイリーンの街に帰ってくることができたんだなぁ。
いろいろ報告が終わったらメイナお姉ちゃんに会いたい。
メイナお姉ちゃんならミーベルンも一緒に住ませてくれると思うし、キラーブルの革でマジックバッグも作り直してもらいたいな。
あ、ミーベルンの分も作ってもらわないと。
意外とやることが多いかも。
でも、このあと、もうひとつの街に向かわなくちゃいけないんだよね。
気が重いなぁ。
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