少年プリズン

まさみ

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二百八十四話

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 「うぎゃあっ!?」
 兄が彫刻刀を振りかざすと同時に反撃にでる。
 背中で戒められた片腕はそのままに、自由に動く片腕を書架の上段に届かせ本を一掃する。今だ。本に気を取られて拘束が緩んだ隙に腕を振りほどき、頭を庇うように床に身を投げ出す。頭上を急襲した本の洗礼に残虐兄弟が情けない悲鳴を発して狼狽するのをよそに、床で連続横転して距離をとる。
 逃げなければ。
 埃を払い落としてる暇はない。とっさに本を薙ぎ払い残虐兄弟の注意を逸らすことに成功したものの油断はできない、一刻も早くこの場から逃げなければ。頭から埃をかぶり、床に手をつき跳ね起きる。
 今僕がいる場所は図書室一階の最奥、巨大な書架に囲われて照明の光さえろくに射さない薄暗い一角。出口まで最短距離で引き返すには元来た道を全力疾走するしかない。
 僕の足で残虐兄弟を巻けるか自信はないがやってみるしかない、自分の無力に甘えて物分り良く諦めたふりするのはもうやめだ、絶対に最後まで諦めない。
 最後まで足掻いて足掻いて足掻き続けてやる。
 いつまでも指をくわえてサムライの助けを待っているだけじゃ僕は永遠に彼の相棒を名乗れない、サムライの相棒を自負できない無力で非力な人間のままだ。
 それではだめだ、サムライの相棒を名乗るなら自分の身くらい自分で守る術を身につけねばならない。
 覚悟を決め、下唇を噛み、床を蹴る。 
 「させるかっ!」
 足に衝撃。
 背後から僕の足にしがみつく残虐兄弟の弟。体当たりで逃走を阻んだ弟の目は、卑怯者の親殺しに一杯食わされた怒りと恥辱で爛々と燃えていた。
 「よくもあんちゃんを……残虐兄弟怒らせたらどうなるか思い知らせてやる!」
 足に突撃された衝撃で前のめりにバランスを崩し、そのまま転倒する。
 体が浮遊感に包まれた、と思った次の瞬間には埃まみれの床に叩きつけられていた。意識が飛びそうな激痛。腕を下敷きにして顔を守ったから歯を折る事態は防げたが、肘から伝わった衝撃にじんと体が痺れた。
 転倒の際に眼鏡が鼻梁にずり落ちて視界がぼやけたがかまってる余裕がない、眼鏡のブリッジを押し上げる暇があるなら一歩でも遠く離れなければ安全を確保しなければと焦慮に駆り立てられ、無様に突っ伏した姿勢から肘を使って這い進む。
 みじめに這いずる僕の腰にだれかが跨り、力づくで後頭部を押さえこむ。
 「往生際が悪いぜ親殺し。せっかく刺青彫ってやろうってんだ、あんちゃんの好意を無駄にすんなよ」
 僕に馬乗りになった弟が、耳元でねっとりと囁く。熱い吐息が耳朶で弾け、全身にいやな汗が滲む。性急な靴音を響かせて正面に回りこむスニーカー。
 踵を履き潰したスニーカーの持ち主を確かめようと視線を上げれば、兄が立っていた。
 片目を押さえているのは、本の角で強打したからだろうか。僕の背中に覆い被さっていた兄は、避ける暇もなくまともに本の直撃を受けてしまったようだ。ゆっくりと慎重に顔から五指をどければ、瞼が青黒く鬱血し、片目は痛々しく塞がっていた。
 面相が変わった兄を見上げ、口の端に笑みを浮かべる。
 「よかったな、これで見分けがつくようになったじゃないか」
 顔に冷笑を浮かべて残虐兄弟を仰げば、片目が塞がった兄の顔が怒りでサッと紅潮し、僕の背中に跨った弟が険悪の形相に変じる。
