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次の日、孤児院にお客さまが来たみたい。子供達の相手を頼まれて、談話室で絵本を読む。
昨日とはうって変わって晴天だ。後で畑を見に行こう。
「アメリア、少しこちらへ」
シスターの呼び出しに小首を傾げながらもついていく。応接室に向かって目に入ったのは漆黒の髪に赤い目。あれ、昨日の人……?
「座って。驚ろかないで聞いてね。あなたを引き取りたいそうよ」
「……え? 引き取るって」
その言葉に驚くわたし。引き取るってことはあの人のところに行くの? でも、どう見ても彼はわたしより少し上くらい。どう言うこと……?
「君をうちの屋敷の侍女として迎えたい。いいかな?」
孤児院では、一定の年齢になったら働き口を探して卒業していくものが多いけど、それとは別に養子として引き取られたり働き手として引き取られたりする子が一定数いる。今回彼が申し出たのは働き手としてわたしを引き取ると言うことだと思う。
「あ、の……」
「ああ、仕事内容を聞きたいのかな。君には俺の専属侍女になってもらいたくて。仕事はそんなにむずかしくないよ。朝起こして食事を出して、夜にまた食事を出すだけ。それ以外の仕事はゆっくり覚えてもらえればいいから」
こうしてわたしは昨日出会った少年の家で働くことになったのでした。
「うわぁ、おっきい……」
テレビで見たような大豪邸。一体中に何部屋あるんだろう。ぼーっと眺めているわたしを見てフッと笑った少年はわたしの手をとってその屋敷へと入っていく。
「まずは湯浴みをしてきて」
戸惑うわたしをメイド服を着た女の人に手渡した彼は踵を返して何処かに行ってしまった。
「さ、アメリア様。こちらへ」
「え、あの……様はいらないです」
「いえ、そう言うわけにはいきませんので。では湯浴みを手伝わせていただきます」
二十代くらいだろうか、優しげな顔の女性の名前はサヨさんと言うみたい。真似してサヨ様と言ったら「サヨとお呼びください」と言われてしまった。
それにお風呂も遠慮したけど、命令なのでと言われてしまって手伝ってもらった。すごく恥ずかしかった。
そうして着せられたのはやけにふりふりしているメイド服。黒いワンピースに白いエプロンで、他の人とは全くデザインの異なるそれを着て向かったのは一番奥の部屋だった。
サヨさんがノックすると中から声がする。
そのまま連れられて部屋に入ると、服を着崩した少年が一人。
「ああ、やっと来た。さ、こっちへ」
彼に手招かれておずおずと近寄る。焦れたのか彼に手をつかまれる。ち、近いんですけど……
羨ましいくらい真っ白な肌に深紅の目が怪しく光る。その顔は綺麗に整っていて男の子だけど綺麗って言葉がとてもよく似合う。
そのまま、首筋に顔を埋められる。
「え、あ、あのっ」
首筋に何かが当たる。何か尖ったもの。なんだろう……
「いい匂い。いただきます」
つぶりと何かが皮膚を裂く。
「痛い……」
その皮膚を引き裂いたものが抜かれ、今度は吸いつかれる。
え、え、なに⁈ 何が起こってるの……?
「んぁ、え、何……」
なんだかむずむずする。なんだろう。一体わたしはここで何をされているんだろう。
ぺろりと肩口を舌で舐められた感覚がして、やっと少年の顔がわたしから離れた。
「ご馳走様。本当美味しかった」
わたしは訳がわからなくなって、ふらりと体が揺れた気がして、そしてそのまま意識を手放した。
目を覚ますとベッドの上だった。なんだか誰かの気配を感じて視線を泳がせると少年がわたしのことをじっと見つめていた。
「あ、起きた? 説明してもいいかな?」
「あ、はい」
よくわからないけど、とりあえず話を聞いてみよう。どうせもう帰れる場所なんてないもの……
「俺ね、吸血鬼なの。だから食事が必要なんだけど、今日から君が俺の食事ね。朝と夜の二回、血をくれるだけでいいよ。あ、このことはサラと執事長以外は知らないから内緒だよ」
吸血鬼……
絵本の吸血鬼? 本当に実在したの? ってことはさっきは血を吸われたってこと……?
「それ以外の時間は、そうだなぁ……何か好きなことある?」
「好きなこと……本?」
「部屋に用意させるよ。ああそうだ、夜はベルで呼ぶけど、朝は隣の部屋に来て、俺を起こしに来て」
「は、はぁ……」
部屋に戻っていいと言われ、廊下に待っていたサラさんに隣の部屋に案内される。
「こちらがアメリア様の部屋です。どうぞ仕事の時間以外はこの部屋でお寛ぎください。何か御用がありましたら、そちらのベルでお呼びくださいませ」
「あ、はい。ありがとうございます……」
パタリと扉が閉まる音がして一人になる。
一体なんなの。無駄に広い部屋に一人ポツリと座る。
あの少年は絵本の中の吸血鬼で、吸血鬼は人間の血が必要で、その食事にわたしが選ばれたってこと……?
