楽に生きたい平民なのに一癖ある伯爵どころかその他大勢にも気に入られてしまい困っています

花田トギ

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秘密の関係

怒った幼なじみ

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「伯爵はいるか?」
「ええと、あの、どちら様で?」
 ザックスが入ったのは、使用人達が仕事をこなす区画だ。とは言っても人は多くなく、少数精鋭で業務をこなしているらしい。そこに通りかかった書類を運んでいた女性に声をかけると柱の影へと誘った。
「美しい人、伯爵に会いたいんだけど、どうすればいい?」
「美しいだなんて……!カッコイイ殿方にそんな風に言われるだなんて……ええと、伯爵様はお仕事をされていまして、お約束はスチュアート様を通さないと……」
 壁ドンならぬ柱ドンをしているザックスを、女性はうっとりと見つめている。
 本来ならば侵入者だが、彼女はザックスが正規の手順を踏んで来たと勝手に解釈したようだ。なぜなら、ラスール邸はとても平和だから。
 女性がザックスの腕に、指を絡めようとした時、美しい金の髪が目に入った。
「俺に用があるのか?」
「ん?」
 柱ドンしていた手を離し、ザックスがゆっくり振り返る。そこには、光を放つような美男子が自信満々に立っていた。
「は、伯爵様っ!」
「手を止めさせて悪いね。彼の相手は俺がするよ。、さあ、君は書類仕事に戻って」
「かしこまりましたっ」
 体を小さくして2人の前を通り抜ける。その時にちらりと2人を見比べた。
 黒髪の魔獣のような目をした男と、金髪の美術品のような伯爵。彼女のティタイムは、その話で盛り上がることだろう。
「さて、どうしたのかな?」
「ーーあんたがラスール伯爵?若いな……」
 ラスール伯爵は、たくさんの使用人の首を切った恐ろしい逸話がたくさん残っている。こんなに若いはずはないのだが。
「代替わりの話はなかなか浸透しないようだね」
 バカにしたような物言いに、先程までの怒りが再熱する。
「アディ……アデリアの事で話がある」
「ふむ。ここは人が通ることもある。あちらの部屋に招こうか。お茶は出さないけどね」
 こくり、と頷いて、ザックスは開かれた応接室へと足を踏み入れたのだった。

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