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「うわぁ、すごい!」
街の中市街はたくさんの人で溢れていた。
メイン通りの両側はいろいろな店が営業している。
それ以外にも小さなワゴンの露店や、大道芸人も居て一日では回りきれないほどだ。
「いろいろ見てみよう。」
香ばしい匂いが漂うパン屋、目が眩みそうな宝石屋、可愛い店構えの花屋。どの店も見てるだけで楽しい気分になった。
コイン二枚で何が買えるだろうか…。
ルエは歩きながらキョロキョロと見渡すと可愛らしいピンク色のワゴンが目に入った。
「ドーナッツだ!」
ふんわりと揚げたドーナッツにたっぷりの砂糖を塗してある。近寄ると美味しそうな匂いにますます心が惹かれた。
「一つニコイン…。」
ルエが持っているコインでちょうど足りる。
これにしよう。甘い物が大好きなルエはドーナッツを買うことに決めた。
クロフォード家での食事は何の不満もない。何も出来ないルエに三食きちんと食べさせてくれる。しかし、嫁に来てから一度も甘い物を口にしたことがなかった。リチャードが甘い物を禁止しているということだった。それとなくノーマンにその理由を聞いてみたがはぐらかされてしまった。
リチャード様は甘い物がお嫌いなのかも。
仕方ないと思ったのと同時に少しがっかりしたのも事実だ。
だから今日はあのドーナッツを買って食べようと決めた。
他の客混じってワゴンに並んでいると杖をついたお爺さんがこちらに歩いてきた。
ルエはスッと前を譲り、一番後ろに並んだ。
しばらくしてルエの番がやってきた。
「ひ、一つ下さい。」
「はいよ~!」
人の良さそうな中年女性がテキパキと袋にドーナッツを入れる。何故か袋に二個のドーナッツをサッと入れてルエに渡してきた。
「え?えっと、一つ…。」
「おまけだよ!あの爺さんは常連なんだ。足が悪くてね。長く並ぶのは大変なんだよ。ありがとね。」
さっきの杖のおじいさんのことか。
ルエは丁寧に頭を下げてコイン二枚を渡した。
どこで食べようか。
時計台の下に公園があるって聞いたのでそこて食べようかな。
少し重くなった鞄を撫でで嬉しそうに歩く。
とりあえず時計塔を目指して歩いていると人が一人通れるくらいの細い路地が目に入った。
なんてことない路地だ。でも何故かすごく惹かれた。そこだけ光っているようにも見えた。引き込まれるようにその路地に入ると人が倒れている。恐る恐る覗き込んで見た。
ルエより少し歳上だろうか。
目に掛かるくらいの長い前髪は深い青で顔から下半分はバンダナで隠れていた。
病気かな?息はあるようだがピクリとも動かない。
「あ、あの。大丈夫ですか?」
反応がない。心配になって男の少し肩を揺すってみた。
すると急にぱちっと目が開いた。
その瞳は髪の色と同じで深い青色だった。ほんの一瞬引きこまれたような気がしたが、はっとして声を掛ける。
「だ、大丈夫ですか?」
「え?ああ、いてっ!」
その男は起き上がろうとしたが痛みでまた横になった。
ケガでもしているのだろうか。
「お医者様を呼びましょうか?」
「いや、いい。大丈夫だ。」
今度はゆっくり起き上がり座った。
「大丈夫、ですか?」
「ああ。」
ルエが歩いていたメイン通りをバタバタと数人が走る音がする。
「居たか?」
「いや、居ない。見失った。」
誰かを探しているみたいだ。ルエは思わず青い髪の男を見た。
「きっと私、いや、俺を探している。俺を売るか?」
ルエを大きく首を振った。
どうしたらいいんだろう。このままでは見つかってしまうかもしれない。
「あ、あの、とにかくここから移動しましょう。」
「え?あ、そうだな。」
「ぼ、僕、表の様子を見てきます!」
厄介なことに関わってしまったかもしれないと思うが、どうしてもこの男を放っておけなかった。
メイン通りには不審な人物は居ない。今なら動けるかもしれない。
「怪しそうな人は居ません。おうちは近くですか?そこまで一緒に…。」
「家は遠いんだ。」
