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1章
25話 敵の罠
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「いやあああああ!」
「ハルト様!!」
ルナとルシアの叫び声が狭い通路に響き渡った。
倒れ込んだハルトの後ろには血の付いた細剣を持ったナターシャの姿があった。
エラルドはナターシャに向けて弓を構えた。
「ナターシャ!何故!」
するとエラルド達の正面に立っていた魔族の男が不敵に笑いながら口を開いた。
「ふふふ。貴様ら、なぜ我々がこの街1番の冒険者がいないときを狙って襲撃を出来たと思う?どうして先に入っていたナターシャを素通りして我々がここにいると思う?追手がかかることを予測しないとでも思ったのか?」
「まさか……!?」
ケビンとベンゼルはナターシャを左右に挟んだまま距離を取った。
「ふふふ。そう、私はマナリスのスパイよ♪」
「でもお前はもう10年も前からこの街で冒険者として……」
「そうよ?だから誰も私を疑わないでしょう?前任の監査役は男だったから騙すのは簡単だったわぁ♪」
ナターシャの姿が徐々に変貌していく。
黒い羽に赤い瞳。そして悪魔のような尻尾。
「私は魔族、サキュバスなの♪あの町の男たちは私の正体も知らずにすぐ魅了されちゃうんですもの♪精気も奪い放題でいい日々だったわ♪ケビン?貴方が私に靡いてくれなくて悲しかったのよ?貴方みたいに精気に満ちた男を搾り取るのがさいっこうに気持ちいいのに♪」
「……くそっ!」
「さて、種明かしも済んだところでこいつらを殲滅して先を急ぐぞナターシャ」
「ええ、わかってるアガレス」
「我々が待ち伏せしていると読んだみたいだが、惜しかったな。……もし我々の狙いを看破出来ていたとしても貴様ら程度では私はおろかナターシャ一人にも勝てまいがな。ふふ」
エルロンとルッツは放心しきっているルナとルシアを守りながら前後を警戒した。
ケビンとベンゼルはナターシャをけん制している。
だが状況は最悪。
「さて、蹂躙といこうか」
そう言ってアガレスがルッツに手をかけようとしたとき。
殺されたと思っていたハルトが起き上がり始めた。
「なっ!確かに胸を貫いたはず!?なぜ生きているの!?」
ナターシャは驚いている。
ハルトは死ぬ直前に加護の力で傷を塞ぎなんとか一命をとりとめていた。
「ルナ、ルシア、俺は無事だ!目の前の敵に集中するんだ」
「……!」
ハルトの無事を確認して二人の目は生気を取り戻し、逆にハルトを攻撃した魔族に対する怒りをあらわにしていた。
「人間が一人立ち上がったところでこの状況は変わらない。何も好転していないと知れ」
アガレスは手に持った大きな槍でルッツを攻撃した。
槍の切っ先が見えないほどの突きにルッツはなすすべがなかった。
しかし次の瞬間その槍の攻撃をルナが拳ではじき飛ばした。
「なにっ?私の槍の動きについてきたのか?」
こいつはキャトランか……。なるほど、人の世界の最強種というのは伊達ではないということか。
「ふふふ。いいだろう。お前の相手は私がしてやる。ナターシャ!それと他の同胞たち!お前らは雑魚から始末しろ!」
アガレスの号令で全員が一気に動き始めた。
先頭ではアガレスとルナが、中央はエラルドとルシアがルッツを守りながら魔族7体と戦い。
後方ではハルトとナターシャが向かい合い、ケビンとベンゼルは魔族と2対2の攻勢になっていた。
「ベンゼル!!俺らの敵が一番手薄だ!さっさと片付けて他の援護に回るぞ!!」
「言われなくてもわかってらぁ!!」
二人は魔族に向かっていきつばぜり合いを始めた。
「あたしがそんなの方っておくと思って――」
ナターシャが二人の背後を狙おうとした瞬間。
