27 / 55
2
27
しおりを挟む
「皇輝土曜日暇?」
「……空いてるけど」
「佐倉と出掛ける用事出来ちゃった」
「はあ!?」
「皇輝も一緒でいいよね」
「お前とふたりっきりにさせる訳がないだろ!」
なんでそんな佐倉と僕をふたりにさせたくないんだろ。
どうみても僕と佐倉は不釣り合いで、疚しいことになんかならないのに。
皇輝と佐倉がふたりの方が心配なんだけど。
「……で、どこ行くの」
「文化祭」
「は」
「文化祭、大学の。佐倉の先輩がいるんだって」
言いながら、そりゃいるだろ、って自分で突っ込んでしまった。
付属大学だぞ、なんなら自分達の先輩だっている。
「わざわざ?」
「まあどうせ僕達も通う訳だし。よく考えたら僕まだ大学内入ったことないんだよね」
「……」
「人も多いだろうし、佐倉きっと声掛けられまくるよ、そゆ時皇輝いたら牽制になるんじゃないかなあ。あ、でも皇輝も声掛けられまくりそう……佐倉がくっついてたらふたりに声掛けるひと減るかな」
「……そこはお前がくっつけよ」
「あはは、外じゃだめだよお」
「……」
え、なんで顔が近付いて……
気付いた瞬間、自分から離れてしまった。
「外!ここ外!学校!」
「いけると思って」
「馬鹿なの!?」
「碧が喜ぶかと思ったんだけど」
「場所考えてよね!」
やっぱりキスをしようとしてたらしい。
正直嬉しいけど、こんなとこではだめだ。
昼休み、屋上、場所取り。いつ黒川と塚山が購買から戻ってくるかわからない。
いや、キスはしたい。めちゃくちゃしたい。
したいけど見られてバレても困る。でもどこですればいいんだろう。
……学生ってのはイチャつくのも大変なんだなあ。
「お待たせ~めっちゃ混んでたわ」
「ほい烏龍茶」
「ありがとー」
購買でパンを買ってきたふたりが、ついでに頼んだお茶を買ってきてくれた。
セーフ、さっきの会話は聞かれてない。
早速座りながら袋を開け、今日も碧は弁当か、とやたら大きな僕の弁当箱を覗き込んでくる。
「おばさんも弁当頑張るねえ」
「毎日じゃないし、大体昨日の残りだよ」
「うちのかーちゃんは朝起きねーよ、自分で朝飯用意して昼は買えってスタイルが当たり前だったわ」
「仕事してるから大変なんだよ、皇輝んちだってそうじゃん」
「うちはそれより料理出来ないだけだし」
そう。おばさんは料理が苦手。
最初は毎日購買やコンビニで買ってたんだけど、その内女子からの弁当差し入れ合戦が始まり、それに困った皇輝が自分で用意するようにしたら、それはそれで今まで受け取らなかったのに誰が作ったんだ論争が起こり、うんざりした皇輝はまた買うだけの生活に戻った。
その話を知ったうちの母さんが漫画みたいねと大爆笑して、それから僕の弁当箱が大きくなった。
皇輝の母親が料理が苦手なのは知っている、だからといって育ち盛りの男子がそれはどうかと、微々たるものだが弁当を多目に持たされるようになったのだった。
最近は来なかったんだけど、ちょっと前まではたまにうちに夕飯を食べに来たりもしてたんだよね。だから母さんも皇輝の好みを知ってたりして。
週に数回来る家政婦さんが作る料理も美味いけど、おばさんの料理も美味いよ、と褒めて貰えた母さんは上機嫌である。
そういえば、女子からの弁当って一回も受け取ったことないんだよな。
その時は何か入ってたりしたらこわいし、まあ誰かひとりを選ぶのも荒れそうだもんな、と思ってたけど、もしかして僕の手前、気にして受け取らない気持ちもあったのだろうか。
そういうの結構、気にするタイプの男なんだよな。
「何か碧機嫌良くなったな」
「んー?別にぃ」
悪い気がする訳ない。
いや、真意は聞けてないんだけど、でもそうだろうなあ、と思うとにやけちゃう。
なんだよ、皇輝結構僕のことすきだよなって。
「てかふたりちゃんと仲直りしたんだ?」
「え?」
「ここ最近おかしかったもんな」
「ぎくしゃくしてたよな、ああいうの結構気を遣うんだぞ~」
「え、え」
「悪かったな」
返し方に困ってると、あっさり皇輝は認めて謝った。
ふたりもあっさりと、まあ仲直りしたんならいいわとパンにかぶりつく。
……そんなあっさりしていいもんなんだ。
ちょっと呆然としながら、皇輝の口に卵焼きを突っ込んだ。
佐倉とか、女子ならもっと突っ込んできそうだけど。
この距離感は有難いけど。でも、僕と皇輝の関係がばれたらどうなるんだろう。
どうもならないような、そんな期待はしてはいけないような。
祝われない関係はちょっと、結構寂しいけど。
でもうん、今はそんなことより、皇輝と付き合えた方に喜んでおくべきだ。
「碧」
「……ん」
「これ」
「ピーマン炒めたやつ」
口を開けたところに放り込んでやる。これ、だけじゃなくて何か言え。
教室ではクールぶってるから、こういうかわいいとこは女子は知らないんだよな、とちょっと優越感もあるけど。
そうだ。
皇輝のそういう良さをわかるのは僕だけでいい。
僕の嫌いなピーマンを皇輝の為にわざわざ入れる母さんも、それをわかって選んで食べる皇輝も、他の女子たちは知らないでいい。
「……空いてるけど」
「佐倉と出掛ける用事出来ちゃった」