 再び窮地に陥ったこの期に及んでも、みっともなく命乞いするのはプライドが許さない。床に這わされた姿勢からひどく苦労して顎を持ち上げ、生唾を嚥下して残虐兄弟の表情を探る。
 「………親殺しのクズの分際で、いい度胸だ。気に入った。お前には特別でっけえ刺青入れてやる。二度と人前でシャワー浴びれねえようにしてやるよ、覚悟しな」
 「当然麻酔なしだ」
 兄が再び彫刻刀を構え、僕の鼻先につきつける。尖った先端には乾いた血が凝固して、切れ味鈍さを彷彿とさせる錆が浮かんでいた。錆びた彫刻刀でゆっくりと生皮剥がれる激痛は想像するだにおぞましい。
 切れ味の鈍った彫刻刀はなかなか進まず途中で肉にひっかかり骨にぶつかり、その度に僕は麻酔なしで体を切り刻まれる地獄の苦しみにのたうちまわることになる。
 乾いた血がこびりついた彫刻刀が、不吉の象徴のように鈍く輝く。
 物騒な色を目に浮かべた兄が、言葉を失った僕を嬲るように鼻先に彫刻刀をちらつかせる。そうやって恐怖を煽りに煽り、手も足も出ない獲物を心おきなく嬲ることで残虐な優越感に酔い痴れているのだ。
 「鼻を殺ぎ落としてやろうか?顎を削ってやろうか?
 今この場で整形手術してやろうか。ああ、それとも……」
 ちらりと僕の股間に目をやる。
 「包茎手術のがいいか」
 「あんちゃん、親殺しは元売春夫だぜ?皮かぶってるわけねえじゃん。いくらケツの穴のほう使いこんでるからってさあ」
 「聞くにたえない下品な会話だな。耳が腐る」
 苦々しく吐き捨てれば、兄弟の視線が再び僕へと向く。ひややかに僕を見下ろした兄が弟へと顎をしゃくり、以心同心頷いた弟が片手で後頭部を押さえこみ片手で肩を押さえつけ完全に抵抗を封じる。
 僕は必死にもがいた、さかんに首を振り肩を揺さぶり背中に跨る人物を振り落とそうとしたが駄目だった。はげしく首を振るたび手綱のように後ろ髪を引っ張られ、毛根に激痛が走り、生理的な涙が目に滲む。
 「うあっ、痛……」
 苦鳴をこらえようにも、手で口を押さえることすらこの体勢ではむずかしい。容赦なく後ろ髪を引かれて何本か髪の毛が抜けた。苦悶に仰け反る僕の背中に、ひやりと外気が忍びこむ。上着の背中がめくられ、素肌が外気に晒される。
 先ほど浅く抉られた肩甲骨が、外気にふれてピリッと痛む。ほんのかすり傷程度でこれほど痛いのだ、本格的に抉られたら失神してしまうかもしれない。
 「おい見ろよ。色白の肌に血の赤が映えてすごく綺麗だ」
 「そうだなあんちゃん。きっと刺青も映える」 
 兄がうっとりと呟き、弟が同調する。おぞましい会話に耳を塞ぎたくなる。熱く火照った手が、無遠慮に腰をしごいて背中をまさぐる。 
 彫られる前から、肌が異常に敏感になっている。視線の熱に体が疼き始めるのを自分の意志ではどうすることもできない。背中を大胆に露出させた僕を舌なめずりせんばかりに見下ろしていた兄が、スッと肩甲骨に触れる。
 ぬるりとした感触。
 先ほど傷付けられた肩甲骨から一筋血が滴り、背筋を伝い落ちる感覚。口には出せないが、おそろしく淫靡な感覚。這うように背中を流れ落ちる一筋の血を指にすくいとり、兄がにたりと笑う。あざやかな血にぬれた人さし指が、ひたと僕の背中にあてがわれる。
 裸の背中にくすぐったい感覚が芽生えたのは、背中になにか血文字を記されているためらしい。どんなに首を捻っても、僕の位置からでは背中が見れない。
 だが、指の動きでわかる。
 「残」の次は「虐」、そして「兄」と「弟」が続く。
 血染めの指が動くたびに綴られてゆく新たな字。屈辱に胸が煮え立ち、恥辱で頬が熱くなる。僕は今なにをされている?
