裏切りの蜜は甘く 【完結】

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SIDE セイ

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「ただいまー」

「お帰りー早かったね?」


解体ショーの後、別室で肺の解剖をしてから先に部屋に戻りシャワーを浴びのんびりしている所に静流が戻ってきた


「思ったより解剖も早く終わったし、被験者もあっと言う間に死んじゃったからね。工藤達が検体として連れて帰るって。」


「そうなんだ。」

あの薬は実際は拷問用に秘密裏に開発された薬だった
服用して1日経つと脳の一部を溶かしだし徐々に人間としての感情や行動を起こすことが出来なくなる

今回の被験者達は元々持病の薬を飲んでいたからそれと交換しておいたのだ

脳が溶け始め、死に至るまで早ければ30分

長くても1時間半程で脳が司令を出さなくなり、呼吸も心臓も止まってしまう

この薬の存在はごく一部の人間にしか知られておらず、実際に使われたのは今回が初めてだった

今回この薬を使用したのは、二度と裏切り者を出さない為ではあるがきっと招かれた組長達はトラウマになるんだろうなと俺は心の中で合掌しておいた


「セーイ」

「んー?」


「晩餐会のタキシードはこれで良い?」


オーダーメイドで作ったスリーピースのタキシードは静流との色違いのお揃い

「うん、静流も着るでしょ?」

「勿論」

「静流もシャワー浴びといでよ」

「そうだな。そろそろ夜の打ち合わせで旬達が来るから、珈琲でも飲ませておいて」

「わかった」



静流がシャワーへ行って10分も経たない内に旬さんと光一さん、兄ちゃんと璃一、穂高さんが部屋を訪れた

皆に珈琲を淹れ先程の話になる


「にしても滞りなく終わって良かったな」

「本当ですね、静流があの薬を使うと言い出した時は本当に困りましたよ」

「あの薬は解毒薬もあるのか?」

「はい、けど24時間以内に投与しなければなりません」

「まるで兵器だよな」


穂高さんと旬さんと兄ちゃんと光一さんがそんな話をしている中、バスローブ姿の静流が姿を現した

「静流も珈琲飲む?」

「うん、頂戴」


静流の珈琲をキッチンで淹れてから隣に座る


「さて、この後の事だけど」


珈琲を一口飲んでから静流が口を開いた


「既にあちらのお客様は到着済みです。現在執事達がおもてなしをさせて頂いております。」


「そっか。メインゲストは?」


「そちらも既にお越しです。後で副会長と共にご挨拶をお願いしますね。」


「ああ。すべて準備は整ったな」



静流がニヤリと笑うと、旬さんもニヤリと笑う


この二人って本当に鬼畜だなぁと思いながら俺達はこの後の手順をおさらいした












夜7時半を過ぎると案内された客人達が大広間に集まりだした

皆顔色が悪いままで、食事など喉を通らないんじゃないだろうか

皆極道の者だし、グロテスクな現場は幾度も見てきただろうに、今回のは経験したことも無い程のものだったのだろう


大広間に来た者から好きに飲み食いしたり、知り合いへ挨拶したりと総会とは違い自由にしてもらっている

俺達も別室で食事をしながら皆が揃うのを待っていた

体調の優れない者もいた為今から起こる事は部屋のテレビにも中継し見てもらう事にした

この後のことは彼らが居てもいなくても関係ないからだ

出席できる者が全て集まり8時を回った所へ静流の獲物が到着した




「今日はお招きありがとう。」

「ようこそおいでくださいました。束の間の時間ですが楽しんでいって行ってください」


優しげな笑みを顔に貼り付け挨拶をする静流の隣には腰を抱かれたままの俺

そんな俺を軽蔑した様な目で見る櫻川会長とその娘の美怜

そんな二人にニッコリと微笑み返しておいた


「会長、皆様お揃いですのでご挨拶をお願い致します。」

旬さんが現れて静流を連れて行く

その背中を見送っていると肩を掴まれた


「ちょっと!何であなたがここに居るのよ!?」

「……その臭い手離してもらえますか?香水が強烈な芳香剤になってますよ。」

「失礼な方ね?こんな礼儀も知らない人が静流さんの婚約者なんて恥知らずもいいところだわ」

礼儀知らずは自分だろう
突然人に掴みかかるなんて、どんな教育を受けてきたのか…

それにしてもこの女はずっとこうやって生きてきたのだろうか?
自分を省みず他者を悪だと決めつけ攻撃する
気にいらない者は排除する
敵をどんどん作っていることにも気づかない

