13 / 347
第1 章 自分だけの職業
12話 冒険者
しおりを挟む
ヒロトシは、今回の事を逆手にとり冒険者ギルドの協力を得て、客を引き込もうと考えた。
「ご主人様?それはどのように磨くのですか?」
「サイファー。どうしたこんな工場に入ってきて」
「ご主人様が、急いで工場に入ったので気になって……ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいよ」
この、サイファーと呼ばれた少女は、メイドの中の一人で魔族の少女で、頭には渦を巻いた角を二つ持っている。普段は、みんなの洗濯をして、今も庭で洗濯した衣類を物干しに干していたところだ。
「それで、それは何をしているのですか?」
「研磨というのは汚れる物なんだよ。研磨剤がまわり噴き飛ぶと言った方がいいかな?サイファーも、ここにいるならこれを耳にこうしてかけて」
ヒロトシは、研磨道具で召還した、防塵マスクをサイファーに渡した。
「危ないから、そこから近づいたらだめだよ」
「はい」
ヒロトシは、設置型のグラインダーに、金剛砂をつけた180#のバフを取り付け、グラインダーを起動させた。
すると、そのバフは勢いよく回転し始めた。ヒロトシはその金剛砂の部分に、蝋で固めた茶色の研磨剤をつけた。
そして、カチュアから預かったナイフの刀身をバフにつけると、火花が飛び散りサイファーはびっくりした。
「ご主人様、お客様のナイフが!」
「大丈夫だよ」
ヒロトシは、その刃先をすかせる様に刀身を眺めていた。そして、刃こぼれが無くなったを確認して、納得いったかのようだった。
そして、今度は金剛砂の付いていない、麻で作られたサイザルバフという種類の円形のバフを設置したのだった。
「ご主人様それは?」
「今回は400#研磨で仕上げになるから、この工程終わりだよ」
「そんな簡単に?」
「すごいだろ?」
ヒロトシは、今度はそのサイザルバフに白棒と言われる研磨剤を塗った。そして、刀身をバフに当てて力を入れた。
ヒロトシは、刀身の根元から剣先に滑らすように仕上げ、研磨を何回もした。この時、ヒロトシは地球とは違う行動をしていたのだった。仕上げ研磨の時、魔力を込めてながらスキルの研磨を使っていた。そうすることで、+1装備となるのである。驚いたことに、この全ての工程は5分程度で終わってしまった。
「できた!」
「もう終わったのですか?」
「ああ。400#研磨だからな。ナイフ程度ならこんものだよ」
サイファーは、ヒロトシからナイフを渡してもらった。
「ご、ご主人様。こ、これ……」
確かに刀身は磨かれ、先ほどとは違い光っていたのだが、持ち手は研磨剤で汚れていたのだった。
「あーごめんごめん」
地球では、テープとかで保護して磨く必要があったが、ここでは魔法があるのでそう言った作業はいらなかった。
ヒロトシはナイフに【クリーン】をかけると、研磨剤は取れて新品のように綺麗になった。
「サイファーは鑑定を持っているだろ?確認してみたら驚くよ?」
ヒロトシに、そう言われて鑑定して見るとサイファーは目を見開いた。
「こ、これ凄いです!あれだけで、マジカルアイテムになっています」
「どうだすごいだろ?」
「これなら、冒険者から依頼が殺到すると思いますよ。早くお客様にこれを!」
「まあ、そんな馬鹿正直にすぐに持っていく必要はないよ。30分ほど時間を潰そうか」
設置型のグラインダーの先には、ファンがまわっている。研磨をする際、研磨剤が撒き散るのでそれを防止する為このファンで吸い込むのだ。吸い込んだ研磨剤は、その先につながっているタンクに収納される。
「でも、あれだけで、ご主人様は粉だらけですね……」
「研磨職人というのはこう言うもんだよ。だから、研磨をする際には完全防護だな」
