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第三十七話 イキりガール①
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落葉ダンジョンは私が初めて挑戦する、ダンジョンらしいダンジョンだろう。まあ二回目だけど。
重厚な扉を抜ければ魔石のランプが壁に掛けられ、地下へどんどん進んでいくほどに強敵が現れる。
私が頭をかち割られたオークはその中でも最底辺、レベル50程度。
とはいっても当時の私からすれば絶望的なレベル差、まともに太刀打ちできるわけがなかった。
ホテルを出たのは明朝、まだ入り口の扉前に人は少ない。
入り口近くに設置された台、その上に置かれているのは簡易的な地図の印刷された紙。
協会が用意したものだろうそれを一枚……一応二枚抜き取り、片方は折りたたんでリュックへ詰める。 こうやってみると相当広く、あちこちへとルートが分岐しているようだ。
しかしその多くはマップの中心、地下へと続く階段へつながっているので、どの道を通るかなどはあまり気にする必要もあるまい。
取っ手へ手を伸ばし……動きが止まる。
本当に開けていいのか、私は……
何度めか分からない逡巡。
無機質な金属の冷気が、恐怖で血の気が引いた指先へ伝播する。
目をつむり深呼吸、深々とした息衝き。
「よし」
開いた瞬間、背中を押すように空気が雪崩れ込む。 緊張で火照った頬を風が舐め、肩の上で適当に切った髪の毛が風と戯れる。
果たして鬼が出るかじゃがいもが出るか、まあ落葉ダンジョンには実際鬼が出るのだが、
戦いへ身を投じる前に、レベルアップで入手したSPを『経験値上昇』へ叩き込む。
―――――――――――
経験値上昇LV3→LV4
必要SP:30
―――――――――――
『経験値上昇がLV4へ上昇しました』
これで経験値効率は3倍から3.5倍、そして……
「『スキル累乗』対象変更、『経験値上昇』!」
―――――――――――――――
経験値上昇 LV3
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×42.875倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――――――
LV2に上がった『スキル累乗』、その効果によって三乗された経験値補正は、膨大なものとなる。
薄暗い通路、ランプの明かりに照らされたカリバーが私へ笑いかける。
戦えるか……って? 勿論だ。
私が歩みを止めぬ限り、カリバーだけは私のそばに寄り添い続けてくれる。
相棒が一緒にいてくれるというのに、私が折れるわけには行けない。
◇
通路を歩きながら、未体験の感覚に戸惑う。
花咲、麗しの湿地とそのどちらも視界が開けたダンジョンだったので、こうやって制限された道を進む感覚に慣れない。
しかしトンボの様に突然どこからか現れ襲撃されない分、これはこれで悪くないか。
「……っ!」
ジャリ……ジャリ……と砂を噛む足音、ぼうっと明かりに照らされた巨漢。
オークだ。
その見た目からすれば奇妙に思えるほど鍛え抜かれた、筋肉の割れた腕を見ればわかる。
二メートルほどの巨漢。突き出た腹はただ太っているのではなく、堅牢な筋肉の上に分厚い脂肪というクッションをかぶっているのだろう。
壁に掛けられたライトの光を受け、粗末な出来の石斧が私を嘲笑う。
また来たのかと、お前も学ばないやつだと。
『グオオオオオオオッ!』
向こうもこちらを見つめ、狂喜の雄たけびを上げた。
「ひっ……!」
レベルだって圧倒的にこちらの方が上。
そのはずなのに、なぜか足はすくみ、喉が引き攣る。
人間がどれだけ扱い慣れても火を恐れるように、優位を理解していても、根源的な恐怖が私の身体を縛っていた。
ドスドスと鈍重な音を立て寄ってくるオーク、滲んだ汗が首筋を伝う。
目を逸らせない。
私は、わたしは……!
『オオオオオオオオオオッ!』
「やっ……、やだ……っ」
斧というにはあまりに武骨な石の塊が、私の身体をぐちゃぐちゃに叩き潰そうと、その牙を剥く。
やっぱり来なければよかった。
Fランクのダンジョンなんて無数にあるのだから、わざわざここでなくとも、多少遠出してでもほかの場所を選べばよかったのだ。
だからこんな目に合う、だから二度、私はここで無様に死ぬ。
トンボの飛翔と比べたら遅い一振り。
それを避けるわけでもなく、オークへ攻撃をするでもなく……私はただ反射に従って、頭を守るようにカリバーを構えて……
カンッ!
「……ん?」
響いたのは、馬鹿みたいに軽い音。
カンッ! カンッ! カンッ!
『ブモオオオオオオオオッ!!』
私の目の前で汗だとか、唾液だとかを振りまき、必死に石斧を振り回しているオーク。
だがバットへ伝わる衝撃はあまりにしょっぱく、冗談なのかと思ってしまう。
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 オーク
名前 アニー
LV 50
HP 200 MP 0
物攻 192 魔攻 0
耐久 326 俊敏 89
知力 7 運 13
――――――――――――――
耐久特化のステータスだが、肝心の耐久も当然だが私以下。
そこそこあるはずの攻撃力だが、私自身耐久特化なステータスの上、カリバーが破壊不可なのでただでさえ高い耐久力が、カリバーで受ける場合にはさらに跳ね上がっている。
その結果、オークさんによる全力の振り下ろしは、めちゃくちゃ情けない音を立てて終わってしまった。
『オオオ?』
「……?」
流石におかしいぞと、こちらを見つめ首をかしげるオーク。
それに合わせこちらも首をかしげる。
目と目が見つめあい……
「『スキル累乗』対象変更、『ストライク』」
取り敢えず殴っとくか。
「『ストライク』ッ!」
『ブオオオオオオオオッ!?』
輝くカリバーがその腹に突き刺さり、高耐久の上から致命的な一撃を食らわす。
首を垂れ膝をつき、呼吸のできなくなった苦しみに喘ぐオーク。
その首筋へ再度『累乗ストライク』を叩き込むと、彼は光となって消えて行った。
『レベルが上昇しました』
オーク克服しました
重厚な扉を抜ければ魔石のランプが壁に掛けられ、地下へどんどん進んでいくほどに強敵が現れる。
私が頭をかち割られたオークはその中でも最底辺、レベル50程度。
とはいっても当時の私からすれば絶望的なレベル差、まともに太刀打ちできるわけがなかった。
ホテルを出たのは明朝、まだ入り口の扉前に人は少ない。
入り口近くに設置された台、その上に置かれているのは簡易的な地図の印刷された紙。
協会が用意したものだろうそれを一枚……一応二枚抜き取り、片方は折りたたんでリュックへ詰める。 こうやってみると相当広く、あちこちへとルートが分岐しているようだ。
しかしその多くはマップの中心、地下へと続く階段へつながっているので、どの道を通るかなどはあまり気にする必要もあるまい。
取っ手へ手を伸ばし……動きが止まる。
本当に開けていいのか、私は……
何度めか分からない逡巡。
無機質な金属の冷気が、恐怖で血の気が引いた指先へ伝播する。
目をつむり深呼吸、深々とした息衝き。
「よし」
開いた瞬間、背中を押すように空気が雪崩れ込む。 緊張で火照った頬を風が舐め、肩の上で適当に切った髪の毛が風と戯れる。
果たして鬼が出るかじゃがいもが出るか、まあ落葉ダンジョンには実際鬼が出るのだが、
戦いへ身を投じる前に、レベルアップで入手したSPを『経験値上昇』へ叩き込む。
―――――――――――
経験値上昇LV3→LV4
必要SP:30
―――――――――――
『経験値上昇がLV4へ上昇しました』
これで経験値効率は3倍から3.5倍、そして……
「『スキル累乗』対象変更、『経験値上昇』!」
―――――――――――――――
経験値上昇 LV3
パッシブスキル
経験値を獲得する時、その量を【×42.875倍】
