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11歳
268 愉快な呼び名
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「そういえば、ラッセルに会ったそうだな」
「うん」
突然、話題を変えたブルース兄様は、なにやら探るような目線を向けてくる。
「ラッセルは、何か言っていたか?」
「特には。オーガス兄様の友達だって言ってた」
「そんなわけないだろ」
クソ失礼な言葉を吐き捨てた兄様は、額を押さえていた。その顔は、どちらかといえばオーガス兄様への呆れを含んでいた。
「ラッセルは、ちょっと。あまり信用するな」
「忖度お兄さんだもんね」
「なんだその愉快な呼び名は」
ブルース兄様は、ラッセルが酷い忖度をしていることに気が付いているらしい。まぁ、タイラーも知っているようだったし、割と有名なようだ。
しかし、オーガス兄様は気が付いていないらしい。そんな馬鹿な。
ブルース兄様いわく、オーガス兄様はマジでラッセルのことを信用しているそうだ。純粋にも程があると、頭を抱えている。
純粋なオーガス兄様は、度々ラッセルを頼っているらしい。ブルース兄様が何度もやめろと苦言を呈しているそうだが、「友達だから」のひと言で突っぱねられてしまうのだとか。オーガス兄様が、ブルース兄様に刃向かうなんて珍しい。いつもは弟相手にビクビクしているはずなのに。
「その猫だって」
俺の抱えるエリスちゃんを顎で示したブルース兄様は、苦い顔をしていた。
どうやら、オーガス兄様のお願いを受けてラッセルが探してきた猫らしい。一体どこで手に入れて来たんだか、と呆れるブルース兄様。
「そうなのか?」
「にゃー」
白猫の顔を覗き込んで確認するが、真相はいまいちよくわからない。黒猫ユリスだったら会話できたのにな。頭をなでなでしておこう。
「でもラッセルいい人だった。ユリスの子分になってたよ」
「どういうことだよ」
頭を抱える兄様は、マジで苦労していそうだった。
「俺の子分にもなってくれるって言った」
「なにをしているんだ。やめろアホ」
突然、俺らをディスってくる兄様は、簡単に言ってしまえばラッセルのことが嫌いなのだろう。先程から、彼の悪口ばかりだ。
「ラッセルは、忖度お兄さんだけど」
「さっきからなんだ。その愉快な呼び名は」
「アロンよりは、いい人」
胸を張って事実を伝えれば、兄様は遠い目をする。どうやらアロンを比較基準に使うなと言いたいらしい。アロンと比べれば、だいたいの人がいい人認定だからな。
「あ!」
クソ野郎のことを考えていたからか。大事なことを思い出した。
「あのね兄様」
「なんだ」
「アリアが結婚式はいつにしますかって」
「……え、なんの話だ」
なんのって。あれだろ。とぼけてみせる兄様に、にやにやと頬が緩んでしまう。
「ブルース兄様、アリアと結婚するんでしょ?」
「しないが?」
「嘘だな」
「するわけないだろ」
なぜかムキになる兄様は、照れくさいのだろう。それかオーガス兄様に遠慮しているのか。
オーガス兄様は、プライドだけは高い長男である。過去に、ブルース兄様に面と向かって「僕より先に結婚するのは許さない!」と指を突きつけていた。ブルース兄様は気遣いできるタイプの弟なので、オーガス兄様のプライドを守るため日々頑張っているのだ。
「オーガス兄様には内緒にしておいてあげる」
「内緒もなにも。事実無根だぞ」
またまたぁ。
前のめりで否定してくる兄様は、見ていて楽しい。
なにより結婚のことはアリア本人から聞いたのだ。間違いはないだろう。
「おまえ、あれだぞ。アリアってアロンの妹だぞ? そこをちゃんと理解しているのか」
「クソ野郎の妹」
「そう! あのクソ野郎の妹がまともな人間だと思うか?」
「……思わないかも」
首を捻れば、ブルース兄様は「そうだろう!」と語気強めに頷いてくる。
え、てことはアリアの嘘ってこと?
