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第1 章 自分だけの職業
12話 冒険者
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ヒロトシは、今回の事を逆手にとり冒険者ギルドの協力を得て、客を引き込もうと考えた。
「ご主人様?それはどのように磨くのですか?」
「サイファー。どうしたこんな工場に入ってきて」
「ご主人様が、急いで工場に入ったので気になって……ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいよ」
この、サイファーと呼ばれた少女は、メイドの中の一人で魔族の少女で、頭には渦を巻いた角を二つ持っている。普段は、みんなの洗濯をして、今も庭で洗濯した衣類を物干しに干していたところだ。
「それで、それは何をしているのですか?」
「研磨というのは汚れる物なんだよ。研磨剤がまわり噴き飛ぶと言った方がいいかな?サイファーも、ここにいるならこれを耳にこうしてかけて」
ヒロトシは、研磨道具で召還した、防塵マスクをサイファーに渡した。
「危ないから、そこから近づいたらだめだよ」
「はい」
ヒロトシは、設置型のグラインダーに、金剛砂をつけた180#のバフを取り付け、グラインダーを起動させた。
すると、そのバフは勢いよく回転し始めた。ヒロトシはその金剛砂の部分に、蝋で固めた茶色の研磨剤をつけた。
そして、カチュアから預かったナイフの刀身をバフにつけると、火花が飛び散りサイファーはびっくりした。
「ご主人様、お客様のナイフが!」
「大丈夫だよ」
ヒロトシは、その刃先をすかせる様に刀身を眺めていた。そして、刃こぼれが無くなったを確認して、納得いったかのようだった。
そして、今度は金剛砂の付いていない、麻で作られたサイザルバフという種類の円形のバフを設置したのだった。
「ご主人様それは?」
「今回は400#研磨で仕上げになるから、この工程終わりだよ」
「そんな簡単に?」
「すごいだろ?」
ヒロトシは、今度はそのサイザルバフに白棒と言われる研磨剤を塗った。そして、刀身をバフに当てて力を入れた。
ヒロトシは、刀身の根元から剣先に滑らすように仕上げ、研磨を何回もした。この時、ヒロトシは地球とは違う行動をしていたのだった。仕上げ研磨の時、魔力を込めてながらスキルの研磨を使っていた。そうすることで、+1装備となるのである。驚いたことに、この全ての工程は5分程度で終わってしまった。
「できた!」
「もう終わったのですか?」
「ああ。400#研磨だからな。ナイフ程度ならこんものだよ」
サイファーは、ヒロトシからナイフを渡してもらった。
「ご、ご主人様。こ、これ……」
確かに刀身は磨かれ、先ほどとは違い光っていたのだが、持ち手は研磨剤で汚れていたのだった。
「あーごめんごめん」
地球では、テープとかで保護して磨く必要があったが、ここでは魔法があるのでそう言った作業はいらなかった。
ヒロトシはナイフに【クリーン】をかけると、研磨剤は取れて新品のように綺麗になった。
「サイファーは鑑定を持っているだろ?確認してみたら驚くよ?」
ヒロトシに、そう言われて鑑定して見るとサイファーは目を見開いた。
「こ、これ凄いです!あれだけで、マジカルアイテムになっています」
「どうだすごいだろ?」
「これなら、冒険者から依頼が殺到すると思いますよ。早くお客様にこれを!」
「まあ、そんな馬鹿正直にすぐに持っていく必要はないよ。30分ほど時間を潰そうか」
設置型のグラインダーの先には、ファンがまわっている。研磨をする際、研磨剤が撒き散るのでそれを防止する為このファンで吸い込むのだ。吸い込んだ研磨剤は、その先につながっているタンクに収納される。
「でも、あれだけで、ご主人様は粉だらけですね……」
「研磨職人というのはこう言うもんだよ。だから、研磨をする際には完全防護だな」
ヒロトシは、頭には帽子をかぶり、目にはゴーグル口には防塵マスクをしていた。仕事内容を話していたら、30分はすぐに経っていた。そして、ヒロトシはサイファーから防塵マスクを返してもらい、インベントリのゴミ箱に捨てた。これらの道具は地球の物でこの世界にはないものだからだ。
