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第一章 木嶋真奈の日記より抜粋①
第十話 でも、女捨ててるとは言え、しっかりダイエットはしてますよ
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「はぁ……」
「真奈、そう落ち込まないでよ」
「落ち込むよー。私、人生で今まで遅刻したこと一回もないんだよ。初だよ、初遅刻」
「だから、ごめんって。お詫びに今日の学食奢るから。ね!」
「もう、しょうがないなぁ」
二限も終わり、昼時である。私と菜摘は圧倒的学食派なので、混み合うのも承知の上だが、仕方なく食堂へ向かう。
うちは私立大学なだけあり、学食はわりと、というかかなり美味しい。これは自信を持って言える。特に【豚焼肉丼】とか言う最強メニューは安くて、多くて、旨いという三拍子そろった逸品である。普段なら私は迷わずこれを選ぶ。
しかし、奢りとなれば話は別だ。平時なら絶対に頼まない組み合わせだって頼める……!
「じゃあ、私は、【カツカレー定食大盛り】かな」
「えっそんなのでいいの? 奢りなのに五百円以内に収めるなんて……」
「ちっちっちっ……。甘いよ、菜摘」
「えっ?」
「カレーに課金なんて普通考えないんだよ。カツカレーは三百五十円。カレーは二百円。カツカレー定食にすればその二倍の四百円だよ。普通ならカツカレー定食頼むくらいならカレー二皿頼むでしょ」
「いや普通カレー二皿食べないけど……」
「しかーし! 今回は奢り。すなわち、無駄にお金を使える……! それならばいっそ、もう食べることはないであろう、カツカレー定食に敢えて挑戦する……! これこそが真の女子大学生よ!」
「うん、真奈もうちょいボリューム下げようか」
その時、唐突に着信音が鳴った。
スマホ画面には、バカの文字。
「はぁ……」
「……? どうしたの、真奈?」
「ごめん、やっぱ今日学食なしでいい?」
「えー! 奢りは今日限定だよ~!」
「ほんとごめん!」
「どうせ仕事でしょ……。いいよ、いってらっしゃい」
「ごめん、三限までには戻ってくるから。じゃあね!」
「うん、あとでね」
そう言う菜摘の悲しそうな表情を私は見逃さなかった。
ごめんよ、菜摘。このバカは事件が解決したら私が責任を持って頸椎潰しておくから。
「はい、もしもし」
「うわぁ! やっと出た! 何やってたんすか! すぐ出るって言ってたじゃないですか!」
「うるさいなぁ、こっちだって事情があるんだよ。で、用は?」
「お、俺の……。俺の、スマホが、盗まれたっす!」
「……あ?」
そしてすぐさま通話を切り、来た道を戻る。
私には猿と遊んでる暇はない。やはりこの依頼は断ろう。
しかし、また着信音が鳴る。
「何? 私人間としか話したくないんだけど」
「ち、違うっす! 言い間違えっす! スマホの、スマホの情報が盗まれてたんすよ!」
「はぁ?」
「俺、ちょっと狙ってた子がいて、ライン送ってたんすけど。それがなんか晒されてるんすよ……!」
「真奈、そう落ち込まないでよ」
「落ち込むよー。私、人生で今まで遅刻したこと一回もないんだよ。初だよ、初遅刻」
「だから、ごめんって。お詫びに今日の学食奢るから。ね!」
「もう、しょうがないなぁ」
二限も終わり、昼時である。私と菜摘は圧倒的学食派なので、混み合うのも承知の上だが、仕方なく食堂へ向かう。
うちは私立大学なだけあり、学食はわりと、というかかなり美味しい。これは自信を持って言える。特に【豚焼肉丼】とか言う最強メニューは安くて、多くて、旨いという三拍子そろった逸品である。普段なら私は迷わずこれを選ぶ。
しかし、奢りとなれば話は別だ。平時なら絶対に頼まない組み合わせだって頼める……!
「じゃあ、私は、【カツカレー定食大盛り】かな」
「えっそんなのでいいの? 奢りなのに五百円以内に収めるなんて……」
「ちっちっちっ……。甘いよ、菜摘」
「えっ?」
「カレーに課金なんて普通考えないんだよ。カツカレーは三百五十円。カレーは二百円。カツカレー定食にすればその二倍の四百円だよ。普通ならカツカレー定食頼むくらいならカレー二皿頼むでしょ」
「いや普通カレー二皿食べないけど……」
「しかーし! 今回は奢り。すなわち、無駄にお金を使える……! それならばいっそ、もう食べることはないであろう、カツカレー定食に敢えて挑戦する……! これこそが真の女子大学生よ!」
「うん、真奈もうちょいボリューム下げようか」
その時、唐突に着信音が鳴った。
スマホ画面には、バカの文字。
「はぁ……」
「……? どうしたの、真奈?」
「ごめん、やっぱ今日学食なしでいい?」
「えー! 奢りは今日限定だよ~!」
「ほんとごめん!」
「どうせ仕事でしょ……。いいよ、いってらっしゃい」
「ごめん、三限までには戻ってくるから。じゃあね!」
「うん、あとでね」
そう言う菜摘の悲しそうな表情を私は見逃さなかった。
ごめんよ、菜摘。このバカは事件が解決したら私が責任を持って頸椎潰しておくから。
「はい、もしもし」
「うわぁ! やっと出た! 何やってたんすか! すぐ出るって言ってたじゃないですか!」
「うるさいなぁ、こっちだって事情があるんだよ。で、用は?」
「お、俺の……。俺の、スマホが、盗まれたっす!」
「……あ?」
そしてすぐさま通話を切り、来た道を戻る。
私には猿と遊んでる暇はない。やはりこの依頼は断ろう。
しかし、また着信音が鳴る。
「何? 私人間としか話したくないんだけど」
「ち、違うっす! 言い間違えっす! スマホの、スマホの情報が盗まれてたんすよ!」
「はぁ?」
「俺、ちょっと狙ってた子がいて、ライン送ってたんすけど。それがなんか晒されてるんすよ……!」
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