『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA

文字の大きさ
80 / 257

第八十話

しおりを挟む
彼の撃ち出した小さな弾丸は無数の魔方陣を貫き、加速的に巨大な火球へ変貌する。木も、草も、そしてモンスターすらも等しく飲み込む暴虐の化身として。
 相性だとかそういったものすら焼き切ってしまう、純白な熱量の塊。

 今まで攻撃魔法という物を直に見たことはなかったけど、なるほど、これが魔法か。
 もちろん相性だとか、敵への向き不向きも存在するのだろうが、もしこれを自在に扱えたのならそれほど探索が楽になるものもないだろう。
 自分の妙に偏ったステータスが本当に口惜しい、0ってなんだ0って。

「あ、調整失敗したなコレ……」

『ええ!?』

「わりわり、二人とも身寄せろ。『金剛身』『クレネリアスの絶護』」

 さほど悪いとも思っていなさげな口調のそれに驚愕し、しかし何かできるわけでもなく彼の背後へずりずりと身を寄せる。
 アイテムボックスからだろう、サッと透明なシールドを取りだした伊達さんはそれを真正面に構えると、手早くスキルを唱えて衝撃に備えた。

 直後、爆風。
 光と音の繚乱はまるで天地がひっくり返ったかと思うほど、耳も目もおかしくなりそうだ。
 肉片がこちらまで飛び散り、ぺたりと盾へ張り付いた後即座に光へ変わっていく。

「な、な、なんですの……これ……」

 唖然と二人口を開き、はっと意識を戻した安心院が伊達へ詰め寄る。

「ちょっと派手にやり過ぎたな、使う魔石のレベルは五桁以下にした方がよさそうだわ」
「いやそうじゃなく! 支給の銃でこれだけの威力出るわけありませんわ!」
「ああ、そっちか」

 伊達さんはポケットからいくつかの……なんだこれ、私から見たらよく分からないなにか、謎のパーツを取り出し得意げに語った。

「純化機構と放出量制御装置だ」
「じゅんかきこーと……?」
「制御装置……?」

 彼が見せてるそれ、明らかに外してはダメそうなものなのだが。
 え、この人警官なんだよね? 大丈夫? 街の平和任せちゃダメな人じゃない?

「今使われてる魔道具は基本ダンジョンから見つかったものを解析したものなんだがな、全部純化機構ってのが組み込まれてるんだわ」

 じゅんかきこー……? 耳慣れない言葉過ぎてさっぱりだ。
 私は普段その性質を利用しているが、魔石にはモンスターごとに属性や能力が異なる。どうやらじゅんかきこーとやらがその魔力の性質を綺麗に整え、扱いやすいように変えているらしい。
 やはり外すのはあまりよろしくなさそうなものだが、じゅんかきこーを通すと魔力が減衰し、合計量自体は減ってしまうものだとか。
 放出量制御装置はそのまま、一度に使う魔力の量を調整するものだろう。

 つまりそれを外しちまえば魔術を発動しつつ、魔力の制限が無くなって超火力ってわけ。
 銃を撫でニヤリと笑う伊達。

「ほら安心院、お前の銃出せ」
「え? あ、はい。でも何故?」
「そりゃお前、お前のも改造するからだよ」
「はぁ!? ちょっと返していただけます!? 大体備品を改造なんて規律違反ですわ!」
「ばれなきゃ犯罪じゃねえんだよ、大体規律違反なら勝手に飛び出したお前も人のこと言えねえだろ。ほら早くしろ、武器は強いほうがいいに決まってんだろうが!」
「う……そっ、それはともかくっ! いーやーでーすーわーっ!! 放してください! あほーっ!」

「警官って自由なんだ」
「この人だけですわ! ダメな大人、参考にしてはいけない存在ですの!」
「警察はいいぞぉ! 最新鋭の魔道具も触り放題だし。おっと、そういやさっきの話はあんまり一般人には知られてないんだったかな! んなははは!」



「体調は?」
「うん、もう大丈夫。羊羹ありがとう」
「ええ、まあおやつだったのですけれど……たとえ普通の食事で栄養を補給していたとしても、激しい運動をするときにはエネルギー……糖質や脂質をしっかり補給することが大切ですわ。お菓子でも、何でもいいですけれど持ち込んで、次からは気を付けるとよろしくてよ」
「これ食うか、うまいぞ」
「うん」

 カセットコンロを『アイテムボックス』から取り出した彼は、袋麺に野菜や肉などをバターで固めた、ぺミカンと言うらしい、を放り込んで煮込んだものを、紙のカップに注いで手渡してきた。
 かなり気温的には温かな場所ではあるが、それでも冷たい食事よりは温かいものの方がおいしいと感じるのは不思議なものだ。

 ずるずると麺を啜りこってりした汁を飲み干すと、ようやく体も普段通りに動けるよう活力がみなぎる気がしてきた。

 いつもは日帰りだったし希望の実だけを食べていれば、物足りない分は外で食べて補えたから気が付かなかった、ただ普通の食事分だけでは補えないという事実。
 もしかしたらずっと気分だとかが悪かったのも、これに原因の一端があったのかもしれない。
 戦っている間に知る常識らしいが、私はスキルの都合上あまり人とも関われないし、何より探索者になってまだ半年たっていない。

 ただ力があるだけじゃ、届かない場所がある。
 知らないことがあまりに多すぎるのに、どこでどうやって知ればいいのか分からない。
 私は何が見えていないの? どこまで理解できてるの?
 何も分からない。

 こんな時頭のいい人ならどうするのだろう。いや、頭がいい人はこんなことをそもそも考える必要もないのかな。

「それで、見ての通り私たちはあなたを救助しに来たわけですけれど」
「え? あ、うん」

 ぼうっと考え込んでいるときにかけられた声で、びくりと背筋が伸びた。

「一つ、聞いてもよろしくて?」
「え……何?」


「何故貴女はあんな時間に、一人でダンジョンへ潜り込んだのかしら?」

 それは、聞いてほしくなかった言葉、かな。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...