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第六十三話 ポリ公
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両指の血管切っちゃったので投稿が非常に遅れてます……
申し訳ない!
----------------
「あれ、どうしたんですか顔なんて抑えて? どこかにぶつけました?」
「……なんでもない」
ちょっと大きめの勘違いをしていただけだ。
「耳赤くなってますよ? 風邪ですか?」
「……ちょっと黙ってて」
あー……あー……。
うん、あー……。
そうか、別にパーティをずっと組んでいる必要も、別にないのか。
会いたいときに会って、遊ぶだけでいいのか。
どうやら私はちょっとだけ、重く考えすぎていたのかもしれない。
◇
「うーん……着替えどうしよう」
リュックに下着、そして着替えと言いたいところなのだが、それが悩みどころ。
というのも、これから向かおうとしているダンジョン、Dランクの『炎来』がなかなかの厄介者なのだ。
名前からして分かる通り、ここ大変熱いらしい。
暑さの対策は二種類。
長袖ロングスカートで直接身が焼けるのを防ぐか、Tシャツ短パンで……つまり一般的な夏の暑さ対策をするかである。
理想としては通気性のいい長袖ロングスカートなのだが、私の強みは高い耐久力と俊敏、厚着をすればそれだけその強みを殺すことになる。
こういう時、動きの少ない後衛として戦えないことが歯がゆい。
「悩むけど……まあ仕方ないか」
そもそもスカートなど持っていないので買うことになるのだが、それも面倒だ。
まあいつも通りの服装で良いだろう。
二リットル入る水筒も買ってきたので、たっぷりの水とご飯代わりの希望の実も放り込んで準備完了。
さて、行くか。
◇
「人多い……」
電車を出てまず飛び込むのは、右や左へと動き回る黒い頭たち。
剣などの武器を持っているのは探索者、しかしそれだけではなく、単純にスーツなどを着込んで仕事へ向かう人も多い。
まあ駅なのだから当然か。
電車に揺られ小一時間、『炎来ダンジョン』が存在する街は私が住むところからそこそこ遠かった。
これを毎日はなかなか疲れる。
私自身居住地があるわけでもないし、ダンジョン攻略まで拠点をこちらに移すのもありかもしれない。
それにしても……出口の改札が分からない。
「……っと。あっ、すいません……ん……」
人の流れに合わせふらふらと、あちらこちらへ身体が流されていく。
誰もかれもがあくせく忙しない、どうして人はこうも毎日を落ち着きなく生きていくのだろう。
結局人々が向かうのは出口だろうしと、抜け出すのは諦めて流れに身を任せ、じわりじわりと前進。
汗、化粧品、そして洗剤の匂いなどが混然一体となって、普段人ごみに慣れていない私には中々強烈な匂いだ。
進んだ距離自体はさほど長いものでもないし、時間も大して立っていないはずなのだが、改札が見えた時には私は疲労困憊になっていた。
まだダンジョンに潜っていないのに、どうしてこうも頭が痛くなってくるのか。
ちょっぴり疲れた。
ポケットに手を突っ込めば多少の小銭、そして目の前の駅構内にはお誂え向きの、ガラガラなチェーン喫茶店。
これは神様がちょっと休めと言っているに違いない。
コーヒーの香ばしい香りにふらふらと誘われ、暖かな印象の板張りされた店内へ足を踏み入れる。
苦いものは嫌いだが、コーヒーの匂いだけなら好きだ。
泥水より苦い点を除けば、紅茶に勝るとも劣らない良い匂いだと思う。
紅茶とクッキーを頼み、窓際の席で漸くゆるゆると体の力を抜く。
「ふぅ……あち」
腑抜けた気持ちでカップを傾けた瞬間、とろりとした琥珀色の液体が口蓋を焼く。
地味に痛い……
よく考えればもう夏も近い、アイスで頼めばよかったかもしれない。
ざらりとした火傷を舐めながら、横にあったスティックシュガーを一本、二本、三本と流し入れていく。
「ちょっとよろしくて?」
「え?」
「私、こういうものですの。貴女学校は?」
警官特有の制服に身を包んだ女性が私の肩を叩き、向かいの席へ座り込む。
穏やかな笑みを浮かべた彼女を見て、私は驚愕に目を剥いた。
