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ようこそ、さっそくですが
第一話
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「遅い、遅すぎる」
「すいません」
先程の仕立て屋から慌てて出て少し歩いたところに少し昔ながらの喫茶店があった。そこに入るとさっきの仕立て屋の店主と同じ顔が2人、並んでカウンターにいた。女性の店員がやってきて
「お待ちですよ」
と目線を喫茶店の奥に座っていたのが、喫茶店と併設している真津探偵事務所所長の真津美帆子が待っていた瞬間、虹雨は冷や汗を流した。いつもヘラヘラしてのらりくらりしている虹雨がたじたじになる相手、そりゃ雇い主と雇われ。
いやそれ以上何かあるのだろう。
「そちらが例の幼馴染の由貴くん」
「はい、初めまして。すいません……遅刻してしまいまして」
「初めまして。動画は見たわ。素晴らしい編集と除霊作業お疲れ様。こちらに戻ってきたからには覚悟されているってことよね」
「……覚悟というか」
確かに覚悟よりも他に住む場所が無いだけであって地元に戻ってきたと言いたいところだがこんな自分を雇ってくれる人だと思おうと頷くしか無いと由貴は頷く。
「一応私は主人の跡を継いでって、今彼はあそこでコーヒーを淹れているあのマスターだけどさ」
美帆子が指差すカウンター奥では美帆子の年齢にしては夫というには少し歳が上では無いかと思うくらいの白髪混じりのオールバックの男性だった。
虹雨がいうには仕立て屋の店主の兄たちがここでマスターとして喫茶店を営んでいるようだ。
「主人は昔、警察で働きそのあとこの探偵事務所で探偵をやっていた。三年前に探偵業を引退し私がここに嫁いでから名前は探偵事務所だけども探偵業以外に他の分野のプロたちと業務提携して多岐にわたって運営しているの。あ、私は仕事の振り分けと、主に女性相談や夜逃げの手続きなどをしているわ」
「……夜逃げ……」
「その辺のことは後々話すから。まぁ探偵業は私自身やってないけど、何人か全国にいる探偵さんとオンラインで繋がってるし……そうそう虹雨ともネットで仕事を依頼して、あ……こないだのルームロンダリングにあのアパートの件もね。ここ最近は探偵業は浮気、不倫調査が多くて。あとは夫からの暴力から逃れたい女性の救出、夜逃げ手配……でもそれらよりも多い依頼は、除霊作業なの」
そこに先程の店員の女性が2人にコーヒーを持ってきた。一緒にトーストと茹で卵とサラダまで置かれる。この地域でこの午前中の時間帯はコーヒーに何かしらつくのはお決まりである。
それを丁寧に置くその女性と由貴は目が合う。
「私の娘……渚よ、と言っても主人の前の奥様との間の子供だけどね」
渚は表情を変えず会釈すると他の客の対応をしに去った。虹雨はこれこれ~とモーニングに喜ぶ傍ら、由貴は渚の後ろ姿を追った。
「……渚、さん……」
「すいません」
先程の仕立て屋から慌てて出て少し歩いたところに少し昔ながらの喫茶店があった。そこに入るとさっきの仕立て屋の店主と同じ顔が2人、並んでカウンターにいた。女性の店員がやってきて
「お待ちですよ」
と目線を喫茶店の奥に座っていたのが、喫茶店と併設している真津探偵事務所所長の真津美帆子が待っていた瞬間、虹雨は冷や汗を流した。いつもヘラヘラしてのらりくらりしている虹雨がたじたじになる相手、そりゃ雇い主と雇われ。
いやそれ以上何かあるのだろう。
「そちらが例の幼馴染の由貴くん」
「はい、初めまして。すいません……遅刻してしまいまして」
「初めまして。動画は見たわ。素晴らしい編集と除霊作業お疲れ様。こちらに戻ってきたからには覚悟されているってことよね」
「……覚悟というか」
確かに覚悟よりも他に住む場所が無いだけであって地元に戻ってきたと言いたいところだがこんな自分を雇ってくれる人だと思おうと頷くしか無いと由貴は頷く。
「一応私は主人の跡を継いでって、今彼はあそこでコーヒーを淹れているあのマスターだけどさ」
美帆子が指差すカウンター奥では美帆子の年齢にしては夫というには少し歳が上では無いかと思うくらいの白髪混じりのオールバックの男性だった。
虹雨がいうには仕立て屋の店主の兄たちがここでマスターとして喫茶店を営んでいるようだ。
「主人は昔、警察で働きそのあとこの探偵事務所で探偵をやっていた。三年前に探偵業を引退し私がここに嫁いでから名前は探偵事務所だけども探偵業以外に他の分野のプロたちと業務提携して多岐にわたって運営しているの。あ、私は仕事の振り分けと、主に女性相談や夜逃げの手続きなどをしているわ」
「……夜逃げ……」
「その辺のことは後々話すから。まぁ探偵業は私自身やってないけど、何人か全国にいる探偵さんとオンラインで繋がってるし……そうそう虹雨ともネットで仕事を依頼して、あ……こないだのルームロンダリングにあのアパートの件もね。ここ最近は探偵業は浮気、不倫調査が多くて。あとは夫からの暴力から逃れたい女性の救出、夜逃げ手配……でもそれらよりも多い依頼は、除霊作業なの」
そこに先程の店員の女性が2人にコーヒーを持ってきた。一緒にトーストと茹で卵とサラダまで置かれる。この地域でこの午前中の時間帯はコーヒーに何かしらつくのはお決まりである。
それを丁寧に置くその女性と由貴は目が合う。
「私の娘……渚よ、と言っても主人の前の奥様との間の子供だけどね」
渚は表情を変えず会釈すると他の客の対応をしに去った。虹雨はこれこれ~とモーニングに喜ぶ傍ら、由貴は渚の後ろ姿を追った。
「……渚、さん……」
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