 他人に体を触られている。
 自分の血で、背中に字を綴られている。
 僕はまたサムライとの約束を破ってしまった、彼との約束を守れなかった。これで何度目だ?心の底から自分の不甲斐なさを呪う。 
 「よしできた。あとはこのとおりに彫るだけだ」
 僕の血に指を浸し、真紅の四字を綴った兄が快哉をあげる。
 「あんちゃん字ィきったねえなあ」
 「うるせえよ、コイツが震えるから歪んじまったんだよ」
 「かわりばんこっつにしようよ、ねえ。あんちゃんだけなんてずるいよ、俺にも彫らせてよう」
 「しつけえなあ。わかったよ、ただし一個ずつだかんな。がっつくんじゃねえぞ」
 残虐兄弟のやりとりがどこか遠く聞こえる。現実感が急速に薄れて今自分の身に起こってることが覚めない悪夢のような錯覚を覚える。
 このまま僕は成す術なく悪趣味な刺青を彫られてしまうのか?
 残虐兄弟にかわるがわる上に乗られて嬉嬉として彫刻刀で刻まれて、床を掻き毟り喉を仰け反らせ苦悶に喘ぐしかないのか?
 ああ、これでもうサムライには背中を触れさせることができなくなる。
 彼に背中を見せることができなくなる。
 「んな情けないツラすんなよ親殺し。刺青入れたらハクがついて東京プリズンで生きやすくなるぜ」 
 尖った先端が肉を穿ち骨を削る激痛を覚悟し、固く固く目を閉じる…… 
 
 その時だった。

 「ヒーロー見参、ヒーロー見参」
 頭上から声がした。
 「!」
 反射的に目を開け、床に這いつくばった体勢から頭上を仰ぎ見る。書架の上にだれかがいる。どうやってあそこに上ったのか、いや、そんなことはどうでもいい。
 忽然と書架の上に姿をあらわし、仁王立ちする少年には見覚えがある。針のような短髪。黒いゴーグルをかけて素顔を隠してはいるが、尖った犬歯が覗く快活な笑顔はまぎれもない……
 「助けにきたで、直ちゃん」
 ヨンイルだ。
 書架を蹴り宙に身を躍らせたヨンイルの姿が照明の逆光で塗り潰される。
 身軽に床に着地したヨンイルが、僕に覆い被さった残虐兄弟を一瞥、剣呑に呟く。
 「図書室のヌシの縄張りでなに好き勝手しとんじゃおどれら、いてもうたるど」
 「くっ………そおおおおおおおおお!!」
 突然の闖入者に気が動転したか、相手が西の道化だということも忘れて彫刻刀を振り上げる兄と襲いかかる弟。ヨンイルは腰に手をあて自分めがけ突進する兄弟を睥睨していたが、こりをほぐすように首を回し、ため息をつく。
 「いいところを邪魔しやがって!!」
 「てめえも彫って掘ってやる!!」
 目を血走らせた兄が大きく腕を振りかぶり半狂乱で彫刻刀を振りまわす。銀の軌跡が縦横斜めに交差する中、ヨンイルは余裕で後退。
 笑みさえ浮かべて身軽に飛び退いたヨンイルに逆上した兄が大股に間合いに踏みこみ、眉間を抉って致命傷を与えようと彫刻刀を振り上げる。
 「脳味噌かきまわしてやらあ!」
 「危ない!」
 上体を起こした僕が叫ぶと同時に、ヨンイルが行動を起こす。
 ヨンイルがしなやかに身を捩り彫刻刀の猛追から逃れるや、鋭い呼気を吐いて高く高く片足を振り上げる。自分の眉間の位置まで、ほぼ垂直に片足を振り上げたヨンイルがにっこり笑う。
 「成仏せえよ」
 龍が踊った。
 ヨンイルの回し蹴りが首に炸裂する。
