147 / 257
第百四十七話
しおりを挟む
「それとこの黒目はカラコンよ。元々蒼なんだけど、日本じゃ結構目立つから……ほら」
左目へ手をかざしたかと思えば、彼女の言う通り蒼い瞳が現れる。
蒼い瞳と単に言っても大概は水色に近いものだが、かのじょのそれは海を思わせる程深い蒼。
なかなかに神秘的で美しい。
「おお、綺麗」
「ありがと、貴女の金瞳も素敵ね」
鏡で毎日見ているしあまりに当たり前すぎて、直に褒められると少しこそばゆい。
それにしても身近な人が異世界人だった、というか人じゃなかった。
ふむ。
「そういえば異世界から来たのに、体の構造とか変わんないの? 病気になりやすかったりだとか、いろいろ大変なことあったんじゃ」
国を離れて暮らすだけでも、環境が合わなくてお腹を壊すなんて話があるくらいだ、世界単位での移動をした彼女たちが果たして、そのまま普通に暮らしていける物だろうか?
そもそも『人』といったって、本当にそれはこの世界でも『人』の定義に当てはまるのか?
というかなんか向こうの人には大丈夫だけど、こっちの人からしたらやばい病気とか持ってそう。
あれ、近寄るのやめとこうかな。
「ちょ、ちょっと! じりじり離れないでよ!」
「ぬへー」
後ずさりした私の肩を鬼気迫る顔で掴み、わさわさと揺さぶり始める彼女。
「安心しろ、こいつは基本的に間違いなく『人間』だ。そして異世界についてだが、どうやらこの地球に酷く酷似した環境だというのも間違いがない。いや、酷似しているというよりかは、大元は平行世界的存在であり、実質的に同じといっても過言ではない。唯一この世界と異なるのは、魔力をベースとした発展を遂げたところか」
「なるほどね……よく分かんないけど分かった」
つまり大丈夫だということだろう、じゃあいいや。
よく考えると、もし彼女がヤバい菌の塊だとして、周りの人がものすごい勢いで死んでいきそうだ。
明らかにそんなの放置していられないし、町のど真ん中で暢気に受付なんてやっていられないだろう。
そんな存在この世に生まれたことが罪だ、汚物は消毒するしかない。
園崎さんが天然痘の擬人化ではないと分かったところで、話は彼女自身についてから、問題のダンジョン崩壊による消滅へと移行した。
「園崎さんが今まで唯一、そして私が二人目の知覚者らしいけど……条件ってなんなの?」
「分からん。今までは異世界の人ならざる血が濃く入っているのが理由だと思っていたんだが……」
「じゃ、じゃあ私も人外のハーフだったとか!?」
驚きにバシッと机を叩き立ち上がってしまう、
衝撃の展開だ、私人間じゃなかった。
もしかして私も、彼女が本をむしゃむしゃ食べるのみたいに、なにか隠された能力とかあるのだろうか。
しゃきーんと両腕が武器になっちゃうとか。
深い思案の海へ沈みかけた私を、目の前へ否定するように突き出された彼の腕がすくい上げる。
「いや、それはない。お前が消滅を知覚したのごく最近だろ」
「あ、確かに……ってなんで筋肉が決めつけるの。もしかしたらずっと前から知覚は出来たけど、見逃してるだけかもしれないじゃん」
一瞬認めかけるも、超能力の可能性を諦めきれず、負けじと反論した私。
しかし片肘をつき横で聞いていた園崎さんが口を開くと、あっさりと覆されてしまう。
「それはないわね。私がこの世界に来てからおよそ7の『人類未踏破ライン』が崩壊し、地図そのものが大きく書き換わっているもの。世界地図なんてまともに見ていなくとも、普通だったら違和感を覚える程の変化な上、起こった当初は町やニュースで大騒ぎされるのよ? たぶん貴女も最近までは記憶の改変がされていたわ」
すらすらと紙の上に描かれた二つの世界地図。
一つはロシアのあたりがちょっと変だが私がよく知ったものだが、もう一つは今とはだいぶ違う。
今よりずいぶんと全体的にギザギザしているし、滑らかな線なんてどこにもないうえ、これなら面積も二倍近く大きいんじゃないだろうか。
なるほど、確かにここまで大きく変わっているのだとしたら、流石の私でも気付くだろう。
それに私は確かに見た。町も、ニュースも、ネットだってロシアの『崩壊』で大騒ぎになる姿を、人々がモンスターに襲われる凄惨な光景を。
正直今でも思い出すとあの悲鳴が脳裏を過ぎり、少し気分が悪くなる。
忘れられるってのは、もしかしたら幸せなのかも。
この情報に溢れた社会、たとえ私自身が電子製品に触れていなかったとしても、きっとどこからか必ず小耳にはさむはず。
一切記憶にないってのはおかしい、どうやら私も最近までは『消滅』による記憶改変の影響を受けていたようだ。
「じゃあなんで私も覚えていられるの?」
「それは……分からん。何せ今まで記憶を保っていられるのは彼女だけで、共通点なんてものは調べることも出来なかったからな。俺達もてっきり、異形の血が濃く入っているのが理由だとばかり思っていたが……」
どうやらそういうわけでもない、と。
記憶が継続される理由さえ見つけることが出来れば、これは現状ほぼ手探りである私たちにとって大きな一歩となる。
今まで見過ごして来たものに気付けるし、それが糸口となって全ての解決につながる可能性だって見えてくるだろう。
普段の態度はどこへやら、一呼吸置きキリリと眉を引き締めた彼女は告げた。
「以前の大規模な消滅がおよそ一年前、フォリアちゃん、貴女はきっとこの一年以内になにか特異な体験をしているはずよ」
左目へ手をかざしたかと思えば、彼女の言う通り蒼い瞳が現れる。
蒼い瞳と単に言っても大概は水色に近いものだが、かのじょのそれは海を思わせる程深い蒼。
なかなかに神秘的で美しい。
「おお、綺麗」
「ありがと、貴女の金瞳も素敵ね」
鏡で毎日見ているしあまりに当たり前すぎて、直に褒められると少しこそばゆい。
それにしても身近な人が異世界人だった、というか人じゃなかった。
ふむ。
「そういえば異世界から来たのに、体の構造とか変わんないの? 病気になりやすかったりだとか、いろいろ大変なことあったんじゃ」
国を離れて暮らすだけでも、環境が合わなくてお腹を壊すなんて話があるくらいだ、世界単位での移動をした彼女たちが果たして、そのまま普通に暮らしていける物だろうか?
