死んでもお前の恋人にならない!!!

桜崎 零(サクラザキ レイ)

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31 “それ”誰にやられたの?

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「…時間をくれ。」

本当はこの時点で俺の答えは決まっていた。
だが、あえて言わなかった。
何故なら_


“中間テスト”が迫っていたから。


テストは作ってあるし、何も問題ないのだが、
あいつら(俺の生徒)にとってこのテストは進路に繋がるもの。

しかも、ここの学校の偏差値60は余裕である。
そのため一学期の中間でさえ高得点を取るのは難しく、問題数も多い。

だから、今回のテストで
俺の生徒の出来具合を確認しておきたかった。
余計な(晃介)の事は考えないで…

…というのは半分で、
もう半分は腹を括るまでの時間稼ぎ。

あいつと付き合うとなると
ほとんどの行動を把握されるのはもちろん、
SEXは毎日迫ってきそうだし、
何より変態プレイをさせられそぅ……
考えるだけで鳥肌が立つ。

しかし、意外だったな。
あいつが俺の要求を飲むなんて、


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


2日前、
俺は時間を稼ぐためにいくつかの提案をした。

「…時間をくれ。」

「いいよ、でもいつまで?あんまり長いと俺、何しでかすかわかんないよ?」

目の奥が許可してない!
こいつが言うとマジでシャレになんねぇ…

「ちゅ、中間!中間テスト!!」

中間テストが終わるのは来週の金曜、
今は土曜だから約1週間は何とか……

「テストが終われば返事を聞かせてくれるってこと?」

今すぐにでも返事が出すように圧をかけてくるこいつの目はマジでキモイし怖い。

「…出来れば、採点が終わって全部返し終わるまで…」

「返すまで???」

ヒィー!!!
怖い!そしてキモイ!
なんでそんなに目が笑ってねぇーんだよ!!!
表情筋どうなってんだ!

まずい…
調子に乗りすぎてしまったか?

仕方ない、
この手は使いたくなかったが……

「やっぱ…ダメ…か?」

俺はうるうるの目でとびきりあざとく
上目遣いで頼んだ。

どうだ、
この女神のような美しさと可愛さを兼ねた
おねだりは。
ガチャで言うとSSR以上のレア度だぞ。
大学の先輩たちの誘いを断る為に身につけた技術、
俺のパンツでシコってたお前にこの顔はたまんねぇーだろ?


「うっ……!!!」

効果は抜群だ。

「もぉ~!そんな顔でお願いされたら断れないじゃんか…!」

イケメンで生まれて良かった。

「いいよ。ただし、それ以上先延ばしにするのはだめだからね?もししたら、強制的にどっちもやるからね?」

「どっちも…ってことは…?」

「俺と付き合って、あのガキも飛ばず」

「ひぇっ…!!」

「わかった?」

こいつ本気だ。
この10年で立場が逆転してしまうとは…
時の流れとはなんて残酷なんだ。

仕方ない、
ここは素直に従っておこう。

「はい…」

「よろしい。」

なんで脅されている側の俺が
子供のようにあしらわれているのだろう…
理不尽なことで親に怒られている子供の気持ちが
今ならよく分かる。

まずい、このままではこいつのペースに呑まれる。
何とか俺のペースに戻さなければ…

「だ、だがしかし!学校で俺に仕事以外の事で話しかけるな、触るな、あわよくば近づくな」

「えっ、近づくのも!?」

「おう。」

「…それは無理じゃない?真後ろの席だし、」

そうだった、
こいつと俺の机は真後ろにあって振り向けばすぐに話せてしまう…

「…わかった、それは許そう。だが、それ以外はなしだ!」

「えーー!!!!俺死んじゃうよ!!!」

「『えーー!!!!』じゃねぇ、破ったらこの話は無しにするぞ、」

「てか、立場逆転してない!?俺が脅してんのに!」

脅してる自覚はあるのかよ…
そりゃあ、あるか。
無いでやってる方がこえーよ。

「分かったら返事、」

「はい…」


こうして
俺達に謎の契約(脅し合い)が成立した。

まぁ、
ここまで全て
俺の計画通りだがな。(←たまたま)


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そんなこんなで今に至る。

月曜の朝、
俺は暗い気持ちで職場へ向かう。

今まで好きだった相手が昔の知人、
しかもヤンデレストーカーに脅されるともなると誰だって似が重くなるだろぉ?

しかも、
席は真後ろ…
絶対ちょっかいかけられるのは目に見えてる。

昨夜はその事ばかり考えて一睡も出来なかった…
おかげ目の下には大きなクマが…

「はあぁ、なんで俺がこんな目に……」

ため息をつきながら俺はドアノブに手をかける。

「セン…セ?」

弱々しく小さな声。

だが俺は知っている。
この声の主が誰なのかを、

「黒岩?」

そこに居た黒岩はいつもより顔色が悪く、
濃く俺よりも大きなクマをつけていた。

「あの…センセ…」

こいつ、
なんでこんなにソワソワしてるんだ?

「ごめん…俺…あのとき…」

あの時?


………


あっ、
そうだ…俺こいつに拉致られて襲われかけた挙句、
黒岩の目の前で泣き出して……




あぁぁぁぁあああぁあああぁぁぁああああああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁあああぁあぁぁああああああぁぁぁあぁぁぁぁあぁあああぁあああぁぁあぁああああああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁあああぁぁぁああああああぁぁぁぁああああああああぁぁあぁぁぁあ!!!!!


なんて屈辱、

なんて失態、

なんて…なんて…



穴があったら入りたい……


思い出してしまった…

あぁ…
どうして忘れていたんだ…

あの男(晃介)のせいで
金曜日の記憶が全て曖昧に…


それもこれも、
全部あいつのせいだ!!!!!!


「センセ…?」

「あぁ、あの時…な…大丈夫だ、気にするな、てかいっそ忘れてくれ……」

どうにかして黒岩の記憶を改善できないだろうか…

「そっ、そんな、俺あの時自分がしたこと後悔して…ごめん…謝って許されることじゃないって…分かってるけど…でも…どうしても謝りたくて…ごめん…」

こいつ、
こんなになるまで…

「俺の事…許さなくていいから…だから…」

「見捨てねえーよ。」

「えっ……」

「言ったろ、見捨てねえーって。俺は一度決めたら途中で投げ出したりしねぇんだよ。」

「ほんとに…?」

「おう。それに、言っちゃったからな。」

「?」

「『“チャンスを与えて導くのが俺が思う大人』だって。だから、さっさとそのシケた顔やめろ。調子狂う。」

「センセ…」

ほっとしたのだろうか。
へなへなっとした顔で笑う。

「まぁ、許してはねぇーけど」

「えっ…」

「当たり前だ、見捨てねえーとは言ったが、許すとは言ってない。」

そう言うと、
さっきとはまた別の顔で焦りだした。

「どっ、どうしたら…許してくれる?」

全く、
今時の奴は自分で考えもしねねげのか。

「はぁぁ…」

俺は小さくため息をつく。

だが、悩んで考えた結果反省しているのであれば、
こいつにチャンスを与えてやってもきっとバチは当たらないだろう。

「…明日からのテスト、全て90点以上とったらこれまでのこと、全部許してやってもいい。」

「えっ……」

「なんだ?怖気付いたのか?」

さすがの黒岩も
全教科90点以上となるとさすがに厳しいか。

「そんなんでいいの?」

「…はっ?そんなんでって…他の教科は知らないが俺のテストで90点以上たたき出すのはそうそう厳しいぞ?」

「いいよ。センセーがそれで許してくれるなら、俺頑張る!」

明日からテストが始まるというのに
余裕ぶりやがって……

まぁいい。
黒岩の顔色もさっきよりはるかによくなった。
テスト前に死人みたいな顔されても困るしな。

「口先だけじゃないといいけ…ど……どうした?」

黒岩の顔色が良くなったかと思えば、
今度はさっきより顔つきが変わった。

驚いているような…怒っているような…
色んな感情が混ざっていてとても複雑な顔を…
まるでこの世で一番おぞましい物を見たかよように…

「センセ…それ…」

「それ?」

そう言いながら指を指す黒岩は
どうやら俺の首を指さしている。

こいつがこんな顔をするほど、
一体俺の首に何があるのだというとか。

そういえばここしばらく
色々ありすぎてまともに鏡を見ていなかった。

だが風呂は入ったし髪だって整えてた、
服だってちゃんと_

俺は自分のスマホを取り出し内カメで自分の首元を映す。

「ーんだこれ!?」

そこにはなんと、“噛み跡”があった。

犬?猫?
いや、俺アパートだし…
てかこれどう見ても人のはがたじゃね?


…あっ、


2日前、
晃介に噛まれたことを思い出す。

「あんにゃろ!!!!」

2日前だと言うのに、何でまだ跡残ってんだよ!

「ねぇ…センセ、」

やべぇ、
黒岩の顔見れない…

俺は恐る恐る黒岩の顔を見る…

「“それ”誰にやられたの?」

「えーっと…」

どうしよう…なんて言う?

『実はこれ、赤羽先生にやられたんだ!』

なんて言える訳ながない!!!

もし言ったら…
今度は拉致られるだけじゃ済まない…
黒岩の顔がみるみる曇っていく…

まずい、
何とか誤魔化さねぇと、

「黒岩、これはだな…」

何とか言い訳をしようとすると、
後ろから誰かの気配が感じる。


嫌な予感がする……


俺はゆっくりと後ろを振り向く…


「おはようございます、“恋”さん♡」







最悪…
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