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第百二十四話
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『アクセラレーション』を手に入れてから三時間ばかりたった頃、サボテンから逃げていたせいで道を見失ったためやみくもに走り回っていた時だった。
「うー入り口どこ……?」
確か地下に降りてきて……石の扉を開いた気がする。
砂漠の上にぽつんと何もない扉がおいてあるのだから簡単に見つかると思っていたのだが、砂の色も似たような白さなので全く見分けがつかない。
失敗だったなぁ、完全に迷ったぞこれ……
速度は落とさずちらりと後ろを向けば、サボテン達の群れが付いてきてた。
あちこち走り回っていたせいで随分と大きな群れになってしまった、たしかこういうのをトレインというのだったか。
どうやってこいつらは私を見つけているのかと思っていたのだが、どうやら目はない代わりに砂へ伝わる振動を感知しているらしく、大分離れたところからでもどんどん吸い寄せられてくるのだ。
めんどい。
「『アクセラレーション』……ふぅ」
どこか硬く感じる砂の上で座り込み息を整える。
二リットルペットボトルの水を飲み干し、ぽいっとそこらに放置。
地上ならともかくダンジョン内ならどうせそのうち魔力に分解されるのだ、世界中がやっていることを誰が咎めるだろう。
ぐるりと群れの後ろへ回り込み、カリバーを空高く突き上げた。
「『巨大化』、『スカルクラッシュ』っ」
銀と緑の水風船が連続して弾け飛び散る・
真下にいたサボテン達は、まだ自分がぐちゃぐちゃに叩き潰されたことにすら気付いていないだろう。
「くぅ……!」
伴って現れた腕のしびれと痛みに集中力が鈍り、即座に追ってくる回復で不快な感覚は拭い去られた。
まるで硬いものを無理やり殴り飛ばしたかのような衝撃、無理に『スキル累乗』のレベルを上げる以前も『累乗ストライク』でこの程度衝撃を受けていた気がする。
そういえば昔聞いたことがある、めっちゃ高いところから落ちると水面がコンクリートみたいに硬く感じると。
超高速で動き回り攻撃している現状、衝撃も尋常じゃないらしい……それこそ、『アクセラレーション』による保護すらも突き抜ける程に。
ダメージもその分上がるので回復は問題ないが、この骨がずれ、何度もこすれ合う痛みは……正直吐きそうだ。
「『スキル累乗』対象変更、『ストライク』」
しかしまあ、回復するなら実質ダメージは0だし危険はない。
危険がないということは安全ということだ、安全にレベル上げが出来るのだからこれは間違っていない。
ただこれを発動することでどれだけの衝撃があるのか、正直結構ビビってるので『スカルクラッシュ』ではなく『ストライク』で様子を見ることにした。
「ふぅ……よし、やるぞ……っしゃおらぁ! 『ストライク』……」
何が起こった
無茶苦茶だった。
雷撃が全身を舐めつくすような、激流に放り込まれた1枚のちり紙のような、痛みすら感じることのない暴力が私の全身を叩き潰した。
それを私は、ほんの一瞬も認識することすらできなかった。
きゅう、と視界が暗幕へ覆われる。
痛みすら感じない世界で、何も見えなくなってしまう。
不味い……こんな状況で気を失ったら……!
加速した世界で、私の意識すらもが置いて行かれる、指先が無数にぼやける。
突っ込め、アイテムボックスへ。そしてポーションを飲め、でないと……
これは、血?
それとも……ポー……しょ……
最後に見たのは、ぐちゃぐちゃに潰れた指先から滑り落ちた
パキ
「あ、っぶな……ぁ! ぺっ」
死ぬかと思ったぁ! もう駄目かと思ったぁ!?
噛み砕かれた瓶がいたるところに突き刺さり、血まみれになった口内からポーションの瓶を吐き捨て、まっすぐに戻った指先をぺろりと舐める。
すぐにのどの痛みも取れ唾ものみこめるようになった、そこそこいいやつを買ってきて正解だった。
たまたま寝転んだ状態で取り落としたポーションが口の中に入ったから助かったものの、本日2度目の自分のスキルによる死を迎えるところであった。
また私が死んでしまう、こいついっつも死にかけてんなとか言われてしまう。
加速した世界での『累乗スキル』は危険だ、今回は運がよかったが多分次は助からない。
一気に片づけられるかなと思ったが今回はやめだ、おとなしく普通のスキルだけ使ってサボテンの殲滅に従事しよう。
「くっそ……お前らマジで許さんからな」
長距離の移動で萎び体力が減ったサボテンを見つけては怒りのままに蹴飛ばし、叩き潰し、もう一度叩き潰す。
「お客様のっ! 中にっ! お疲れのサボテン様はいらっしゃいませんかぁっ!?」
バキッ! メキョッ! ドゴォ!
まだ皮がピンっと張って生きのいい奴は残しておく。
果たしてどれくらい殴れば死ぬか分からないし、こいつら殴っても砕けてしまうので、強力なスキルで殴れば必ず倒せるって訳ではないからだ。
「『解除』」
加速世界が解除された瞬間、弱っていたサボテン達はほぼ同時に爆散し、砂漠の上に転がる小さな染みへとなり果てた。
その中心で一人佇むのは私だけ。他のサボテン達は何が起こったのかも理解せず、突然ごっそりと消えた仲間に同様でもしているのか、ピタリと動きを止めた。
植物特有の青臭い匂いが鼻を突き、風に掻き消される。
「……めっちゃかっこいいな、私」
いつの間にか肩にかかる程度まで伸びた金髪を風へ流し、ぽつりとつぶやく。
私が動きを止めた瞬間、相手からしたら1秒も経っていない刹那に仲間が爆散して、目の前で追っていた敵がこっちのど真ん中で立っていたわけでしょ?
超かっこいい、やってること完全にラスボスじゃん。
めっちゃアホな理由で死にかけたけど、誰にも知られていないからセーフだ。
良いじゃん、このスキル。
「うー入り口どこ……?」
確か地下に降りてきて……石の扉を開いた気がする。
砂漠の上にぽつんと何もない扉がおいてあるのだから簡単に見つかると思っていたのだが、砂の色も似たような白さなので全く見分けがつかない。
失敗だったなぁ、完全に迷ったぞこれ……
速度は落とさずちらりと後ろを向けば、サボテン達の群れが付いてきてた。
あちこち走り回っていたせいで随分と大きな群れになってしまった、たしかこういうのをトレインというのだったか。
どうやってこいつらは私を見つけているのかと思っていたのだが、どうやら目はない代わりに砂へ伝わる振動を感知しているらしく、大分離れたところからでもどんどん吸い寄せられてくるのだ。
めんどい。
「『アクセラレーション』……ふぅ」
どこか硬く感じる砂の上で座り込み息を整える。
二リットルペットボトルの水を飲み干し、ぽいっとそこらに放置。
地上ならともかくダンジョン内ならどうせそのうち魔力に分解されるのだ、世界中がやっていることを誰が咎めるだろう。
ぐるりと群れの後ろへ回り込み、カリバーを空高く突き上げた。
「『巨大化』、『スカルクラッシュ』っ」
銀と緑の水風船が連続して弾け飛び散る・
真下にいたサボテン達は、まだ自分がぐちゃぐちゃに叩き潰されたことにすら気付いていないだろう。
「くぅ……!」
伴って現れた腕のしびれと痛みに集中力が鈍り、即座に追ってくる回復で不快な感覚は拭い去られた。
まるで硬いものを無理やり殴り飛ばしたかのような衝撃、無理に『スキル累乗』のレベルを上げる以前も『累乗ストライク』でこの程度衝撃を受けていた気がする。
そういえば昔聞いたことがある、めっちゃ高いところから落ちると水面がコンクリートみたいに硬く感じると。
超高速で動き回り攻撃している現状、衝撃も尋常じゃないらしい……それこそ、『アクセラレーション』による保護すらも突き抜ける程に。
ダメージもその分上がるので回復は問題ないが、この骨がずれ、何度もこすれ合う痛みは……正直吐きそうだ。
「『スキル累乗』対象変更、『ストライク』」
しかしまあ、回復するなら実質ダメージは0だし危険はない。
危険がないということは安全ということだ、安全にレベル上げが出来るのだからこれは間違っていない。
ただこれを発動することでどれだけの衝撃があるのか、正直結構ビビってるので『スカルクラッシュ』ではなく『ストライク』で様子を見ることにした。
「ふぅ……よし、やるぞ……っしゃおらぁ! 『ストライク』……」
何が起こった
無茶苦茶だった。
雷撃が全身を舐めつくすような、激流に放り込まれた1枚のちり紙のような、痛みすら感じることのない暴力が私の全身を叩き潰した。
それを私は、ほんの一瞬も認識することすらできなかった。
きゅう、と視界が暗幕へ覆われる。
痛みすら感じない世界で、何も見えなくなってしまう。
不味い……こんな状況で気を失ったら……!
加速した世界で、私の意識すらもが置いて行かれる、指先が無数にぼやける。
突っ込め、アイテムボックスへ。そしてポーションを飲め、でないと……
これは、血?
それとも……ポー……しょ……
最後に見たのは、ぐちゃぐちゃに潰れた指先から滑り落ちた
パキ
「あ、っぶな……ぁ! ぺっ」
死ぬかと思ったぁ! もう駄目かと思ったぁ!?
噛み砕かれた瓶がいたるところに突き刺さり、血まみれになった口内からポーションの瓶を吐き捨て、まっすぐに戻った指先をぺろりと舐める。
すぐにのどの痛みも取れ唾ものみこめるようになった、そこそこいいやつを買ってきて正解だった。
たまたま寝転んだ状態で取り落としたポーションが口の中に入ったから助かったものの、本日2度目の自分のスキルによる死を迎えるところであった。
また私が死んでしまう、こいついっつも死にかけてんなとか言われてしまう。
加速した世界での『累乗スキル』は危険だ、今回は運がよかったが多分次は助からない。
一気に片づけられるかなと思ったが今回はやめだ、おとなしく普通のスキルだけ使ってサボテンの殲滅に従事しよう。
「くっそ……お前らマジで許さんからな」
長距離の移動で萎び体力が減ったサボテンを見つけては怒りのままに蹴飛ばし、叩き潰し、もう一度叩き潰す。
「お客様のっ! 中にっ! お疲れのサボテン様はいらっしゃいませんかぁっ!?」
バキッ! メキョッ! ドゴォ!
まだ皮がピンっと張って生きのいい奴は残しておく。
果たしてどれくらい殴れば死ぬか分からないし、こいつら殴っても砕けてしまうので、強力なスキルで殴れば必ず倒せるって訳ではないからだ。
「『解除』」
加速世界が解除された瞬間、弱っていたサボテン達はほぼ同時に爆散し、砂漠の上に転がる小さな染みへとなり果てた。
その中心で一人佇むのは私だけ。他のサボテン達は何が起こったのかも理解せず、突然ごっそりと消えた仲間に同様でもしているのか、ピタリと動きを止めた。
植物特有の青臭い匂いが鼻を突き、風に掻き消される。
「……めっちゃかっこいいな、私」
いつの間にか肩にかかる程度まで伸びた金髪を風へ流し、ぽつりとつぶやく。
私が動きを止めた瞬間、相手からしたら1秒も経っていない刹那に仲間が爆散して、目の前で追っていた敵がこっちのど真ん中で立っていたわけでしょ?
超かっこいい、やってること完全にラスボスじゃん。
めっちゃアホな理由で死にかけたけど、誰にも知られていないからセーフだ。
良いじゃん、このスキル。
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