最高で最強なふたり

麻木香豆

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ようこそ、さっそくですが

第二話

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 喫茶店にて美帆子と就労契約を正式に交わした由貴。他にも仕事の依頼は天狗様からのものと一般の人たちによるものと分かれているとのことだ。他にも何人か全国にいる霊媒師(事前に面接をしており、自称霊媒師や怪しいものは採用してはいないとのことだが)たちに振り分けているそうだ。

「どの霊媒師さんたちもすごく有能で優秀だけど一番信頼しているのは虹雨よ」
「そこまで言われると照れますなぁ~いっつも可愛がってもらってますぅ」

 とへこへこし始める虹雨。美帆子もじっとりとした目で彼を見る。由貴は思い出した。虹雨は誰に対しても愛想はいいがさらに自分を可愛がってくれる人に対してはすごくニコニコして尽くす。
 それは表面上のことだけだが。自分にとって利益になることがなければ送付乖離をしない。相変わらず自分にない世渡り上手な人だと由貴は感心する。

「そこに由貴くん、あなたが加わってからもっと精度は上がっているわ。虹雨とは違った能力があるのね……虹雨くんだけでもすごいけど2人揃うと最強になるのね」

 そう美帆子がいう。由貴は嬉しくなった。

「ありがとうございます。僕も久しぶりに虹雨と再会してまだそんなに経ってないけど楽しいですしあの時のように除霊ができると思うとワクワクしてきます」
「あの時?」

 美帆子にはあの時、はわからない。彼女だけでなくて他の人たちも。虹雨と由貴が子供の頃天狗様に霊能力を授かりこの町で除霊していたことは倉田の能力によって2人以外の記憶から消されたのだ。

「いや、なんでもない……余計なことを言うな、由貴」
「う、うん」

 そんな2人を微笑ましく美帆子は見ていた。

「そんな最強な2人に早速ですがご依頼が来てるからここの資料を読んで明日朝十時に指定された場所に行って除霊作業をよろしく。もちろん同時に動画撮影も許可済みだから由貴くん、バッチリ宜しくね」
「はいっ」

 由貴は喫茶店であるという大きな声で返事をしてしまい、他のお客や美帆子、そして奥にいるマスターが笑って恥ずかしいい気持ちになった。が、1人だけ笑ってはいない。
 渚だった。その無表情さの中にある澄んだ瞳に由貴は引き込まれていく。

「お前、なにぼっとしとんのや。返事だけ立派で中身ボーッとしとったらあかんやろ」
「すまんすまん……そいやこないだまでの除霊作業のお給料って僕の分はあるの」
 というと虹雨は目が泳いだ。
「おかしいわね、虹雨くんの通帳に由貴くんの分も入れたんだけど……」
「虹雨ぇっ!!!」
「わかったわかった!ちゃんと渡すからその手を離せ、首が苦しい!!!」
「ネコババしやがって」
「食事代しばらく出してたの俺なんだけど!!」

 美帆子は苦笑いして2人の喧嘩を眺めながらコーヒーを啜った。
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