「そうですか。えっと、どこか隠れるところはないかな…。僕、ここ初めてで。どうしよう。」
「時計塔の近くの公園を抜けると森がある。そこなら隠れるところがあるかもしれない。」
「じゃあそこまで行きましょう。手伝います。」
「良いのか?」
男は驚いたような顔でルエを見る。
ルエは大きく頷いた。この男は悪い人には見えない。
「はい。ケガをしてるし、放っておけません。」
「そうか。ありがとう。じゃあお願いしても良いか?メイン通りは危ないから裏道を通る。」
「はい。僕が先に様子を見ながら行きましょう。」
男はゆっくり立ち上がった。立ってみると背が高く男らしい体躯だ。
「君、名前は?」
「あ、えっと、ル、ルイです。」
思わずウソをついてしまった。ここへ来たことがバレるとは思えないが、本当の名前を言えなかった。
「ルイか。俺はディックだ。」
「ディックさん。」
「さんは要らない。じゃあ行こうか。本当にありがとう。」
ルエはディックに誘導してもらいながら裏道を進んだ。途中、怪しそうな人が居たので二人で隠れたり、様子を見たりしながら時計台を目指す。
歩きながらディックとも少し話をした。
ルエより四歳歳上で、たまにこの街に遊びに来ると言っていた。今日はふらりと入った路地裏であまり良くないものを見てしまい追われることになった。
「良くないものって?」
「たぶん、未申告の金塊の受け渡しだ。」
「え?それって犯罪ですよね?」
「ああ、そうだ。だから俺の口を封じたいんだろう。」
ディックは命を狙われているのか。ルエはドキドキするのと同時に、やはり放っておかなくて良かったと安堵した。
彼は何も悪くない。それなのに命を狙われるなんて。
「そうだ、軍に報告すれば!」
「うーん、証拠がない。俺が見ただけだし。」
「そっか…。」
話をしながら歩いていると時計塔の近くまで来た。
裏側に公園があると言っていた。
裏道はここまでだ。ルエはディックを残して表通りに出て様子を見るが小さな子どもや若い女しかいない。
大丈夫そうだ…。
「ディック、大丈夫そうです。」
街の中市街はたくさんの人で溢れていた。
メイン通りの両側はいろいろな店が営業している。
それ以外にも小さなワゴンの露店や、大道芸人も居て一日では回りきれないほどだ。
「いろいろ見てみよう。」
香ばしい匂いが漂うパン屋、目が眩みそうな宝石屋、可愛い店構えの花屋。どの店も見てるだけで楽しい気分になった。
コイン二枚で何が買えるだろうか…。
ルエは歩きながらキョロキョロと見渡すと可愛らしいピンク色のワゴンが目に入った。
「ドーナッツだ!」
ふんわりと揚げたドーナッツにたっぷりの砂糖を塗してある。近寄ると美味しそうな匂いにますます心が惹かれた。
「一つニコイン…。」
ルエが持っているコインでちょうど足りる。
これにしよう。甘い物が大好きなルエはドーナッツを買うことに決めた。
クロフォード家での食事は何の不満もない。何も出来ないルエに三食きちんと食べさせてくれる。しかし、嫁に来てから一度も甘い物を口にしたことがなかった。リチャードが甘い物を禁止しているということだった。それとなくノーマンにその理由を聞いてみたがはぐらかされてしまった。
リチャード様は甘い物がお嫌いなのかも。
仕方ないと思ったのと同時に少しがっかりしたのも事実だ。
だから今日はあのドーナッツを買って食べようと決めた。
他の客混じってワゴンに並んでいると杖をついたお爺さんがこちらに歩いてきた。
ルエはスッと前を譲り、一番後ろに並んだ。
しばらくしてルエの番がやってきた。
「ひ、一つ下さい。」
「はいよ~!」
人の良さそうな中年女性がテキパキと袋にドーナッツを入れる。何故か袋に二個のドーナッツをサッと入れてルエに渡してきた。
「え?えっと、一つ…。」
「おまけだよ!あの爺さんは常連なんだ。足が悪くてね。長く並ぶのは大変なんだよ。ありがとね。」
さっきの杖のおじいさんのことか。
ルエは丁寧に頭を下げてコイン二枚を渡した。
どこで食べようか。
時計台の下に公園があるって聞いたのでそこて食べようかな。