「はあ!?」
「皇輝も一緒でいいよね」
「お前とふたりっきりにさせる訳がないだろ!」
なんでそんな佐倉と僕をふたりにさせたくないんだろ。
どうみても僕と佐倉は不釣り合いで、疚しいことになんかならないのに。
皇輝と佐倉がふたりの方が心配なんだけど。
「……で、どこ行くの」
「文化祭」
「は」
「文化祭、大学の。佐倉の先輩がいるんだって」
言いながら、そりゃいるだろ、って自分で突っ込んでしまった。
付属大学だぞ、なんなら自分達の先輩だっている。
「わざわざ?」
「まあどうせ僕達も通う訳だし。よく考えたら僕まだ大学内入ったことないんだよね」
「……」
「人も多いだろうし、佐倉きっと声掛けられまくるよ、そゆ時皇輝いたら牽制になるんじゃないかなあ。あ、でも皇輝も声掛けられまくりそう……佐倉がくっついてたらふたりに声掛けるひと減るかな」
「……そこはお前がくっつけよ」
「あはは、外じゃだめだよお」
「……」
え、なんで顔が近付いて……
気付いた瞬間、自分から離れてしまった。
「外!ここ外!学校!」
「いけると思って」
「馬鹿なの!?」
「碧が喜ぶかと思ったんだけど」
「場所考えてよね!」
やっぱりキスをしようとしてたらしい。
正直嬉しいけど、こんなとこではだめだ。
昼休み、屋上、場所取り。いつ黒川と塚山が購買から戻ってくるかわからない。
いや、キスはしたい。めちゃくちゃしたい。
したいけど見られてバレても困る。でもどこですればいいんだろう。
……学生ってのはイチャつくのも大変なんだなあ。
「お待たせ~めっちゃ混んでたわ」
「ほい烏龍茶」
「ありがとー」
購買でパンを買ってきたふたりが、ついでに頼んだお茶を買ってきてくれた。
セーフ、さっきの会話は聞かれてない。
早速座りながら袋を開け、今日も碧は弁当か、とやたら大きな僕の弁当箱を覗き込んでくる。
「おばさんも弁当頑張るねえ」
「毎日じゃないし、大体昨日の残りだよ」
「うちのかーちゃんは朝起きねーよ、自分で朝飯用意して昼は買えってスタイルが当たり前だったわ」
「仕事してるから大変なんだよ、皇輝んちだってそうじゃん」
「うちはそれより料理出来ないだけだし」
そう。おばさんは料理が苦手。
最初は毎日購買やコンビニで買ってたんだけど、その内女子からの弁当差し入れ合戦が始まり、それに困った皇輝が自分で用意するようにしたら、それはそれで今まで受け取らなかったのに誰が作ったんだ論争が起こり、うんざりした皇輝はまた買うだけの生活に戻った。
その話を知ったうちの母さんが漫画みたいねと大爆笑して、それから僕の弁当箱が大きくなった。
皇輝の母親が料理が苦手なのは知っている、だからといって育ち盛りの男子がそれはどうかと、微々たるものだが弁当を多目に持たされるようになったのだった。
最近は来なかったんだけど、ちょっと前まではたまにうちに夕飯を食べに来たりもしてたんだよね。だから母さんも皇輝の好みを知ってたりして。
週に数回来る家政婦さんが作る料理も美味いけど、おばさんの料理も美味いよ、と褒めて貰えた母さんは上機嫌である。
そういえば、女子からの弁当って一回も受け取ったことないんだよな。
その時は何か入ってたりしたらこわいし、まあ誰かひとりを選ぶのも荒れそうだもんな、と思ってたけど、もしかして僕の手前、気にして受け取らない気持ちもあったのだろうか。
そういうの結構、気にするタイプの男なんだよな。
「何か碧機嫌良くなったな」
「んー?別にぃ」
悪い気がする訳ない。
いや、真意は聞けてないんだけど、でもそうだろうなあ、と思うとにやけちゃう。
なんだよ、皇輝結構僕のことすきだよなって。
「てかふたりちゃんと仲直りしたんだ?」
「え?」
「ここ最近おかしかったもんな」
「ぎくしゃくしてたよな、ああいうの結構気を遣うんだぞ~」
「え、え」
「悪かったな」
返し方に困ってると、あっさり皇輝は認めて謝った。
ふたりもあっさりと、まあ仲直りしたんならいいわとパンにかぶりつく。
……そんなあっさりしていいもんなんだ。
ちょっと呆然としながら、皇輝の口に卵焼きを突っ込んだ。
佐倉とか、女子ならもっと突っ込んできそうだけど。
この距離感は有難いけど。でも、僕と皇輝の関係がばれたらどうなるんだろう。
どうもならないような、そんな期待はしてはいけないような。
祝われない関係はちょっと、結構寂しいけど。
でもうん、今はそんなことより、皇輝と付き合えた方に喜んでおくべきだ。
「碧」
「……ん」
「これ」
「ピーマン炒めたやつ」
口を開けたところに放り込んでやる。これ、だけじゃなくて何か言え。
教室ではクールぶってるから、こういうかわいいとこは女子は知らないんだよな、とちょっと優越感もあるけど。
そうだ。
皇輝のそういう良さをわかるのは僕だけでいい。
僕の嫌いなピーマンを皇輝の為にわざわざ入れる母さんも、それをわかって選んで食べる皇輝も、他の女子たちは知らないでいい。
13
お気に入りに追加
288
あなたにおすすめの小説
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる