『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

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第百三十八話

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「随分暇そうじゃないですか! あたしと一緒に遊ぼうぜお嬢ちゃん!」

 大量の紙袋を押しのけ顔を出した開口一番、あまりに唐突の誘いに困惑する。

 遊ぶ、か。

 正直そういう気分じゃない、自分が信じれず、暗闇の中で彷徨うような孤独感に押しつぶされそうだった。
 だがずっと暗い気持ちを引き摺っていても、現状なにもかわらないんだろうな、と、その程度のことは分かる。

 偶には気分転換も大事、なのかな。

「分かった、どこ行くの?」
「んーそうですね……あれ? 顔怪我してるんですか?」
「怪我?」

 ツンツンと頬を突かれるが、いったい何の話やら分からない。

 ほれ、ここですよと差し出された小さな鏡に映る、相変わらず愛想のない自分の顔。
 確かに目元に小さな黒い何か、といっても小指の爪ほどのサイズはある硬質な物体が張り付いていた。
 言われてみれば成程、かさぶたに見える。

 でも別に痛みとか感じなかったしなぁ、いつの間に出来たんだろう。
 普段自分の顔そんなに見ないから全く気付かなかったぞ。

 外れるかなと爪先で引っ張るが、先ほどまで何ともなかったのに、じんじんと痛みを放ちだし慌てて手を離す。

「あら、手も怪我してるんですね。もう少し自分の身体大切にしてくださいよ!」
「え? あ、本当だ……」

 彼女の言う通り、両腕の手のひらにも似たような瘡蓋が出来ていた。
 しかしこちらは妙に艶やかで無機質な、何かの結晶にも見える。
 その上結構大きい、なんで気付かなかったんだろうと自分でも結構驚きだ。

 彼女はおもむろに私の腕を取り、無駄にアルカイックなスマイルを浮かべる。

「ふっ……しょうがないですねぇ! 私の特別な魔法を使ってあげましょう! 『ヒール』!」

 あたたかな光が身体を包む、夏なので無駄に暑い。

 そういえば彼女は『回復魔法』を使えるんだった。
 とはいえ急いで治す必要があるわけでもないのに、わざわざ使わせてしまった事に一抹の罪悪感を覚える。

「ん、ありがと。でも別にこの程度の怪我、戦えばすぐ治るのに」
「まあまあ、暫くはダンジョン潜る予定もないので問題なしで……あれ?」

 治ってませんねぇ?

 疑問を抱えた声色と共に、彼女の細い指先が顔へ近づき……

「いだっ!? ちょっ、あんま弄らないで!」
「あ、ごめんなさい。なんなんでしょうねこれ?」

 頬の奥にまで染み込むような鋭い痛み。

 何でしょうと言われても私には分からない。
 私だって今さっき指摘されて気付いたのだ、医者でもないし。

 まあ弄らなければ痛みもないのだし、そのうち気付いたときには治っているんじゃないだろうか。

「うーん、そうですかね?」
「大丈夫だって。ね、早く行こ。この前会ったウニの幼馴染……橘さん? の店行きたい」
「あ、いいですねそれ!」

 そういえばこの前、シャワー浴びてた時腕にも似たようなのがあった気がするなぁ。



「でっか……」
「おお、ここが橘さんのお店……いつも通り過ぎてました」

 引き戸を鳴らし足を踏み込む。
 古物商には暗い部屋のイメージがあったのだが、来てみれば意外、結構照明はしっかりしていた。

「おっ、早速来てくれたんやなぁ。下らん物しかあらへんけど、まあゆっくりしていってや」

 カウンターへ退屈そうに腰掛けた橘さんが、丁度いいところに来たと言わんばかりの表情で手招きをする。

 しかし彼女へたどり着くまでがなかなか大変だ。
 妙に高そうな木彫りの何か分からない駒、大量の本や金属製の物体、変なお面に変な槍と、あちこちに触っていいのか分からないものが散らばっていて、歩くのも一苦労。
 第一変な物しかない。

 そこら辺の物に大した価値はないから、適当に持ち上げて山へ乗っけて行ってくれと言う橘さん。
 なんて適当なのだ、この店大丈夫か。

 えっさほいさ跨ぎ、どうしようもないものは彼女の言う通り山積みにしていくことで、どうにか置くまでの道を確保できた。

「なんか思ってたのと違う、もっと壺が並んでる物かと」
「随分とステレオタイプの古物商やなぁ。実際はこんなもんよ、個人経営のリサイクルショップ……的な?」

 ホンマに大事なものは裏に隠したるさかい、大丈夫やで。

「フォリアちゃん、見て見て」

 突然顔面アップで映し出された、1mはあろうかというレインボーなお面と槍。

「ホッ、ウホッ! エッサッサ!」

 お面を被ったまま不意に踊り、謎の民謡を歌いだす琉希。
 無駄に美声だった。

「ブフッ! ンナッハッハッハ! 君おもろいなぁ!」
「くふ……ん゛んっ。琉希、商品勝手に被るのはあんまり」
「ええよ。ほら、そこにも書いとるやろ? 『ご自由にお手に取ってご覧ください』って」
「いいの!?」
「どうせ二束三文やし。ほら、500円」

 琉希から一旦お面を受け取った橘さんは、ぺろりと裏の値札を見せつけいたずらに笑った。
 もう五年は店の脇に放置されていたらしく、よく見つけ出して来たな、とまた腹を抱える彼女。

「そういえばマサイ族とかテレビに出てる先住民って、狩りとか実際はほとんどしてないらしいですね。スマホバリバリに使ってるらしいです」
「そうなの!?」
「せやでー。そのお面もマサイ族の人が日本に来た時、知らん日本人なら売れるかなと思って自作したらしいんよ」

 琉希の言葉を肯定するように首を振る橘さん。
 古物商で埃をかぶっていたお面に遺された衝撃の事実は、私にまだ出会ったこともないマサイの人が結構下衆いという偏見を植え付けた。

 ちなみにこのお面は木彫りなのだが、廃材を拾ってきてペンキで塗ったようだ。

 どこからか椅子を引っ張り出して来た彼女は、そこに座ってええよとジェスチャー。
 その後暫し、実はマサイの人でも都会に出ている人は視力が普通だという話や、元の身体能力に優れる自然で暮らす彼らは、レベルアップでも身体能力が一般人より大幅に上がるという謎のマサイトークが繰り広げられた。

「あ! んー、ちょっと待っとき。とっておきのえらいおもろいお面見せたるわ」

 座っていた彼女が立ち上がり、店の奥へ姿を消す。

 はて、とっておきのお面とは?

 確か彼女は先ほど、本当に価値があるものを店の裏へ隠しているといっていた。
 わざわざとっておきと言って取りに行くくらいなのだから、この500円のお面よりは価値がある者なのだろうが……

「とっておきのお面……琉希はなんだと思う?」
「そりゃもう伝説のお面ですね! たぶん宝石とかすっごい付いてピカピカレインボーに輝いてるんじゃないですか」

 いや、流石にそれはないんじゃないかな。
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