虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる

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1章

26話 ナターシャ

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まだ息があるナターシャにハルトは話しかける。
「お前らの目的はなんだ?すべてを話すなら命だけは助けてやる」
「助けなんて……いらないわ。でも、そうね。私を負かした貴方には話してあげても……いいわね」

ナターシャを壁際に座らせ、ケビンとルッツが軽く応急処置を施した。
「さぁ、話してもらおうか」
「……私とアガレスはマナリスの幹部アスタロト様の部下よ。マナリスは全部で6人の幹部と一人のトップで構成されているわ。トップは顔も名前も知らない」

「なぜダンジョンを狙ったんだ?」

「ダンジョンには魔力制御コアがあるからよ」

「魔力制御コア?」
ハルトは皆の顔を見たが、皆知らないといった顔をして首を横に振った。

「ええ、そのコアがあれば強力な魔同兵器を造れるらしいわ。それを造るためにマナリスは各地のダンジョンを探して攻略すべく動いているの。魔王領でもダンジョンの監視は厳しく、私が潜伏しているこの街が一番都合がよかったのよ……。魔王サタナキアが攻めた風に見せれば人の国がサタナキアを潰してくれる可能性もあったしね……。まさかキールを倒せるものがあの町に居たのは予想外だったけど……」

「マナリスの次の目的はなんだ?」

「そんなの知らないわよ。私はこの街に10年いたんだから……。でもここで失敗したからには他のダンジョンを狙うでしょうね。アガレスが死んだことは魔力波ですぐに知られると思うから。これで私が知っている組織の情報は全部よ。さぁ。もう殺しなさい」

「最後に一つだけ質問する」

「何故お前は組織に加担していたんだ?」

「……それを聞いてどうするの?」

「お前は今まで人を殺したことがないだろう?」

「!?……どうしてそう思うの?」

「俺が生きてるのがその証拠さ。背後から無防備な俺を攻撃したのに急所を少しそらしていた。だから俺は能力を使って助かることができた。お前が人のことをなんとも思わない冷酷な魔族だったら確実に殺されていただろう」

「ふふ……あははは!……ええそうよ。私は人を殺したことが無い。さっきもあんたを殺すのに躊躇したわ。私が躊躇しなければ魔族の皆が勝っていたでしょうね。私は結局どこにいても使えない足手まといだったようね。…………私が組織に加担した原因はね。妹の仇を探すためよ」

「妹の仇?」

「ええ、私の妹は魔王領のある国の色町で務めていたの。サキュバスには本職だからね。でもある日いい人が出来たといって妹は色町を出ていったの。その男と暮らすってね。でもその連絡を境に妹と連絡が取れなくなってね。半年後、冷たくなった妹が闇市のある路地で発見されたわ。目撃者の話を聞くと胸に金のウロボロスのマークを入れた黒いローブの集団にやられたってわかったの」

マナリスのローブにそんな模様があったような。
「それって……」

「ええ、マナリスのマークよ。だから私は組織に入ってその時の情報を探ったわ。そしてたどり着いた、あの闇市を取り仕切っていたのはマナリスの幹部リリス。リリスは気に入った男がいると必ず自分の者にするそうよ。どんな手を使ってもね。妹は男を奪われて殺されたのよ。それを知りどうしてもリリスを許せないと思った。でも幹部はそう簡単に会えない。しかもリリスは男の部下しか雇わない。だから組織の仕事をこなして幹部になるしかないと思ったの。これで話は終わりよ。さぁ殺しなさい」

ハルトはルナとルシアの顔を見た。
二人ともハルトの考えを理解し無言で頷いた。
そしてハルトはナターシャに手をかざす。

「ケビン、ベンゼルいままで騙しててごめんなさいね。あなた達と居た時間。悪くなかったわ。さよなら」
二人は少し悲しそうな顔をして黙り込んでいた。
「…………」

直後ナターシャに向けたハルトの手が光始める。
ナターシャは覚悟を決めてそれを受け入れた。

しかし次の瞬間ナターシャはまだ自分が生きていることに気が付いた。
「えっ?」
両手も動くし傷の痛みも消えていた。

「お前の傷は全て治癒させてもらった。どこにでも行くといい。今後マナリスには関わらないようにな」

「はぁ!?私が許されて言い訳ないじゃない!!リーザスの街に魔族を引き入れたのよ!?さっきは貴方だって殺そうとしたわ!!」

「でも俺は死んでない。街だってナターシャが居なくなってマナリスはいずれ襲ってきてただろう」

「そんな……でも…………」

「ハルトがそう言うんだしいいんじゃねぇか?」
「ですね。元同僚が死ぬとこなんて俺も見たくないですしね」
「ベンゼル……ケビン……」
ナターシャの目から大粒の涙があふれた。

「でも……あたしの魔力波は組織に知られているからもうこの街にはいられないわ……」

「それならハルト様の街にくるといいんじゃないですか?」
ルシアが唐突にナターシャの勧誘を始めた。
「私はこんな、ご主人様に色目を使うような女の人が来るのは反対です!!」

「こ、こら二人ともその話は――」
「ハルトって田舎から出てきたって言ってたよな?自分の街があるってどういうことだ?」
ほら、こうなっちゃうじゃん!!
はぁ、もうごまかせないな。
ハルトは腹をくくって、街のこと、異世界のことそしてルナとルシナのことを皆に話した。

全員信じられないという顔をして驚いていた。
一番驚いていたのは普段冷静で表情が崩れるとことが想像できないエラルドだった。

たまらずルッツが口を開いた。
「信じられない……そんな世界があるなんて……」
「まぁ普通は信じられないと思う。俺も逆の立場なら信じろって言われても無理だと思う。でもあの世界ならナターシャが隠れ住むことも可能だと思うぞ。ただし俺の街に住むなら色々と条件は出させてもらう。それにきっちり仕事もしてもらう。それでもいいなら歓迎する」

「……いまだに信じられないが……もし本当にそんな世界が存在するというなら……よろしく頼む。条件はどんな条件でも構わない。奴隷としてでもいい」
「奴隷は流石にちょっと……」


「よし、んじゃひとまずナターシャの件はこれで解決だな。ひとまずダンジョンの奥まで行って魔族の目的だったものを回収して帰ろうか」

「……あ、ああ、そうだな」
エラルドは驚きすぎて固まっていた。
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