須臾物語(140字)

真ヒル乃

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No.001~No.005

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No.001
自我を膨張させて楽園へ行くの。僕は何事かと驚いて彼女を見る。逃げてもいいかしら。何処へ?「あなたがいればなんとかなるわ」そんなことはない。僕は僕でしかないのだ。彼女が務まるわけがない。「こいつに身を任せては駄目だ」彼は僕をにらみつける。そう、僕に任せてはいけない。逃げては駄目だ。



No.002
たくさんのものをあなたからもらいました。明日、それをすべて返そうと思います。あなたの悲しみと苦しみがどうか消えますように。あなたに傷つけられたたくさんの人が、どうかあなたを理解してくれますように。因果は巡り帰ってくるのです。だから、すべてお返ししようと思います。気づいていますか。



No.003
エレキテル列車は空をゆく。行き先はあの雲の向こうまで。いや、それよりももっと遠くへ行こう。エレキテル列車はみんなの意思とみんなの思慕で動きだす。あの宇宙(そら)の彼方へと。ああ、どうか。あのかがやきを我々に感じさせてほしい。エレキテル列車はみんなを揺りかごに乗せるようにやさしく運びます。



No.004
これはたしか冥王星のおみやげだった。土星とコラボしたという冥土飴。僕はその紫色したものをうろんげに見つめて一口食べる。あの人はいまどこにいるのだろう。今度は火星へ行くと言っていたけれど、そんなことはわからない。ただわかることは一つだけ。また変なおみやげを地球に持って帰るのだ。



No.005
献身的な愛とは何かあなたは考える。汚いもの絶望を呑み込みひた隠しにして、綺麗なものを与えることか。綺麗なものしか見ないでほしい。悲哀はすべてこの身に受けて、どうかあなただけは、きれいでいてほしい。愛を受けとるだけではわからない。本当の慈しみに気づいたとき、あなたは愛に気づくのだ。


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