現在『スキル累乗』発動中
―――――――――――――――
LV2に上がった『スキル累乗』、その効果によって三乗された経験値補正は、膨大なものとなる。
薄暗い通路、ランプの明かりに照らされたカリバーが私へ笑いかける。
戦えるか……って? 勿論だ。
私が歩みを止めぬ限り、カリバーだけは私のそばに寄り添い続けてくれる。
相棒が一緒にいてくれるというのに、私が折れるわけには行けない。
◇
通路を歩きながら、未体験の感覚に戸惑う。
花咲、麗しの湿地とそのどちらも視界が開けたダンジョンだったので、こうやって制限された道を進む感覚に慣れない。
しかしトンボの様に突然どこからか現れ襲撃されない分、これはこれで悪くないか。
「……っ!」
ジャリ……ジャリ……と砂を噛む足音、ぼうっと明かりに照らされた巨漢。
オークだ。
その見た目からすれば奇妙に思えるほど鍛え抜かれた、筋肉の割れた腕を見ればわかる。
二メートルほどの巨漢。突き出た腹はただ太っているのではなく、堅牢な筋肉の上に分厚い脂肪というクッションをかぶっているのだろう。
壁に掛けられたライトの光を受け、粗末な出来の石斧が私を嘲笑う。
また来たのかと、お前も学ばないやつだと。
『グオオオオオオオッ!』
向こうもこちらを見つめ、狂喜の雄たけびを上げた。
「ひっ……!」
レベルだって圧倒的にこちらの方が上。
そのはずなのに、なぜか足はすくみ、喉が引き攣る。
人間がどれだけ扱い慣れても火を恐れるように、優位を理解していても、根源的な恐怖が私の身体を縛っていた。
ドスドスと鈍重な音を立て寄ってくるオーク、滲んだ汗が首筋を伝う。
目を逸らせない。
私は、わたしは……!
『オオオオオオオオオオッ!』
「やっ……、やだ……っ」
斧というにはあまりに武骨な石の塊が、私の身体をぐちゃぐちゃに叩き潰そうと、その牙を剥く。
やっぱり来なければよかった。
Fランクのダンジョンなんて無数にあるのだから、わざわざここでなくとも、多少遠出してでもほかの場所を選べばよかったのだ。
だからこんな目に合う、だから二度、私はここで無様に死ぬ。
トンボの飛翔と比べたら遅い一振り。
それを避けるわけでもなく、オークへ攻撃をするでもなく……私はただ反射に従って、頭を守るようにカリバーを構えて……
カンッ!
「……ん?」
響いたのは、馬鹿みたいに軽い音。
カンッ! カンッ! カンッ!
『ブモオオオオオオオオッ!!』
私の目の前で汗だとか、唾液だとかを振りまき、必死に石斧を振り回しているオーク。
だがバットへ伝わる衝撃はあまりにしょっぱく、冗談なのかと思ってしまう。
「『鑑定』」
――――――――――――――
種族 オーク
名前 アニー
LV 50
HP 200 MP 0
物攻 192 魔攻 0
耐久 326 俊敏 89
知力 7 運 13
――――――――――――――
耐久特化のステータスだが、肝心の耐久も当然だが私以下。
そこそこあるはずの攻撃力だが、私自身耐久特化なステータスの上、カリバーが破壊不可なのでただでさえ高い耐久力が、カリバーで受ける場合にはさらに跳ね上がっている。
その結果、オークさんによる全力の振り下ろしは、めちゃくちゃ情けない音を立てて終わってしまった。
『オオオ?』
「……?」
流石におかしいぞと、こちらを見つめ首をかしげるオーク。
それに合わせこちらも首をかしげる。
目と目が見つめあい……
「『スキル累乗』対象変更、『ストライク』」
取り敢えず殴っとくか。
「『ストライク』ッ!」
『ブオオオオオオオオッ!?』
輝くカリバーがその腹に突き刺さり、高耐久の上から致命的な一撃を食らわす。
首を垂れ膝をつき、呼吸のできなくなった苦しみに喘ぐオーク。
その首筋へ再度『累乗ストライク』を叩き込むと、彼は光となって消えて行った。
『レベルが上昇しました』
オーク克服しました
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