そして、ヒロトシはナイフを持って、客室に入っていった。
それから数日後、㋪美研は冒険者でごったがえしていた。ギルドマスター自ら怪しいと言ったことを謝罪して、㋪美研の店は冒険者にとってとても重要な店の一つだと釈明された。
そして、ギルドマスターは今回の事で責任を取らされ、1年間給料の70%減俸、ボーナスカットという事になった。
「そ、そんな……ヒロトシも大事にはしないと言ってくれたではないか?」
「何を言っているのですか!ヒロトシさんが、大事にしないと言ってくれたからこそ、それだけの事で済んだのが分からないのですか?今回、ギルド調査員が入った事で貴方の日頃の言動が問題となったのですよ?」
「そんな、俺はただ……」
「若い人間を心配したのは立派だと思いますが、貴方のやり方は間違っていると上は判断したのですよ。冒険者ギルドは町の役に立つことを信念に成り立っていることを自覚しなさい。間違っても迷惑をかけることがあってはいけないのです」
ギルドの長であるギルドマスターは、冒険者の見本にならないといけない役目があると叱られたのだった。ギルドマスターバルガンの言動は、冒険者達に影響されるのである。
この前もBランク冒険者が逮捕されたのは、ギルドマスターもっと周りに気を遣っていれば、もっと早く発見できたことだったのだ。
そして、今回迷惑をかけたヒロトシには、減俸となったギルドマスターの給料から支払われる事になった。
この町は、本当に領主がいい人で平民を大事にしていることが分かる。今回の事も、ギルド調査員とあるが、これは領主が考えた第三者委員会である。
前は問題が起きたとしても、ギルドの中で罪が握りつぶされて、弱い人間がよく犠牲になっていた。しかし、領主が平民は町の宝だと言い、第三者委員会を発足させたのだった。これにより、より公平になったのは言うまでもなかったのである。
そして、ギルドから宣伝をされた㋪美研は、冒険者からの依頼が殺到したのだ。しかし、一難去ってまた一難な事が起こった。店の中で大声が響いたのだ。
「なんでだよ!あいつは2500ゴールドで、俺の武器は6000ゴールドだなんて納得がいかねえ!」
「ですから、何度も説明しているじゃないですか?ダガーとツーハンドソードでは、大きさが全然違うじゃないですか?」
「だが、効果は同じ+1なんだろ?同じじゃねえか!店主を呼べ!お前達じゃ話にならん!」
マインとアイは、どうにもならないと思い、ヒロトシを呼びにいった。そして、しばらくするとドロドロになったヒロトシが店舗に顔を出した。
「何か納得のいかない事がありましたか?」
「あたりまえだ!なんで俺の武器が6000ゴールドもするんだ!」
「それは当たり前ですよ。貴方の武器は、ナイフより磨く面が大きいからですよ」
「だが、効果は+1ソードと同じじゃねえか?俺の武器も、2500ゴールドにしろよ!」
冒険者の言う事はめちゃくちゃだった。
「では、反対の立場になって考えてもらえますか?」
「なんだよ?」
「もし仮に、俺がグリフォンの爪が欲しくて、あなたに依頼したとしましょう」
グリフォンの依頼はAランクの依頼であり、本来はこの男が受けれる依頼ではない。
「それがどうした?」
「その依頼料が、薬草と同じ報酬でと俺が言ったらどうしますか?」
「ば、馬鹿な事を!グリフォンがどんな魔物か分かっているのか?爪一本で50万ゴールドを貰わないと割が合わねえよ!」
「しかし、ギルドで発行する同じ依頼じゃないですか?同じ依頼でそれを行なう人は同じだろ?だから、10ゴールドで手に入れてきてくれと言っているだけだよ」
「全然違う!俺は命を懸けて……」
「だが、薬草を採取するときに森の中に入るだろ?薬草採取は命の保証はあるのかい?一緒だよ一緒!」
「屁理屈を抜かすな!」
冒険者は、ヒロトシの言い分に頭に血が上って剣を抜き振りかぶった。
「「きゃああああああ!」」
「やべええ!コイツ剣を抜いた!」
「取り押さえろ!」
マインやアイは、ヒロトシが斬られると思い悲鳴を上げて、客で来ていた冒険者達は、その問題の冒険者を取り押さえようとした。しかしその瞬間、その冒険者は外にはじき出されてしまったのだった。そして、向かいの家の壁に
