極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん

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思いがけない告白

呼び出し=??

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 はー……なんとか間に合った。

 急いで着替えて準備したからか、思ったよりも余裕を持って戻ってこれてほっと息を吐く。

 紗代ちゃんも心配してるような素振りはなかったし、一件落着かな?

 ……まぁ、さっきの出来事は全然落着ではないんだけども。

 事故とは言え氷堂君に抱きしめられてしまった、そんな事実が頭に残り続けている。

 それに初めてあそこまで近距離で話もして、傷の手当てもして……な、なんて恐れ多いことをしてしまったんだろう……っ。

 でもあれは全部事故……ううん、ほとんどは私の勝手な行動だったよね。そう考えると、なんだか無性に申し訳なさが込み上げてきた。

「結衣ー? 何でそんな変な顔してんのー?」

 そして悩みながら席についたからか、前の席の紗代ちゃんが私を見て不思議そうに首を傾げた。

「そ、そんなに変な顔してたっ?」

「うん、すっごく。どしたの、悩みごと?」

 な、悩みごと……悩みごとって言っていいのかな、これは。

 そこまでたいそうな悩みではないし、正直のところ紗代ちゃんだとしてもこの話はできそうにない。

 それに……。

 頭に浮かんでくるのは、氷堂君ファンに追いかけられる私。

 想像するだけでも恐ろしい事態だって分かるし、そうすると氷堂君にもきっと迷惑がかかる。

 紗代ちゃんには申し訳ないけど、ここは言わないほうが吉だよね。

「う、ううんっ。なんでもないよ!」

「ほんとー? なーんか嘘っぽい気がするんだけど。何か隠してるでしょ?」

「何もないよ~……あはは。」

「隠し事してる人は、みんな大抵そう言うの。しかも結衣、気付いてないかもしれないけどめっちゃテンパってるよ。」

 うっ……紗代ちゃん、鋭い。

 言葉だけで分かっちゃうなんて、探偵になれるんじゃないかと思ってしまう。

 なんて思っている傍で、紗代ちゃんは探りを入れてくるように詰め寄ってくる。

「何があったか教えてもらおうかな~? 帰ってくるの遅くなったのも、それが原因でしょ?」

「お、遅いって気付いてたんだね……。」

「そりゃーね!結衣があんまりにも挙動不審だったから、ちょっとだけ泳がせてたの。」

 ふふんっとドヤ顔をした紗代ちゃんに、ぎこちなく口角が上がる。

 策士だ、紗代ちゃん……その能力、何か別のことに使ったほうがいいと思うんだけどなぁ。

 けど、察しのいい紗代ちゃんが何も聞いてこないのは変だなぁって思ってたから、これで腑に落ちた気がする。

 ちょっとだけ騙された感はあるけど……。

「……言わなきゃダメ?」

「もちろん! ちゃーんと一から十まで言ってもらうからねー!」

 こうなると、紗代ちゃんは一切聞く耳を持ってくれなくなる。

 紗代ちゃんが言いふらす、なんて思わないけど……まだためらってしまう。

 でも、不器用な私にはこれ以上隠しごとはできなさそうだった。

「……分かった、言います。」

「ふふ、そうこなきゃねっ!」

 わくわくしている紗代ちゃんの圧に、うっと押されそうになる。

 だけどそんな紗代ちゃんに少しの間だけ待ってもらい、一つ深呼吸をした。

「それじゃあ、話すね?」

 そして、とうとうさっきの一連の出来事を白状してしまった。



「……なるほどね。そりゃ隠したくなるはずだ。」

「分かってくれた……?」

「うん。それ広まったら、結衣は間違いなく氷堂ファンに追っかけられることになるだろうし。」

 「困ったわね……。」と小さな息を吐いた紗代ちゃんとは裏腹に、私はほっと安心した。

 分かってくれてよかった……。

 もし全部話して広まってしまったら、私の平穏な日常は永遠に戻ってこなくなると思う。

 それだけが不安で気がかりだったけど、紗代ちゃんもその辺りはわきまえてくれてるみたい。

 ……でも何故か紗代ちゃんは、面白そうにニヤリと口角を上げて私を見た。

「まさか、結衣があの氷堂秦斗と急接近かぁ~。あたしにとって最高、尊い、ありがたやありがたや。ほんっとメシウマものですわ。」

「……そ、そう?」

「そう!!」

 うーん、そんなにいいものではないと思うんだけどなぁ……。

 全く紗代ちゃんの考えてることが分からなくて、首を傾げずにはいられない。

「まぁでも何かあったわけじゃなくてほんと良かったぁ~~っっ!!」

 ガシッと肩を掴まれ、そのまま強い力でこれでもかと揺さぶられる。

「わっ、さ、紗代ちゃん待ってっ……よ、酔っちゃう……!」

「……あっ、結衣ごめんっ! 安心して思わず……」

「ううんっ、それは全然いいのっ。ちょっとびっくりしちゃっただけで。」

「気持ち悪いとことかないっ!?」

「うん、平気だよ!」

「良かったぁ……!!」

 今度は勢いよく正面から抱きつかれて、少しだけのけぞってしまう。

 けどやっぱり、紗代ちゃんは大切な友達だ。こんなに優しい子、私にはもったいない。

「お前らー、自分の席つけー!」

 そうしみじみ感じていたら、前触れもなく先生が教室に入ってきた。

 同時に予冷が鳴り響き、その時紗代ちゃんがこそっと耳打ちしてきた。

「また進展あったら聞かせてよねっ。」

 し、進展って……そんなのないよっ!

 何を期待しているのかそう言ってきた紗代ちゃんに、顔が熱を持ち出す。

 あれは事故、事故だよ……だから、もう氷堂君とは何にもない!

 うんうんと頷いて必死に言い聞かせる、けど……男の子耐性がない私にとっては、ドキドキしちゃうもので。

 そのことばっかり考えて授業に集中できないとかだったら、さすがにダメだよね。

『湖宮さん!!』

 っ……ううん、もう忘れよう。きっともう、関わることなんてない。あるはずがない。

 私はさっきよりも強く自分にそう言い聞かせて、ノートをとるためにシャーペンを走らせ始めた。



 氷堂君との事故があってから、数日が経った。

 あれ以来氷堂君とは全然関わっていない。小説や漫画にありそうなドキドキイベントも起こらず、今日も今日とて平凡な日々を送っていた。

 でも、何もないほうが絶対にいい。何か大変なことに巻き込まれたら、それこそ今の穏やかな日常がなくなってしまう。

 私は特別な人生を歩みたいわけじゃないから、地味に大人しく静かに過ごすのが吉。

 こっちのほうが、私の身の丈には合ってるし……。

 だけど、そう思っていた矢先だった。

「湖宮、ちょっといいか。」

「え? 私……?」

 紗代ちゃんと談笑しながら昼食をとっていた時、同じクラスの男の子に話しかけられたのだ。

 鋭い切れ長の目に、一見しただけだと不良だと思ってしまう風貌の持ち主の男の子。名前は確か……阿辺君、だったはず。

 顔が整っているから密かにいろんな女の子に推されていて、氷堂君と肩を並べるくらいの人気者。

 そんな阿辺君が私に何の用なんだろう……?

 阿辺君と私は関わりが全くないから、呼ばれる理由に心当たりはない。

 も、もしかして……私、阿辺君に何かしちゃったとか!?

「ねぇ、それって今じゃないとダメなの?」

 見覚えのない呼び出しにあたふたしている私のそばで、紗代ちゃんは威嚇するように阿辺君を見た。

 そんな紗代ちゃんの目つきは、思わずぶるっと身震いしてしまいそうなほど突き刺さるようなもので。

「別に金森の許可なんていらないだろ? 湖宮は金森のものじゃねーのに彼氏面とか笑えるわ。」

「結衣はものじゃないことなんてよーっく分かってるわ! 結衣はあたしの大親友よ‼」

 グルル……と唸り声が聞こえそうなほど食ってかかっている紗代ちゃんと、ハッと嘲るような笑いを浮かべている阿辺君。

 その間に挟まれた私は、この状況をどうしていいか分からない。

 だけど……とりあえずこの状況をなんとかしないといけないのは、さすがに分かった。

「分かったよ阿辺君、今なら大丈夫だからっ。」

「え、でも結衣……!」

「紗代ちゃん心配しないで、すぐ戻ってくるから!」

 不安そうな表情で私を見つめてくる紗代ちゃんに、にこっと笑顔を向けて教室を出る。

 いつまでも紗代ちゃんに頼りきりはよくないし、そろそろ自立しなきゃと分かっている。

 ……でも、不安に思っていないわけじゃない。むしろその逆だ。

 何を言われるか予想できないから、怖気づいている部分がある。

 ふと、大股で前を歩く阿辺君の背中が視界に入る。

 私と阿辺は、言うなれば別世界に住む人間。

 仮説でさえも立てられないから、疑問は増していく一方だ。

「……ここら辺でいいか。」

 うーんと深く考え込み始めた、その瞬間。

 おもむろに足を止めた阿辺君は、人気がこれっぽっちもない階段近くで振り返った。

 つられて私も歩くのをやめて、予想できないこれから起こる出来事に頭を悩ませる。

「湖宮。」

「は、はいっ!」

 神妙な面持ちの阿辺君の考えは、私には読めない。読めるはずもないんだ。

 つい反射で大きな声を上げてしまい、体が硬直する。

 そして阿辺君はそんな私をじっと見つめ……ゆっくりと、口にした。

「俺、湖宮のことが好きなんだ。付き合ってくれないか。」
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