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ようこそ、さっそくですが
第九話
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「今日はお疲れ様でした」
美帆子が報告書に目を通す。
「お疲れどころじゃない……」
虹雨と由貴は真津探偵事務所で本日の業務の報告をしに美帆子のもとにやってきた。2人は全身汚れていて、ボロボロである。事務所に来なくてもいつもみたいにネットで報告書を送信すればよかったのだがこんな日に限ってシステムエラーが続いてわざわざやってきたのである。
「本当すいませんね、私が過去から依頼されている件を引き継いでもらって」
と事務所に真津マスターがコーヒーを持ってきてくれた。
「……引き継ぎの引き継ぎなんですよね」
「まぁ、そうなんですけどねぇ。本当すぐ失踪する猫でしてね、私の時もでしたがその前の仲間もとても苦労しましたよ」
真津マスターは苦笑いしてそそくさと部屋を出て行った。きっとまた失踪するであろう、そう虹雨と由貴は思った。
「まぁこれ以外はちゃんとあなた達の能力を活かせる仕事ばかりだから。ありがとう、ご報告」
「いえ……じゃあ。由貴、行くか」
虹雨が席を立とうとすると由貴が部屋の中をキョロキョロしている。何かを探しているのだろうか。
「どうしたの、由貴くん」
美帆子に声をかけられてハッとして由貴は狼狽えて飲みかけていたコーヒーをこぼしてしまった。
「あらあら……そのままにしてね、すぐ台拭き持ってくるから。お洋服にもついちゃってるじゃない」
「大丈夫です、服はもともと汚れていたし」
虹雨も近くにあったティッシュペーパーでコーヒーを拭き取る。そそっかしい由貴であるがあまりにも激しい狼狽であった。
2人は事務所を去る。とてつもなくヘトヘトである。車に乗って家に向かう中。
「由貴、探してたんやろ……渚さんを」
「ええええっ、な、んな……」
虹雨はやっぱり、と笑う。由貴は助手席で狼狽えている。
「渚さんに一目惚れしたんやろ」
「……一目惚れっていうか……綺麗な人だなって。虹雨はそう思わへんか」
「まぁ綺麗な人ってのは思ってたけど。なんとも」
「なんともって……そいや虹雨ってさあまり浮いた話聞かんよな」
由貴は虹雨に話を振った。
「恋人もおらんやろ」
「うん、おらん。お前もだろ」
「るっさい……虹雨はタイプな女はおらんのか」
由貴が茶化すと虹雨は笑ってはいなかった。
「好きな人はおるけどな」
「誰やー、お前の好きな女って。渚さんにもなびかないって……美帆子さんとかさ」
由貴は笑っている。
「……女と限らんやろ、たわけか」
ふと虹雨はつぶやくがそれは由貴には聞こえていなかった。
美帆子が報告書に目を通す。
「お疲れどころじゃない……」
虹雨と由貴は真津探偵事務所で本日の業務の報告をしに美帆子のもとにやってきた。2人は全身汚れていて、ボロボロである。事務所に来なくてもいつもみたいにネットで報告書を送信すればよかったのだがこんな日に限ってシステムエラーが続いてわざわざやってきたのである。
「本当すいませんね、私が過去から依頼されている件を引き継いでもらって」
と事務所に真津マスターがコーヒーを持ってきてくれた。
「……引き継ぎの引き継ぎなんですよね」
「まぁ、そうなんですけどねぇ。本当すぐ失踪する猫でしてね、私の時もでしたがその前の仲間もとても苦労しましたよ」
真津マスターは苦笑いしてそそくさと部屋を出て行った。きっとまた失踪するであろう、そう虹雨と由貴は思った。
「まぁこれ以外はちゃんとあなた達の能力を活かせる仕事ばかりだから。ありがとう、ご報告」
「いえ……じゃあ。由貴、行くか」
虹雨が席を立とうとすると由貴が部屋の中をキョロキョロしている。何かを探しているのだろうか。
「どうしたの、由貴くん」
美帆子に声をかけられてハッとして由貴は狼狽えて飲みかけていたコーヒーをこぼしてしまった。
「あらあら……そのままにしてね、すぐ台拭き持ってくるから。お洋服にもついちゃってるじゃない」
「大丈夫です、服はもともと汚れていたし」
虹雨も近くにあったティッシュペーパーでコーヒーを拭き取る。そそっかしい由貴であるがあまりにも激しい狼狽であった。
2人は事務所を去る。とてつもなくヘトヘトである。車に乗って家に向かう中。
「由貴、探してたんやろ……渚さんを」
「ええええっ、な、んな……」
虹雨はやっぱり、と笑う。由貴は助手席で狼狽えている。
「渚さんに一目惚れしたんやろ」
「……一目惚れっていうか……綺麗な人だなって。虹雨はそう思わへんか」
「まぁ綺麗な人ってのは思ってたけど。なんとも」
「なんともって……そいや虹雨ってさあまり浮いた話聞かんよな」
由貴は虹雨に話を振った。
「恋人もおらんやろ」
「うん、おらん。お前もだろ」
「るっさい……虹雨はタイプな女はおらんのか」
由貴が茶化すと虹雨は笑ってはいなかった。
「好きな人はおるけどな」
「誰やー、お前の好きな女って。渚さんにもなびかないって……美帆子さんとかさ」
由貴は笑っている。
「……女と限らんやろ、たわけか」
ふと虹雨はつぶやくがそれは由貴には聞こえていなかった。
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