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11歳
237 プライベートが謎
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セドリックは、察しがよかった。さすがは副団長である。
俺が引き続き尾行していることに気が付いたらしいセドリックは、一度こちらを振り返ると、そのまま逃走した。慌てて走って追いかけたが、追いつけなかった。完全に撒かれてしまった。
「なんで逃げるんだ。なにかやましいことでもあるのか!」
「なんで僕に言うんだ」
悔しさを抱えた俺は、そのままユリスの部屋に突入した。いつもと変わらず、よくわからん魔法に関する本を読み耽っていたユリスは、暇そうである。暇なら俺の相手をするべきだ。
「セドリックって普段なにしてるんだろ」
プライベートがマジで想像できない。ちょっと前までは隣の部屋で過ごしていた仲であるが、彼が正式に副団長に戻ってからは、部屋が離れてしまった。まぁ、お隣同士だった時にもセドリックの私生活は謎だったけど。
一度気になると、もやもやする。
どう思う? とユリスに尋ねるが、「興味ない」と言われるだけでまともに対応してくれない。ぼんやりと本を眺めている。白猫をジャンに預けて、ユリスの側へと近寄る。そうして横から勢いよく本を奪い取れば、ユリスが負けじと立ち上がる。
「僕の邪魔をするんじゃない!」
「真剣に話聞いて!」
「おまえの話はくだらない。真剣に聞く価値がない」
「はぁ?」
なにその態度。腹の立った俺は、ユリスの頭を叩いてやろうと片手を構える。けれども、すぐにロニーが「暴力はダメですよ?」と困ったような声を発したものだから、動きを止める。確かに、ロニーの言う通りだ。
そろそろと手を下ろす。
「命拾いしたな」
捨て台詞を吐けば、ユリスが鼻で笑ってくる。再びイラッとする俺であったが、我慢である。ロニーが悲しむし。
気を取り直して、話題を戻す。
「で? セドリックっていつも何してるの」
「だから、僕に訊かれても知らないと言っている」
俺から本を奪い返したユリスは、どかりと椅子に腰かける。偉そうに足を組んで、こちらを睨み付けてくる。
「そんなに気になるなら、自分で見てくればいいだろ」
「だから。追いかけたけど撒かれたんだって」
どうすればいい? と尋ねるが、ユリスはとことん興味がなさそうである。ダメだ。こいつに訊いても進展がない。
「タイラーは? なにか知らない?」
ユリスの後ろに居たタイラーを見上げる。彼は騎士である。副団長であるセドリックは、タイラーの上司にあたる。何か知らないかと問いかけるが、期待したような答えは返ってこない。
はやくも八方塞がりである。立ち尽くす俺に、タイラーが「そもそも」と控えめに声をかけてくる。
「どうして副団長の私生活に突然興味を?」
「アロンが」
アロンの名前を出した途端、タイラーが「またか」という顔をする。
「あのですね、ルイス様。アロン殿の話は信じたらダメですよ? あの人、基本嘘しか言わないので」
「タイラーもそう思う?」
「はい」
これはやはり、アロンに遊ばれているのか? そういえば、この情報を提供してきた際の彼は、ちょっと笑っているようにも見えた。
「……クソ野郎め」
精一杯の悪態をついて、怒りをあらわにするが、肝心のクソ野郎がこの場に居ない。「おまえは何度騙されれば気が済むんだ?」と、ユリスがせせら笑っている。
しかし。たとえアロンによるセドリックが挙動不審だという話が嘘だとしても、セドリックの私生活が謎であることには変わりがない。
すごく気になる。気になって仕方がない。
こうなればあれだ。直接尋ねるしかない。
「ジャン!」
「は、はい」
「猫ちょうだい」
「はい。どうぞ」
そっと差し出された猫を受け取って、ユリスに別れを告げる。「どこに行く?」と訊かれたので、「セドリックのとこ!」と返しておく。
