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1章

4話 異世界への扉

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偶然からこの世界に召喚し進化まで遂げたルナに始めは戸惑ったハルトだったが、たったひとりで寂しさを感じていたところに同居人ができたことに嬉しさを覚えていた。

人の姿に進化したルナに人としての生活を教えるためにハルトはルナ連れて案内してまわった。
家の中を案内し終えると作り始めたばかりの農場へ向かった。
人手が増えたのは嬉しい限りなので、今後農業を手伝ってもらう為にもひとしきり説明した。
ルナは進化したばかりなので手を使って道具を使うのに始めは悪戦苦闘していたが、そのうち慣れるだろうと思った。
こうしてひとしきり案内と農場の説明をしていると日が落ち始め夕方になっていた。

二人は日が落ちきる前に家に戻り食事にすることに。
食事といっても生の野菜と果物くらいしかないが……。

「この赤い実なんですか!甘酸っぱくておいしい~♪人になるとこんなおいしいもの毎日食べれるんですね♪」
ルナは両手で頬を抑え満面の笑みを浮かべ耳と尻尾を動かしていた。どうやらイチゴをお気に召したようだ。

「それなら農場の畑に植えてあるからそのうち収穫できるようになると思うよ」
「ほんとですか!?ご主人様!!」
ルナは身を乗り出し目を輝かせて確認してきた。

「あ、ああ。まだ農業についてはあまり詳しくないからこんな立派に育つかはわからないけどな」
「私イチゴのお世話頑張ります!!任せてください!!」
ルナはかなり張り切っている。
イチゴ以外の世話も頑張ってほしいんだけど……。と思ったが、とりあえず今はルナが農業に興味を持ってくれたことを喜ぶとしよう。

「さて、少し早いけどもう日も落ちるしそろそろ寝るとするか」
電気もなければ、まだ火を灯す薪や蝋燭も無い。
なので夜は真っ暗だから日が落ちたら寝て、朝早くから活動することにした。


ハルトが寝室に向かおうとするとルナはぴったりと後ろをついてくる。
「あの…ルナさん?」
「はい?」

「ここは俺の部屋で、ルナの部屋は隣って……昼間に説明したよね?」
「そうですね」

「なんで付いてきてるの?」
「だって今から寝るんですよね?」
なんだかルナと話がかみ合っていない。

「寝るときはそれぞれ自分のベッドで寝るんだよ?」
ルナはそれを聞いて驚いた顔をしている。
「えっ!?なんでですか!?」

「なんでって……一緒に寝る気だったの?」
ルナは何の迷いもなく深く頷いた。

「流石にその姿のルナと一緒に寝るにはベッドも狭いし……」
それに男女一緒のベッドっていうのは流石に……。

「なるほど……ではこれならどうですか」
そういうとルナはいきなり服を脱ぎ始めた。

「ちょっと!?何やってるの!ルナさん!?」
ハルトは慌てて目をそらす。
その直後、ルナの居た方から猫の鳴き声が聞こえてきた。
「にゃ~ん♪」

振り返るとルナは元の猫の姿になっていた。
「へぇ!猫の姿に戻ることも出来るのか!すごいなルナ!」
ルナを抱きかかえながらハルトは声をかけた。

「にゃ~ん♪」
ルナは嬉しそうに鳴き声で返事をしていた。

まぁこの姿ならいいか。
と思いハルはルナを抱きかかえたまま部屋に入った。

「んじゃ一緒に寝るとしようか」
ルナは喉を鳴らしながらハルトに頬をすり寄せ喜んでいた。

ベッドの上にルナをおろし、ハルトも横になった。
「おやすみルナ」
「にゃ~ん♪」

こうして二人は眠りについた。



翌朝――
部屋の明るさで朝が来たのを感じ、ハルトが目を覚ますと手の中に柔らかい感触を感じた。
「ん?……なんだこれは……」
不思議な感触がするそれをハルトは再度触って確かめる。

ハルトがそれを触る度に微かにルナの声が聞こえてきた。
「ん…あっ…」

ハッとしてよく見ると……そこには人になった裸のルナが眠っていた。
ハルトはそれに気が付いて慌てて手をどかした。

ルナはハルトが起きたのに気が付いて手を丸め猫が顔を洗うように目をこすりながら体を起こす。
「おはようございます……ご主人様……」
目の前で起き上がった裸のルナに動揺したハルトは声を荒げた。
「なっ!!服を着ろおおおお!」

ルナは朝からハルトにお叱りを受けた。

その後二人は支度をして食卓に着き朝ごはんを迎えていた。
ルナはハルトに朝から叱られて悲しそうにイチゴをかじっていた。

「さっきはその……。怒鳴ってごめんな」
「いつのまにか変身が解けていて……ごめんなさい」
いまは人の姿だけど、ルナは昨日まで猫として暮らしてきたんだよな。
服を着る習慣もなかったわけだし仕方ないか。
猫の姿になれる能力は一定時間で切れるのか、ルナが寝たから切れたのか……今はまだわからなかった