叩きつけられて、あまりの衝撃に気絶してしまったのだった。
「あーあ……馬鹿な奴だな……」
「「ご、ご主人様大丈夫ですか?」」
その様子に、他の冒険者達は何が起こったのか分からず呆然としてしまった。
「大丈夫だよ。前にも言っていただろ?この店に、悪意のあるものは防犯システムが発動するって」
「「そ、そうでしたね」」
「しかし、驚きました……ご主人様が殺されるかと……」
「皆さん、ご迷惑をかけました。それで申し訳ありませんが、先ほどの事ですが証言して頂いてもよろしいですか?」
アイは、ヒロトシに言われて衛兵に通報しに、兵舎に走ったのだった。そして、気絶した冒険者は他の冒険者達に縛られてしまっていた。
「暴れている奴はどいつだ!」
衛兵がアイに連れられてやってきた。それに、お客であった冒険者達はコイツだと証言をしたのだった。ヒロトシは商人であり冒険者ではない。その人間に剣で斬りかかったとなれば重罪となる。これは客で来ていた人間すべてが証言をしたのである。
冒険者ギルド規定にもあるが、冒険者は冒険者以外の一般平民に、剣を抜いてはいけないという規定があるのだ。
この犯罪は、冒険者ギルドにとって頭の痛い事となった。今回でヒロトシに迷惑をかける事になったのが、3回目となったからだ。
そして、ギルドから副ギルドマスターと幹部達が、後日謝罪しにヒロトシの家にやって来ることになった。
「今回も又、うちの冒険者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
今回は、ヒロトシの屋敷の方に案内され、ギルドの上層部の人間は深々と頭を下げたのだった。今回の事で、㋪美研は店を閉めていた。
「いやぁ……まさか剣を抜かれるとは思いもしなかったよ。うちの従業員はトラウマになったとおもうよ」
「申し訳ありません……」
「でも、少し聞きたいんだけど……ギルドマスターはどうしたの?」
「あの人は前に、ヒロトシ様に迷惑をかけたとして、内勤に精を出しています。それに、あの人が出ると又ややこしくなるので……」
実質、ギルドは副ギルドマスターであるカチュアによってもっていると、ヒロトシは思った。
「そ、それで……こちらの方をお納めください……」
「こ、これは?」
「あの冒険者は、一般平民を襲った事で殺人未遂と判決が出て、奴隷へと落とされました。その賠償金です」
「そういう事か……これは、ギルドに返しますよ」
「なっ!それはいけません……」
「嫌な事を言うが、俺は冒険者と少し距離を置こうと思うんだよ」
「何故そんな事を!ヒロトシさまの技術は、冒険者にとってとても大切な技術なんですよ!」
「そう言って貰えるのはありがたいが、しかしこうギルドマスターを始め、冒険者に迷惑をかけられるとね……」
「そ、それは……で、ですが、そうなれば困るのは、ヒロトシさんも同じになるのではありませんか?仕事が無くなるのですよ?」
「俺はまだ、商人ギルドではペーペーなんでね。年間1000コールド納めれば、何の問題もありませんよ」
「しかし、どうやって生活をするつもりですか?」
「この町で生活するには、家族4人が1ヶ月生活するには5万ゴールドもあれば十分生活は出来ますよ。つまり、うちの家族は13人です。20万もあれば十分お釣りがでますよ」
「いやいや……年間220万がいる事になるのですよ。その資産はどこから?こういっては何ですが、この屋敷を買ったとなれば、お金ももうほとんどないと思いますが?」
冒険者ギルドは必死だった。ヒロトシの技術は冒険者にとって生命線ともいえる物だったからだ。しかし、ヒロトシはインベントリから、ミスリル貨を一枚取り出した。
「なっ!ミ、ミスリル貨……」
「これ一枚あれば、5年弱は有意義に生活できますからね。なんの問題はないですよ」
「そ、そんな……本当に申し訳ありません!」
ギルドは、ここでヒロトシから見捨てられると、ギルド経営は元に戻るのは目に見えていた為、なんとか機嫌を直そうと必死になっていた。ギルドの意見を聞き、ヒロトシは少し考えて口を開いた。
