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7.条件だらけの戦い

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「申し訳ありません。
誇り高き竜さま。
あなたさまの誤解を解きたくて、お話ができる姿にかえさせていただきました」

 おれに支えられつつも、マナトは深々と頭を下げた。
 やっぱり! 
 この美女さん、ジュエルドラゴンだ!

「誤解⁉ 
なによ、あなたたち、アタシのタマゴに何する気⁉」

 ジュエルドラゴンは、この姿のままでもかみつきそうな勢いだ。
 マナトが何か言おうとして、苦しそうにうめく。
 こりゃ、おれが代わりに話すしかないか。

「えっと、ここの人間たちはですね、
とある探しものをしてたんですよ。
地面に埋めた、タイムカプセルっていう……えーと、宝物です。
でも、埋めた場所を忘れてしまって。
だから、適当に掘っていたら、その、偶然、
ジュエルドラゴンさんのタマゴを掘り当ててしまったってワケです」

 ドキドキしながら、おれはこれまでのあらましを話した。

「……ホント?」

 ちょっとにらむ目つきをやわらげて、ジュエルドラゴンはつぶやいた。

「本当です。
ご迷惑、ご心配をおかけして、まことに申し訳ありませんでした!」

 おれも、さっきのマナトと同じくらい深く頭を下げた。
 でも、これだけで納得してくれるのかな……?

「……なあんだ、そうだったのね。
アタシったら、勘違い~!」

 へ? 
 頭を上げると、ジュエルドラゴンは、明るい笑みを浮かべていた。

「そういえばアナタたち、
アタシをふきとばしたり、おさえつけたりはしたけど……、
傷つけたりすることはしなかったものね」

 その言葉にはっとする。そっか。
 マナトの指示に従っていたから……。
 これで、ヘタにジュエルドラゴンを攻撃してたら、
 こうやって誤解をとくこともできなかったな。
 さすが、プロの幻獣保護管。

「ごめんなさいね~。攻撃しちゃったりして。
ケガ、なかった?」

「あ、大丈夫です……」

 今までの戦いの空気から一変。
 ほわほわとした雰囲気に、ちょっとおいていかれそうになる。
 この人(竜?)、こんなに優しい顔になるんだ。

「このタマゴね、ちょっと前にここで産んだの。
人間界に遊びに来たら、急に産気づいちゃって……。
魔法界に戻るまで、ガマンできなくてね。
まだカラがやわらかかったから、持ち帰るのもキケンだし……。
それで、見つからないように埋めて、目印に石をおいたんだけど……、
もしかして、それが悪かったのかしら」

 ジュエルドラゴンが、う~んとうなる。
 ちょっと前? 
 それにしては、土に掘り返したあともなく、しっかりしてたような……。

「ジュエルドラゴンは、人間と時間の感覚が違う。
ちょっと前っていったって……。
十年とか、二十年とか、ヘタすると百年とか。
そうとう前のことだと思うぞ」

 少しは回復したらしく、しっかりした口調でマナトが教えてくれた。
 ってことは……。
 母さんたちがタイムカプセルを埋めたのが、約二十二年前。
 ジュエルドラゴンがタマゴを産んだのが十年から二十年前だとする。
 だとしたら、この緑っぽいデカイ石は、
 やっぱりタイムカプセルの目印として置いてあったんだ。
 きっと、うろのあいた桜の木の近くに置いていたんだろう。
 それを、あとからジュエルドラゴンが動かして、
 自分のタマゴの目印にしてしまったんだ!
 なんだ、そういうことだったのか……。

「あら、魔法がきれそうね」

 ジュエルドラゴンの体が光り、ちかちかと点滅する。

「もとの姿にもどったら、タマゴをもって魔法界へ行くわ。
じゃあね、人間さん」

 再びまばゆい光につつまれたと思ったら、
 ジュエルドラゴンは竜の姿にもどっていた。

「くるるるっ!」

 ジュエルドラゴンは首を下げて、おれたちの顔をなめた。
 はは、くすぐってえ!
 なめ終わると、ジュエルドラゴンは自分の体に軽く歯をたて、
 器用に一枚のウロコを引きちぎった。
 それをくわえたまま、おれたちに差し出す。

「おわびの品ってことか?」

「そうみたいだな。
幻獣保護管としては、こういうのはアウトなんだが……。
リキには今回、超世話になったしな。
おれは見なかったことにする!」

「うおお、マジで?」

「ほら、早くもらっちまえ」

 おれはウロコを受け取り、ジュエルドラゴンのほほを優しくなでた。
 そうして、ジュエルドラゴンはタマゴをつかむと高くとびあがり、
 マナトの呪文で再び透明になって、空にとけて消えていったのだった。
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