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143 可愛い猫
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マーティーと仲良くすること。
タイラーが言いたいことをまとめるとこういうことだ。俺はすでにマーティーと仲良くしようと頑張っているのに。
タイラーに小言をもらう俺を、マーティーはなにやらムッとした表情で見ている。なにそれ? どういう感情なの?
「いいですか? 仲良くしてくださいね」
「はーい」
元気よく手をあげてお返事しておく。「本当にわかってます?」となにやら疑いの目を向けられたが知らん。俺は俺なりにマーティーと仲良くやっている。精神年齢が離れているのに頑張って合わせてあげているのだ。マーティーはマジもんのお子様だからな。優しくしてやらないと。
とりあえずお土産お菓子でも渡しておこう。ジャンから受け取ったお菓子をぐいぐい押し付ければ、マーティーは困惑顔で受け取る。もっと嬉しそうに受け取れ。
「なんだこれは」
「お土産」
「なんで開いているんだ」
「俺が開けた」
なぜ? と怪訝な顔をしたマーティーは、こほんと咳払いをする。
「まぁいい。ありがたくもらっておこう」
その顔がなんだかニヤけているのを俺は見逃さなかった。やっぱりお子様はお菓子好きなんだな。よしよし。
「半分は俺にちょうだい」
仲良くなるために半分こしようと提案すれば、背後から鋭い眼光が飛んでくる。振り返らなくともわかる。タイラーが怒っている。
「じゃあ俺は一個でいいよ。あとは全部マーティーにあげる」
大幅に妥協してみるが「ユリス様?」と低い声が聞こえてきた。一個もダメなの? 俺が持ってきたのに?
「……全部あげる」
ものすごく妥協してやる。「あ、ありがとう」と微妙な顔でお礼を言ったマーティーは、さっさとお菓子をガブリエルに渡してしまう。俺のお菓子。恨みがましい視線を向けていると、それに気が付いたガブリエルが息を呑む。そのままどこかへお菓子を持って行ってしまった。なんてこった。
「兄上と会ったのか?」
「うん」
椅子に座ったマーティーは、「そうか」とそわそわしている。どうやら俺とエリックの会話内容が気になるらしい。
マーティーの向かいの椅子を陣取っている黒猫ユリスをぐいぐい押して退かす。『なにするんだ』と不満そうな黒猫ユリスであったが、すたっと音もなく着地してみせる。すっかり猫生活に馴染んでいるようで。
「そんな雑に扱うなよ。可哀想だとは思わないのか?」
俺が猫を椅子から落としたことに対して、マーティーが眉を顰めている。なんだこいつ。猫好きか?
「これは俺の猫だから。マーティーにはあげない」
「いらない」
ならいいけど。そうこうしている間に、なにやらティアンが黒猫ユリスを確保している。「よいしょ」と小さな掛け声と共に抱き上げたティアンは、「触ってみますか?」と黒猫ユリスをマーティーに差し出している。やめろよ。それ俺の猫だぞ。
『なんだこいつは。勝手に許可を出すな』
黒猫ユリスもふんふん怒っている。だが猫の言葉が聞こえないティアンとマーティーはなにやらきらきらとした目で黒猫を見つめている。
「さ、触ってもいいのか?」
「ちょっとだけね」
こちらを振り返ったマーティーに、渋々許可を出す。ティアンに抱えられて大人しくしていた黒猫ユリスに、マーティーがそろそろと手を伸ばす。
そうして頭を一瞬だけ触ったマーティーは、黒猫ユリスが顔を上げると、ビクッと肩を揺らす。
「ビビってんのか?」
「そ、そんなわけは!」
ぎゅっと眉間に皺を寄せたマーティーが、もう一度手を伸ばす。
そうして指先が触れそうになったその瞬間。黒猫ユリスが盛大に暴れた。身をくねらせてティアンの腕から脱出を試みている。これに驚いたのがマーティーだ。
「っ!」
慌てて手を引っ込めたマーティーは、なんだか泣きそうな顔をしていた。
『お? 泣くか?』
ぴたりと動きを止めた黒猫ユリスが興味津々にマーティーを観察している。どうやらマーティーをビビらせるためにわざと暴れたらしい。なんて嫌な奴だ。
しかし予想に反してマーティーは泣かなかった。
「か、可愛い猫だな」
「どうも」
強がってそんなことを言っている。黒猫ユリスが残念そうに尻尾を垂らしていた。意地悪にゃんこめ。
タイラーが言いたいことをまとめるとこういうことだ。俺はすでにマーティーと仲良くしようと頑張っているのに。
タイラーに小言をもらう俺を、マーティーはなにやらムッとした表情で見ている。なにそれ? どういう感情なの?