髪型が凄い。顔の横の髪をなんだっけ……コロネ? そう、パンのコロネみたいな感じで巻いた人だ。
物凄い邪魔そうな髪型だ。この現代においてこんな髪型にするだなんて、一体何の罰を受けているのだろう。
それとももしかして、虐められているのだろうか。
彼女が胸元から取り出したのは、一つの警察手帳。
そこには自信ありげに胸を張った、しかし髪型は普通のショートカットな彼女。
名前を安心院 麗華、髪型だけではなく名前も凄い。
ふむ……
「単刀直入に言いますわ、最近ここらで事件が多発していますの。目撃者の証言には必ず、『金髪の女性』がそこにいたと」
「うん」
「貴女、見たところ学校も行かずにフラフラと、こんな時間に喫茶店でお茶とは、ずいぶん余裕がありますわね?」
これはもしかしなくとも、完全に疑われているのではないか。
背筋にたらりと、冷たいものが通る。
いやいや、勿論私は犯罪なんて犯したことがない。
頭は悪いが基本悪いことはしない、その弁えているつもりだ。
まあ復讐を胸に抱いている時点であまりよろしくないのかもしれないが、それはそれ、これはこれ。
面倒な勘違いをされても困る。こういった勘違いは放置するほど、後々になって重くのしかかってくると相場が決まっている。
あわててリュックから探索者のプレートを取り出し、彼女へ突き出す。
探索者になれるのは基本15以上、これで私が小学生だとか、或いは中学生だとかの勘違いは解消される……はず。
ふむふむと確認を終え、手帳へ何か書き込んでいく麗華さん。
よしよし。
相手が警察だと思うと、別に何か悪いことをしたわけではないのに、不思議と息が詰まるのはなぜか。
取り敢えずさっさといなくなってほしい。
お茶が冷める……いや、飲みやすくなるためには冷めた方がいいのか。取り敢えず見知らぬ人間と、痛くもない腹の探り合いなんてする趣味はないのだ。
「よく分かりましたわ……貴女が事件に関与している可能性が高いということが!」
「は?」
「事情を聞きたいので、任意同行して頂いてもよろしくって?」
よろしくないが。
……取り敢えず
「お茶飲んでからでいい?」
申し訳ない!
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「あれ、どうしたんですか顔なんて抑えて? どこかにぶつけました?」
「……なんでもない」
ちょっと大きめの勘違いをしていただけだ。
「耳赤くなってますよ? 風邪ですか?」
「……ちょっと黙ってて」
あー……あー……。
うん、あー……。
そうか、別にパーティをずっと組んでいる必要も、別にないのか。
会いたいときに会って、遊ぶだけでいいのか。
どうやら私はちょっとだけ、重く考えすぎていたのかもしれない。
◇
「うーん……着替えどうしよう」
リュックに下着、そして着替えと言いたいところなのだが、それが悩みどころ。
というのも、これから向かおうとしているダンジョン、Dランクの『炎来』がなかなかの厄介者なのだ。
名前からして分かる通り、ここ大変熱いらしい。
暑さの対策は二種類。
長袖ロングスカートで直接身が焼けるのを防ぐか、Tシャツ短パンで……つまり一般的な夏の暑さ対策をするかである。
理想としては通気性のいい長袖ロングスカートなのだが、私の強みは高い耐久力と俊敏、厚着をすればそれだけその強みを殺すことになる。
こういう時、動きの少ない後衛として戦えないことが歯がゆい。
「悩むけど……まあ仕方ないか」
そもそもスカートなど持っていないので買うことになるのだが、それも面倒だ。
まあいつも通りの服装で良いだろう。
二リットル入る水筒も買ってきたので、たっぷりの水とご飯代わりの希望の実も放り込んで準備完了。
さて、行くか。
◇
「人多い……」
電車を出てまず飛び込むのは、右や左へと動き回る黒い頭たち。
剣などの武器を持っているのは探索者、しかしそれだけではなく、単純にスーツなどを着込んで仕事へ向かう人も多い。
まあ駅なのだから当然か。
電車に揺られ小一時間、『炎来ダンジョン』が存在する街は私が住むところからそこそこ遠かった。
これを毎日はなかなか疲れる。