ハルトによって食べやすく切り分けられた果物を、ハルトを真似てフォークを使いながら食べようとしているが変な持ち方で悪戦苦闘しているルナを眺めながらそう思った。
ルナはルナなりに一生懸命ハルトに合わせようとしてくれているのをハルトも感じて微笑んだ。
ふふふ、人の常識はこれから色々と教えていくとしよう。

その後、仲直りしたルナに人の生活の仕方を色々教えながら二人は農業に勤しんだ。


そんな日々を送っていると、もうルナが来てから10日程が経過していた。
農業を二人で進めることができたので開拓はだいぶ捗っている。
加護で生成した大地の状態が余程よかったのか、既に実り始めた作物もある。


農場以外にも生活を充実させるために加護で日々色々な物も作り出していた。

まず天気が常に晴れなのもいいが、雨が降らないのは水やりの手間がかかり困るので少し遠くにいくつかの広大な海や高い山を造った。
これにより空気や水の循環が発生したようで風も雲も確認できるようになった。
そのうち雨も降るだろう。

ハルト自身にも海がどれほどの広さなのかは分かっていない。
というかまだ、この世界がどれだけ広いのかもわからない。

そして温泉。これは言わずもがな。日本人なら誰もが愛するものだろう。
畑仕事を終えた後、水浴びするよりも湯船につかりたいと思ったので最優先で確保した。
ルナは元が猫だから水に濡れるのを嫌うかと思っていたが温泉は好んで入っている。
隙あらば一緒に入ってこようとするのは勘弁してほしい。
ルナは裸に一切抵抗がないようだが、こちらの理性が持たない。
今度男湯と女湯を分けて作るとしよう。


他にも生活に必要な水道と、その水道を作るために湖だけでは不便なので山から川も引いた。
明かりや調理に必要な木材を確保できるように農場の周囲に大きな森も作った。
その他、生活に必要そうなものを日々少しづつ加護の力を使い生成し、生活を徐々に豊かにしていっている。


こうして生活の基盤が安定していき順調かと思われたが、一つ大きな問題が発生していた。
確かに水も食料も問題ないし家もあり寝床もある。しかし決定的に不足しているものがあった。

それは肉と魚だ。

この世界にはやはり生物は存在していないようで、空を飛んでいる鳥も居なければ虫の1匹さえも見たことがなかった。虫がいないのに作物が身を付けていくのはハルトにもよくわからなかった。
加護で作り出した種だから受粉を必要としないのかもしれない。

色々試してみたが、食材としての肉や魚は加護では作り出すことが出来なかった。
だが牛や豚を加護の力を使い、転移で呼び出せたとしても自分で処理できる自信がない。
ルナは鼠や雀を呼び出そうと言ったが却下した。
自分で食うのも躊躇われるが、ルナがそんなものを捕えて食ってるところなんて見たくない……。


二人が、そんなたんぱく質に餓えた日々を悶々と過ごしていたある日のこと。

「にゃああああ!」
農業のイチゴを植えている方でルナの叫び声が聞こえた。
慌てて駆け寄ってみるとルナが倒れていた。
「ルナ!?何があった!大丈夫か!?」

「お肉………」
ルナは小声でそう呟いた。
直後はっきりとした声で再度欲望を叫んだ。
「肉が……たべたいですご主人様……」

はぁ……俺も肉が恋しいよ。
そう思いながらルナの頭をなでてあやしていると、ふと1つの考えが浮かんだ。
……もしかすると肉を食べることが出来るかもしれない。

ルナを連れて居住区や農地から少し離れた湖の向こう岸に来た。
「こんなまだ畑もまだ作ってないような場所で何をするんですか?」
「ちょっと試して見たいことがあってね。以前ルナがこの世界に来たのは俺の加護が無意識に発動して召喚したからだと思うんだ。つまり加護の力はこの世界と別の世界を繋ぎ、生物は行き来することが可能。だとしたら……」
ハルトは手を前に出すと、目を閉じて人が居る世界と繋がる扉を思い浮かべた想像した。

『異世界への扉 スキル生成。成功しました』
加護の声とともにそこに大きな扉が出現した。

またスキル……か。この世界にはスキルというものが存在するのか……。

ルナは急に目の前に出現した扉にびっくりしてハルの背中にしがみついた。
「なっ!何を出したんですか……!?」
「別の世界と繋がる扉………だと思う」
ルナは驚いている。

さて、想像した通りに出てくれたけど、この扉の先はいったいどうなっているか……。
ハルトは恐る恐る扉を開ける。

その先には緑が生い茂る景色が広がっていた。
どうやら成功したみたいだ。


今日は加護も使い切ってしまったので、日を改めて扉の向こう側へ行ってみることにした。
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