少し重くなった鞄を撫でで嬉しそうに歩く。
とりあえず時計塔を目指して歩いていると人が一人通れるくらいの細い路地が目に入った。
なんてことない路地だ。でも何故かすごく惹かれた。そこだけ光っているようにも見えた。引き込まれるようにその路地に入ると人が倒れている。恐る恐る覗き込んで見た。
ルエより少し歳上だろうか。
目に掛かるくらいの長い前髪は深い青で顔から下半分はバンダナで隠れていた。
病気かな?息はあるようだがピクリとも動かない。
「あ、あの。大丈夫ですか?」
反応がない。心配になって男の少し肩を揺すってみた。
すると急にぱちっと目が開いた。
その瞳は髪の色と同じで深い青色だった。ほんの一瞬引きこまれたような気がしたが、はっとして声を掛ける。
「だ、大丈夫ですか?」
「え?ああ、いてっ!」
その男は起き上がろうとしたが痛みでまた横になった。
ケガでもしているのだろうか。
「お医者様を呼びましょうか?」
「いや、いい。大丈夫だ。」
今度はゆっくり起き上がり座った。
「大丈夫、ですか?」
「ああ。」
ルエが歩いていたメイン通りをバタバタと数人が走る音がする。
「居たか?」
「いや、居ない。見失った。」
誰かを探しているみたいだ。ルエは思わず青い髪の男を見た。
「きっと私、いや、俺を探している。俺を売るか?」
ルエを大きく首を振った。
どうしたらいいんだろう。このままでは見つかってしまうかもしれない。
「あ、あの、とにかくここから移動しましょう。」
「え?あ、そうだな。」
「ぼ、僕、表の様子を見てきます!」
厄介なことに関わってしまったかもしれないと思うが、どうしてもこの男を放っておけなかった。
メイン通りには不審な人物は居ない。今なら動けるかもしれない。
「怪しそうな人は居ません。おうちは近くですか?そこまで一緒に…。」
「家は遠いんだ。」
「そうですか。えっと、どこか隠れるところはないかな…。僕、ここ初めてで。どうしよう。」
「時計塔の近くの公園を抜けると森がある。そこなら隠れるところがあるかもしれない。」
「じゃあそこまで行きましょう。手伝います。」
「良いのか?」
男は驚いたような顔でルエを見る。
ルエは大きく頷いた。この男は悪い人には見えない。
「はい。ケガをしてるし、放っておけません。」
「そうか。ありがとう。じゃあお願いしても良いか?メイン通りは危ないから裏道を通る。」
「はい。僕が先に様子を見ながら行きましょう。」
男はゆっくり立ち上がった。立ってみると背が高く男らしい体躯だ。
「君、名前は?」
「あ、えっと、ル、ルイです。」
思わずウソをついてしまった。ここへ来たことがバレるとは思えないが、本当の名前を言えなかった。
「ルイか。俺はディックだ。」
「ディックさん。」
「さんは要らない。じゃあ行こうか。本当にありがとう。」
ルエはディックに誘導してもらいながら裏道を進んだ。途中、怪しそうな人が居たので二人で隠れたり、様子を見たりしながら時計台を目指す。
歩きながらディックとも少し話をした。
ルエより四歳歳上で、たまにこの街に遊びに来ると言っていた。今日はふらりと入った路地裏であまり良くないものを見てしまい追われることになった。
「良くないものって?」
「たぶん、未申告の金塊の受け渡しだ。」
「え?それって犯罪ですよね?」
「ああ、そうだ。だから俺の口を封じたいんだろう。」
ディックは命を狙われているのか。ルエはドキドキするのと同時に、やはり放っておかなくて良かったと安堵した。
彼は何も悪くない。それなのに命を狙われるなんて。
「そうだ、軍に報告すれば!」
「うーん、証拠がない。俺が見ただけだし。」
「そっか…。」
話をしながら歩いていると時計塔の近くまで来た。
裏側に公園があると言っていた。
裏道はここまでだ。ルエはディックを残して表通りに出て様子を見るが小さな子どもや若い女しかいない。
大丈夫そうだ…。
「ディック、大丈夫そうです。」
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