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0日目 プロローグ HELLO UNDERWORLD

記念イベント チュートリアル2

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 キャッツアイさんと分かれた後私は塁ちゃんにフレンドチャットを繋いでいた。

「もしもし、塁?」
「はいはーい、どうしたの?なんかあった?
あとこっちではヒメハナバチって呼んでね?」
「わかった、それで記念イベント会場に来たけどヒメハナバチは今何処にいるの?」
「私?私は今はじめの場所に向かってるとこ」
「わかった。それでどんなモデルなの?」
|だよ!」
「は?」
「だから、すごく!濃い顔の!変態!!」
「いや、濃い顔は分かるよ?でも変態?」
「そう!変態!!大丈夫、見たら分かるから!」
「いやわからn」プツッ

 塁め、ぶつ切りしたな。
しかし顔の濃い変態ねぇ?顔が濃いのは良い、
そんな人いくらでもいるからだ。しかし、ここに変態と付くと話は変わってくる。控えめに言って、 近づきたくない。
 あれでしょ?某海賊アニメの、ロックちゃんみたいなやつでしょ?うわっ、考えたくない。ソレが横を歩いてほしくない。

 顔の濃い美人ならよかったのに、変態って。

「ん?あれ?」

 ふと、回りを見ると大勢の人が私を見ている。

 なんでだろ?私何かしたっけ?通話はみんな
やってるし、他にはなにもしてない。いや、
まてまてまてまて。やばい、今気づいた。
私は先ほど変態と連呼していた。しかも、
ただの変態ではない。顔の濃い変態だ!
凄く、物凄く気不味い。逃げたい。

 このままでは、私は特殊カテゴリに入れられ、避けられてしまう。

 駄目だ、それは駄目だ。
せっかくフレンドになったキャッツアイさんにも、申し訳が立たない。怒られてしまう。

 最悪、フレンド解除もあり得る。
出来たばかりだが知人に迷惑はかけられない。
何とかしなければ!そんな私の耳に、悪魔の声が聞こえる。

………野太い、オカマの声だ。

「うっふふふぅーん。さぁて、私を待っている
 可愛い子はどこかしらん?私よぉ、貴方の
 ベストフレンド、ヒメハナバチよぉ?さぁ、
 出ていらっしゃいマイベストゥフレンドゥ?」

 ――嫌だ!
取り敢えず、逃げよう。
私が心に決めたその時。野太い声が正面から聞こえる。恐る恐る前を向くとそこには……….

………濃い顔の変態が仁王立ちからの覗き込みで佇んでいた。

 私は横に逃げる。それは即座に。

「あらぁん?」


ビクッ


 ま・ず・い!見つかった!いや、まだだ、
まだ終わらない。演技だ!それしかない!あの、濃い顔の変態と知り合いだと思われないためには!

 せめて仮面を買ってからでないと、主に私の心の天秤の釣り合いがとれない!

「あ、あの、なんでしょうか?」
「いえ、あの貴方、何処かで私と会ったことはないかしら?貴方の顔に見覚えがある様な気がするのだけど。心当たりはない?」
「いえ、特には」
「そうなの?変ねぇ、確かに貴方には見覚えがあると思うのだけれど私の勘違いだったかしら」
「そうですよ、只の勘違いです」
「そう?ごめんなさいね呼び止めて」
「いえいえ」

 よし、誤魔化せた!早くここから脱出を!

「ちょっと待って?」
 ビクッ
「は、はいなんでしょうか?」
「ほら、貴方不釣り合いな体型してるじゃない?それなのに動きにくそうにしてないから、
なにか種でもあるのかなって。あったら教えて ほしいな?と思ったのよん。どうなのかしら」

 なんだ、そんなことか。

「いえ、これは自前のもので、他が違うんですよ」

 そう言った瞬間、変態から表情が抜け落ちる。

「あら、そうなの」

 至極あっさりと自然に告げられた言葉が、
冷水のように背筋を打つ。産毛が逆立ち、
背筋が震える。

 理由は分からないが恐ろしいものを怒らせてしまったようだ。手が震え頬がひきつる。間違いなく、私は恐怖している。

「えっと、なにか?」
「あらあら、それは挑発?いいえ、違うわね。
 貴方のそれは天然ね、なにも分かっていない」
「それはどういう」
「問答無用!理由はどうあれ貴方は乙女の禁忌
 に触れたのよ!ただですむと思わないことね」
「いや、問答無用と言いながらまだ話すんですか」

 ブチッ
いま、通話とは別の物が確かに切れる音がした。

「ふふふふふふふっ」
「えっ、なに」

 カバッ

「ちょっ!」
「あら、よく避けたわね」
「なにするんです!」
「やぁねぇ、そんなに睨まないでよ。すこーし、ハグして上げようと思っただけよ。それだけ」
「嘘憑かないでください。貴方いま私を、
 その大きな手で捕まえようとしましたよね?」
「そうね、それがどうかしたのかしらん?」
「すぐにばれる嘘を憑いてなにか意味があるの?」
「やぁねぇ、気分よ、|・|・
「貴方おかしいですよ、直してあげましょうか?」
「そんなことはないわ、私は健康そのものよ。
この肌のつやを見て、同じことをいえるの?」
「貴方は朝に弱い人なのですね」
「あらあら、私は眼はよろしくてよ。
毎朝自分で身支度を整えているもの」
「でしたら貴方の眼でなくその鏡が悪いようね
買い換えてあげましょうか?真実の鏡にね」
「あら、結構よ。私は美しいから。貴方よりも」
「それは貴方の主観でしょう?客観から見て、
貴方はあまり大衆に好れる容姿をしていない」
「大衆の嗜好等、考慮する価値はないわ。
これが私の求めた、完璧なうつくしさよ」
「それは美しさではなく、奇抜さですよ、
ミスターヒメハナバチ。おわかりですか?」
「やぁだもぉー、私のことは、ミスって呼んで?」
「誰が呼びますか!しかも貴方、女性でしょう!」
「やっとぼろを出したわね、貴方?」
「はっ、しまっ」
「逃がさないわよーん?」

 ムギュ ムギギ

「ふもーっ!」
「あらやだ、かわいー!必死になっちゃってまぁ」

 タップ!タップ!もうむり、きっつい!

「はいはい、離してあげますよー」
「ぶはっぁ、けほっけほっ!」
「大丈夫?」
「貴方がやったんでしょう!この変態!」
「そうでしょ、すごいでしょこのモデル!」
「いや、確かに違和感ない位変態だけどさ!」
「リアルとはにてもにつかないでしょう?」

 確かにリアルと真逆の可愛くない髙身長だが。


流石に、酷過ぎやしないか?

「貴方が私をからかうのは眼に見えていたからね。こんな事するとは全然おもわなかったでしょ」
「ほんとにね、まったく」

これをするために、普通ここまでキャラを作ったり追い詰めたり、人前でやったりするかね?本当に。

「あの~」
「はい?」
「うん?」

 そんなことを話していると、私たちに話しかける影が一人。

「あの、すいません。通報を受けてきたんですが」
「えぇ?」
「あっ」

 誰かと思えばそれは運営の回し者だったのだ。

「大丈夫よ、この胸の重い人とは友達だから」
「えぇ、そこの胸筋お化けはともだちですよ」
「なに?」
「ぬぁんですって?」
「あの~、お話を」
「「貴方は黙って(なさい)」」
「あっはい」
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