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とある日のお昼休み。いつものように図書室へ向かおうと思っていたんだけれど、突然誰かに腕を掴まれる。
そのまま空き教室へと引きずり込まれてしまった。
え、何? 誰?
「久しぶりだなぁ」
思わずため息をついてしまったわたくしは決して悪くないと思うの。だって、この人の仕事を代わりにやっているんですもの……
「なんだその態度。本当気に入らない」
壁にどんと押し付けられてしまう。前世では人気だった所謂壁ドンというものなんだろうけれど、やっぱり人を選ぶわよねぇ……
ちっともときめかないわ。というよりも気持ち悪いわ……
「……なんの御用で?」
あらやだ。あまりに気持ち悪すぎてちょっと低い声が出てしまったわ。まあいいでしょう。
「オレを馬鹿にしやがって。一体どういうつもりだ」
「おっしゃってる意味がわからないのですけれども。なんの話です?」
本当、心当たりがありすぎてどのお話かわからないわ。
彼は表情を歪ませてこちらを睨んでいる。腐っても王族。整った顔の人が怒ると迫力あるわねぇ。
わたくしには効かないけれど。
済ました表情でいたのがまた彼を刺激したみたいね。
真っ赤になってプルプル震えているわ。これ、下手したら殴られたりするかしら。そのほうが都合がいいんだけれど。
「貴様、言わせておけば……! 母上にも父上にも、婚約解消を認めないと言われた。婚約者を大切にしろと。お前がなんかしたんだろう」
ええっと、そんなのわたくしも望むところなのだけれど……やっぱり陛下と王妃様がとめていらしたのね。お父様とも早々に話をつけなければいけないわね。
「何もしておりません。伯爵令嬢であるわたくしごときが王族の婚約に口出しできるとでも?」
「ライラとは縁を切るように言われたんだぞ! お前が嫉妬してやったことだろう」
はあぁ。嫉妬の意味わかっていらっしゃる? 少なくともわたくしが殿下のことを好きでなければ出ることのない感情なのだけれど……
わたくしに好かれていると思っているのかしら。本当どうしようもないわね。
「わたくしは一切何もしておりません。何度いえばわかってくださる?」
「いい加減にしろよ。言ってもわからないならっ」
振り上げられる拳に目を瞑る。
痛いだろうな……なんて思いながら身構えていたけれど一向に襲ってこない衝撃。
不思議に思って顔を上げるとそこには腕を誰かに抑えられたイアン殿下。
その隣には……
「一体何をしようとしていた? 王族が令嬢に手を挙げるなんて醜聞もいいところだぞ」
「ちっ。邪魔するな」
「ほう、君の所業は全て君の兄君に報告させてもらうよ」
「っ、くそっ」
捨て台詞の小物感相変わらずねぇ。わざとやっているのかしら。
「ありがとうございました」
「全く。アリアもアリアだよ。なぜ助けを呼ばない?」
彼は眉を顰めてこちらをみている。どうやら心配をかけてしまったみたいで申し訳なくなる。
「まあ、殴られておいたほうが後々いいかなぁと」
バンっと大きな音がして肩がびくりと跳ねる。本日壁ドン2回目だわ……
じっと見つめられて、なんだか恥ずかしくなる。嫌だわ、やっぱり相手にもよるのね。ドキッとしちゃうじゃない……
「そんなの、許すわけないだろう。なぜもっと自分を大切にしない?」
なんだか怒っているような切なそうな表情を向けられて、どうしていいかわからない。戸惑っているわたくしの目をじっとみて視線を外さない彼に動揺してしまう。
え、これ、どうしたら……
「アリア?」
「うっ、ごめんなさい」
「君に何かあったら僕の心臓は止まってしまうからね。危ないことはしないように」
「……はい」
「約束だよ」
ぎゅっと抱き寄せられて頭を撫でられる。これ、はちょっと、よろしくはないの、では……?
動揺しすぎてプルプルしているわたくしをくすくす笑っているアーティ。この間のことといい、ちょっとひどい気がするわっ。
「それから、アリア?」
「なっ、なんでしょう……」
「君、何か企んでいることがあるね。それ全部吐いて」
意地の悪い笑みを浮かべながらわたくしの顔を覗き込まれる。うう、なんでかしら。素直に吐いてしまったほうが身のためだと体も心も叫んでいるわ……
仕方がないから、全て話すことにしたの。だって、あの顔には勝てないわ……
もう悪魔的な破壊力というかなんというか……ホストとかやったら天職じゃないかしら。
「へえ。それは面白そうだけど、伯爵家と縁を切る意味は?」
「もうね、家族だと思われるのも嫌なのよね。お父様とも話をするつもり」
「そうなんだ。行き先は決めているの?」
「どうしようか悩んでいるのよ。平民になるじゃない? 王宮からのお仕事もなくなるしオリーブとの事業はあらかた終わっているし」
「ふーん。じゃあ、僕に任せてよ」
小首を傾げて彼を見るも、なんだかとても変な顔をしていた。なんというかいいことを思いついたというか悪戯を思いついたというか。とにかくそんな顔ね。
とりあえず、アーティは味方になってくれそうだし、変なことにはならない……わよね?
