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番外編「初恋」2【オーバン視点】
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王立学園へ行けば少しは変わるかもしれない。確かに変わった。更に悪い方向へ。王立学園は王侯貴族の子息や子女が集う歴史ある学園だ。学園内は広く、建物も立派で、設備も整っている。成績が良ければ平民でもこの学園に入れるが、平民の生徒は少ない。入れたとしても、直ぐに何かしらの理由で退学する。退学するように追い込まれてしまうのだ。平民をよく思わない、貴族の生徒達によって。学園内では皆平等にと謳いながら、その実態は権力者が幅を利かせている完全な貴族主義社会。
私も直ぐに目を付けられて様々な嫌がらせをされた。身分を隠していたから、平民か貧乏貴族だと思われたのだろう。さっさと学園から出て行け、平民がいたら空気が悪くなる、どうせその顔で教師を誘惑したんだろ? 女よりも綺麗な顔をしていて生意気だ、男のくせに女みたいな顔をして誘っているのか? などなど。
「い! やめ、はな、して!」
「抵抗すんじゃねえよ! お前のような平民を、貴族であるこの俺が使ってやるって言ってんだから光栄に思え!」
誰も使っていない空き教室に連れ込まれ、床に押し倒され制服を乱暴に脱がされる。抵抗すれば容赦なく殴られて、平民如きがと罵られる。友達ができると思っていたのに、少しは変われるかもしれないと期待していたのに、この学園で得たものは暴力と悪意と絶望だけ。なんで、どうして。俺が何をしたというんだ。俺はただ、誰かと仲良くなりたかっただけなのに。
「オーバン様!」
「ボーモン!」
ゴッと鈍い音と共に、私を押し倒していた存在が視界から消える。痛みに耐えながら起き上がろうとすると、ボーモンが背中に手を置いて労わるように抱きしめた。
「申し訳ありません。助けるのが遅くなりました。オーバン様。もう大丈夫です」
「ボー、モン。わ、私は……」
「大丈夫です。言ったでしょう? オーバン様は、この私が必ずお守りすると」
相手は有名な貴族の子息だというのに、ボーモンは容赦なく彼の腹を蹴り飛ばし、木製の剣を何度も振り下ろした。相手が泣き叫んでも許しを乞うても聞く耳持たず。
「ボーモン! もういいです! これ以上したら彼の命が危ない!」
「オーバン様。貴方はこのような扱いを受けていい方ではありません。その美しいお顔も、身体も、心も、オーバン様のご両親が心から愛し、オーバン様の為に残した、とても大切な宝物なのです。それを、この餓鬼は不躾に踏み躙ろうとした。本当なら処刑されても文句は言えないのですよ?」
「ひぃ!」
「もういい! ボーモン! もう、いいんです。私の為に、そこまでしなくていい! このままではボーモンが、貴方が罰せられてしまいます!」
「オーバン様」
木製の剣を振り上げた腕を咄嗟に掴む。目の前の男に同情したからではない。このままボーモンが暴走すれば、罪に問われて罰せられてしまうからだ。そうなったら、私は両親だけでなく、ボーモンをも失うことになる。私にはボーモンしかいない。頼れるのも、信じられるのも、守ってくれるのも、ボーモンだけ。ボーモンが居なくなったら、きっと私の心は壊れてしまう。
「去れ。小僧」
「な、なんなんだよ! 俺は貴族だぞ!? 絶対に、絶対に許さねえからな!」
俺を襲った連中は、ボーモンを恐れて逃げるように走り去って行った。奴らが消えて緊張の糸が切れたのか、私はその場に座り込んでしまった。
「さあ、帰りましょう。オーバン様。傷の手当てをしなければ」
力の抜けた私にボーモンが手を差し出してくれる。私が手を乗せると、強い力で引き上げられて、腰に手を添えられる。
「ありがとう、ございます。ボーモン」
「オーバン様をお守りするのが、私の役目ですから」
ボーモンに支えられながら、私はゆっくりと歩き出した。本当に、ボーモンが居てくれてよかったと思う。
私も直ぐに目を付けられて様々な嫌がらせをされた。身分を隠していたから、平民か貧乏貴族だと思われたのだろう。さっさと学園から出て行け、平民がいたら空気が悪くなる、どうせその顔で教師を誘惑したんだろ? 女よりも綺麗な顔をしていて生意気だ、男のくせに女みたいな顔をして誘っているのか? などなど。
「い! やめ、はな、して!」
「抵抗すんじゃねえよ! お前のような平民を、貴族であるこの俺が使ってやるって言ってんだから光栄に思え!」
誰も使っていない空き教室に連れ込まれ、床に押し倒され制服を乱暴に脱がされる。抵抗すれば容赦なく殴られて、平民如きがと罵られる。友達ができると思っていたのに、少しは変われるかもしれないと期待していたのに、この学園で得たものは暴力と悪意と絶望だけ。なんで、どうして。俺が何をしたというんだ。俺はただ、誰かと仲良くなりたかっただけなのに。
「オーバン様!」
「ボーモン!」
ゴッと鈍い音と共に、私を押し倒していた存在が視界から消える。痛みに耐えながら起き上がろうとすると、ボーモンが背中に手を置いて労わるように抱きしめた。
「申し訳ありません。助けるのが遅くなりました。オーバン様。もう大丈夫です」
「ボー、モン。わ、私は……」
「大丈夫です。言ったでしょう? オーバン様は、この私が必ずお守りすると」
相手は有名な貴族の子息だというのに、ボーモンは容赦なく彼の腹を蹴り飛ばし、木製の剣を何度も振り下ろした。相手が泣き叫んでも許しを乞うても聞く耳持たず。
「ボーモン! もういいです! これ以上したら彼の命が危ない!」
「オーバン様。貴方はこのような扱いを受けていい方ではありません。その美しいお顔も、身体も、心も、オーバン様のご両親が心から愛し、オーバン様の為に残した、とても大切な宝物なのです。それを、この餓鬼は不躾に踏み躙ろうとした。本当なら処刑されても文句は言えないのですよ?」
「ひぃ!」
「もういい! ボーモン! もう、いいんです。私の為に、そこまでしなくていい! このままではボーモンが、貴方が罰せられてしまいます!」
「オーバン様」
木製の剣を振り上げた腕を咄嗟に掴む。目の前の男に同情したからではない。このままボーモンが暴走すれば、罪に問われて罰せられてしまうからだ。そうなったら、私は両親だけでなく、ボーモンをも失うことになる。私にはボーモンしかいない。頼れるのも、信じられるのも、守ってくれるのも、ボーモンだけ。ボーモンが居なくなったら、きっと私の心は壊れてしまう。
「去れ。小僧」
「な、なんなんだよ! 俺は貴族だぞ!? 絶対に、絶対に許さねえからな!」
俺を襲った連中は、ボーモンを恐れて逃げるように走り去って行った。奴らが消えて緊張の糸が切れたのか、私はその場に座り込んでしまった。
「さあ、帰りましょう。オーバン様。傷の手当てをしなければ」
力の抜けた私にボーモンが手を差し出してくれる。私が手を乗せると、強い力で引き上げられて、腰に手を添えられる。
「ありがとう、ございます。ボーモン」
「オーバン様をお守りするのが、私の役目ですから」
ボーモンに支えられながら、私はゆっくりと歩き出した。本当に、ボーモンが居てくれてよかったと思う。
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