ヒロトシは、頭には帽子をかぶり、目にはゴーグル口には防塵マスクをしていた。仕事内容を話していたら、30分はすぐに経っていた。そして、ヒロトシはサイファーから防塵マスクを返してもらい、インベントリのゴミ箱に捨てた。これらの道具は地球の物でこの世界にはないものだからだ。
そして、ヒロトシはナイフを持って、客室に入っていった。
それから数日後、㋪美研は冒険者でごったがえしていた。ギルドマスター自ら怪しいと言ったことを謝罪して、㋪美研の店は冒険者にとってとても重要な店の一つだと釈明された。
そして、ギルドマスターは今回の事で責任を取らされ、1年間給料の70%減俸、ボーナスカットという事になった。
「そ、そんな……ヒロトシも大事にはしないと言ってくれたではないか?」
「何を言っているのですか!ヒロトシさんが、大事にしないと言ってくれたからこそ、それだけの事で済んだのが分からないのですか?今回、ギルド調査員が入った事で貴方の日頃の言動が問題となったのですよ?」
「そんな、俺はただ……」
「若い人間を心配したのは立派だと思いますが、貴方のやり方は間違っていると上は判断したのですよ。冒険者ギルドは町の役に立つことを信念に成り立っていることを自覚しなさい。間違っても迷惑をかけることがあってはいけないのです」
ギルドの長であるギルドマスターは、冒険者の見本にならないといけない役目があると叱られたのだった。ギルドマスターバルガンの言動は、冒険者達に影響されるのである。
この前もBランク冒険者が逮捕されたのは、ギルドマスターもっと周りに気を遣っていれば、もっと早く発見できたことだったのだ。
そして、今回迷惑をかけたヒロトシには、減俸となったギルドマスターの給料から支払われる事になった。
この町は、本当に領主がいい人で平民を大事にしていることが分かる。今回の事も、ギルド調査員とあるが、これは領主が考えた第三者委員会である。
前は問題が起きたとしても、ギルドの中で罪が握りつぶされて、弱い人間がよく犠牲になっていた。しかし、領主が平民は町の宝だと言い、第三者委員会を発足させたのだった。これにより、より公平になったのは言うまでもなかったのである。
そして、ギルドから宣伝をされた㋪美研は、冒険者からの依頼が殺到したのだ。しかし、一難去ってまた一難な事が起こった。店の中で大声が響いたのだ。
「なんでだよ!あいつは2500ゴールドで、俺の武器は6000ゴールドだなんて納得がいかねえ!」
「ですから、何度も説明しているじゃないですか?ダガーとツーハンドソードでは、大きさが全然違うじゃないですか?」
「だが、効果は同じ+1なんだろ?同じじゃねえか!店主を呼べ!お前達じゃ話にならん!」
マインとアイは、どうにもならないと思い、ヒロトシを呼びにいった。そして、しばらくするとドロドロになったヒロトシが店舗に顔を出した。
「何か納得のいかない事がありましたか?」
「あたりまえだ!なんで俺の武器が6000ゴールドもするんだ!」
「それは当たり前ですよ。貴方の武器は、ナイフより磨く面が大きいからですよ」
「だが、効果は+1ソードと同じじゃねえか?俺の武器も、2500ゴールドにしろよ!」
冒険者の言う事はめちゃくちゃだった。
「では、反対の立場になって考えてもらえますか?」
「なんだよ?」
「もし仮に、俺がグリフォンの爪が欲しくて、あなたに依頼したとしましょう」
グリフォンの依頼はAランクの依頼であり、本来はこの男が受けれる依頼ではない。
「それがどうした?」
「その依頼料が、薬草と同じ報酬でと俺が言ったらどうしますか?」
「ば、馬鹿な事を!グリフォンがどんな魔物か分かっているのか?爪一本で50万ゴールドを貰わないと割が合わねえよ!」
