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第一章「未知なる異世界」~八人の転移者~
第十六話「冒険者志願 その三」/キョウ(伊集院京介)
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食堂で夕食を済ませて部屋に戻ると、遅い時間なのにまだ誰も帰って来ていなかった。
「どこかに出掛けたのかな?」
「そうね」
アヤノはニヤつきながら新しい服を手に持って眺め始める。
同じようなデザインではあるが、今着ているのは大きな麻のズタ袋を加工した服もどきだ。
新しい服は生地からしてより服らしいし、これで買った赤いベルトをしめれば女の子としては感激なのだろう。
「着替えてみたら?」
「ううん、他の人に悪いしね。村に届けてから皆で着替えるわ」
「下着の新品もそろえてばっちりだ」
「嫌だあ、見たことあるでしょ?」
「あるけど、わざとじゃないよ」
「服の丈も短いしなんであんなのかしら? 人間の女の子も同じなのかなあ?」
アヤノは不思議そうな顔をして言う。
「どうかな。街を歩いている女性も同じような服装だよ」
「そうねえ、日本も百年前は女性もこれだったし、合理的なのかな? この世界でズレているのは私たちなのかも……」
俺も本で少し読んだことはあるが、アヤノはもっと昔の風俗の知識などもあるのだろう。
「まあ、隣で一緒にシャワーを浴びて何を今更なんだけどね。だんだんとゴブリンになっちゃったわ~」
アヤノは冗談めかしてそう言い、わざとらしく顔を覆ってみせる。本当は恥ずかしいのだろうが、本心がどこにあるかは俺には分からなかった。
ミッツとコトネが帰って来た。二人はいつも一緒に行動している。
「お帰り」
「うん、ちょっと近所を歩いてきたよ」
「こっちは午後の仕事がなかったんで街に出てみた。服を人数分調達したよ」
「新しい服ね! 助かったわ。今までは洗っても乾かないし、雨でも降ったらどうしようかと思ってたのよ」
「着替える?」
「村にいる人に悪いわね。ちょっと我慢するわ」
ミッツとコトネの二人が、さっきの俺たちと同じような会話をする。
「ギルドと武器屋には行ったの?」
「うん、それなりに仕事もあるけど難しいみいだ。武器屋は新品ばかりだから高かったよ。手が出ない」
「そうかあ……、怪物を討伐して高額報酬なんてそうは上手くいかないよね」
格闘技が趣味なら、ミッツも冒険者の仕事に興味があるはずだ。
「予想通りさ、最初は薬草取り辺りから始めるよ。スライム討伐なんてクエストはなかったなあ」
皆が笑う。この世界はアニメや漫画、ライトノベルの世界そのまんまではない。チートはないし、魔王や精霊、妖精もいない異世界だ。
魔力の話は聞く。俺たちの世界での超能力のたぐいを魔力と呼んでるようだった。
「それと軍隊が人外を募集していたよ」
「戦争をするの?」
ミッツは少し難しい顔をする。
「いや、荷運びと書いてあった」
「聞いたことがあるよ。国境線を引いたのは人間で、国同士の戦争に人外は参加させない暗黙のルールがあるらしい」
「そうなのか。高地にある砦への荷運びとか、要は今とやっている事と同じだ。軍の仕事をしても人殺しはしなくていい訳だ」
俺はアヤノが解説したクエストの内容を話す。確かに戦闘とは書いてはいなかった。
「ただ、これも聞いた話。人外は縄張りや生活圏、狩の場所を取り合って時々争うらしい」
俺は初めてあの村に行った時の警戒ぶりを思い出した。最初は村を狙う集団の偵察とでも思われたのかもしれない。
「物騒な話ねえ……」
「ゴブリン同士で戦うの……」
アヤノとコトネは深刻そうに呟いた。あの平和な村が襲われるなど想像もしたくないのだろう。
「これが普通だと思うよ。今まで俺たちがいた世界が平和すぎたんだ。どんな世界でも弱肉強食が真理なんだろう」
皆は無言で頷いた。
窓の外が暗くなり、やっとトモが帰ってきた。
「遅かったな。どこかに行ってたの?」
「西の山側に、スクラップ屋さんみたいのがあるって聞いたんだ。で行ってみた。剣やナイフなんかもスクラップの中にあった。錆びてボロボロだったけど、探せばまだ使える物もあるかもしれない」
ミッツが尋ねると、トモは興奮して答える。ミリタリーオタク待望の店舗発見だ。
「それは凄い! 安いのか?」
