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7.条件だらけの戦い
7-2
しおりを挟む「この場は、幻獣保護管であるおれのいうことを聞いてくれ。
アイツを傷つけると、絶対にやっかいなことになる」
……もう! そんなにマジメな顔されちゃ、断れねぇじゃねーか。
なんていうか、「仕事人」の顔だもんな。
「わかったよ! 今度学食おごれよ!」
「……ああ! 三日間おごってやる!」
マナトが言い終わると同時に、
石壁がドガッという大きな音とともに、ガラガラとくずれた。
ジュエルドラゴンがツメでもって切り裂いてきたのだ!
おれはマナトをかばうように前に出た。
「とにかく、ノワールを呼ぶ! その間、援護をまかせた!」
「おう!」
おれは右手のこぶしを、ばしっと左手にうちつけた。
さて、気合は十分。
でも、ジュエルドラゴンに血を流させてもダメ、
骨折させてもダメ、たおしてもダメ……。
条件だらけだ。
それなら……!
「おりゃっ!」
おれは巨大な手をイメージして、
ジュエルドラゴンを上から念動力でおさえつけた。
「ぐおおお!」
ジュエルドラゴンがおたけびを上げて、もがく。
しっぽを地面にたたきつけ、砂ぼこりが舞った。
うぐぐぐ、つぶさないように注意しつつ、絶妙な力加減で……!
わわわ、暴れるなって!
感覚的には、びちびちしてる魚を素手で押さえてる感じだ。
だから、すべってしょうがない。
マナト、まだか⁉
「われ願う。
わが使い魔よ、わが呼びかけにこたえ、眼前に姿をあらわせ!
サスクリット・レビータ!」
空中に、丸い円の中に、いろんな記号が描かれたもの……、
ゲームでよく見る、魔法陣が描かれる。
横目で見ると、そこから何か書かれた、
白い紙が出てきたのがわかった。
マナトはばっとその紙をとって、文字に目をはしらせる。
「あんの、バカ鳥があああ!
なにが、『本日休業』だあああ!」
マナトは叫び、ビリビリと紙を破り捨てた。
「えええ! ノワール、こねーのかよ!」
がくっと力が抜けた瞬間、
ジュエルドラゴンがおれの念動力を振り切って、こちらに目を向けた。
ものすごい速度でもってやってきて、がばりと大きな口を開ける。
かみつかれる!
おれはマナトの手をひっぱり、ふたりで学校の屋上まで瞬間移動した。
結果、ジュエルドラゴンは、ガチンッと空をかむことになる。
「くるる?」
いきなり消えたおれたちを探して、ジュエルドラゴンは辺りを見回している。
でも、屋上にいることには気づかないようだった。
「サンキュー、リキ!
ここでなら、落ち着いて呪文をとなえられる。
もう、こうなったら、最後の手段だ!
リキ、おれ、これとなえたらぶっ倒れると思うから、あとのこと頼んだ!」
「わかった!」
魔法を使うのには、その体にやどる魔力を使用する。
しかし、魔力は使いすぎると、
体に負担がかかり、最悪、気絶してしまう。
そうマナトから教えてもらったことがある。
マナトが「ぶっ倒れる」って言ったってことは、
そうとうたいへんな呪文をつかうんだな。
「アース・イース・ウェンデル・エトル……」
マナトが呪文を唱え始めると、
ジュエルドラゴンの頭上に巨大な魔法陣がうかんだ。
異変を察知したジュエルドラゴンが、
ぶんぶんと頭を降るが、魔法陣は消えない。
「……ケリット・コルギーヌ!
われが願うのは、和解である。
獣から人へ。
あのものの姿をかえよ!」
ぴかっと魔法陣が光った。
同時に、マナトがくずれ落ちる。
「マナト!」
「大丈夫、だ。なんとか気絶せずにすんだ。
それより、ジュエルドラゴンは……?」
マナトの肩に手を回して支えつつ、瞬間移動で校庭に移動する。
ジュエルドラゴンは……、見当たらない。
そのかわりに、ジュエルドラゴンがいた場所には、人が立っていた。
年は、大学生くらいだろうか?
髪のひとふさずつが、全部違った色をしている。
着ているのがシンプルな白いワンピースなだけに、
髪色がひときわ目立っていた。
でも、その人の顔立ちは、
その鮮やかな虹色の髪に負けないくらいの超美女だ。
ただ、その表情は怒りにそまっていて、
キツイ目つきがものすごくおっかない。
「ちょっと人間! なにすんのよ!
アタシをこんな姿にするなんて!」
キンキンとした声で叫ぶと、美女はこっちをにらみつけた。
ちょっと待てよ、言ってる内容からすると、この超美女さんて……。
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