そうして勢いよく部屋を飛び出した俺は、再びセドリックを探しに騎士棟へと向かった。
俺が引き続き尾行していることに気が付いたらしいセドリックは、一度こちらを振り返ると、そのまま逃走した。慌てて走って追いかけたが、追いつけなかった。完全に撒かれてしまった。
「なんで逃げるんだ。なにかやましいことでもあるのか!」
「なんで僕に言うんだ」
悔しさを抱えた俺は、そのままユリスの部屋に突入した。いつもと変わらず、よくわからん魔法に関する本を読み耽っていたユリスは、暇そうである。暇なら俺の相手をするべきだ。
「セドリックって普段なにしてるんだろ」
プライベートがマジで想像できない。ちょっと前までは隣の部屋で過ごしていた仲であるが、彼が正式に副団長に戻ってからは、部屋が離れてしまった。まぁ、お隣同士だった時にもセドリックの私生活は謎だったけど。
一度気になると、もやもやする。
どう思う? とユリスに尋ねるが、「興味ない」と言われるだけでまともに対応してくれない。ぼんやりと本を眺めている。白猫をジャンに預けて、ユリスの側へと近寄る。そうして横から勢いよく本を奪い取れば、ユリスが負けじと立ち上がる。
「僕の邪魔をするんじゃない!」
「真剣に話聞いて!」
「おまえの話はくだらない。真剣に聞く価値がない」
「はぁ?」
なにその態度。腹の立った俺は、ユリスの頭を叩いてやろうと片手を構える。けれども、すぐにロニーが「暴力はダメですよ?」と困ったような声を発したものだから、動きを止める。確かに、ロニーの言う通りだ。
そろそろと手を下ろす。
「命拾いしたな」
捨て台詞を吐けば、ユリスが鼻で笑ってくる。再びイラッとする俺であったが、我慢である。ロニーが悲しむし。
気を取り直して、話題を戻す。
「で? セドリックっていつも何してるの」
「だから、僕に訊かれても知らないと言っている」
俺から本を奪い返したユリスは、どかりと椅子に腰かける。偉そうに足を組んで、こちらを睨み付けてくる。
「そんなに気になるなら、自分で見てくればいいだろ」
「だから。追いかけたけど撒かれたんだって」
どうすればいい? と尋ねるが、ユリスはとことん興味がなさそうである。ダメだ。こいつに訊いても進展がない。
「タイラーは? なにか知らない?」
ユリスの後ろに居たタイラーを見上げる。彼は騎士である。副団長であるセドリックは、タイラーの上司にあたる。何か知らないかと問いかけるが、期待したような答えは返ってこない。
はやくも八方塞がりである。立ち尽くす俺に、タイラーが「そもそも」と控えめに声をかけてくる。
「どうして副団長の私生活に突然興味を?」
「アロンが」
アロンの名前を出した途端、タイラーが「またか」という顔をする。
「あのですね、ルイス様。アロン殿の話は信じたらダメですよ? あの人、基本嘘しか言わないので」
「タイラーもそう思う?」
「はい」
これはやはり、アロンに遊ばれているのか? そういえば、この情報を提供してきた際の彼は、ちょっと笑っているようにも見えた。
「……クソ野郎め」
精一杯の悪態をついて、怒りをあらわにするが、肝心のクソ野郎がこの場に居ない。「おまえは何度騙されれば気が済むんだ?」と、ユリスがせせら笑っている。
しかし。たとえアロンによるセドリックが挙動不審だという話が嘘だとしても、セドリックの私生活が謎であることには変わりがない。
すごく気になる。気になって仕方がない。
こうなればあれだ。直接尋ねるしかない。
「ジャン!」
「は、はい」
「猫ちょうだい」
「はい。どうぞ」
そっと差し出された猫を受け取って、ユリスに別れを告げる。「どこに行く?」と訊かれたので、「セドリックのとこ!」と返しておく。
そうして勢いよく部屋を飛び出した俺は、再びセドリックを探しに騎士棟へと向かった。
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