ハルトが剣を振り抜きナターシャの眼前をかすめた。
ギリギリで交わしたナターシャだったが頬には一筋の傷がついていた。
「へぇ……まさかこの私が完全に避けきれないなんて。ハルト君。あなた意外とやるじゃないの?それにしてもなぜ生きてるのかしら?あなた本当に人間なの?」
「あの二人に手を出すな。いいからかかってこいよ」
「少し腕に自信があるからって調子に乗るんじゃないわよ!?あたしは人化の状態でも一流の冒険者。今は力を解放した状態!!人で言うならオリハルコン等級よ!舐めるんじゃ――」
ハルトが怒りを乗せ剣を一振りする。ナターシャはハルトが剣を振ったことさえ気が付かず斬られてからようやくそれを理解した。
肩から腹にかけて血が噴き出しナターシャはその場に倒れ込んだ。
「うそ……でしょ……」
私にも攻撃の軌道さえ見えないなんて……。
その光景を見てアガレスは驚いていた。
「貴様何者だ?今の攻撃はなんだ!何をした!!」
「よそ見してていいんですか」
ルナがすかさずアガレスに爪撃の連打を浴びせる。
なんとか槍でしのいでいるが所々ガードしきれずに徐々にアガレスの体から血が流れ始めた。
「くっ!なんだこの反応速度は……!ありえない!我は上級魔族だぞ!!こんなことはあり得ない!!」
アガレスが叫んだ直後、ルナが一瞬でアガレスの正面に移動し手を大きく振り上げ攻撃する体制を取って言った。
「ハルト様に怪我をさせた貴方たちは許さない……!」
ルナが手を振り下すと巨大な爪跡がアガレスの体を引き割いた。
アガレスがガードした槍は粉砕し、その体に巨大な3本の傷を受け倒れ込んだ。
「あり……えな……い。アスタロト……様……申し訳……ありま……せん」
アガレスはそう言い残すと息を引き取った。
中央の戦況はルシアの溶解液のおかげで一瞬で片が付いていた。
周囲を囲んだ7人に溶解液をまとめて浴びせ全員体が解ける苦痛で叫び苦しんでいた。
丁度その頃、ケビンとベンゼルも魔族を倒し、これで全員無事に魔族を殲滅することができた。
「ハルト様!!」
ルナとルシアの叫び声が狭い通路に響き渡った。
倒れ込んだハルトの後ろには血の付いた細剣を持ったナターシャの姿があった。
エラルドはナターシャに向けて弓を構えた。
「ナターシャ!何故!」
するとエラルド達の正面に立っていた魔族の男が不敵に笑いながら口を開いた。
「ふふふ。貴様ら、なぜ我々がこの街1番の冒険者がいないときを狙って襲撃を出来たと思う?どうして先に入っていたナターシャを素通りして我々がここにいると思う?追手がかかることを予測しないとでも思ったのか?」
「まさか……!?」
ケビンとベンゼルはナターシャを左右に挟んだまま距離を取った。
「ふふふ。そう、私はマナリスのスパイよ♪」
「でもお前はもう10年も前からこの街で冒険者として……」
「そうよ?だから誰も私を疑わないでしょう?前任の監査役は男だったから騙すのは簡単だったわぁ♪」
ナターシャの姿が徐々に変貌していく。
黒い羽に赤い瞳。そして悪魔のような尻尾。
「私は魔族、サキュバスなの♪あの町の男たちは私の正体も知らずにすぐ魅了されちゃうんですもの♪精気も奪い放題でいい日々だったわ♪ケビン?貴方が私に靡いてくれなくて悲しかったのよ?貴方みたいに精気に満ちた男を搾り取るのがさいっこうに気持ちいいのに♪」
「……くそっ!」
「さて、種明かしも済んだところでこいつらを殲滅して先を急ぐぞナターシャ」
「ええ、わかってるアガレス」
「我々が待ち伏せしていると読んだみたいだが、惜しかったな。……もし我々の狙いを看破出来ていたとしても貴様ら程度では私はおろかナターシャ一人にも勝てまいがな。ふふ」
エルロンとルッツは放心しきっているルナとルシアを守りながら前後を警戒した。
ケビンとベンゼルはナターシャをけん制している。
だが状況は最悪。
「さて、蹂躙といこうか」