「ご主人様?それはどのように磨くのですか?」
「サイファー。どうしたこんな工場に入ってきて」
「ご主人様が、急いで工場に入ったので気になって……ごめんなさい……」
「いや、謝らなくていいよ」
この、サイファーと呼ばれた少女は、メイドの中の一人で魔族の少女で、頭には渦を巻いた角を二つ持っている。普段は、みんなの洗濯をして、今も庭で洗濯した衣類を物干しに干していたところだ。
「それで、それは何をしているのですか?」
「研磨というのは汚れる物なんだよ。研磨剤がまわり噴き飛ぶと言った方がいいかな?サイファーも、ここにいるならこれを耳にこうしてかけて」
ヒロトシは、研磨道具で召還した、防塵マスクをサイファーに渡した。
「危ないから、そこから近づいたらだめだよ」
「はい」
ヒロトシは、設置型のグラインダーに、金剛砂をつけた180#のバフを取り付け、グラインダーを起動させた。
すると、そのバフは勢いよく回転し始めた。ヒロトシはその金剛砂の部分に、蝋で固めた茶色の研磨剤をつけた。
そして、カチュアから預かったナイフの刀身をバフにつけると、火花が飛び散りサイファーはびっくりした。
「ご主人様、お客様のナイフが!」
「大丈夫だよ」
ヒロトシは、その刃先をすかせる様に刀身を眺めていた。そして、刃こぼれが無くなったを確認して、納得いったかのようだった。
そして、今度は金剛砂の付いていない、麻で作られたサイザルバフという種類の円形のバフを設置したのだった。
「ご主人様それは?」
「今回は400#研磨で仕上げになるから、この工程終わりだよ」
「そんな簡単に?」
「すごいだろ?」
ヒロトシは、今度はそのサイザルバフに白棒と言われる研磨剤を塗った。そして、刀身をバフに当てて力を入れた。
ヒロトシは、刀身の根元から剣先に滑らすように仕上げ、研磨を何回もした。この時、ヒロトシは地球とは違う行動をしていたのだった。仕上げ研磨の時、魔力を込めてながらスキルの研磨を使っていた。そうすることで、+1装備となるのである。驚いたことに、この全ての工程は5分程度で終わってしまった。
「できた!」
「もう終わったのですか?」
「ああ。400#研磨だからな。ナイフ程度ならこんものだよ」
サイファーは、ヒロトシからナイフを渡してもらった。
「ご、ご主人様。こ、これ……」
確かに刀身は磨かれ、先ほどとは違い光っていたのだが、持ち手は研磨剤で汚れていたのだった。
「あーごめんごめん」
地球では、テープとかで保護して磨く必要があったが、ここでは魔法があるのでそう言った作業はいらなかった。
ヒロトシはナイフに【クリーン】をかけると、研磨剤は取れて新品のように綺麗になった。
「サイファーは鑑定を持っているだろ?確認してみたら驚くよ?」
ヒロトシに、そう言われて鑑定して見るとサイファーは目を見開いた。
「こ、これ凄いです!あれだけで、マジカルアイテムになっています」
「どうだすごいだろ?」
「これなら、冒険者から依頼が殺到すると思いますよ。早くお客様にこれを!」
「まあ、そんな馬鹿正直にすぐに持っていく必要はないよ。30分ほど時間を潰そうか」
設置型のグラインダーの先には、ファンがまわっている。研磨をする際、研磨剤が撒き散るのでそれを防止する為このファンで吸い込むのだ。吸い込んだ研磨剤は、その先につながっているタンクに収納される。
「でも、あれだけで、ご主人様は粉だらけですね……」
「研磨職人というのはこう言うもんだよ。だから、研磨をする際には完全防護だな」
ヒロトシは、頭には帽子をかぶり、目にはゴーグル口には防塵マスクをしていた。仕事内容を話していたら、30分はすぐに経っていた。そして、ヒロトシはサイファーから防塵マスクを返してもらい、インベントリのゴミ箱に捨てた。これらの道具は地球の物でこの世界にはないものだからだ。
そして、ヒロトシはナイフを持って、客室に入っていった。
それから数日後、㋪美研は冒険者でごったがえしていた。ギルドマスター自ら怪しいと言ったことを謝罪して、㋪美研の店は冒険者にとってとても重要な店の一つだと釈明された。
そして、ギルドマスターは今回の事で責任を取らされ、1年間給料の70%減俸、ボーナスカットという事になった。
「そ、そんな……ヒロトシも大事にはしないと言ってくれたではないか?」
「何を言っているのですか!ヒロトシさんが、大事にしないと言ってくれたからこそ、それだけの事で済んだのが分からないのですか?今回、ギルド調査員が入った事で貴方の日頃の言動が問題となったのですよ?」
「そんな、俺はただ……」
「若い人間を心配したのは立派だと思いますが、貴方のやり方は間違っていると上は判断したのですよ。冒険者ギルドは町の役に立つことを信念に成り立っていることを自覚しなさい。間違っても迷惑をかけることがあってはいけないのです」
ギルドの長であるギルドマスターは、冒険者の見本にならないといけない役目があると叱られたのだった。ギルドマスターバルガンの言動は、冒険者達に影響されるのである。
この前もBランク冒険者が逮捕されたのは、ギルドマスターもっと周りに気を遣っていれば、もっと早く発見できたことだったのだ。
そして、今回迷惑をかけたヒロトシには、減俸となったギルドマスターの給料から支払われる事になった。
この町は、本当に領主がいい人で平民を大事にしていることが分かる。今回の事も、ギルド調査員とあるが、これは領主が考えた第三者委員会である。
前は問題が起きたとしても、ギルドの中で罪が握りつぶされて、弱い人間がよく犠牲になっていた。しかし、領主が平民は町の宝だと言い、第三者委員会を発足させたのだった。これにより、より公平になったのは言うまでもなかったのである。
そして、ギルドから宣伝をされた㋪美研は、冒険者からの依頼が殺到したのだ。しかし、一難去ってまた一難な事が起こった。店の中で大声が響いたのだ。
「なんでだよ!あいつは2500ゴールドで、俺の武器は6000ゴールドだなんて納得がいかねえ!」
「ですから、何度も説明しているじゃないですか?ダガーとツーハンドソードでは、大きさが全然違うじゃないですか?」
「だが、効果は同じ+1なんだろ?同じじゃねえか!店主を呼べ!お前達じゃ話にならん!」
マインとアイは、どうにもならないと思い、ヒロトシを呼びにいった。そして、しばらくするとドロドロになったヒロトシが店舗に顔を出した。
「何か納得のいかない事がありましたか?」
「あたりまえだ!なんで俺の武器が6000ゴールドもするんだ!」
「それは当たり前ですよ。貴方の武器は、ナイフより磨く面が大きいからですよ」
「だが、効果は+1ソードと同じじゃねえか?俺の武器も、2500ゴールドにしろよ!」
冒険者の言う事はめちゃくちゃだった。
「では、反対の立場になって考えてもらえますか?」
「なんだよ?」
「もし仮に、俺がグリフォンの爪が欲しくて、あなたに依頼したとしましょう」
グリフォンの依頼はAランクの依頼であり、本来はこの男が受けれる依頼ではない。
「それがどうした?」
「その依頼料が、薬草と同じ報酬でと俺が言ったらどうしますか?」
「ば、馬鹿な事を!グリフォンがどんな魔物か分かっているのか?爪一本で50万ゴールドを貰わないと割が合わねえよ!」
「しかし、ギルドで発行する同じ依頼じゃないですか?同じ依頼でそれを行なう人は同じだろ?だから、10ゴールドで手に入れてきてくれと言っているだけだよ」
「全然違う!俺は命を懸けて……」
「だが、薬草を採取するときに森の中に入るだろ?薬草採取は命の保証はあるのかい?一緒だよ一緒!」
「屁理屈を抜かすな!」
冒険者は、ヒロトシの言い分に頭に血が上って剣を抜き振りかぶった。
「「きゃああああああ!」」
「やべええ!コイツ剣を抜いた!」
「取り押さえろ!」
マインやアイは、ヒロトシが斬られると思い悲鳴を上げて、客で来ていた冒険者達は、その問題の冒険者を取り押さえようとした。しかしその瞬間、その冒険者は外にはじき出されてしまったのだった。そして、向かいの家の壁に
叩きつけられて、あまりの衝撃に気絶してしまったのだった。
「あーあ……馬鹿な奴だな……」
「「ご、ご主人様大丈夫ですか?」」
その様子に、他の冒険者達は何が起こったのか分からず呆然としてしまった。
「大丈夫だよ。前にも言っていただろ?この店に、悪意のあるものは防犯システムが発動するって」
「「そ、そうでしたね」」
「しかし、驚きました……ご主人様が殺されるかと……」
「皆さん、ご迷惑をかけました。それで申し訳ありませんが、先ほどの事ですが証言して頂いてもよろしいですか?」
アイは、ヒロトシに言われて衛兵に通報しに、兵舎に走ったのだった。そして、気絶した冒険者は他の冒険者達に縛られてしまっていた。
「暴れている奴はどいつだ!」
衛兵がアイに連れられてやってきた。それに、お客であった冒険者達はコイツだと証言をしたのだった。ヒロトシは商人であり冒険者ではない。その人間に剣で斬りかかったとなれば重罪となる。これは客で来ていた人間すべてが証言をしたのである。
冒険者ギルド規定にもあるが、冒険者は冒険者以外の一般平民に、剣を抜いてはいけないという規定があるのだ。
この犯罪は、冒険者ギルドにとって頭の痛い事となった。今回でヒロトシに迷惑をかける事になったのが、3回目となったからだ。
そして、ギルドから副ギルドマスターと幹部達が、後日謝罪しにヒロトシの家にやって来ることになった。
「今回も又、うちの冒険者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
今回は、ヒロトシの屋敷の方に案内され、ギルドの上層部の人間は深々と頭を下げたのだった。今回の事で、㋪美研は店を閉めていた。
「いやぁ……まさか剣を抜かれるとは思いもしなかったよ。うちの従業員はトラウマになったとおもうよ」
「申し訳ありません……」
「でも、少し聞きたいんだけど……ギルドマスターはどうしたの?」
「あの人は前に、ヒロトシ様に迷惑をかけたとして、内勤に精を出しています。それに、あの人が出ると又ややこしくなるので……」
実質、ギルドは副ギルドマスターであるカチュアによってもっていると、ヒロトシは思った。
「そ、それで……こちらの方をお納めください……」
「こ、これは?」
「あの冒険者は、一般平民を襲った事で殺人未遂と判決が出て、奴隷へと落とされました。その賠償金です」
「そういう事か……これは、ギルドに返しますよ」
「なっ!それはいけません……」
「嫌な事を言うが、俺は冒険者と少し距離を置こうと思うんだよ」
「何故そんな事を!ヒロトシさまの技術は、冒険者にとってとても大切な技術なんですよ!」
「そう言って貰えるのはありがたいが、しかしこうギルドマスターを始め、冒険者に迷惑をかけられるとね……」
「そ、それは……で、ですが、そうなれば困るのは、ヒロトシさんも同じになるのではありませんか?仕事が無くなるのですよ?」
「俺はまだ、商人ギルドではペーペーなんでね。年間1000コールド納めれば、何の問題もありませんよ」
「しかし、どうやって生活をするつもりですか?」
「この町で生活するには、家族4人が1ヶ月生活するには5万ゴールドもあれば十分生活は出来ますよ。つまり、うちの家族は13人です。20万もあれば十分お釣りがでますよ」
「いやいや……年間220万がいる事になるのですよ。その資産はどこから?こういっては何ですが、この屋敷を買ったとなれば、お金ももうほとんどないと思いますが?」
冒険者ギルドは必死だった。ヒロトシの技術は冒険者にとって生命線ともいえる物だったからだ。しかし、ヒロトシはインベントリから、ミスリル貨を一枚取り出した。
「なっ!ミ、ミスリル貨……」
「これ一枚あれば、5年弱は有意義に生活できますからね。なんの問題はないですよ」
「そ、そんな……本当に申し訳ありません!」
ギルドは、ここでヒロトシから見捨てられると、ギルド経営は元に戻るのは目に見えていた為、なんとか機嫌を直そうと必死になっていた。ギルドの意見を聞き、ヒロトシは少し考えて口を開いた。
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緋色優希
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勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
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