 首の骨が折れてもおかしくない痛烈な一撃だった。回し蹴りの衝撃で軽々吹っ飛んだ兄が背中から書架に激突、大量の埃を舞い上げ盛大に本がなだれ落ちる。
 濛々とたちこめる埃の煙幕の向こう側から、四肢に煙を纏いつかせて歩み出たヨンイルが、白目を剥いて失神した兄の手から彫刻刀をもぎとる。
 そして、残る弟を振り向く。
 「……」
 ゴーグル越しの眼光に射竦められた弟は、金縛りにあったように硬直する。
 道化の全身から放たれる得体の知れない威圧感に呑み込まれ、一瞬で戦意喪失した弟が、ぱくぱく口を開閉しつつあとじさる。
 「!?うわっ、」
 弟が勝手に転ぶ。床に散乱した本を踏み付けたのだ。ぶざまに尻餅をついた弟の正面に立ち塞がったヨンイルが、彫刻刀を片手にその顔を覗きこむ。
 無造作に弟の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せる。
 ヨンイルの口元は笑っていたが、ゴーグルに隠された目は少しも笑っていない。図書室を荒らされた怒りに燃えていることは僕でも容易に察しがついたが、それだけではない。
 恐怖で口もきけない弟の胸ぐらを吊り上げ、肩越しに振り返るヨンイル。視線の先には僕がいた。上着をはだけられ、背中を傷付けられ、首をうなだれて荒い息をこぼす僕を一瞥し、再び正面を向く。
 ヨンイルの雰囲気は、先ほどまで僕と親しげに話していた少年のそれではない。
 泡を噴いた弟の胸ぐらを掴み、背後の書架へと叩きつけ、ヨンイルが囁く。
 暴力沙汰を厭わないおそろしく剣呑な笑顔で。
 「額に肉って彫ったる」
 手中で物騒に輝く彫刻刀がひたと額に擬され、薄く皮膚が裂ける。
 「あ………や、やめてくれ、俺が悪かった、もう二度と図書室には来ねえよだから!!」
 滂沱の涙を流して弟が謝罪すれば、途端に鼻白んだヨンイルが乱暴に胸ぐらを突き放し、おまけとばかり尻を蹴飛ばす。ヨンイルに蹴り転がされた弟が、白目を剥いた兄をおぶさり捨て台詞を吐く。
 「くそったれが、くそったれの道化と親殺しが!!」
 一陣の旋風を巻き起こし、あっといまに逃げ去った兄弟の背中を見送り、ヨンイルが僕の方へとやってくる。 
 「大丈夫か直ちゃん、怪我ないか」
 「かすり傷だ。道化の同情はいらない」
 気まぐれで助けてもらったとはいえ、素直に礼を述べる気にはなれない。ヨンイルと僕とは一応敵同士だ、線引きはきっちりしておくべきだろう。虚勢を張って立ち上がりかけたそばから、肩甲骨に疼痛が走り、苦鳴を噛み殺して膝を折る。
 「言わんこっちゃない、見てて痛々しいわ。どれ、見せてみィ」
 「こら、許可なく人の体に触れるな!せめて手を洗ってから、」
 僕の抗議もむなしく、傍らにしゃがみこんだヨンイルが上着をめくりあげ裸の背中をじっくり観察。皮膚が剥けた右の肩甲骨を見咎め、顔をしかめる。
 「痛そうやな。ちィと我慢しィ」 
 「!な、」
 そして、思いがけぬ行動にでた。
 ヨンイルが僕の肩甲骨に口をつけ、血を吸う。
 傷口から血を吸い出したヨンイルが、床にぺっと唾を吐く。唾には血が滲んでいた。
 「貴様は蚊か!?気色悪いことをするんじゃない、離れろ!」
 正気に戻り、慌ててヨンイルを突き飛ばす。一瞬の躊躇も抵抗もなく、僕の肩甲骨に顔を埋め唇を浸し血を啜ったヨンイルはあっけらかんとしている。