「しかし、ギルドで発行する同じ依頼じゃないですか?同じ依頼でそれを行なう人は同じだろ?だから、10ゴールドで手に入れてきてくれと言っているだけだよ」
「全然違う!俺は命を懸けて……」
「だが、薬草を採取するときに森の中に入るだろ?薬草採取は命の保証はあるのかい?一緒だよ一緒!」
「屁理屈を抜かすな!」
冒険者は、ヒロトシの言い分に頭に血が上って剣を抜き振りかぶった。
「「きゃああああああ!」」
「やべええ!コイツ剣を抜いた!」
「取り押さえろ!」
マインやアイは、ヒロトシが斬られると思い悲鳴を上げて、客で来ていた冒険者達は、その問題の冒険者を取り押さえようとした。しかしその瞬間、その冒険者は外にはじき出されてしまったのだった。そして、向かいの家の壁に
叩きつけられて、あまりの衝撃に気絶してしまったのだった。
「あーあ……馬鹿な奴だな……」
「「ご、ご主人様大丈夫ですか?」」
その様子に、他の冒険者達は何が起こったのか分からず呆然としてしまった。
「大丈夫だよ。前にも言っていただろ?この店に、悪意のあるものは防犯システムが発動するって」
「「そ、そうでしたね」」
「しかし、驚きました……ご主人様が殺されるかと……」
「皆さん、ご迷惑をかけました。それで申し訳ありませんが、先ほどの事ですが証言して頂いてもよろしいですか?」
アイは、ヒロトシに言われて衛兵に通報しに、兵舎に走ったのだった。そして、気絶した冒険者は他の冒険者達に縛られてしまっていた。
「暴れている奴はどいつだ!」
衛兵がアイに連れられてやってきた。それに、お客であった冒険者達はコイツだと証言をしたのだった。ヒロトシは商人であり冒険者ではない。その人間に剣で斬りかかったとなれば重罪となる。これは客で来ていた人間すべてが証言をしたのである。
冒険者ギルド規定にもあるが、冒険者は冒険者以外の一般平民に、剣を抜いてはいけないという規定があるのだ。
この犯罪は、冒険者ギルドにとって頭の痛い事となった。今回でヒロトシに迷惑をかける事になったのが、3回目となったからだ。
そして、ギルドから副ギルドマスターと幹部達が、後日謝罪しにヒロトシの家にやって来ることになった。
「今回も又、うちの冒険者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
今回は、ヒロトシの屋敷の方に案内され、ギルドの上層部の人間は深々と頭を下げたのだった。今回の事で、㋪美研は店を閉めていた。
「いやぁ……まさか剣を抜かれるとは思いもしなかったよ。うちの従業員はトラウマになったとおもうよ」
「申し訳ありません……」
「でも、少し聞きたいんだけど……ギルドマスターはどうしたの?」
「あの人は前に、ヒロトシ様に迷惑をかけたとして、内勤に精を出しています。それに、あの人が出ると又ややこしくなるので……」
実質、ギルドは副ギルドマスターであるカチュアによってもっていると、ヒロトシは思った。
「そ、それで……こちらの方をお納めください……」
「こ、これは?」
「あの冒険者は、一般平民を襲った事で殺人未遂と判決が出て、奴隷へと落とされました。その賠償金です」
「そういう事か……これは、ギルドに返しますよ」
「なっ!それはいけません……」
「嫌な事を言うが、俺は冒険者と少し距離を置こうと思うんだよ」
「何故そんな事を!ヒロトシさまの技術は、冒険者にとってとても大切な技術なんですよ!」
「そう言って貰えるのはありがたいが、しかしこうギルドマスターを始め、冒険者に迷惑をかけられるとね……」
「そ、それは……で、ですが、そうなれば困るのは、ヒロトシさんも同じになるのではありませんか?仕事が無くなるのですよ?」
「俺はまだ、商人ギルドではペーペーなんでね。年間1000コールド納めれば、何の問題もありませんよ」
「しかし、どうやって生活をするつもりですか?」
