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16歳
584 かっこいい仕事
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「はい、お土産。おやつに一緒に食べようね」
「全部僕のか?」
「一緒に食べようねって言っただろ」
さらっとお土産お菓子を全部持っていこうとするユリスは意地汚い。
帰宅するなりユリスの部屋に直行した俺は、早速先程の大事件を報告する。ジャンはブルース兄様が買った荷物を運ぶため兄様について行ってしまった。俺の従者なのに、なんかブルース兄様にとられてしまった。
「俺ね、カツアゲされたんだ」
「は? 相手は? ちゃんとやり返してきたんだろうな」
「なんでそんな物騒なこと言うんだよ」
やり返すってなんだよ。無理に決まってるだろう。
小さく舌打ちしたユリスは「ブルースはなにをやっている」と、兄様に対する文句を並べ始めた。その横で会話を聞いていたタイラーが「え? 大丈夫なんですか?」と心配するように問いかけてきた。
「俺は大丈夫。変な人だった。アロンの友達なんだって」
アロンの名前が出た瞬間、タイラーが「うぇ」と苦い顔をした。それは先輩であるアロンに対する呆れの表情。「どんな友達ですか」と吐き捨てている。
『オレも怖かったぁ』
犬姿に戻った綿毛ちゃんがわざとらしく震えている。綿毛ちゃんは人間になると長身でそれなりに圧があるはずなのに、すごく頼りない。クソピアスにも舐められていた。役に立たない毛玉である。
「でも猫飼ってた。猫が好きな人に悪い人はいないって思ってたけど。考え直すべきかもしれない」
本日の教訓をしみじみと呟けば、ユリスが「それはそうだろう」と半眼になる。彼は猫好き=いい人という図式が理解できないらしい。
俺の話を聞き流しながらお土産の紙袋に手を伸ばすユリスは真剣に中身を確認している。もっと俺のことを心配してくれてもよくない?
ムスッとユリスの肩を軽く押せば、「なんだ」という不機嫌な声が返ってくる。
「俺が可哀想だと思わないのか!」
「別に何もされていないんだろ?」
「お金とられたの!」
「いくらだ」
小銭だけど。というかブルース兄様にもらったお小遣いだけど。
教えてやれば、ユリスは鼻で笑う。馬鹿にしやがって。
「アロンの知り合いなんだろ。だったらあいつがどうにかするだろ」
意外とアロンを信用しているユリスは、だから僕がやることはないと締め括る。まぁ、奪われた分はすでにアロンから返してもらっている。
「それよりこれは全部僕のか?」
「違うって言ってるだろ!」
ロニーやお母様の分もあるのだ。全部持っていきそうな勢いのユリスからお土産を奪い取る。
「あ、でね。そのアロンの友達が俺に紙を渡してきたんだけど。意味不明なやつだった。なんだったんだろ」
単語にすらなっていない文字の羅列を思い出して首を捻れば、ユリスが「ちょっと見せてみろ」と右手を差し出してくる。
「アロンに持っていかれたから。もうないよ」
「……」
黙り込むユリスは、顎に手をやって考え込んでしまう。けれどもすぐに顔を上げると「そいつ、どんな奴だった」と訊いてきた。
「クソピアス! 朝からお酒飲んでた」
「もしかして情報屋じゃないのか?」
「情報屋?」
え、なにそのかっこよさげな単語。
動きを止める俺に、ユリスが「そういう話、聞くよな?」とタイラーを振り返った。
「えぇ、まぁ。懇意にしている情報屋がいるとは訊いたことありますけど」
アロンは、昔から独自に情報を仕入れるためのルートを持っているらしく、噂ではあるが情報屋とつるんでいるのではないか、という話があるらしい。
「あのクソピアス。クソなのにそんなかっこいい仕事してるのか?」
情報屋って響きだけでもうかっこいい。なんだか興味をそそられた俺は、ユリスの肩を押す。
「ねー、本当に情報屋?」
「おそらく。その紙も暗号かなにかだろう」
「かっこいい! 俺もやりたい! 暗号!」
アロンだけずるいと騒げば、綿毛ちゃんも『ほほう。暗号かぁ』とわかったような顔で何度も頷いている。この毛玉、きちんと話の意味を理解しているのだろうか。
「ちょっとアロンに聞いてくる!」
「は? 聞いて素直に教えてもらえるようなものでもないだろう」
「じゃあね!」
「あ、おい。ルイス」
綿毛ちゃんを拾ってアロンの部屋を目指す。急いで二階に上がってドアを叩けば、すぐに顔を出してくれた。
「ルイス様?」
「さっきの紙貸して!」
首を捻るアロンに、あのクソピアスに渡された紙を見せてとお願いする。
「あれは多分暗号だってユリスが言ってた。あのクソピアスは情報屋だって」
「へー」
ニヤリと笑うアロンは「ユリス様も鋭いですね」と腕を組んだ。暗号であることを否定しない。マジか。
「俺が解読する!」
小さく笑うアロンは「でも残念」と肩をすくめた。
「もう燃やしちゃいました」
「燃やした?」
なぜ。捨てたのではなく燃やしたのか?
呆然としていれば、アロンは何事もないように「そりゃ燃やすでしょ」と言ってのけた。
「わざわざ暗号にして寄越してくるような情報ですよ。すぐ処分するに決まってます」
「なんだと」
確かにアロンの言う通りだが、納得できない。だってあのクソピアスは俺にあげると言って紙をポケットに押し込んできた。あれってアロンに渡せってことだったのか?
「なんて書いてあったの?」
せめて内容だけでも聞き出そうとアロンを見るが、彼は頭を掻いて「うーん」と呻いてしまう。
「なんでしょう。あ、飲み屋のツケを払っておけって書いてありましたよ」
「嘘だ!」
なんだそのわかりやすい嘘。素早く指摘するが、アロンはにこやかに微笑むだけで口を割らない。綿毛ちゃんも『教えてぇ』とお願いしているのに無視されている。
俺に知られたくないことでも書いてあったのか?
すごく気になってしまう。
「全部僕のか?」
「一緒に食べようねって言っただろ」
さらっとお土産お菓子を全部持っていこうとするユリスは意地汚い。
帰宅するなりユリスの部屋に直行した俺は、早速先程の大事件を報告する。ジャンはブルース兄様が買った荷物を運ぶため兄様について行ってしまった。俺の従者なのに、なんかブルース兄様にとられてしまった。
「俺ね、カツアゲされたんだ」
「は? 相手は? ちゃんとやり返してきたんだろうな」
「なんでそんな物騒なこと言うんだよ」
やり返すってなんだよ。無理に決まってるだろう。
小さく舌打ちしたユリスは「ブルースはなにをやっている」と、兄様に対する文句を並べ始めた。その横で会話を聞いていたタイラーが「え? 大丈夫なんですか?」と心配するように問いかけてきた。
「俺は大丈夫。変な人だった。アロンの友達なんだって」
アロンの名前が出た瞬間、タイラーが「うぇ」と苦い顔をした。それは先輩であるアロンに対する呆れの表情。「どんな友達ですか」と吐き捨てている。
『オレも怖かったぁ』
犬姿に戻った綿毛ちゃんがわざとらしく震えている。綿毛ちゃんは人間になると長身でそれなりに圧があるはずなのに、すごく頼りない。クソピアスにも舐められていた。役に立たない毛玉である。
「でも猫飼ってた。猫が好きな人に悪い人はいないって思ってたけど。考え直すべきかもしれない」
本日の教訓をしみじみと呟けば、ユリスが「それはそうだろう」と半眼になる。彼は猫好き=いい人という図式が理解できないらしい。
俺の話を聞き流しながらお土産の紙袋に手を伸ばすユリスは真剣に中身を確認している。もっと俺のことを心配してくれてもよくない?
ムスッとユリスの肩を軽く押せば、「なんだ」という不機嫌な声が返ってくる。
「俺が可哀想だと思わないのか!」
「別に何もされていないんだろ?」
「お金とられたの!」
「いくらだ」
小銭だけど。というかブルース兄様にもらったお小遣いだけど。
教えてやれば、ユリスは鼻で笑う。馬鹿にしやがって。
「アロンの知り合いなんだろ。だったらあいつがどうにかするだろ」
意外とアロンを信用しているユリスは、だから僕がやることはないと締め括る。まぁ、奪われた分はすでにアロンから返してもらっている。
「それよりこれは全部僕のか?」
「違うって言ってるだろ!」
ロニーやお母様の分もあるのだ。全部持っていきそうな勢いのユリスからお土産を奪い取る。
「あ、でね。そのアロンの友達が俺に紙を渡してきたんだけど。意味不明なやつだった。なんだったんだろ」
単語にすらなっていない文字の羅列を思い出して首を捻れば、ユリスが「ちょっと見せてみろ」と右手を差し出してくる。
「アロンに持っていかれたから。もうないよ」
「……」
黙り込むユリスは、顎に手をやって考え込んでしまう。けれどもすぐに顔を上げると「そいつ、どんな奴だった」と訊いてきた。
「クソピアス! 朝からお酒飲んでた」
「もしかして情報屋じゃないのか?」
「情報屋?」
え、なにそのかっこよさげな単語。
動きを止める俺に、ユリスが「そういう話、聞くよな?」とタイラーを振り返った。
「えぇ、まぁ。懇意にしている情報屋がいるとは訊いたことありますけど」
アロンは、昔から独自に情報を仕入れるためのルートを持っているらしく、噂ではあるが情報屋とつるんでいるのではないか、という話があるらしい。
「あのクソピアス。クソなのにそんなかっこいい仕事してるのか?」
情報屋って響きだけでもうかっこいい。なんだか興味をそそられた俺は、ユリスの肩を押す。
「ねー、本当に情報屋?」
「おそらく。その紙も暗号かなにかだろう」
「かっこいい! 俺もやりたい! 暗号!」
アロンだけずるいと騒げば、綿毛ちゃんも『ほほう。暗号かぁ』とわかったような顔で何度も頷いている。この毛玉、きちんと話の意味を理解しているのだろうか。
「ちょっとアロンに聞いてくる!」
「は? 聞いて素直に教えてもらえるようなものでもないだろう」
「じゃあね!」
「あ、おい。ルイス」
綿毛ちゃんを拾ってアロンの部屋を目指す。急いで二階に上がってドアを叩けば、すぐに顔を出してくれた。
「ルイス様?」
「さっきの紙貸して!」
首を捻るアロンに、あのクソピアスに渡された紙を見せてとお願いする。
「あれは多分暗号だってユリスが言ってた。あのクソピアスは情報屋だって」
「へー」
ニヤリと笑うアロンは「ユリス様も鋭いですね」と腕を組んだ。暗号であることを否定しない。マジか。
「俺が解読する!」
小さく笑うアロンは「でも残念」と肩をすくめた。
「もう燃やしちゃいました」
「燃やした?」
なぜ。捨てたのではなく燃やしたのか?
呆然としていれば、アロンは何事もないように「そりゃ燃やすでしょ」と言ってのけた。
「わざわざ暗号にして寄越してくるような情報ですよ。すぐ処分するに決まってます」
「なんだと」
確かにアロンの言う通りだが、納得できない。だってあのクソピアスは俺にあげると言って紙をポケットに押し込んできた。あれってアロンに渡せってことだったのか?
「なんて書いてあったの?」
せめて内容だけでも聞き出そうとアロンを見るが、彼は頭を掻いて「うーん」と呻いてしまう。
「なんでしょう。あ、飲み屋のツケを払っておけって書いてありましたよ」
「嘘だ!」
なんだそのわかりやすい嘘。素早く指摘するが、アロンはにこやかに微笑むだけで口を割らない。綿毛ちゃんも『教えてぇ』とお願いしているのに無視されている。
俺に知られたくないことでも書いてあったのか?
すごく気になってしまう。
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