俺は今まで友人や親しく話せる人がほとんど居なかったけど、アメリカで世間の厳しさや礼儀は学んできた

アメリカ人は日本人の様に建前とか気にしない、基本自由で思っている事は遠まわしでは無くズバッと言うから楽だった

何で日本人って言葉を濁して話すのか未だに理解できない

まぁ、この女は言いたい放題だけどな

自分がハッキリ言われると苛つくようだ


面倒くさい…



『本日はお忙しい中お集まり頂き誠にありがとうございます。龍洞財閥会長、龍洞静流より皆様にご挨拶申し上げます』


あたりが暗くなりスポットライトで旬さんと静流が照らされる

俺はまだ喚いている彼女を無視して静流に目を向けた

『皆様本日はお越しいただき誠にありがとうございます。この度我が龍洞財閥は一人の男と出会い大きく飛躍する事となりました。
皆様にご紹介致します。
この度龍洞財閥副会長へと迎え入れる事となりました橘晶です。』



兄ちゃんが呼ばれ静流の元へ行く


『皆様は【SSS】というシークレットサービスをご存知でしょうか?もしかしたらお世話になっている方も多いかも知れませんね。彼、橘晶はSSSの創設者であり現在も代表取締役社長をされています。
今回私の要望に答えてくださり、龍洞財閥の副会長の席に就任してくださる事になりました。そしてSSSを龍洞財閥の傘下にいれても良いと仰ってくださいました。
これからは龍洞財閥副会長およびSSSの代表取締役社長としてその力を発揮してくださることでしょう。』


静流はマイクを兄ちゃんに渡す


『ご紹介に預かりました橘晶です。私は元々SSSというシークレット会社を経営しておりました。龍洞財閥副会長のお話を頂きましたが、初めはお断りする予定でした。
龍洞財閥と言えば世界屈指の財閥で名を知らぬ者はおりません。
私などが副会長に就任などできるわけが無いと思っておりました。
しかし、龍洞静流会長から自分には晶が必要だと言って頂いたのです。
SSSの代表取締役社長という肩書の私ではなく、ただの橘晶という男を欲してくださいました。
どんな事でも完璧にこなすと言われる龍洞会長にそこまで思われてお応えしないなど出来るはずもございません。
現在既に副会長として仕事をさせて頂いております。
至らない事もあるかとは思いますがご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。』



実際は静流が兄ちゃんが欲しいと言ってから役職が決まったんだけど、こう言った方が話が早いと静流が言っていた



会場からは暖かな拍手が送られていた


『では次にプライベートな事となりますが、もう一人皆様にご紹介したい者がおります。セイ、こちらへ。』


スポットライトが俺に降り注ぐ

が俺を見た人達は叫び声を上げた

それもそうだろう

今まさに美怜が俺に向かってナイフを振り降ろそうとしていたのだから


「セイ!!」


カキーンといい音がした後凄い力に引き寄せられ、反対側からは大きな物が床に落ちた音がした


「セイ!怪我は!?」


呆然としていたら静流が物凄い形相で俺を覗き込んでいた

あぁ…引き寄せてくれたのは静流だったんだ


「大丈夫、何ともないよ」


「璃一!殺すな!!」


兄ちゃんの声に横に視線だけ向けると、璃一が美怜をうつ伏せに倒し片腕を捻り上げ、ナイフを首もとに固定している姿が飛び込んできた


「……でも………コイツ、セイ君を殺そうとしたよ?」


「わかってる。セイは無傷だ、何故セイを殺そうとしたのか聞き出さないといけないだろ?」


兄ちゃんが璃一の手からナイフを取り上げ、虎さんに手渡す


「そっか…ごめんなさい。」


しょんぼりした璃一を兄ちゃんは胸に抱き寄せ頭を優しく撫で始めた


「静流」

光一さんが何かを手に持ち静流に渡す

よく見ると、前に橘組長を尋問した時に持っていた静流愛用のナイフだった


あのいい音は、静流がこのナイフで美怜のナイフを弾き飛ばした音だったのか



「静流、璃一、助けてくれてありがとう」


二人に微笑めば静流は優しい笑顔を見せてくれ、璃一は泣きそうな顔をして首を振った


『えー…皆様ご安心ください、先程の刃物女は橘副会長の専属ボディーガードが直様取り押さえました。直ぐに警察へ引き渡します。』


旬さんが招待客へそう説明すると会場は落ち着きを取り戻した

流石、招かれた者も大企業の社長達だからか、修羅場やこういった事にも慣れているのか落ち着きを取り戻すのが早い


「セイ、部屋に戻るか?」

「戻らない。静流と一緒に居る」


ギュッと静流の首に抱きつき、静流の頭を数度撫でる

だって静流の顔、悪魔みたいになっちゃってるんだもん

こんな静流を置いて部屋なんか戻れないよ





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