そういえば彼女、俺と出会った当初も自分はお兄さんであると性別から偽っていた。大嘘つきのお姉さんである。騙されているという可能性に気がついた俺は、おずおずと兄様を見遣る。
「じゃあ、ブルース兄様はアリアとは結婚しないってこと? 全部アリアの嘘ってこと?」
「そういうことだ」
深く頷いた兄様は、安堵の表情を見せた。
「うん」
突然、話題を変えたブルース兄様は、なにやら探るような目線を向けてくる。
「ラッセルは、何か言っていたか?」
「特には。オーガス兄様の友達だって言ってた」
「そんなわけないだろ」
クソ失礼な言葉を吐き捨てた兄様は、額を押さえていた。その顔は、どちらかといえばオーガス兄様への呆れを含んでいた。
「ラッセルは、ちょっと。あまり信用するな」
「忖度お兄さんだもんね」
「なんだその愉快な呼び名は」
ブルース兄様は、ラッセルが酷い忖度をしていることに気が付いているらしい。まぁ、タイラーも知っているようだったし、割と有名なようだ。
しかし、オーガス兄様は気が付いていないらしい。そんな馬鹿な。
ブルース兄様いわく、オーガス兄様はマジでラッセルのことを信用しているそうだ。純粋にも程があると、頭を抱えている。
純粋なオーガス兄様は、度々ラッセルを頼っているらしい。ブルース兄様が何度もやめろと苦言を呈しているそうだが、「友達だから」のひと言で突っぱねられてしまうのだとか。オーガス兄様が、ブルース兄様に刃向かうなんて珍しい。いつもは弟相手にビクビクしているはずなのに。
「その猫だって」
俺の抱えるエリスちゃんを顎で示したブルース兄様は、苦い顔をしていた。
どうやら、オーガス兄様のお願いを受けてラッセルが探してきた猫らしい。一体どこで手に入れて来たんだか、と呆れるブルース兄様。
「そうなのか?」
「にゃー」
白猫の顔を覗き込んで確認するが、真相はいまいちよくわからない。黒猫ユリスだったら会話できたのにな。頭をなでなでしておこう。
「でもラッセルいい人だった。ユリスの子分になってたよ」
「どういうことだよ」
頭を抱える兄様は、マジで苦労していそうだった。
「俺の子分にもなってくれるって言った」
「なにをしているんだ。やめろアホ」
突然、俺らをディスってくる兄様は、簡単に言ってしまえばラッセルのことが嫌いなのだろう。先程から、彼の悪口ばかりだ。
「ラッセルは、忖度お兄さんだけど」
「さっきからなんだ。その愉快な呼び名は」
「アロンよりは、いい人」
胸を張って事実を伝えれば、兄様は遠い目をする。どうやらアロンを比較基準に使うなと言いたいらしい。アロンと比べれば、だいたいの人がいい人認定だからな。
「あ!」
クソ野郎のことを考えていたからか。大事なことを思い出した。
「あのね兄様」
「なんだ」
「アリアが結婚式はいつにしますかって」
「……え、なんの話だ」
なんのって。あれだろ。とぼけてみせる兄様に、にやにやと頬が緩んでしまう。
「ブルース兄様、アリアと結婚するんでしょ?」
「しないが?」
「嘘だな」
「するわけないだろ」
なぜかムキになる兄様は、照れくさいのだろう。それかオーガス兄様に遠慮しているのか。
オーガス兄様は、プライドだけは高い長男である。過去に、ブルース兄様に面と向かって「僕より先に結婚するのは許さない!」と指を突きつけていた。ブルース兄様は気遣いできるタイプの弟なので、オーガス兄様のプライドを守るため日々頑張っているのだ。
「オーガス兄様には内緒にしておいてあげる」
「内緒もなにも。事実無根だぞ」
またまたぁ。
前のめりで否定してくる兄様は、見ていて楽しい。
なにより結婚のことはアリア本人から聞いたのだ。間違いはないだろう。
「おまえ、あれだぞ。アリアってアロンの妹だぞ? そこをちゃんと理解しているのか」
「クソ野郎の妹」
「そう! あのクソ野郎の妹がまともな人間だと思うか?」
「……思わないかも」
首を捻れば、ブルース兄様は「そうだろう!」と語気強めに頷いてくる。
え、てことはアリアの嘘ってこと?
そういえば彼女、俺と出会った当初も自分はお兄さんであると性別から偽っていた。大嘘つきのお姉さんである。騙されているという可能性に気がついた俺は、おずおずと兄様を見遣る。
「じゃあ、ブルース兄様はアリアとは結婚しないってこと? 全部アリアの嘘ってこと?」
「そういうことだ」
深く頷いた兄様は、安堵の表情を見せた。
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