「この町で生活するには、家族4人が1ヶ月生活するには5万ゴールドもあれば十分生活は出来ますよ。つまり、うちの家族は13人です。20万もあれば十分お釣りがでますよ」
「いやいや……年間220万がいる事になるのですよ。その資産はどこから?こういっては何ですが、この屋敷を買ったとなれば、お金ももうほとんどないと思いますが?」
冒険者ギルドは必死だった。ヒロトシの技術は冒険者にとって生命線ともいえる物だったからだ。しかし、ヒロトシはインベントリから、ミスリル貨を一枚取り出した。
「なっ!ミ、ミスリル貨……」
「これ一枚あれば、5年弱は有意義に生活できますからね。なんの問題はないですよ」
「そ、そんな……本当に申し訳ありません!」
ギルドは、ここでヒロトシから見捨てられると、ギルド経営は元に戻るのは目に見えていた為、なんとか機嫌を直そうと必死になっていた。ギルドの意見を聞き、ヒロトシは少し考えて口を開いた。
「ご主人様?それはどのように磨くのですか?」
「サイファー。どうしたこんな工場に入ってきて」
「ご主人様が、急いで工場に入ったので気になって……ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいよ」
この、サイファーと呼ばれた少女は、メイドの中の一人で魔族の少女で、頭には渦を巻いた角を二つ持っている。普段は、みんなの洗濯をして、今も庭で洗濯した衣類を物干しに干していたところだ。
「それで、それは何をしているのですか?」
「研磨というのは汚れる物なんだよ。研磨剤がまわり噴き飛ぶと言った方がいいかな?サイファーも、ここにいるならこれを耳にこうしてかけて」
ヒロトシは、研磨道具で召還した、防塵マスクをサイファーに渡した。
「危ないから、そこから近づいたらだめだよ」
「はい」
ヒロトシは、設置型のグラインダーに、金剛砂をつけた180#のバフを取り付け、グラインダーを起動させた。
すると、そのバフは勢いよく回転し始めた。ヒロトシはその金剛砂の部分に、蝋で固めた茶色の研磨剤をつけた。
そして、カチュアから預かったナイフの刀身をバフにつけると、火花が飛び散りサイファーはびっくりした。
「ご主人様、お客様のナイフが!」
「大丈夫だよ」
ヒロトシは、その刃先をすかせる様に刀身を眺めていた。そして、刃こぼれが無くなったを確認して、納得いったかのようだった。
そして、今度は金剛砂の付いていない、麻で作られたサイザルバフという種類の円形のバフを設置したのだった。
「ご主人様それは?」
「今回は400#研磨で仕上げになるから、この工程終わりだよ」
「そんな簡単に?」
「すごいだろ?」
ヒロトシは、今度はそのサイザルバフに白棒と言われる研磨剤を塗った。そして、刀身をバフに当てて力を入れた。
ヒロトシは、刀身の根元から剣先に滑らすように仕上げ、研磨を何回もした。この時、ヒロトシは地球とは違う行動をしていたのだった。仕上げ研磨の時、魔力を込めてながらスキルの研磨を使っていた。そうすることで、+1装備となるのである。驚いたことに、この全ての工程は5分程度で終わってしまった。
「できた!」
「もう終わったのですか?」
「ああ。400#研磨だからな。ナイフ程度ならこんものだよ」
サイファーは、ヒロトシからナイフを渡してもらった。
「ご、ご主人様。こ、これ……」
確かに刀身は磨かれ、先ほどとは違い光っていたのだが、持ち手は研磨剤で汚れていたのだった。
「あーごめんごめん」
地球では、テープとかで保護して磨く必要があったが、ここでは魔法があるのでそう言った作業はいらなかった。
ヒロトシはナイフに【クリーン】をかけると、研磨剤は取れて新品のように綺麗になった。
「サイファーは鑑定を持っているだろ?確認してみたら驚くよ?」
