『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

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第百四十七話

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「それとこの黒目はカラコンよ。元々蒼なんだけど、日本じゃ結構目立つから……ほら」

 左目へ手をかざしたかと思えば、彼女の言う通り蒼い瞳が現れる。
 蒼い瞳と単に言っても大概は水色に近いものだが、かのじょのそれは海を思わせる程深い蒼。
 なかなかに神秘的で美しい。

「おお、綺麗」
「ありがと、貴女の金瞳きんどうも素敵ね」

 鏡で毎日見ているしあまりに当たり前すぎて、直に褒められると少しこそばゆい。

 それにしても身近な人が異世界人だった、というか人じゃなかった。
 ふむ。

「そういえば異世界から来たのに、体の構造とか変わんないの? 病気になりやすかったりだとか、いろいろ大変なことあったんじゃ」

 国を離れて暮らすだけでも、環境が合わなくてお腹を壊すなんて話があるくらいだ、世界単位での移動をした彼女たちが果たして、そのまま普通に暮らしていける物だろうか?
 そもそも『人』といったって、本当にそれはこの世界でも『人』の定義に当てはまるのか?
 というかなんか向こうの人には大丈夫だけど、こっちの人からしたらやばい病気とか持ってそう。

 あれ、近寄るのやめとこうかな。

「ちょ、ちょっと! じりじり離れないでよ!」
「ぬへー」

 後ずさりした私の肩を鬼気迫る顔で掴み、わさわさと揺さぶり始める彼女。

「安心しろ、こいつは基本的に間違いなく『人間』だ。そして異世界についてだが、どうやらこの地球に酷く酷似した環境だというのも間違いがない。いや、酷似しているというよりかは、大元は平行世界的存在であり、実質的に同じといっても過言ではない。唯一この世界と異なるのは、魔力をベースとした発展を遂げたところか」
「なるほどね……よく分かんないけど分かった」

 つまり大丈夫だということだろう、じゃあいいや。

 よく考えると、もし彼女がヤバい菌の塊だとして、周りの人がものすごい勢いで死んでいきそうだ。
 明らかにそんなの放置していられないし、町のど真ん中で暢気に受付なんてやっていられないだろう。
 そんな存在この世に生まれたことが罪だ、汚物は消毒するしかない。

 園崎さんが天然痘の擬人化ではないと分かったところで、話は彼女自身についてから、問題のダンジョン崩壊による消滅へと移行した。

「園崎さんが今まで唯一、そして私が二人目の知覚者らしいけど……条件ってなんなの?」
「分からん。今までは異世界の人ならざる血が濃く入っているのが理由だと思っていたんだが……」
「じゃ、じゃあ私も人外のハーフだったとか!?」

 驚きにバシッと机を叩き立ち上がってしまう、

 衝撃の展開だ、私人間じゃなかった。
 もしかして私も、彼女が本をむしゃむしゃ食べるのみたいに、なにか隠された能力とかあるのだろうか。
 しゃきーんと両腕が武器になっちゃうとか。

 深い思案の海へ沈みかけた私を、目の前へ否定するように突き出された彼の腕がすくい上げる。

「いや、それはない。お前が消滅を知覚したのごく最近だろ」
「あ、確かに……ってなんで筋肉が決めつけるの。もしかしたらずっと前から知覚は出来たけど、見逃してるだけかもしれないじゃん」

 一瞬認めかけるも、超能力の可能性を諦めきれず、負けじと反論した私。
 しかし片肘をつき横で聞いていた園崎さんが口を開くと、あっさりと覆されてしまう。

「それはないわね。私がこの世界に来てからおよそ7の『人類未踏破ライン』が崩壊し、地図そのものが大きく書き換わっているもの。世界地図なんてまともに見ていなくとも、普通だったら違和感を覚える程の変化な上、起こった当初は町やニュースで大騒ぎされるのよ? たぶん貴女も最近までは記憶の改変がされていたわ」

 すらすらと紙の上に描かれた二つの世界地図。
 一つはロシアのあたりがちょっと変だが私がよく知ったものだが、もう一つは今とはだいぶ違う。
 今よりずいぶんと全体的にギザギザしているし、滑らかな線なんてどこにもないうえ、これなら面積も二倍近く大きいんじゃないだろうか。

 なるほど、確かにここまで大きく変わっているのだとしたら、流石の私でも気付くだろう。
 それに私は確かに見た。町も、ニュースも、ネットだってロシアの『崩壊』で大騒ぎになる姿を、人々がモンスターに襲われる凄惨な光景を。
 正直今でも思い出すとあの悲鳴が脳裏を過ぎり、少し気分が悪くなる。

 忘れられるってのは、もしかしたら幸せなのかも。

 この情報に溢れた社会、たとえ私自身が電子製品に触れていなかったとしても、きっとどこからか必ず小耳にはさむはず。
 一切記憶にないってのはおかしい、どうやら私も最近までは『消滅』による記憶改変の影響を受けていたようだ。

「じゃあなんで私も覚えていられるの?」
「それは……分からん。何せ今まで記憶を保っていられるのは彼女だけで、共通点なんてものは調べることも出来なかったからな。俺達もてっきり、異形の血が濃く入っているのが理由だとばかり思っていたが……」

 どうやらそういうわけでもない、と。

 記憶が継続される理由さえ見つけることが出来れば、これは現状ほぼ手探りである私たちにとって大きな一歩となる。
 今まで見過ごして来たものに気付けるし、それが糸口となって全ての解決につながる可能性だって見えてくるだろう。

 普段の態度はどこへやら、一呼吸置きキリリと眉を引き締めた彼女は告げた。

「以前の大規模な消滅がおよそ一年前、フォリアちゃん、貴女はきっとこの一年以内になにか特異な体験をしているはずよ」
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