転生したら異世界の神話《蒼穹の眠り姫》に巻き込まれてしまった

リョウ

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学校一歩前での転生

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 燦々と夏の強い日差しが天上より降り注ぐ。それに伴い、蝉の大合唱が耳に届く。
 暑い──。
 日本の夏は、本当に暑い。
 俺は何故か知らんが、蒼穹の髪を持って産まれたために、他の日本人と比べ頭の温度はそれほど暑くないかもしれない。だがそれでも──暑い。

 小中学校では、その珍しい髪色瞳の色ゆえに、どれほどいじられてきたか。それが嫌で、髪を黒に染めようとしたことすらあった。
 でもそれでも、蒼穹は黒に染まらなかった。染まる気配すらなく、永遠の青がそこに広がったのだ。
 学校側も結局文句を言えずにいた。なんてたって染められないのだから──

 おっと、そう言えば自己紹介をしてなかったな。
 俺は、茅野嶺亜かやの-みねあだ。歳は18で、身長は169センチ。
 ちょっと小さいなーって声が聞こえた気がするぞ。小さくないわ! まだ成長期の途中なんだよ! 多分……。
 そんなことよりも、高校生になった俺はいやいやだったその髪が好きになった。
 まぁ、回りが染めたい染めたいと言い出す頃で俺は蒼穹。羨ましがられた。

 そしてこれはそんな俺が、高2の夏のある日だ。
 いつも通り、この表現出来ないほどに暑い夏の火曜日。土日と休んで、月曜日は何とか気力で頑張る事が出来るのだが、何とも気だるくなるその火曜日。
 俺は──寝坊していた。
 目が覚めたのは、午前8時45分。もう既に一限目が始まっている時間だ。
「今日サボろうか」
 そう零してみる。
「アンタ馬鹿じゃ無いの。行けよ!」
 すると、少し離れた場所から声が飛んできた。びっくりしたー。居ないと思ってたから……。
「何で母さんいるの?」
「何では失礼でしょ! 私とお父さんの家なんだよ?」 
 いやまぁ、そういう意味じゃなくて……。
「仕事は?」
「今日はたまたま夜から。残念だったねー、サボれなくて」
 声から愉しそうなのが分かる。ひっどい人だ。
「マジ残念だわ」
 ため息混じりにそう零してから俺は、ベッドから転がり落ちる。ゴンッ、と大きな音がする。
 痛っ。転がり落ち方ミスった……。 

「ほんとアンタそうやって起きるの好きね」
 その音を聞いた母さんが、俺を嘲笑うように言った。
 眠いし、だるいし……。こんなクソ暑い日に、エアコンも完備されてないクソ学校に行かなきゃならねぇーってのは、どうにかならないのか?
 制服の開襟シャツに袖を通しながら思う。
 いっそのこと半ズボンで行くとかありじゃねぇ?
 寝巻きのステテコに目を落としてそう思うや、
「ちゃんと着替えなさいよ」
 母さんから声が上がる。親子ってこういう所が面倒なんだよ。
「分かってるよ」
 あからさまに大きな溜息をつき、俺は学生ズボンを手に取る。
 何でこんなクソ暑い時期に、熱吸収しやすい黒の長ズボンなんて穿かなきゃなんねぇーんだよ。

 と思いつつも、しっかり制服に着替えた俺は、ゆーっくりと朝食をとってから家を出た。
 家を出る時に、
「今日の夜からまた、お母さん仕事だからね」
 と言われたが、ほぼ毎日の事なので別段気にすることでもない。
 適当に相槌を打って、自転車のカギを開ける。

 本当はチャリ通じゃないから乗って行っちゃダメなんだが……。まぁいいだろう。
 行ってやるんだからな。
 その事に──やはり母さんは何やら叫んでいたが、聞こえないフリで学校へと向かう。
 大手牛丼チェーン店の前を通り過ぎ、そのまま真っ直ぐに自転車を漕ぐ。
 いくつかの信号機を超えると、遂にはガソリンスタンドが目に入る。ガソリンが高いなどと、ネットニュースでよく見るが、それでもひっきりなしに車が入っている所を見ると、何だかなぁと感じてしまう。
 そのガソリンスタンドを左手に曲がると、もう学校の全容が目に入る。
 瞬間、一限目が終わったことを知らすチャイムで鳴った。
 だから学校ここには来たくなかったんだよ。
 だが、ここで帰るわけにもいかない。なんてたって、家には母さんがいるから。
 俺は学校の前を通り過ぎる。それからか少し先にあるコンビニに、自転車を止める。
 学校の駐輪場に止めれば、バレてしまうのだ。俺がチャリ通ではないのに、自転車に乗って学校に来たということが。
 そこからは徒歩で学校に向かう。これが俺らの学校での暗黙のルールだ。
 めんどくせぇ。
 天を仰ぐと、そこにはちょうど飛行機雲が出来ていた。ぐんぐんと上昇していく飛行機と同じように、雲も伸びていく。
「どこまでも一緒、か」
 知らず知らずのうちにそんな呟きを洩らす。

「おいっ! いま何時だと思ってんだ!」
 視線を天より戻した時だった。職員室から出てきた、半袖半パン姿の男性教師が俺に気づき声を上げた。
 体育のやつか。こりゃあまた面倒なことになったな……。
 はぁー。と、強く大きなため息を、あからさまに零してから俺は声を上げた。
「すいませーん」
 それから少し駆け足気味にして、反省したように見せかける。
 すると校門まではあっという間に着いてしまう。
 あーあ、あのままゆっくり歩いてれば2限もちょっとは遅れられたかもなのに……。
 失敗したな、と思いながら校門を越えた。その瞬間──
 体が感じたことのない浮遊感に襲われた。だが、痛みも何も無い。おかしい、異常だ。
 そう思っても声を出すことができない。
 漆黒の世界なのに、視界がグルグルと回っているのが分かる。だがそれで、気分が悪くなるといったことは無い。
 何なんだ……?
 考えても答えは出ない。すると、視界が少し晴れた。漆黒しかない世界に、ぽつり、ぽつりと青い炎のようなものが浮かび上がる。ゆらゆらと揺れ、見ているだけで身体の中から何かが湧き上がってくるようだ。
 声も出せない空間で、足掻く俺はその青の炎に触れようと手を伸ばした。
 体も動かなったらどうしよう、と思っていたので体が動いたことは良かった。しかし、触れた物が悪かった。見た目は青い炎なのだが、温度がない。冷たくも暖かくもない。そこに存在しているだけで、触れたことによりその物が何なのかという事が思考を支配する。
 刹那──。青い炎らしきものが、動き始めた。ゆらゆらと揺れながら、計6つあるそれが俺を囲む。
 途端に心が焦燥に駆られる。
 やばいやばい……。でも、どうすればいいんだよっ!
 ボンッ。
 鈍く、しかし質量のある音が響いた。
 いや、正しくは俺の脳内に流れ込んだ、と言うべきかもしれない。
 直後、青い炎が光を帯びて形を変えた。
 一つは大きな円になり、一つはその中に一回り小さな円を描く。 
 その間に一つが、円と円の間に見たことのない字を浮き上がらせる。
 それが何かは、一瞬では分からなかった。だが、ここまで来れば分かる。
 ──魔法陣だ。
 だが、それに気づいた時には俺の実体は薄くなり意識もはっきりとしてなかった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 そして、気がついた時には俺の眼前は知らない顔で埋め尽くされていた。
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