ヒロトシに、そう言われて鑑定して見るとサイファーは目を見開いた。
「こ、これ凄いです!あれだけで、マジカルアイテムになっています」
「どうだすごいだろ?」
「これなら、冒険者から依頼が殺到すると思いますよ。早くお客様にこれを!」
「まあ、そんな馬鹿正直にすぐに持っていく必要はないよ。30分ほど時間を潰そうか」
設置型のグラインダーの先には、ファンがまわっている。研磨をする際、研磨剤が撒き散るのでそれを防止する為このファンで吸い込むのだ。吸い込んだ研磨剤は、その先につながっているタンクに収納される。
「でも、あれだけで、ご主人様は粉だらけですね……」
「研磨職人というのはこう言うもんだよ。だから、研磨をする際には完全防護だな」
ヒロトシは、頭には帽子をかぶり、目にはゴーグル口には防塵マスクをしていた。仕事内容を話していたら、30分はすぐに経っていた。そして、ヒロトシはサイファーから防塵マスクを返してもらい、インベントリのゴミ箱に捨てた。これらの道具は地球の物でこの世界にはないものだからだ。
そして、ヒロトシはナイフを持って、客室に入っていった。
それから数日後、㋪美研は冒険者でごったがえしていた。ギルドマスター自ら怪しいと言ったことを謝罪して、㋪美研の店は冒険者にとってとても重要な店の一つだと釈明された。
そして、ギルドマスターは今回の事で責任を取らされ、1年間給料の70%減俸、ボーナスカットという事になった。
「そ、そんな……ヒロトシも大事にはしないと言ってくれたではないか?」
「何を言っているのですか!ヒロトシさんが、大事にしないと言ってくれたからこそ、それだけの事で済んだのが分からないのですか?今回、ギルド調査員が入った事で貴方の日頃の言動が問題となったのですよ?」
「そんな、俺はただ……」
「若い人間を心配したのは立派だと思いますが、貴方のやり方は間違っていると上は判断したのですよ。冒険者ギルドは町の役に立つことを信念に成り立っていることを自覚しなさい。間違っても迷惑をかけることがあってはいけないのです」
ギルドの長であるギルドマスターは、冒険者の見本にならないといけない役目があると叱られたのだった。ギルドマスターバルガンの言動は、冒険者達に影響されるのである。
この前もBランク冒険者が逮捕されたのは、ギルドマスターもっと周りに気を遣っていれば、もっと早く発見できたことだったのだ。
そして、今回迷惑をかけたヒロトシには、減俸となったギルドマスターの給料から支払われる事になった。
この町は、本当に領主がいい人で平民を大事にしていることが分かる。今回の事も、ギルド調査員とあるが、これは領主が考えた第三者委員会である。
前は問題が起きたとしても、ギルドの中で罪が握りつぶされて、弱い人間がよく犠牲になっていた。しかし、領主が平民は町の宝だと言い、第三者委員会を発足させたのだった。これにより、より公平になったのは言うまでもなかったのである。
そして、ギルドから宣伝をされた㋪美研は、冒険者からの依頼が殺到したのだ。しかし、一難去ってまた一難な事が起こった。店の中で大声が響いたのだ。
「なんでだよ!あいつは2500ゴールドで、俺の武器は6000ゴールドだなんて納得がいかねえ!」
「ですから、何度も説明しているじゃないですか?ダガーとツーハンドソードでは、大きさが全然違うじゃないですか?」
「だが、効果は同じ+1なんだろ?同じじゃねえか!店主を呼べ!お前達じゃ話にならん!」
マインとアイは、どうにもならないと思い、ヒロトシを呼びにいった。そして、しばらくするとドロドロになったヒロトシが店舗に顔を出した。
「何か納得のいかない事がありましたか?」
「あたりまえだ!なんで俺の武器が6000ゴールドもするんだ!」