とある日のお昼休み。いつものように図書室へ向かおうと思っていたんだけれど、突然誰かに腕を掴まれる。
そのまま空き教室へと引きずり込まれてしまった。
え、何? 誰?
「久しぶりだなぁ」
思わずため息をついてしまったわたくしは決して悪くないと思うの。だって、この人の仕事を代わりにやっているんですもの……
「なんだその態度。本当気に入らない」
壁にどんと押し付けられてしまう。前世では人気だった所謂壁ドンというものなんだろうけれど、やっぱり人を選ぶわよねぇ……
ちっともときめかないわ。というよりも気持ち悪いわ……
「……なんの御用で?」
あらやだ。あまりに気持ち悪すぎてちょっと低い声が出てしまったわ。まあいいでしょう。
「オレを馬鹿にしやがって。一体どういうつもりだ」
「おっしゃってる意味がわからないのですけれども。なんの話です?」
本当、心当たりがありすぎてどのお話かわからないわ。
彼は表情を歪ませてこちらを睨んでいる。腐っても王族。整った顔の人が怒ると迫力あるわねぇ。
わたくしには効かないけれど。
済ました表情でいたのがまた彼を刺激したみたいね。
真っ赤になってプルプル震えているわ。これ、下手したら殴られたりするかしら。そのほうが都合がいいんだけれど。
「貴様、言わせておけば……! 母上にも父上にも、婚約解消を認めないと言われた。婚約者を大切にしろと。お前がなんかしたんだろう」
ええっと、そんなのわたくしも望むところなのだけれど……やっぱり陛下と王妃様がとめていらしたのね。お父様とも早々に話をつけなければいけないわね。
「何もしておりません。伯爵令嬢であるわたくしごときが王族の婚約に口出しできるとでも?」
「ライラとは縁を切るように言われたんだぞ! お前が嫉妬してやったことだろう」
はあぁ。嫉妬の意味わかっていらっしゃる? 少なくともわたくしが殿下のことを好きでなければ出ることのない感情なのだけれど……
わたくしに好かれていると思っているのかしら。本当どうしようもないわね。
「わたくしは一切何もしておりません。何度いえばわかってくださる?」
「いい加減にしろよ。言ってもわからないならっ」
振り上げられる拳に目を瞑る。
痛いだろうな……なんて思いながら身構えていたけれど一向に襲ってこない衝撃。
不思議に思って顔を上げるとそこには腕を誰かに抑えられたイアン殿下。
その隣には……
「一体何をしようとしていた? 王族が令嬢に手を挙げるなんて醜聞もいいところだぞ」
「ちっ。邪魔するな」
「ほう、君の所業は全て君の兄君に報告させてもらうよ」
「っ、くそっ」
捨て台詞の小物感相変わらずねぇ。わざとやっているのかしら。
「ありがとうございました」
「全く。アリアもアリアだよ。なぜ助けを呼ばない?」
彼は眉を顰めてこちらをみている。どうやら心配をかけてしまったみたいで申し訳なくなる。
「まあ、殴られておいたほうが後々いいかなぁと」
バンっと大きな音がして肩がびくりと跳ねる。本日壁ドン2回目だわ……
じっと見つめられて、なんだか恥ずかしくなる。嫌だわ、やっぱり相手にもよるのね。ドキッとしちゃうじゃない……
「そんなの、許すわけないだろう。なぜもっと自分を大切にしない?」
なんだか怒っているような切なそうな表情を向けられて、どうしていいかわからない。戸惑っているわたくしの目をじっとみて視線を外さない彼に動揺してしまう。
え、これ、どうしたら……
「アリア?」
「うっ、ごめんなさい」
「君に何かあったら僕の心臓は止まってしまうからね。危ないことはしないように」
「……はい」
「約束だよ」
ぎゅっと抱き寄せられて頭を撫でられる。これ、はちょっと、よろしくはないの、では……?
動揺しすぎてプルプルしているわたくしをくすくす笑っているアーティ。この間のことといい、ちょっとひどい気がするわっ。
「それから、アリア?」
「なっ、なんでしょう……」
「君、何か企んでいることがあるね。それ全部吐いて」
意地の悪い笑みを浮かべながらわたくしの顔を覗き込まれる。うう、なんでかしら。素直に吐いてしまったほうが身のためだと体も心も叫んでいるわ……
仕方がないから、全て話すことにしたの。だって、あの顔には勝てないわ……
もう悪魔的な破壊力というかなんというか……ホストとかやったら天職じゃないかしら。
「へえ。それは面白そうだけど、伯爵家と縁を切る意味は?」
「もうね、家族だと思われるのも嫌なのよね。お父様とも話をするつもり」
「そうなんだ。行き先は決めているの?」
「どうしようか悩んでいるのよ。平民になるじゃない? 王宮からのお仕事もなくなるしオリーブとの事業はあらかた終わっているし」
「ふーん。じゃあ、僕に任せてよ」
小首を傾げて彼を見るも、なんだかとても変な顔をしていた。なんというかいいことを思いついたというか悪戯を思いついたというか。とにかくそんな顔ね。
とりあえず、アーティは味方になってくれそうだし、変なことにはならない……わよね?
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