 「消毒や、黴菌入ったら困るやろ。なんやねんそんなおっかない顔して、かすり傷に唾つけんの普通やろ。うちでやらんかったんか、妹だか弟だかが膝すりむいたら唾つけたったことは?」
 「見損なってもらっては困る、そんな不衛生な真似するわけないじゃないか。擦り傷に唾をすりこむなど育ちの悪い人間がすることだ、恵が転んで怪我をしたら僕が消毒して包帯を巻いて三日三晩介護する」
 「膝をすりむいただけで三日三晩は大袈裟やろ」
 さすがにヨンイルがあきれる。うるさい道化の分際で人の家庭事情に口をだすなと反駁しかけ、思いとどまる。上着をおろして僕の背中を覆ったヨンイルが、ゴーグル奥の双眸をやけに懐かしげに細めていたからだ。
 「懐かしいなあ。俺が外で遊んで怪我して帰ってきたら、じっちゃんがよくやっとった。こんなかすり傷唾つけとば治るの一点張り。おかげで俺、ガキん頃から医者かかったことないねん。刺青彫ったときも死ぬほど高熱だしてうんうん唸っとったけど、気合いで治したわ」
 亡き祖父との思い出を回想し、ヨンイルが苦笑いする。自然とゴーグルに目がいったのは、ヨンイルいわくそれが唯一東京プリズンに持ちこんだ祖父の形見だからだ。
 ヨンイルの全身には龍の刺青がある。
 健やかな四肢を束縛するように搦めとった龍は、生命の躍動を感じさせるそれは見事なものだが、全身に刺青を彫るような無茶をしたら三日三晩高熱をだしてもおかしくない。 刺青は皮膚の炎症なのだから、それが全身に及べば反動も大きい。
 ましてやヨンイルが刺青を彫ったのは五・六年前、十歳の頃だという。
 子供が全身に刺青を彫るなど、命がけの愚行ではないか。
 「……君はマゾヒストなのか?肌を傷付けることで自虐的な快感に酔い痴れるアブノーマルな人間なのか。詳しい事情は知らないが、たった十歳の少年が全身に龍の刺青を入れるなど正気の沙汰じゃない。十歳といえば恵とそう変わらない年齢じゃないか、僕の妹に限ってそんなことはけしてありえないとは思うがもし恵が刺青を入れたいなどと言い出したら僕は何をおいても全力で止めるぞ。ヨンイル、君の家族はその刺青を見てど」
 言葉が不自然に途切れる。
 ヨンイルが、彼らしくもなく黙りこんでしまったからだ。
 ……少し言葉が過ぎたかもしれない。ヨンイルは一応僕を助けてくれたのだ。事実上の恩人には形だけでも感謝しておかなければ。サムライも言っていたではないか、だれに対しても礼を尽くすロンの姿勢は好ましいと。よし。
 「……やっぱりバチが当たったんかなあ」
 間が悪く、ヨンイルが呟く。おかげで礼を言うタイミングを逸してしまった。  
 「……どうしたんだ、えらく殊勝じゃないか。気味が悪い」
 無意識にゴーグルに触れ、ヨンイルが立ち上がる。
 「なんでもない、ちィと昔のこと思い出してもうただけ。それより直ちゃん、その怪我ちゃんと手当てしたほうがええで。かすり傷でも油断できんからな。よっしゃ、西へ帰るついでに医務室に送ったる」
 「その必要はないぜ」
 突然、第三者の声がした。
 残虐兄弟が帰ってきたのかと肝を冷やしたが、違った。あらたに現れた三人目は、僕がまったく予期しない人物……
 ヨンイルをひややかに睨みつける五十嵐だった。
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