嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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16歳

502 予定

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「あの、シャノン様?」
「なんでしょうか。ルイス様」

 にこりと綺麗な微笑を向けられて、ちょっぴりたじろいでしまう。そんな堂々とした態度をとられても。

 ブランシェを撒いてシャノンの部屋にたどり着いたはいいものの今度はシャノンが挙動不審である。

 なぜか俺の隣の席に移動してきた彼女は、カル先生ではなく俺の横顔を凝視している。先生が困っている。

 無言でカル先生を示すが、彼女は微笑むばかりでどうにもならない。しまいにはカル先生が俺に責めるような目を向けてくる。いや俺のせいではなくない? 俺だって困っているのだ。むしろ助けてほしいくらい。

 確かに俺は美少年。俺の顔を見つめてみたくなる気持ちも理解できる。しかしカル先生の授業をガン無視するのはどうだろうか。相手は十四歳の少女である。どう諭せばいいのかわからない。

 結果、曖昧に微笑んでカル先生と顔を見合わせることしかできない。

「ルイス様」
「はい」

 そっとお互いの手が触れて、思わずシャノンの顔をまじまじと見つめてしまう。このまま手を握られそうな勢い。それはちょっとまずい気がして、姿勢を正すふりで彼女から手を遠ざけた。

「ルイス様、結婚のご予定は?」
「ん? お、じゃない。僕のですか?」

 なにその質問。
 びっくりして素が出るところだった。慌てて取り繕うが、カル先生も驚愕したように目を見開いている。だよね。今の質問はびっくりだよね。想定外が過ぎるもん。

 一体どういうつもりかと身構えたのも一瞬である。シャノンは十四歳。色恋話に興味があって当然のお年頃だと思う。多分、歳が近い俺とそういう話がしたかったに違いない。だって兄であるブランシェ相手にはできないだろうし、使用人相手にする話でもない。たまに顔を合わせるくらいの俺がちょうどいいのだ。

 そういうことならと理解した俺は気楽に相手をしてやる。なんだかカル先生が口を閉じたり開いたりしていたが気にしない。先生ははやく授業を進めたいだけ。それが仕事だからな。だがシャノンのやる気がない以上、無理に進めたところで彼女は上の空。だったら少しだけでも話に付き合ってあげるべきだ。その方が、後々の授業がスムーズにいくと思う。

「そういった予定はまだ」

 俺まだ十六だし。
 結婚の予定どころか相手もまだだ。

 俺の返答を聞いたシャノンは、嬉しそうに何度も頷いている。俺に恋人いないことがそんなに面白いのか? 謎である。

 ははっと乾いた笑みをもらす俺とは対照的に、シャノンは生き生きとした表情だ。もはやカル先生の存在を忘れているのではと心配になる。

 俺だって遊びに来たわけではない。
 どうにかシャノンのやる気を引き出そうとするが、彼女は前のめりに俺の手をとってくる。

「私の兄であれば、ルイス様のことをお守りできると思います」
「は、い?」

 なんで急にブランシェ。
 守るってなに。

 話が急展開すぎて付いていけない。困惑する俺とカル先生に構わず、シャノンは俺の手を強く握る。その変な気合いにあふれた姿は、気軽に口を挟めるようなものではなかった。

「お兄様はとても頼りになりますよ。王立騎士団でも優秀だと言われていて。いずれはお父様の跡を引き継いで隊長に任命されると信じております」
「は、はい。そうなんですね?」
「少し真面目すぎるのが欠点ではありますが。ですか真面目ゆえに一途ですから」
「あー、はい。そうなんですね」

 なんの話だろうか、これ。
 ブランシェの性格とかどうでもいい。突然兄について熱く語り始めたシャノンは、なにやら興奮しているようで手が付けられない。

 だがブランシェが真面目というのは同意見。なんか融通がきかないような顔してるもん。俺が苦手なタイプ。不機嫌な時のブルース兄様そっくりなのだ。

「ですから! ルイス様にぴったりだと思います」
「はぁ」

 妹の私が言うのもおかしいですが、と照れたように笑うシャノンは満足そうな表情であった。一方の俺は力なく笑うことしかできない。カル先生も驚きのあまり固まっている。ここに来てから、授業がまったく進んでいない。先生はずっと黙り込んだままでろくに会話もしていない。これでは何のために訪問したのか。

 どうしてこういう展開になったのか。ちょっとよくわかんないよ。
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