そう言ってアガレスがルッツに手をかけようとしたとき。
殺されたと思っていたハルトが起き上がり始めた。
「なっ!確かに胸を貫いたはず!?なぜ生きているの!?」
ナターシャは驚いている。
ハルトは死ぬ直前に加護の力で傷を塞ぎなんとか一命をとりとめていた。
「ルナ、ルシア、俺は無事だ!目の前の敵に集中するんだ」
「……!」
ハルトの無事を確認して二人の目は生気を取り戻し、逆にハルトを攻撃した魔族に対する怒りをあらわにしていた。
「人間が一人立ち上がったところでこの状況は変わらない。何も好転していないと知れ」
アガレスは手に持った大きな槍でルッツを攻撃した。
槍の切っ先が見えないほどの突きにルッツはなすすべがなかった。
しかし次の瞬間その槍の攻撃をルナが拳ではじき飛ばした。
「なにっ?私の槍の動きについてきたのか?」
こいつはキャトランか……。なるほど、人の世界の最強種というのは伊達ではないということか。
「ふふふ。いいだろう。お前の相手は私がしてやる。ナターシャ!それと他の同胞たち!お前らは雑魚から始末しろ!」
アガレスの号令で全員が一気に動き始めた。
先頭ではアガレスとルナが、中央はエラルドとルシアがルッツを守りながら魔族7体と戦い。
後方ではハルトとナターシャが向かい合い、ケビンとベンゼルは魔族と2対2の攻勢になっていた。
「ベンゼル!!俺らの敵が一番手薄だ!さっさと片付けて他の援護に回るぞ!!」
「言われなくてもわかってらぁ!!」
二人は魔族に向かっていきつばぜり合いを始めた。
「あたしがそんなの方っておくと思って――」
ナターシャが二人の背後を狙おうとした瞬間。
ハルトが剣を振り抜きナターシャの眼前をかすめた。
ギリギリで交わしたナターシャだったが頬には一筋の傷がついていた。
「へぇ……まさかこの私が完全に避けきれないなんて。ハルト君。あなた意外とやるじゃないの?それにしてもなぜ生きてるのかしら?あなた本当に人間なの?」
「あの二人に手を出すな。いいからかかってこいよ」
「少し腕に自信があるからって調子に乗るんじゃないわよ!?あたしは人化の状態でも一流の冒険者。今は力を解放した状態!!人で言うならオリハルコン等級よ!舐めるんじゃ――」
ハルトが怒りを乗せ剣を一振りする。ナターシャはハルトが剣を振ったことさえ気が付かず斬られてからようやくそれを理解した。
肩から腹にかけて血が噴き出しナターシャはその場に倒れ込んだ。
「うそ……でしょ……」
私にも攻撃の軌道さえ見えないなんて……。
その光景を見てアガレスは驚いていた。
「貴様何者だ?今の攻撃はなんだ!何をした!!」
「よそ見してていいんですか」
ルナがすかさずアガレスに爪撃の連打を浴びせる。
なんとか槍でしのいでいるが所々ガードしきれずに徐々にアガレスの体から血が流れ始めた。
「くっ!なんだこの反応速度は……!ありえない!我は上級魔族だぞ!!こんなことはあり得ない!!」
アガレスが叫んだ直後、ルナが一瞬でアガレスの正面に移動し手を大きく振り上げ攻撃する体制を取って言った。
「ハルト様に怪我をさせた貴方たちは許さない……!」
ルナが手を振り下すと巨大な爪跡がアガレスの体を引き割いた。
アガレスがガードした槍は粉砕し、その体に巨大な3本の傷を受け倒れ込んだ。
「あり……えな……い。アスタロト……様……申し訳……ありま……せん」
アガレスはそう言い残すと息を引き取った。
中央の戦況はルシアの溶解液のおかげで一瞬で片が付いていた。
周囲を囲んだ7人に溶解液をまとめて浴びせ全員体が解ける苦痛で叫び苦しんでいた。
丁度その頃、ケビンとベンゼルも魔族を倒し、これで全員無事に魔族を殲滅することができた。
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