裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹

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第一章 踏み荒らされ花

幼馴染の懐の大きさを知る

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「おい!? 二人とも、その頬どうしたんだ!?」

 次の日学校にいったら、ジムとレイの頬が真っ赤に腫れていた。明らかに、誰かに殴られたあとだ。

「何か悪いことでもしたのか?」

 思わずそう尋ねると、ジムとレイが瞬時に怒り出す。

「してねーよ!!」

「やってない!!」

「なら、何で、そんな顔になってるんだ?」

「アークのせいだろ!! アークが急に学校休むから、マリアに殴られたんだよ」

 マリアが……

「俺たち嘘言ってねーぞ。アークを虐めたでしょって言われて殴られた」

 どうしても、レイとジムが嘘を言っているようには思えない。

 マジで、マリアがジムとレイを殴ったのか?

「アーク、おはよう」

 ジムとレイから話を聞いてると、いつもと同じ様にマリアがアークに声を掛けてきた。ただこの時は少し違った。

「また、ジムとレイに難癖付けられてるのね。大丈夫。私が守ってあげるから」

 にっこりと満面な笑みを浮かべるマリア。

「マリア。君が、ジムとレイを殴ったの?」

 率直に尋ねてみた。嘘であって欲しいと思いながら。

「殴ったなんて大袈裟だよ」

 殴ったことに関しては否定しないんだ。

「でも、殴ったんだよね。俺、暴力が一番嫌いなんだ。それに、言っとくけど、ジムとレイは何もしてないし、今までもされたことがない。昨日俺が学校来れなかったのは、ジムたちと別れた後気分が悪くなったからだよ。二人のせいじゃない」

 まさか、俺がジムとレイを庇うと思っていなかったのか、マリアはとてもショックを受け傷付いた表情をする。

「どうして……? 私、アークのために……」

 俯いて、小さな声でボソボソと言い訳をするマリアに、俺はさらに追い打ちをかけた。

「俺がいつ、マリアに殴ってくれって頼んだ? 答えろよ。俺は誓って、そんなことを頼んだりしない。俺のためとか言う前に、ジムとレイに謝るのが先だろ」

 俺がそう言うと教室内がざわついた。 

 みんな、なんで驚いた顔してるんだ?

 ていうか、ジムとレイが一番驚いていた。人間って驚き過ぎると固まるってことを知ったよ。



「結局、マリアはジムとレイに謝らなかったな」

 帰りの通学路でポツリと呟くと、すぐに返事が返ってきた。

「まぁ、マリアだからな」

 それで納得するのもどうかと思うけど。

「始めから謝ってくれるって思ってないから。ていうか、アークがあんな事言うなんて思ってもいなかったよ」

 結構キツイことを言ったと思う。自分でも否定できない。

 つい昨日までの俺だったら、レイの言う通り、マリアを全面的に信じてたな。ジムとレイが嘘を吐いてるって、反対にそう思ったはずだ。つくづく、俺って馬鹿だと思う。マリア自身の台詞で目を覚ますなんてな。少し冷静になれば、ちゃんと見えてたのに。初めて好きになった子だから、舞い上がってたのかもしれない。

 マリアが暴力を振るうなんて、稽えてもいなかったから。

 俺はマリアの一面しか見てなかったんだな。だからといって、好きな気持ちが消えた訳じゃないけど。今は、ちょっと客観的に見れるかもしれない。

「そうか……悪いことしたら、謝るのが当たり前だろ」

 それが普通だと思うけど。

「そうだけど。アークって、マリアのこと好きだろ?」

 焦るより先に顔が真っ赤になる。

「なっ、なっ、なにを!?」

「「焦らなくても……いまさらじゃん」」

 ジムとレイが呆れながら俺を見ている。

 ちょっと可哀相な子を見る目で見られてるのは、気のせいだよな。

「アークって、ちょっと抜けてるよな」

「ちょっとか?」

 俺を置き去りにして会話を始めるレイとジム。

「まぁ、あの狂犬マリアを好きになるんだから、かなり変わってるのは間違いないよ」

 レイがそう言えば、「狂犬でも、顔は可愛いからな」と、ジムが答える。

「狂犬だけど、見た目は護ってあげたい容姿だからね。コロッと騙されたよね、アーク」

 やっと、レイが俺に振ってきた。

「狂犬、狂犬って言うな。一応、女の子なんだから」

 好きな子のことを残念な呼び名で呼ばれたら、さすがに嫌だ。その呼び名が当て嵌まっていたとしても。

「ほんとに、アークって女の趣味悪いよな」

 ジムの台詞に俺はむくれる。

「ほっとけ。それより、お前らはどうなんだ? マリアの事好きなのか?」

 いい機会だ。訊いてやろう。前から気になってたし。

「「あ~~ないない」」

 二人仲良く声をハモらせながら答えた。

 そこまで、きっぱりと否定されると、なんか複雑だな。

「アークどうした?」

 黙り込んだ俺に、ジムが心配そうに訊いてきた。

「大丈夫。ジム、レイ、ごめん。俺、今まで二人に嫌な思いさせたんじゃないか?」

 マリア贔屓だったから。

「いいや。別に何とも思ってないぞ」

「俺も。でも、それじゃあ、アークの気持ちはおさまらないだろ。だから、アークの謝罪は素直に受け取っとく」

 ジムもレイも懐が大きいなと思った。

 
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