と言うことは一生あの少年に食事としてだけに必要とされるってことだよね。
でも、わたしは孤児で、行くあてもないもの。お部屋は豪華だし、お手伝いさんもいる。下手に奴隷として扱われるよりも、いいのかもしれない。
昨日とはうって変わって晴天だ。後で畑を見に行こう。
「アメリア、少しこちらへ」
シスターの呼び出しに小首を傾げながらもついていく。応接室に向かって目に入ったのは漆黒の髪に赤い目。あれ、昨日の人……?
「座って。驚ろかないで聞いてね。あなたを引き取りたいそうよ」
「……え? 引き取るって」
その言葉に驚くわたし。引き取るってことはあの人のところに行くの? でも、どう見ても彼はわたしより少し上くらい。どう言うこと……?
「君をうちの屋敷の侍女として迎えたい。いいかな?」
孤児院では、一定の年齢になったら働き口を探して卒業していくものが多いけど、それとは別に養子として引き取られたり働き手として引き取られたりする子が一定数いる。今回彼が申し出たのは働き手としてわたしを引き取ると言うことだと思う。
「あ、の……」
「ああ、仕事内容を聞きたいのかな。君には俺の専属侍女になってもらいたくて。仕事はそんなにむずかしくないよ。朝起こして食事を出して、夜にまた食事を出すだけ。それ以外の仕事はゆっくり覚えてもらえればいいから」
こうしてわたしは昨日出会った少年の家で働くことになったのでした。
「うわぁ、おっきい……」
テレビで見たような大豪邸。一体中に何部屋あるんだろう。ぼーっと眺めているわたしを見てフッと笑った少年はわたしの手をとってその屋敷へと入っていく。
「まずは湯浴みをしてきて」
戸惑うわたしをメイド服を着た女の人に手渡した彼は踵を返して何処かに行ってしまった。
「さ、アメリア様。こちらへ」
「え、あの……様はいらないです」
「いえ、そう言うわけにはいきませんので。では湯浴みを手伝わせていただきます」
二十代くらいだろうか、優しげな顔の女性の名前はサヨさんと言うみたい。真似してサヨ様と言ったら「サヨとお呼びください」と言われてしまった。
それにお風呂も遠慮したけど、命令なのでと言われてしまって手伝ってもらった。すごく恥ずかしかった。
そうして着せられたのはやけにふりふりしているメイド服。黒いワンピースに白いエプロンで、他の人とは全くデザインの異なるそれを着て向かったのは一番奥の部屋だった。
サヨさんがノックすると中から声がする。
そのまま連れられて部屋に入ると、服を着崩した少年が一人。
「ああ、やっと来た。さ、こっちへ」
彼に手招かれておずおずと近寄る。焦れたのか彼に手をつかまれる。ち、近いんですけど……
羨ましいくらい真っ白な肌に深紅の目が怪しく光る。その顔は綺麗に整っていて男の子だけど綺麗って言葉がとてもよく似合う。
そのまま、首筋に顔を埋められる。
「え、あ、あのっ」
首筋に何かが当たる。何か尖ったもの。なんだろう……
「いい匂い。いただきます」
つぶりと何かが皮膚を裂く。
「痛い……」
その皮膚を引き裂いたものが抜かれ、今度は吸いつかれる。
え、え、なに⁈ 何が起こってるの……?
「んぁ、え、何……」
なんだかむずむずする。なんだろう。一体わたしはここで何をされているんだろう。
ぺろりと肩口を舌で舐められた感覚がして、やっと少年の顔がわたしから離れた。
「ご馳走様。本当美味しかった」
わたしは訳がわからなくなって、ふらりと体が揺れた気がして、そしてそのまま意識を手放した。
目を覚ますとベッドの上だった。なんだか誰かの気配を感じて視線を泳がせると少年がわたしのことをじっと見つめていた。
「あ、起きた? 説明してもいいかな?」
「あ、はい」
よくわからないけど、とりあえず話を聞いてみよう。どうせもう帰れる場所なんてないもの……
「俺ね、吸血鬼なの。だから食事が必要なんだけど、今日から君が俺の食事ね。朝と夜の二回、血をくれるだけでいいよ。あ、このことはサラと執事長以外は知らないから内緒だよ」
吸血鬼……
絵本の吸血鬼? 本当に実在したの? ってことはさっきは血を吸われたってこと……?
「それ以外の時間は、そうだなぁ……何か好きなことある?」
「好きなこと……本?」
「部屋に用意させるよ。ああそうだ、夜はベルで呼ぶけど、朝は隣の部屋に来て、俺を起こしに来て」
「は、はぁ……」
部屋に戻っていいと言われ、廊下に待っていたサラさんに隣の部屋に案内される。
「こちらがアメリア様の部屋です。どうぞ仕事の時間以外はこの部屋でお寛ぎください。何か御用がありましたら、そちらのベルでお呼びくださいませ」
「あ、はい。ありがとうございます……」
パタリと扉が閉まる音がして一人になる。
一体なんなの。無駄に広い部屋に一人ポツリと座る。
あの少年は絵本の中の吸血鬼で、吸血鬼は人間の血が必要で、その食事にわたしが選ばれたってこと……?
と言うことは一生あの少年に食事としてだけに必要とされるってことだよね。
でも、わたしは孤児で、行くあてもないもの。お部屋は豪華だし、お手伝いさんもいる。下手に奴隷として扱われるよりも、いいのかもしれない。
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