裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹

文字の大きさ
22 / 34
第二章 ラッシュ港攻略

二人仲良く地獄に堕ちろ

しおりを挟む

「なぁ、アーク。あの騎士、ちゃんとお使い出来るのか?」

 いつもと同じ様に、皆で朝ご飯を食べてるとフランが訊いてきた。

「それなら大丈夫だ。マリアが呪いを掛けてあるからな」

 マリアは悪魔族の血を引いてるから、呪い関係はお手のものだ。

「呪い? それって、行かなくちゃ不幸になるっていうものか? それって弱くないか?」

 スプーンを振り回すな、飛ぶ。

「……フラン、あのマリアが、そんな甘い呪いなんて掛けるわけねーだろ」

 あ、墓穴掘った。

 マリアとジム以外全員思ったよな。口にはしないが。

「ジム。それ、どういう意味?」

 マリアが睨み付ける。

「悪い意味じゃねーよ。マリアだって分かってるだろ。あの騎士がアレを届けないとが進まないって。だから、確実に届ける方法をとるに決まってるだろ。それが、甘い呪いな訳ねーだろが」

 ジムらしい言い方だ。自然と相手の意を汲み取ることが出来る。こういう所、正直凄いと思うし見習いたい。

「まぁね。途中で投げ出されたりしたら最悪だからね。逃亡すると、激痛が走るアイテムをこっそり着けといたわ。死にはしない程度のやつをね。それでも、死んじゃったら困るから、念には念を入れて、死体が動くように術式も組み込んでおいたわ。まぁ私としては、どっちでも構わないけどね。確実に届くから」

 この件、マリアに全部任せてたけど、そんな呪いを掛けてたのか。抜け目がないな、さすがだ。

 自然と口角が上がる。

「アンデッドになっても動くようにか。ナイス、マリア」

 フランが親指を立てる。俺も心の中で親指を立てる。

 だけど次の瞬間、フランは立ち上り臨戦態勢をとった。フランだけじゃない。俺以外の全員がだ。

 すると突如、何もない空間からニョキと腕が出て、次に男が出てきた。フランたちは嫌悪感丸出しで相対する。男は気にもせずに、俺に話し掛けてきた。

「……美味しそうな朝ご飯だね。僕もご相伴に預かってもいいかい?」

「早かったな、レートンさん。別に構わない」

 俺がそう答えると、途端に嫌な顔をするフランたち。

「コイツとご飯なんて食えるか!!」

 そう吐き捨てると、パンを咥え出て行ってしまった。

「相変わらず、僕は嫌われてるね」

「悪い。フランたちも分かってはいるんだ」

 苦笑し呟くレートンに俺は謝る。

「気にしなくていいよ、アーク。僕の商売は嫌われてなんぼだからね」

「そう言ってもらえるえと、助かるよ」

 本当はそんなことはない、と言いたいけど、言えないのが悲しいところだ。

『……アーク、この人は誰?』

 俺の膝の上にいたリアが無邪気に訊いてくる。

「おや、凄い子が一緒にいるね。新しく入った仲間かい?」

 ニコッと笑いながら、レートンはリアを見ている。さすがだな。ひと目でリアが凶霊だって気付いてる。

「ああ。リアって、いうんだ。この地下にいた。リア、この人は奴隷商のレートンさん。俺たちが色々お世話になった人だ」

『お世話?』

 俺を見上げながら尋ねる姿は可愛くて、凶霊には見えない。

「フランたちを助けてもらうのに、力を貸してもらったんだよ」

 その頭を撫でながら答える。

『フランたちは奴隷だったの?』

「五年前に村が襲われて、その時人間に捕まったんだ」

 殺されたのは大人たちだけ。子供の大半は、エルヴァン聖王国の奴らが奴隷として売り払った。

「奴隷商には奴隷商の繋がりがあるからね。アークたちにちょっと情報を流しただけだよ」

「そのおかげでフランたちを見付け、助けることが出来た。レートンさんの情報がなかったら、カイナ班は全員揃わなかった」

 ほんとに、レートンさんには心から感謝している。俺やジムたちだけだったら、助け出すのにかなりの時間が掛かった筈だ。その間に、壊されてしまう仲間もいただろう。

 ふと、見付け助け出した時のフランたちの姿を思い出して、俺は今更ながらに背筋が凍る。
 
『ふ~ん。なら、殺さないでいてあげる』

「そうしてくれると、ありがたいな。で、僕を呼んだのは、売りたい人間がいるんだね」

 にっこりとレートンは笑いながら尋ねる。

「ああ。リアを凶霊にした者たちと、捕えた騎士と兵士たち。それと冒険者を数人」

「分かった。ご飯を食べた後、早速見せてもらうよ」

 確かに奴隷商って、言葉の響きはよくない。なので、色々誤解を受けてしまう職業だ。でも、俺は必要な職業だと思っている。

 奴隷になる過程は様々だ。だけど、それで助かる者もいる。高利貸しよりも、余程優しい職業だ。売られた先で、真面目に働きさえすればいいんだから。まぁ、健全な所での話だけどな。その点、レートンさんは健全だ。奴隷に最低限の教育を施してるしな。



 早速、ご飯を食べ終えた後レートンに商品を見せた。五月蠅いから猿轡を噛ませている。

「屈強な男は魔族でも人気だからね。労働者として。子供はペットかな。意外と需要があるんだよ、お金持ちに。問題はこの二人だけど……この二人は、永久奴隷でいいかな?」

 手元の紙を見ながら、レートンは確認する。

「ああ、そうしてくれ」

 呻き声が一段と大きくなった。クズとアバズレが一番往生際が悪い。猿轡がなかったら、マジで五月蝿かったな。こういう奴って、平気で醜く命乞いしてくるんだよな。

『永久奴隷って、ずーと奴隷なの?』

「ああ。ずーと奴隷だ。それも魔法で何重にも縛られる。一番酷い場所に送られ、死ぬこともできずに、死ぬまで毎日が地獄だ」

 人道から外れることが合法で出来るから、永久奴隷は意外と需要が高いし高値で売れる。

『そっかぁ~ずーと地獄なんだぁ。嬉しいな。アークお願いがあるの。二人の猿轡外して』

「いいのか? 五月蠅いぞ」

『構わない。その声が聞きたいの』

「分かった」

 猿轡が外れたクズとアバズレは、俺の足元に擦り寄ってくる。

「助けて下さい。どうか助けて下さい。何でも致します。だから、永久奴隷だけは」

 予想通り、クズとアバズレが無様にも命乞いしてきた。

「貴方に天国を教えてあげるから、私を助けて」

 アバズレは汚い体を足に擦り付けてきた。俺はその体を蹴飛ばす。ズボンが汚れるだろ。

『アークにその汚くて醜い体を擦り付けないで!!』

 俺の抱っこから降りたリアは、アバズレに冷たい声で言い放つ。

「五月蠅いガキね!! 大人の話に割り込んでこないで!! ねぇ、お願い。この男はどうなってもいいから、私だけは助けて。お願いだから」

 その言葉に反応したのはゲスだった。

「自分一人だけ助かるつもりか!! なんと、自分勝手な女だな!!」

 とうとう喧嘩しだした。とことん、醜い奴らだな。それは理解していたが、

 ……コイツら、リアに全く気付いてないのか?

 怒りを通り越して、俺からスーと表情が消えた。そのことに気付いたクズとアバズレは「ヒッ!!」と悲鳴を上げた。

『リアのこと、本当に忘れてしまったんだね』

 クズとアバズレに近付くリア。そこで初めて、リアが幽霊だと気付いたようだ。

「「近付くな、化け物!!」」

 悲鳴を上げるクズとアバズレ。その悲鳴にニンマリと嗤うリア。

『そうだね。リアは化け物になっちゃった。あんたたちのせいで』

「リアは化け物じゃない」

 俺はリアの頭を撫でながら、クズとアバズレを見下ろす。その目はどこまでも冷たく、汚物を見る目だった。実際、奴らを汚物だと思ってたしな。だから自然と、発する声も低く冷たくなる。

「自分の子供よりも、我が身の方が大事か……とんだ親だな。だから、自分の欲求のために平気でリアから母親を奪い、リアも殺せるんだな」

 そこまて言って、漸く気付いたようだ。あろうことか、

「リア。リアなのか!? だったら、頼め!! 俺を助けろと」

「ちょっと、何言ってるのよ!! リア、私が悪かったわ。これからは良い親になるから許して」

 今度は殺した子供に擦り寄ってくる。恥知らずもいいところだ。虫けら以下だ。実の子供たちは涙を流しながら呆然としているというのに。

 コイツらの方がよっぽど化け物だな。

『助けるわけないでしょ。殺してもあげない。お母様の痛み、そしてリアの痛みを永遠に味い続けて。リアはお前たちを絶対に許さない。お母様を殺してでも一緒にいたかったんでしょ。だったら、仲良く、二人一緒に地獄に堕ちろ』

 俺の腕の中で、にっこりと微笑みながら、リアは元家族と完全に決別した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

処理中です...