「いいですか? 仲良くしてくださいね」
「はーい」
元気よく手をあげてお返事しておく。「本当にわかってます?」となにやら疑いの目を向けられたが知らん。俺は俺なりにマーティーと仲良くやっている。精神年齢が離れているのに頑張って合わせてあげているのだ。マーティーはマジもんのお子様だからな。優しくしてやらないと。
とりあえずお土産お菓子でも渡しておこう。ジャンから受け取ったお菓子をぐいぐい押し付ければ、マーティーは困惑顔で受け取る。もっと嬉しそうに受け取れ。
「なんだこれは」
「お土産」
「なんで開いているんだ」
「俺が開けた」
なぜ? と怪訝な顔をしたマーティーは、こほんと咳払いをする。
「まぁいい。ありがたくもらっておこう」
その顔がなんだかニヤけているのを俺は見逃さなかった。やっぱりお子様はお菓子好きなんだな。よしよし。
「半分は俺にちょうだい」
仲良くなるために半分こしようと提案すれば、背後から鋭い眼光が飛んでくる。振り返らなくともわかる。タイラーが怒っている。
「じゃあ俺は一個でいいよ。あとは全部マーティーにあげる」
大幅に妥協してみるが「ユリス様?」と低い声が聞こえてきた。一個もダメなの? 俺が持ってきたのに?
「……全部あげる」
ものすごく妥協してやる。「あ、ありがとう」と微妙な顔でお礼を言ったマーティーは、さっさとお菓子をガブリエルに渡してしまう。俺のお菓子。恨みがましい視線を向けていると、それに気が付いたガブリエルが息を呑む。そのままどこかへお菓子を持って行ってしまった。なんてこった。
「兄上と会ったのか?」
「うん」
椅子に座ったマーティーは、「そうか」とそわそわしている。どうやら俺とエリックの会話内容が気になるらしい。
マーティーの向かいの椅子を陣取っている黒猫ユリスをぐいぐい押して退かす。『なにするんだ』と不満そうな黒猫ユリスであったが、すたっと音もなく着地してみせる。すっかり猫生活に馴染んでいるようで。
「そんな雑に扱うなよ。可哀想だとは思わないのか?」
俺が猫を椅子から落としたことに対して、マーティーが眉を顰めている。なんだこいつ。猫好きか?
「これは俺の猫だから。マーティーにはあげない」
「いらない」
ならいいけど。そうこうしている間に、なにやらティアンが黒猫ユリスを確保している。「よいしょ」と小さな掛け声と共に抱き上げたティアンは、「触ってみますか?」と黒猫ユリスをマーティーに差し出している。やめろよ。それ俺の猫だぞ。
『なんだこいつは。勝手に許可を出すな』
黒猫ユリスもふんふん怒っている。だが猫の言葉が聞こえないティアンとマーティーはなにやらきらきらとした目で黒猫を見つめている。
「さ、触ってもいいのか?」
「ちょっとだけね」
こちらを振り返ったマーティーに、渋々許可を出す。ティアンに抱えられて大人しくしていた黒猫ユリスに、マーティーがそろそろと手を伸ばす。
そうして頭を一瞬だけ触ったマーティーは、黒猫ユリスが顔を上げると、ビクッと肩を揺らす。
「ビビってんのか?」
「そ、そんなわけは!」
ぎゅっと眉間に皺を寄せたマーティーが、もう一度手を伸ばす。
そうして指先が触れそうになったその瞬間。黒猫ユリスが盛大に暴れた。身をくねらせてティアンの腕から脱出を試みている。これに驚いたのがマーティーだ。
「っ!」
慌てて手を引っ込めたマーティーは、なんだか泣きそうな顔をしていた。
『お? 泣くか?』
ぴたりと動きを止めた黒猫ユリスが興味津々にマーティーを観察している。どうやらマーティーをビビらせるためにわざと暴れたらしい。なんて嫌な奴だ。
しかし予想に反してマーティーは泣かなかった。
「か、可愛い猫だな」
「どうも」
強がってそんなことを言っている。黒猫ユリスが残念そうに尻尾を垂らしていた。意地悪にゃんこめ。
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