「それは当たり前ですよ。貴方の武器は、ナイフより磨く面が大きいからですよ」
「だが、効果は+1ソードと同じじゃねえか?俺の武器も、2500ゴールドにしろよ!」
冒険者の言う事はめちゃくちゃだった。
「では、反対の立場になって考えてもらえますか?」
「なんだよ?」
「もし仮に、俺がグリフォンの爪が欲しくて、あなたに依頼したとしましょう」
グリフォンの依頼はAランクの依頼であり、本来はこの男が受けれる依頼ではない。
「それがどうした?」
「その依頼料が、薬草と同じ報酬でと俺が言ったらどうしますか?」
「ば、馬鹿な事を!グリフォンがどんな魔物か分かっているのか?爪一本で50万ゴールドを貰わないと割が合わねえよ!」
「しかし、ギルドで発行する同じ依頼じゃないですか?同じ依頼でそれを行なう人は同じだろ?だから、10ゴールドで手に入れてきてくれと言っているだけだよ」
「全然違う!俺は命を懸けて……」
「だが、薬草を採取するときに森の中に入るだろ?薬草採取は命の保証はあるのかい?一緒だよ一緒!」
「屁理屈を抜かすな!」
冒険者は、ヒロトシの言い分に頭に血が上って剣を抜き振りかぶった。
「「きゃああああああ!」」
「やべええ!コイツ剣を抜いた!」
「取り押さえろ!」
マインやアイは、ヒロトシが斬られると思い悲鳴を上げて、客で来ていた冒険者達は、その問題の冒険者を取り押さえようとした。しかしその瞬間、その冒険者は外にはじき出されてしまったのだった。そして、向かいの家の壁に
叩きつけられて、あまりの衝撃に気絶してしまったのだった。
「あーあ……馬鹿な奴だな……」
「「ご、ご主人様大丈夫ですか?」」
その様子に、他の冒険者達は何が起こったのか分からず呆然としてしまった。
「大丈夫だよ。前にも言っていただろ?この店に、悪意のあるものは防犯システムが発動するって」
「「そ、そうでしたね」」
「しかし、驚きました……ご主人様が殺されるかと……」
「皆さん、ご迷惑をかけました。それで申し訳ありませんが、先ほどの事ですが証言して頂いてもよろしいですか?」
アイは、ヒロトシに言われて衛兵に通報しに、兵舎に走ったのだった。そして、気絶した冒険者は他の冒険者達に縛られてしまっていた。
「暴れている奴はどいつだ!」
衛兵がアイに連れられてやってきた。それに、お客であった冒険者達はコイツだと証言をしたのだった。ヒロトシは商人であり冒険者ではない。その人間に剣で斬りかかったとなれば重罪となる。これは客で来ていた人間すべてが証言をしたのである。
冒険者ギルド規定にもあるが、冒険者は冒険者以外の一般平民に、剣を抜いてはいけないという規定があるのだ。
この犯罪は、冒険者ギルドにとって頭の痛い事となった。今回でヒロトシに迷惑をかける事になったのが、3回目となったからだ。
そして、ギルドから副ギルドマスターと幹部達が、後日謝罪しにヒロトシの家にやって来ることになった。
「今回も又、うちの冒険者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
今回は、ヒロトシの屋敷の方に案内され、ギルドの上層部の人間は深々と頭を下げたのだった。今回の事で、㋪美研は店を閉めていた。
「いやぁ……まさか剣を抜かれるとは思いもしなかったよ。うちの従業員はトラウマになったとおもうよ」
「申し訳ありません……」
「でも、少し聞きたいんだけど……ギルドマスターはどうしたの?」
「あの人は前に、ヒロトシ様に迷惑をかけたとして、内勤に精を出しています。それに、あの人が出ると又ややこしくなるので……」
実質、ギルドは副ギルドマスターであるカチュアによってもっていると、ヒロトシは思った。
「そ、それで……こちらの方をお納めください……」
「こ、これは?」
「あの冒険者は、一般平民を襲った事で殺人未遂と判決が出て、奴隷へと落とされました。その賠償金です」
「そういう事か……これは、ギルドに返しますよ」
「なっ!それはいけません……」
「嫌な事を言うが、俺は冒険者と少し距離を置こうと思うんだよ」
「何故そんな事を!ヒロトシさまの技術は、冒険者にとってとても大切な技術なんですよ!」
「そう言って貰えるのはありがたいが、しかしこうギルドマスターを始め、冒険者に迷惑をかけられるとね……」
「そ、それは……で、ですが、そうなれば困るのは、ヒロトシさんも同じになるのではありませんか?仕事が無くなるのですよ?」
「俺はまだ、商人ギルドではペーペーなんでね。年間1000コールド納めれば、何の問題もありませんよ」
「しかし、どうやって生活をするつもりですか?」
「この町で生活するには、家族4人が1ヶ月生活するには5万ゴールドもあれば十分生活は出来ますよ。つまり、うちの家族は13人です。20万もあれば十分お釣りがでますよ」
「いやいや……年間220万がいる事になるのですよ。その資産はどこから?こういっては何ですが、この屋敷を買ったとなれば、お金ももうほとんどないと思いますが?」
冒険者ギルドは必死だった。ヒロトシの技術は冒険者にとって生命線ともいえる物だったからだ。しかし、ヒロトシはインベントリから、ミスリル貨を一枚取り出した。
「なっ!ミ、ミスリル貨……」
「これ一枚あれば、5年弱は有意義に生活できますからね。なんの問題はないですよ」
「そ、そんな……本当に申し訳ありません!」
ギルドは、ここでヒロトシから見捨てられると、ギルド経営は元に戻るのは目に見えていた為、なんとか機嫌を直そうと必死になっていた。ギルドの意見を聞き、ヒロトシは少し考えて口を開いた。
1
お気に入りに追加
425
あなたにおすすめの小説
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
異世界往来の行商生活《キャラバンライフ》:工業品と芸術品でゆるく生きていくだけの話
RichardRoe(リチャード ロウ)
ファンタジー
【短いあらすじ】
・異世界と現世を往来できる不思議な鏡を見つける
・伝統工芸品を高値で売りさばいて大儲けして、裕福な生活を送る
・ホームセンターは最強()
【作品紹介】
「異世界と日本を行き来できるって、もしかしてすごく儲かるんじゃないか……!?」
異世界に転移できる鏡を見つけてしまった灰根利人(はいね りひと)。転移した先は、剣と魔法のいわゆるナーロッパ世界。
二つの世界を見比べつつ、リヒトは日本の物を異世界に持ち込みつつ、日本にも異世界の映像などを持ち込むことで一儲けすることを企むのだった――。
可愛い亜人娘たちに囲まれる生活もいいが、コツコツ副業に精を出すのもいい。
農業、商業、手工芸、あれもこれもと手を出して進める。
そんな異世界まったりスローライフ物語。
※参考:出てくる工芸品・織物等(予定含む)
江戸切子
津軽塗(唐塗梨子地)
九谷焼(赤色金襴手)
ベルナルド<エキュム・モルドレ>
シフォン生地のシュミーズ
ベルベット生地(天鵞絨)
カガミクリスタル<月虹>
西陣織(金襴生地・七宝柄)
マイセン<ノーブルブルー>
※参考:出てくる金儲けネタ(予定含む)
しいたけ栽培
Amazon Kindle出版
キャンドル作り
仮想通貨マイニング
歌ってみた
Vtuber稼業
イアリング作り
ライトセイバーバトル
※参考:出てきた魔道具(予定含む)
遠見の加護の首飾り
快眠の指輪
匂いくらましの指輪
深呼吸の指輪
柔軟の加護の耳飾り
暗視の加護の首飾り
鼻利きの加護の指輪
精神集中の指輪
記憶の指輪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる