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第八十話
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彼の撃ち出した小さな弾丸は無数の魔方陣を貫き、加速的に巨大な火球へ変貌する。木も、草も、そしてモンスターすらも等しく飲み込む暴虐の化身として。
相性だとかそういったものすら焼き切ってしまう、純白な熱量の塊。
今まで攻撃魔法という物を直に見たことはなかったけど、なるほど、これが魔法か。
もちろん相性だとか、敵への向き不向きも存在するのだろうが、もしこれを自在に扱えたのならそれほど探索が楽になるものもないだろう。
自分の妙に偏ったステータスが本当に口惜しい、0ってなんだ0って。
「あ、調整失敗したなコレ……」
『ええ!?』
「わりわり、二人とも身寄せろ。『金剛身』『クレネリアスの絶護』」
さほど悪いとも思っていなさげな口調のそれに驚愕し、しかし何かできるわけでもなく彼の背後へずりずりと身を寄せる。
アイテムボックスからだろう、サッと透明なシールドを取りだした伊達さんはそれを真正面に構えると、手早くスキルを唱えて衝撃に備えた。
直後、爆風。
光と音の繚乱はまるで天地がひっくり返ったかと思うほど、耳も目もおかしくなりそうだ。
肉片がこちらまで飛び散り、ぺたりと盾へ張り付いた後即座に光へ変わっていく。
「な、な、なんですの……これ……」
唖然と二人口を開き、はっと意識を戻した安心院が伊達へ詰め寄る。
「ちょっと派手にやり過ぎたな、使う魔石のレベルは五桁以下にした方がよさそうだわ」
「いやそうじゃなく! 支給の銃でこれだけの威力出るわけありませんわ!」
「ああ、そっちか」
伊達さんはポケットからいくつかの……なんだこれ、私から見たらよく分からないなにか、謎のパーツを取り出し得意げに語った。
「純化機構と放出量制御装置だ」
「じゅんかきこーと……?」
「制御装置……?」
彼が見せてるそれ、明らかに外してはダメそうなものなのだが。
え、この人警官なんだよね? 大丈夫? 街の平和任せちゃダメな人じゃない?
「今使われてる魔道具は基本ダンジョンから見つかったものを解析したものなんだがな、全部純化機構ってのが組み込まれてるんだわ」
じゅんかきこー……? 耳慣れない言葉過ぎてさっぱりだ。
私は普段その性質を利用しているが、魔石にはモンスターごとに属性や能力が異なる。どうやらじゅんかきこーとやらがその魔力の性質を綺麗に整え、扱いやすいように変えているらしい。
やはり外すのはあまりよろしくなさそうなものだが、じゅんかきこーを通すと魔力が減衰し、合計量自体は減ってしまうものだとか。
放出量制御装置はそのまま、一度に使う魔力の量を調整するものだろう。
つまりそれを外しちまえば魔術を発動しつつ、魔力の制限が無くなって超火力ってわけ。
銃を撫でニヤリと笑う伊達。
「ほら安心院、お前の銃出せ」
「え? あ、はい。でも何故?」
「そりゃお前、お前のも改造するからだよ」
「はぁ!? ちょっと返していただけます!? 大体備品を改造なんて規律違反ですわ!」
「ばれなきゃ犯罪じゃねえんだよ、大体規律違反なら勝手に飛び出したお前も人のこと言えねえだろ。ほら早くしろ、武器は強いほうがいいに決まってんだろうが!」
「う……そっ、それはともかくっ! いーやーでーすーわーっ!! 放してください! あほーっ!」
「警官って自由なんだ」
「この人だけですわ! ダメな大人、参考にしてはいけない存在ですの!」
「警察はいいぞぉ! 最新鋭の魔道具も触り放題だし。おっと、そういやさっきの話はあんまり一般人には知られてないんだったかな! んなははは!」
◇
「体調は?」
「うん、もう大丈夫。羊羹ありがとう」
「ええ、まあおやつだったのですけれど……たとえ普通の食事で栄養を補給していたとしても、激しい運動をするときにはエネルギー……糖質や脂質をしっかり補給することが大切ですわ。お菓子でも、何でもいいですけれど持ち込んで、次からは気を付けるとよろしくてよ」
「これ食うか、うまいぞ」
「うん」
カセットコンロを『アイテムボックス』から取り出した彼は、袋麺に野菜や肉などをバターで固めた、ぺミカンと言うらしい、を放り込んで煮込んだものを、紙のカップに注いで手渡してきた。
かなり気温的には温かな場所ではあるが、それでも冷たい食事よりは温かいものの方がおいしいと感じるのは不思議なものだ。
ずるずると麺を啜りこってりした汁を飲み干すと、ようやく体も普段通りに動けるよう活力がみなぎる気がしてきた。
いつもは日帰りだったし希望の実だけを食べていれば、物足りない分は外で食べて補えたから気が付かなかった、ただ普通の食事分だけでは補えないという事実。
もしかしたらずっと気分だとかが悪かったのも、これに原因の一端があったのかもしれない。
戦っている間に知る常識らしいが、私はスキルの都合上あまり人とも関われないし、何より探索者になってまだ半年たっていない。
ただ力があるだけじゃ、届かない場所がある。
知らないことがあまりに多すぎるのに、どこでどうやって知ればいいのか分からない。
私は何が見えていないの? どこまで理解できてるの?
何も分からない。
こんな時頭のいい人ならどうするのだろう。いや、頭がいい人はこんなことをそもそも考える必要もないのかな。
「それで、見ての通り私たちはあなたを救助しに来たわけですけれど」
「え? あ、うん」
ぼうっと考え込んでいるときにかけられた声で、びくりと背筋が伸びた。
「一つ、聞いてもよろしくて?」
「え……何?」
「何故貴女はあんな時間に、一人でダンジョンへ潜り込んだのかしら?」
それは、聞いてほしくなかった言葉、かな。
相性だとかそういったものすら焼き切ってしまう、純白な熱量の塊。
今まで攻撃魔法という物を直に見たことはなかったけど、なるほど、これが魔法か。
もちろん相性だとか、敵への向き不向きも存在するのだろうが、もしこれを自在に扱えたのならそれほど探索が楽になるものもないだろう。
自分の妙に偏ったステータスが本当に口惜しい、0ってなんだ0って。
「あ、調整失敗したなコレ……」
『ええ!?』
「わりわり、二人とも身寄せろ。『金剛身』『クレネリアスの絶護』」
さほど悪いとも思っていなさげな口調のそれに驚愕し、しかし何かできるわけでもなく彼の背後へずりずりと身を寄せる。
アイテムボックスからだろう、サッと透明なシールドを取りだした伊達さんはそれを真正面に構えると、手早くスキルを唱えて衝撃に備えた。
直後、爆風。
光と音の繚乱はまるで天地がひっくり返ったかと思うほど、耳も目もおかしくなりそうだ。
肉片がこちらまで飛び散り、ぺたりと盾へ張り付いた後即座に光へ変わっていく。
「な、な、なんですの……これ……」
唖然と二人口を開き、はっと意識を戻した安心院が伊達へ詰め寄る。
「ちょっと派手にやり過ぎたな、使う魔石のレベルは五桁以下にした方がよさそうだわ」
「いやそうじゃなく! 支給の銃でこれだけの威力出るわけありませんわ!」
「ああ、そっちか」
伊達さんはポケットからいくつかの……なんだこれ、私から見たらよく分からないなにか、謎のパーツを取り出し得意げに語った。
「純化機構と放出量制御装置だ」
「じゅんかきこーと……?」
「制御装置……?」
彼が見せてるそれ、明らかに外してはダメそうなものなのだが。
え、この人警官なんだよね? 大丈夫? 街の平和任せちゃダメな人じゃない?
