真実の愛に目覚めた伯爵令嬢と公爵子息

藤森フクロウ

文字の大きさ
上 下
14 / 43

油断大敵ですわ!1

しおりを挟む

 私の妄想パワーを持ってすれば、長細いものを持っているだけでも補填可能だけど。
 意外と鉈や斧みたいな武骨な打撃やぶつ切り系の武器でも乙なものですが……
 きっちり着こなすクロード様に、粗野な武器という組み合わせもグッド! 正統派の得物もグッド!
 よし、乗馬をしましょう。
 今決めました。女に二言はありません!
 頭の中ではクロードパリコレが開催されていました。軍服、作務衣、カマーバンドの執事服、着流し――カーッ! ナイス、ビバファッションショー!
 ん? パリってどこだっけ? なんかお洒落な響きがしたからなんとなく出てきたけど。
 勝手に一人で盛り上がっていたせいで、ひょいと目の前を通過した手に反応が遅れてしまった。
 その手はバスケットを勝手に開くと、その中に詰まっていたベーグルサンドをひょいと盗った。
 そして、そのままはむっとかぶりついた。
 あ、それタルタルエッグベーコン……! 

「お、美味いじゃん。ラッキー」

「いったろ、ぐいぐい来る女の菓子よりこーいう大人しそうなのがいい差し入れを持ってくるんだよ」

 別の手がバスケットに伸びて、ローストビーフサンドベーグルを盗って行く。
 呆然と見上げると、騎士の士官制服に身を包んだ私よりちょっと年上くらいの少年たちがベーグルサンドを食べている。

「な、な……」

「甘い系ある? お、この赤いのクランベリーかな。あ、ブルーベリーとクリームチーズも美味しそう」


「ざっっっけんなああああああ! ぶち殺すぞこのビチグソどもがああああ!!!」


 ムカつくあん畜生の秘孔を滅多打ちにした。指突でドスドスと。
 ホアチャアアアア! 貴様に北斗七星を刻んでやろうか! 某超人のごとく! お前は既に死んでいる! って! いや、殺しちゃいませんが!
 一部途中でヘヴン状態の大層気持ち悪いのがいたから、そいつを痛めつけるのは途中でやめた。キモイ。
 しかも足に縋り付いてきてキモイ。剣の鞘でケツパン食らわすと「ああんっ♡」ってなくんやで。
 泣くじゃなくて、鳴いていた。もしくは啼いていた。
 蔑みの視線で見た私は悪くないです。
 とりあえず、無礼千万の奴らをその辺に吊るしておいて西棟に向かう。
 そのうち優しい人が助けてくれるでしょう。
 クロード様が戻ってくると言っていた約束の時間なのですが、足取りが重くなります。
 トボ、トボと肩をすぼめてちょっと穴あきになったバスケットの中身を見つめる。
 こんな食べ掛けのようなものを、クロード様に御渡しできない。
 折角、朝から頑張ったんだけどなぁ。
 しょんぼりしている私に影が掛かる。
 そこにいたのは、いつも通りに一糸の乱れもないクロード様。


しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...