そもそも『人』といったって、本当にそれはこの世界でも『人』の定義に当てはまるのか?
というかなんか向こうの人には大丈夫だけど、こっちの人からしたらやばい病気とか持ってそう。
あれ、近寄るのやめとこうかな。
「ちょ、ちょっと! じりじり離れないでよ!」
「ぬへー」
後ずさりした私の肩を鬼気迫る顔で掴み、わさわさと揺さぶり始める彼女。
「安心しろ、こいつは基本的に間違いなく『人間』だ。そして異世界についてだが、どうやらこの地球に酷く酷似した環境だというのも間違いがない。いや、酷似しているというよりかは、大元は平行世界的存在であり、実質的に同じといっても過言ではない。唯一この世界と異なるのは、魔力をベースとした発展を遂げたところか」
「なるほどね……よく分かんないけど分かった」
つまり大丈夫だということだろう、じゃあいいや。
よく考えると、もし彼女がヤバい菌の塊だとして、周りの人がものすごい勢いで死んでいきそうだ。
明らかにそんなの放置していられないし、町のど真ん中で暢気に受付なんてやっていられないだろう。
そんな存在この世に生まれたことが罪だ、汚物は消毒するしかない。
園崎さんが天然痘の擬人化ではないと分かったところで、話は彼女自身についてから、問題のダンジョン崩壊による消滅へと移行した。
「園崎さんが今まで唯一、そして私が二人目の知覚者らしいけど……条件ってなんなの?」
「分からん。今までは異世界の人ならざる血が濃く入っているのが理由だと思っていたんだが……」
「じゃ、じゃあ私も人外のハーフだったとか!?」
驚きにバシッと机を叩き立ち上がってしまう、
衝撃の展開だ、私人間じゃなかった。
もしかして私も、彼女が本をむしゃむしゃ食べるのみたいに、なにか隠された能力とかあるのだろうか。
しゃきーんと両腕が武器になっちゃうとか。
深い思案の海へ沈みかけた私を、目の前へ否定するように突き出された彼の腕がすくい上げる。
「いや、それはない。お前が消滅を知覚したのごく最近だろ」
「あ、確かに……ってなんで筋肉が決めつけるの。もしかしたらずっと前から知覚は出来たけど、見逃してるだけかもしれないじゃん」
一瞬認めかけるも、超能力の可能性を諦めきれず、負けじと反論した私。
しかし片肘をつき横で聞いていた園崎さんが口を開くと、あっさりと覆されてしまう。
「それはないわね。私がこの世界に来てからおよそ7の『人類未踏破ライン』が崩壊し、地図そのものが大きく書き換わっているもの。世界地図なんてまともに見ていなくとも、普通だったら違和感を覚える程の変化な上、起こった当初は町やニュースで大騒ぎされるのよ? たぶん貴女も最近までは記憶の改変がされていたわ」
すらすらと紙の上に描かれた二つの世界地図。
一つはロシアのあたりがちょっと変だが私がよく知ったものだが、もう一つは今とはだいぶ違う。
今よりずいぶんと全体的にギザギザしているし、滑らかな線なんてどこにもないうえ、これなら面積も二倍近く大きいんじゃないだろうか。
なるほど、確かにここまで大きく変わっているのだとしたら、流石の私でも気付くだろう。
それに私は確かに見た。町も、ニュースも、ネットだってロシアの『崩壊』で大騒ぎになる姿を、人々がモンスターに襲われる凄惨な光景を。
正直今でも思い出すとあの悲鳴が脳裏を過ぎり、少し気分が悪くなる。
忘れられるってのは、もしかしたら幸せなのかも。
この情報に溢れた社会、たとえ私自身が電子製品に触れていなかったとしても、きっとどこからか必ず小耳にはさむはず。
一切記憶にないってのはおかしい、どうやら私も最近までは『消滅』による記憶改変の影響を受けていたようだ。
「じゃあなんで私も覚えていられるの?」
「それは……分からん。何せ今まで記憶を保っていられるのは彼女だけで、共通点なんてものは調べることも出来なかったからな。俺達もてっきり、異形の血が濃く入っているのが理由だとばかり思っていたが……」
どうやらそういうわけでもない、と。
記憶が継続される理由さえ見つけることが出来れば、これは現状ほぼ手探りである私たちにとって大きな一歩となる。
今まで見過ごして来たものに気付けるし、それが糸口となって全ての解決につながる可能性だって見えてくるだろう。
普段の態度はどこへやら、一呼吸置きキリリと眉を引き締めた彼女は告げた。
「以前の大規模な消滅がおよそ一年前、フォリアちゃん、貴女はきっとこの一年以内になにか特異な体験をしているはずよ」
3
あなたにおすすめの小説
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活
さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。
シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。
十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。
だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。
彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。
シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。
『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』
シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。
これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる