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第二章 ラッシュ港攻略
民はどちらを選ぶだろうな
しおりを挟む「そうだ。よく覚えていたな」
俺はニヤリと嗤う。
「ライド」
家族の名前を呼ぶ。すると、半透明だったライドの体が光だし姿を変えた。
一振りの剣にーー
その剣はユリウスが持つ剣とあまりにも酷似していた。俺以外の全員が声を失う。
皆何も言わないが、双方の剣を見れば子供でも分かるくらい存在感が違った。まるで別の剣のようだ。当然、ユリウスが持つ剣が偽物だと誰もが思っただろう。
偽物をあえて持つ勇者などいない。
偽物の紋章。偽物の聖剣。
その時点で、明らかにエルヴァン聖王国は呪われても仕方ないと思った筈だ。いや、滅ぼされてもおかしくないと。
なら、何故まだこの茶番が続けるんだ。その必要がどこにある。冒険者の一人が探るような目で俺を凝視していた。その心情が、俺には手に取るように分かった。
それはすぐに分かることだ。
俺は内心そう思いながら話を続ける。
「三つ目の罪は、カイナ村の襲撃だ。お前たちが魔物の村だと襲撃した村は、初代勇者の生誕の村だって知っていたか? そしてそこに住んでいる村人は、嘗て初代勇者が保護した者たちの子孫だって知っていたか? 知っていたら、襲ったりしないよな。その行為そのものが、勇者を蔑ろにする行為だからな」
勇者が保護していた。それは即ち、魔族と魔物は違うってことだ。何故なら、俺の傍にいるのは魔族ばかりだからな。
見る見る間に青くなる冒険者たちと騎士たち。ユリウスは俯いているので分からない。だが、その体は小刻みに震えていた。
大人たちの欲望のために勝手に祭り上げられて、努力し鍛えてきたのに、今度は真っ逆さまに突き落とされる。酷いことをするな、俺もアイツらも。それでも、途中で止めることはできない。
俺はそんな奴らを冷たい目で見詰める。
「殺され掛けた俺が、カイナ村で保護されてた理由も分かっただろ。ユリウスが俺の力の器なら、聖剣も人の形で生まれてきてもおかしくないよな。ましてや、勇者が生まれた村の住人だ。ライドが聖剣を宿して生まれてもおかしくないとは思わないか? だから、ライドは俺を護るために王都に来て、俺の護衛騎士になった」
俺は一息吐くと続ける。
「王国に偽物の聖剣があることは知っていた。それが本物だと信じていたのか。愚かだな。そんなことはどうでもいい。ただ言えるのは、ライドが念のために保険を掛けたことだ。お前らに奪われないように、ライドが心臓を魔石に変えていたからな。大聖女のように、心臓を抉られるのか分かっていたかは謎だけどな。ただ、お前らが俺を殺そうとしたことが、引き金だったの間違いないな……おいおい、何黙り込んでるんだ? まぁ、いい。最後の罪は、大聖女アイリスを殺し心臓を抉り取ったことだ。その上、亡骸を晒し者にした。【精霊王の愛し子】を殺し晒し者にするなんて、とんでもないことをしたよな。無知って、ほんと恐ろしい。心底そう思うぜ」
聖剣の背で肩をトントンと叩きながら、俺は告げる。
「…………大聖女が精霊王の愛し子……?」
最後まで持ち堪えてるのは、やはり冒険者だった。中ランクの冒険者でさえ、持ち堪えてるのに、ユリウスも騎士たちも心が完全に折れている。
全く、情けないな。
「ああ。勝手に聖教国が聖女認定してるようだけど、あれは只の呼び名で職業だ。なんの意味もない。聖女はこの世で唯一人。それも精霊王が選ぶ者だけだ」
「…………………なら、何故、エルヴァン聖王国と聖教国は滅びない?」
冒険者の一人にそう問われた。
俺はその問いを待っていたんだ。
その声に反応したのはユリウスだった。
「そうだ。そうだ!! もしお前が言ってるのが正しいのなら、何故、滅んでないんだ!?」
この反応も待っていた。俺はニヤリと嗤いながら答えた。
「そんなの決まってるだろ。俺がそう望んだからだ。エルヴァン聖王国と聖教国を、俺たちカイナ班の皆で滅ぼすって決めたからだ。だから、神と精霊王は俺の願いを叶えてくれた。首の皮一枚状態で生き残れてるのは、俺らが止めを刺すからだ」
五年ーー
そう、五年掛けて俺たちはここまで来た。
「その一歩が、ラッシュ港の攻略だ。因みにこの場の映像、エルヴァン聖王国とその同盟国、聖教国に流れるように細工しといた。今頃、大勢の人がこの映像を食い入るように見てるだろうな」
だから、懇切丁寧に教えてやったんだ。
「…………なっ!?……」
誰が発した声か分からない。想像したんだろう。奴ら全員が崩れるように両膝を地面に付く。顔を両手で覆う者。両手を地面に付き慟哭する者。ただ呆然としている者。
誰もが皆、絶望した表情をしていた。
震える体。
肌寒いのにタラタラと流れる冷や汗。
「ああ。その表情が見たかったんだ!! 映像にはお前たちの姿がはっきりと映ってる。民はどう思うだろうな。あの映像を見て。本物の勇者は俺かユリウス、果たして、どちらを選ぶんだろうな。楽しみで仕方ないぜ。あっ、でも俺はお前らを助けはしない。だったら、せめて魔力だけあるお前を信じるか。俺はどっちでも構わないけどな」
俺はそう言い放つと皆の元に戻った。
その顔は、さっきまで奴らに見せた愉悦感に浸る黒く醜い表情じゃなかった。険しく固い表情だった。
俺が闇堕ちをしたと言うならそれでもいい。事実堕ちたからな。
ライドもアイリスさんも、優しい人たちだから復讐なんて望んではいないだろう。只々、俺たちの幸せだけを望んでいた人だから。その願いを知りながら、俺たちは決めたんだ。
復讐することをーー
恨んでないユリウスを犠牲にしてもだ。
ほんと、俺は罪深いな……
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