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7.条件だらけの戦い

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「この場は、幻獣保護管であるおれのいうことを聞いてくれ。
アイツを傷つけると、絶対にやっかいなことになる」

 ……もう! そんなにマジメな顔されちゃ、断れねぇじゃねーか。
 なんていうか、「仕事人」の顔だもんな。

「わかったよ! 今度学食おごれよ!」

「……ああ! 三日間おごってやる!」 

 マナトが言い終わると同時に、
 石壁がドガッという大きな音とともに、ガラガラとくずれた。
 ジュエルドラゴンがツメでもって切り裂いてきたのだ!
 おれはマナトをかばうように前に出た。

「とにかく、ノワールを呼ぶ! その間、援護をまかせた!」
「おう!」

 おれは右手のこぶしを、ばしっと左手にうちつけた。
 さて、気合は十分。
 でも、ジュエルドラゴンに血を流させてもダメ、
 骨折させてもダメ、たおしてもダメ……。
 条件だらけだ。
 それなら……!

「おりゃっ!」

 おれは巨大な手をイメージして、
 ジュエルドラゴンを上から念動力でおさえつけた。

「ぐおおお!」

 ジュエルドラゴンがおたけびを上げて、もがく。
 しっぽを地面にたたきつけ、砂ぼこりが舞った。
 うぐぐぐ、つぶさないように注意しつつ、絶妙な力加減で……!
 わわわ、暴れるなって! 
 感覚的には、びちびちしてる魚を素手で押さえてる感じだ。
 だから、すべってしょうがない。
 マナト、まだか⁉ 

「われ願う。
わが使い魔よ、わが呼びかけにこたえ、眼前に姿をあらわせ! 
サスクリット・レビータ!」

 空中に、丸い円の中に、いろんな記号が描かれたもの……、
 ゲームでよく見る、魔法陣が描かれる。
 横目で見ると、そこから何か書かれた、
 白い紙が出てきたのがわかった。
 マナトはばっとその紙をとって、文字に目をはしらせる。

「あんの、バカ鳥があああ! 
なにが、『本日休業』だあああ!」

 マナトは叫び、ビリビリと紙を破り捨てた。

「えええ! ノワール、こねーのかよ!」

 がくっと力が抜けた瞬間、
 ジュエルドラゴンがおれの念動力を振り切って、こちらに目を向けた。
 ものすごい速度でもってやってきて、がばりと大きな口を開ける。
 かみつかれる!
 おれはマナトの手をひっぱり、ふたりで学校の屋上まで瞬間移動した。
 結果、ジュエルドラゴンは、ガチンッと空をかむことになる。

「くるる?」

いきなり消えたおれたちを探して、ジュエルドラゴンは辺りを見回している。
でも、屋上にいることには気づかないようだった。

「サンキュー、リキ!
ここでなら、落ち着いて呪文をとなえられる。
もう、こうなったら、最後の手段だ!
リキ、おれ、これとなえたらぶっ倒れると思うから、あとのこと頼んだ!」

「わかった!」

 魔法を使うのには、その体にやどる魔力を使用する。
 しかし、魔力は使いすぎると、
 体に負担がかかり、最悪、気絶してしまう。
 そうマナトから教えてもらったことがある。
 マナトが「ぶっ倒れる」って言ったってことは、
 そうとうたいへんな呪文をつかうんだな。

「アース・イース・ウェンデル・エトル……」

 マナトが呪文を唱え始めると、
 ジュエルドラゴンの頭上に巨大な魔法陣がうかんだ。
 異変を察知したジュエルドラゴンが、
 ぶんぶんと頭を降るが、魔法陣は消えない。

「……ケリット・コルギーヌ! 
われが願うのは、和解である。
獣から人へ。
あのものの姿をかえよ!」

 ぴかっと魔法陣が光った。
 同時に、マナトがくずれ落ちる。

「マナト!」

「大丈夫、だ。なんとか気絶せずにすんだ。
それより、ジュエルドラゴンは……?」

 マナトの肩に手を回して支えつつ、瞬間移動で校庭に移動する。
 ジュエルドラゴンは……、見当たらない。
 そのかわりに、ジュエルドラゴンがいた場所には、人が立っていた。
 年は、大学生くらいだろうか? 
 髪のひとふさずつが、全部違った色をしている。
 着ているのがシンプルな白いワンピースなだけに、
 髪色がひときわ目立っていた。
 でも、その人の顔立ちは、
 その鮮やかな虹色の髪に負けないくらいの超美女だ。
 ただ、その表情は怒りにそまっていて、
 キツイ目つきがものすごくおっかない。

「ちょっと人間! なにすんのよ! 
アタシをこんな姿にするなんて!」

 キンキンとした声で叫ぶと、美女はこっちをにらみつけた。
 ちょっと待てよ、言ってる内容からすると、この超美女さんて……。
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