「今使われてる魔道具は基本ダンジョンから見つかったものを解析したものなんだがな、全部純化機構ってのが組み込まれてるんだわ」
じゅんかきこー……? 耳慣れない言葉過ぎてさっぱりだ。
私は普段その性質を利用しているが、魔石にはモンスターごとに属性や能力が異なる。どうやらじゅんかきこーとやらがその魔力の性質を綺麗に整え、扱いやすいように変えているらしい。
やはり外すのはあまりよろしくなさそうなものだが、じゅんかきこーを通すと魔力が減衰し、合計量自体は減ってしまうものだとか。
放出量制御装置はそのまま、一度に使う魔力の量を調整するものだろう。
つまりそれを外しちまえば魔術を発動しつつ、魔力の制限が無くなって超火力ってわけ。
銃を撫でニヤリと笑う伊達。
「ほら安心院、お前の銃出せ」
「え? あ、はい。でも何故?」
「そりゃお前、お前のも改造するからだよ」
「はぁ!? ちょっと返していただけます!? 大体備品を改造なんて規律違反ですわ!」
「ばれなきゃ犯罪じゃねえんだよ、大体規律違反なら勝手に飛び出したお前も人のこと言えねえだろ。ほら早くしろ、武器は強いほうがいいに決まってんだろうが!」
「う……そっ、それはともかくっ! いーやーでーすーわーっ!! 放してください! あほーっ!」
「警官って自由なんだ」
「この人だけですわ! ダメな大人、参考にしてはいけない存在ですの!」
「警察はいいぞぉ! 最新鋭の魔道具も触り放題だし。おっと、そういやさっきの話はあんまり一般人には知られてないんだったかな! んなははは!」
◇
「体調は?」
「うん、もう大丈夫。羊羹ありがとう」
「ええ、まあおやつだったのですけれど……たとえ普通の食事で栄養を補給していたとしても、激しい運動をするときにはエネルギー……糖質や脂質をしっかり補給することが大切ですわ。お菓子でも、何でもいいですけれど持ち込んで、次からは気を付けるとよろしくてよ」
「これ食うか、うまいぞ」
「うん」
カセットコンロを『アイテムボックス』から取り出した彼は、袋麺に野菜や肉などをバターで固めた、ぺミカンと言うらしい、を放り込んで煮込んだものを、紙のカップに注いで手渡してきた。
かなり気温的には温かな場所ではあるが、それでも冷たい食事よりは温かいものの方がおいしいと感じるのは不思議なものだ。
ずるずると麺を啜りこってりした汁を飲み干すと、ようやく体も普段通りに動けるよう活力がみなぎる気がしてきた。
いつもは日帰りだったし希望の実だけを食べていれば、物足りない分は外で食べて補えたから気が付かなかった、ただ普通の食事分だけでは補えないという事実。
もしかしたらずっと気分だとかが悪かったのも、これに原因の一端があったのかもしれない。
戦っている間に知る常識らしいが、私はスキルの都合上あまり人とも関われないし、何より探索者になってまだ半年たっていない。
ただ力があるだけじゃ、届かない場所がある。
知らないことがあまりに多すぎるのに、どこでどうやって知ればいいのか分からない。
私は何が見えていないの? どこまで理解できてるの?
何も分からない。
こんな時頭のいい人ならどうするのだろう。いや、頭がいい人はこんなことをそもそも考える必要もないのかな。
「それで、見ての通り私たちはあなたを救助しに来たわけですけれど」
「え? あ、うん」
ぼうっと考え込んでいるときにかけられた声で、びくりと背筋が伸びた。
「一つ、聞いてもよろしくて?」
「え……何?」
「何故貴女はあんな時間に、一人でダンジョンへ潜り込んだのかしら?」
それは、聞いてほしくなかった言葉、かな。
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