「分からないけどたぶん安いよ。掘り出し物が見つかるかも」
俺も少し興奮してきた。やはり武器は男にとってはロマン、必須アイテムだ。
「どこかに出掛けたのかな?」
「そうね」
アヤノはニヤつきながら新しい服を手に持って眺め始める。
同じようなデザインではあるが、今着ているのは大きな麻のズタ袋を加工した服もどきだ。
新しい服は生地からしてより服らしいし、これで買った赤いベルトをしめれば女の子としては感激なのだろう。
「着替えてみたら?」
「ううん、他の人に悪いしね。村に届けてから皆で着替えるわ」
「下着の新品もそろえてばっちりだ」
「嫌だあ、見たことあるでしょ?」
「あるけど、わざとじゃないよ」
「服の丈も短いしなんであんなのかしら? 人間の女の子も同じなのかなあ?」
アヤノは不思議そうな顔をして言う。
「どうかな。街を歩いている女性も同じような服装だよ」
「そうねえ、日本も百年前は女性もこれだったし、合理的なのかな? この世界でズレているのは私たちなのかも……」
俺も本で少し読んだことはあるが、アヤノはもっと昔の風俗の知識などもあるのだろう。
「まあ、隣で一緒にシャワーを浴びて何を今更なんだけどね。だんだんとゴブリンになっちゃったわ~」
アヤノは冗談めかしてそう言い、わざとらしく顔を覆ってみせる。本当は恥ずかしいのだろうが、本心がどこにあるかは俺には分からなかった。
ミッツとコトネが帰って来た。二人はいつも一緒に行動している。
「お帰り」
「うん、ちょっと近所を歩いてきたよ」
「こっちは午後の仕事がなかったんで街に出てみた。服を人数分調達したよ」
「新しい服ね! 助かったわ。今までは洗っても乾かないし、雨でも降ったらどうしようかと思ってたのよ」
「着替える?」
「村にいる人に悪いわね。ちょっと我慢するわ」
ミッツとコトネの二人が、さっきの俺たちと同じような会話をする。
「ギルドと武器屋には行ったの?」
「うん、それなりに仕事もあるけど難しいみいだ。武器屋は新品ばかりだから高かったよ。手が出ない」
「そうかあ……、怪物を討伐して高額報酬なんてそうは上手くいかないよね」
格闘技が趣味なら、ミッツも冒険者の仕事に興味があるはずだ。
「予想通りさ、最初は薬草取り辺りから始めるよ。スライム討伐なんてクエストはなかったなあ」
皆が笑う。この世界はアニメや漫画、ライトノベルの世界そのまんまではない。チートはないし、魔王や精霊、妖精もいない異世界だ。
魔力の話は聞く。俺たちの世界での超能力のたぐいを魔力と呼んでるようだった。
「それと軍隊が人外を募集していたよ」
「戦争をするの?」
ミッツは少し難しい顔をする。
「いや、荷運びと書いてあった」
「聞いたことがあるよ。国境線を引いたのは人間で、国同士の戦争に人外は参加させない暗黙のルールがあるらしい」
「そうなのか。高地にある砦への荷運びとか、要は今とやっている事と同じだ。軍の仕事をしても人殺しはしなくていい訳だ」
俺はアヤノが解説したクエストの内容を話す。確かに戦闘とは書いてはいなかった。
「ただ、これも聞いた話。人外は縄張りや生活圏、狩の場所を取り合って時々争うらしい」
俺は初めてあの村に行った時の警戒ぶりを思い出した。最初は村を狙う集団の偵察とでも思われたのかもしれない。
「物騒な話ねえ……」
「ゴブリン同士で戦うの……」
アヤノとコトネは深刻そうに呟いた。あの平和な村が襲われるなど想像もしたくないのだろう。
「これが普通だと思うよ。今まで俺たちがいた世界が平和すぎたんだ。どんな世界でも弱肉強食が真理なんだろう」
皆は無言で頷いた。
窓の外が暗くなり、やっとトモが帰ってきた。
「遅かったな。どこかに行ってたの?」
「西の山側に、スクラップ屋さんみたいのがあるって聞いたんだ。で行ってみた。剣やナイフなんかもスクラップの中にあった。錆びてボロボロだったけど、探せばまだ使える物もあるかもしれない」
ミッツが尋ねると、トモは興奮して答える。ミリタリーオタク待望の店舗発見だ。
「それは凄い! 安いのか?」
「分からないけどたぶん安いよ。掘り出し物が見つかるかも」
俺も少し興奮してきた。やはり武器は男にとってはロマン、必須アイテムだ。
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