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0日目 プロローグ HELLO UNDERWORLD

記念イベント The Heaven Opening

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「あの~、よろしいでしょうか」
「はい」
「確認ですが、お二人はお知り合いですよね?」
「えぇ、そうよ」
「ええっと、ではなぜ通報内容が第三者
 プレイヤーとの口論となっているのですか?」
「えっと、それはですね」
「マイベストゥフレンドゥが私を避けるのよ!
 まったく私たちはベストゥフレンドゥなのに」
「それは貴方が余計なことをするからで」
「ゲームなんだから良いじゃない!もう!」
「それにも限度が」
「いい加減にしてください」
「はい?」
「あらぁん?」
「仲良き事は美しきかなとはいいますが、
 時と場所を考えてください。見たところ
 高校生でしょうが、締めるところは締めて
 ください。もう子供じゃないんですからね?」
「えっ?、いやなんで」
いいですね?分かってるよな?
「はい」
「はぁい」

 有無をいわさぬ迫力に、つい従ってしまう。
横でニヤニヤする変態がうざい。殴りたい。

「はぁ、それではお聞きしますが
 今回の騒ぎの原因は何ですか?」
「「それはこの(変態)」(牛女よぉ)」
「ああん?」
「あによ?」
「はいはい!そこまで!」
「むぅ」
「仕方ないわねぇ、早くすませちゃいましょ」
「そうね、そうしましょう」

 それから私たちはさっさと尋問を終わらせる。
二、三分くらいだ、そのくらいで終わる。

「はぁ、貴方達仲が良いでしょう?」
「そう?そうね、親友だものね」
「わたしの親友は変態ではなく可愛い女の子
 なんですがね?ミスターヒメハナバチさん」

  私の親友は断じてマッチョな変態ではない。
断じてだ!こんなのと親友だと知れた日には友達が居なくなってしまうだろう。
「あらぁ、ミスよ、ミ・ス。でも可愛いなんて、
 照れちゃうわぁ?うふふふっ。うれしいわぁ」
「言っておきますが、貴方に言った訳では無い
 のですよ、ヒメハナバチさん。貴方にはね?」
「あらあら、照れ隠ししちゃって。
 そんなところがいじらしくて可愛いわぁ」
「本当にムカつきますね、お子さまの癖に」
「あらぁ、此方では貴方がおこさまじゃなぁい?」
「何処見て言ってるんですか?貴方に無いものが
 二つ付いてるでしょう?貴方の分厚い胸筋では隠れて見えないか?可哀想に、そんなになってね?」
「あらあら、見えなかったわ背が高すぎてね、
 ところで貴方の言う二つの私について無いもの
 って、キン●マのことかしら?残念ながら、
 もうとっちゃってないのよねぇ。キ●タマはね」
「そうですか、無駄な胸筋は残っているのに」
「おほほほほ、どうとでも言いなさいな
 貴方のようなちんちくりんになにを
 言われてもまったく問題ではないのだから」
「ゲームの中ではね?それに私はこの身体を
 気に入っているよ?現実でもなりたいくらいね。でも現実で残念なのは君の様に体があまりに貧相
でとても見ていられないほどに可哀想な事かな?」
「ほんっとうに!仲が!!よろしいですね!!!」
「おっと」
「さあ、続きです。貴方達は放置するとすぐにでも
 漫才を始めるので、さっさと終わらせますよ!」
「わかったわぁん」
「それで?貴方達は知り合いで、私が呼び出
 されたのは単なる痴話喧嘩の仲裁だったと?」
「いや、痴話喧嘩ではなくてですね」 
「えぇ、まぁ、ある意味ではそうかしらん?」
「次に対処ですが、特に問題もないので注意で
 済ませておきます。が、次はないですからね?
 特に貴方!RPは良いですが配慮ください!」
「ええ、ごめんなさいね」
「それで問題なければ私は戻りますが、なにか?」
「ええ、そうね?特にはないわね」
「そうですね、横の以外にはないですね」
「それじゃあ私は戻ります。」
「ええ、さようなら~」
「お世話掛けました」
「それでは、さような」

 別れの挨拶をしていると近くから悲鳴が上がる。

「今度はなんですか?まったく」
「あらあら、まだ帰れそうにないわねん?」
「そのようですね。はぁぁ。私は行きますが、
 お二人はどうしますか?」
「私は少し見てくるわ」
「そうですね、私も野次馬してきます」
「そうですか、気を付けて下さいね」
「あら?貴方は行かないのかしら?」
「行くと言えば行きますし、行かないと言えば
 いきませんね。まぁ、どのみち関わりますがね」

 少し意味深な言葉を残して運営さんは振り返る。

「そう?よく分からないわ」 
「そんなものですよ。私たちに喋れないこと
 なのでしょう?厄介事の予感しかしませんね?」
「そうかしら?私はそうは思わないけど」
「そこのところどうなの?運営さん?」
「それは言えないことですので」
「それが答えね」
「さぁ」

 運営さんははぐらかしになっていない言葉を残して去っていった。

「それでは、またいずれ」

 そう言うと、運営さんはスッと溶けるように消えてしまった。後には何も残らない。

「さて、それでは私は騒ぎを見に行ってみよう
 かしらん?貴方も私と一緒に来るでしょう?」
「ええ、私もいきますよ。あ、そういえば」
「なに?」
「いえ、あの人の名前を聞いていなかったなと」
「あぁ、そうだったわね」
「またいずれと言っていたので、また会えたなら
 聞いておきましょうか。折角の知人なのですし」
「運営は知人に入るのかしらん?」
「それは関係ないと思いますよ」
「それもそうね」

 そんなこんなと話ながら付いた先では、
少し悪趣味な物が転がっていた。

「あらあら、悪趣味ねぇ」
「えぇ、まったく」
 
 そこに転がっていたのは下半身の無い腐敗した、内蔵を丸出しのまま息絶えていて、顔の皮の削れた
地面に引きずられたような跡のある熊の腐乱死体。
それを沢山のプレイヤーが囲んでいたのだった。
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