私自身居住地があるわけでもないし、ダンジョン攻略まで拠点をこちらに移すのもありかもしれない。
それにしても……出口の改札が分からない。
「……っと。あっ、すいません……ん……」
人の流れに合わせふらふらと、あちらこちらへ身体が流されていく。
誰もかれもがあくせく忙しない、どうして人はこうも毎日を落ち着きなく生きていくのだろう。
結局人々が向かうのは出口だろうしと、抜け出すのは諦めて流れに身を任せ、じわりじわりと前進。
汗、化粧品、そして洗剤の匂いなどが混然一体となって、普段人ごみに慣れていない私には中々強烈な匂いだ。
進んだ距離自体はさほど長いものでもないし、時間も大して立っていないはずなのだが、改札が見えた時には私は疲労困憊になっていた。
まだダンジョンに潜っていないのに、どうしてこうも頭が痛くなってくるのか。
ちょっぴり疲れた。
ポケットに手を突っ込めば多少の小銭、そして目の前の駅構内にはお誂え向きの、ガラガラなチェーン喫茶店。
これは神様がちょっと休めと言っているに違いない。
コーヒーの香ばしい香りにふらふらと誘われ、暖かな印象の板張りされた店内へ足を踏み入れる。
苦いものは嫌いだが、コーヒーの匂いだけなら好きだ。
泥水より苦い点を除けば、紅茶に勝るとも劣らない良い匂いだと思う。
紅茶とクッキーを頼み、窓際の席で漸くゆるゆると体の力を抜く。
「ふぅ……あち」
腑抜けた気持ちでカップを傾けた瞬間、とろりとした琥珀色の液体が口蓋を焼く。
地味に痛い……
よく考えればもう夏も近い、アイスで頼めばよかったかもしれない。
ざらりとした火傷を舐めながら、横にあったスティックシュガーを一本、二本、三本と流し入れていく。
「ちょっとよろしくて?」
「え?」
「私、こういうものですの。貴女学校は?」
警官特有の制服に身を包んだ女性が私の肩を叩き、向かいの席へ座り込む。
穏やかな笑みを浮かべた彼女を見て、私は驚愕に目を剥いた。
髪型が凄い。顔の横の髪をなんだっけ……コロネ? そう、パンのコロネみたいな感じで巻いた人だ。
物凄い邪魔そうな髪型だ。この現代においてこんな髪型にするだなんて、一体何の罰を受けているのだろう。
それとももしかして、虐められているのだろうか。
彼女が胸元から取り出したのは、一つの警察手帳。
そこには自信ありげに胸を張った、しかし髪型は普通のショートカットな彼女。
名前を安心院 麗華、髪型だけではなく名前も凄い。
ふむ……
「単刀直入に言いますわ、最近ここらで事件が多発していますの。目撃者の証言には必ず、『金髪の女性』がそこにいたと」
「うん」
「貴女、見たところ学校も行かずにフラフラと、こんな時間に喫茶店でお茶とは、ずいぶん余裕がありますわね?」
これはもしかしなくとも、完全に疑われているのではないか。
背筋にたらりと、冷たいものが通る。
いやいや、勿論私は犯罪なんて犯したことがない。
頭は悪いが基本悪いことはしない、その弁えているつもりだ。
まあ復讐を胸に抱いている時点であまりよろしくないのかもしれないが、それはそれ、これはこれ。
面倒な勘違いをされても困る。こういった勘違いは放置するほど、後々になって重くのしかかってくると相場が決まっている。
あわててリュックから探索者のプレートを取り出し、彼女へ突き出す。
探索者になれるのは基本15以上、これで私が小学生だとか、或いは中学生だとかの勘違いは解消される……はず。
ふむふむと確認を終え、手帳へ何か書き込んでいく麗華さん。
よしよし。
相手が警察だと思うと、別に何か悪いことをしたわけではないのに、不思議と息が詰まるのはなぜか。
取り敢えずさっさといなくなってほしい。
お茶が冷める……いや、飲みやすくなるためには冷めた方がいいのか。取り敢えず見知らぬ人間と、痛くもない腹の探り合いなんてする趣味はないのだ。
「よく分かりましたわ……貴女が事件に関与している可能性が高いということが!」
「は?」
「事情を聞きたいので、任意同行して頂いてもよろしくって?」
よろしくないが。
……取り敢えず
「お茶飲んでからでいい?」
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